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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第六部

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アーク・マーカイザックかく語りき

アーク・マーカイザックかく語りき




 最終決戦の最終局面。

 それはガチでバチバチにマジモンのハードなヘヴィさがクソヤヴァイ、おケツのおあなが激しくヒリヒリしまくり、胸は動悸動悸どうきどうきで死の予感。

 そういう極まった状況だ。

 ギリギリの局面きょくめんでギンギンにいきりたってガッチガチに固くなり、しかもガンガンにがっついている。

 そんなヤツは意外と、あっけなく簡単に逝ってしまうものだ。

 だから少し、気分がやわらぐような話をしようと思う。

 大宇宙に渦巻くsynthetic streamに巻き込まれて合流し、何もかもがひとつになることを良しとしない。

 そんな俺たち野蛮生命体が乗り込む、うるわしき船の話をしよう。

 海賊放送船イービル・トゥルース号は、いまとなってはなつかしい古き良き時代に夢想された、レトロな未来感あふれるデザインをしている。

 クソカスゴミみてえなド偉いミスター権力者様にたてつく、こちとら無法者でございますよ! とツラに書いてあるような船首のドクロを、俺は心から愛していさえする。

 俺はそんな、古き良き時代から時空を飛び越えてやってきたような、この宇宙戦艦が大好きだ。

 ここ最近の、自称僕様じしょうぼくさまは頭が良いんですよ的なニュルリとなめらかなデザインで仕上げられた、最新鋭宇宙戦艦というのは、俺の好みにちいとも合わない。

 俺が愛し、君が乗ることで大冒険に乗り出したこの船は、いわれのない批判を受けることがある。

 毎度毎度、この船はこう言われる。

「現代宇宙空間戦闘において有り得ない。不合理極まる設計」

 俺と君が生き抜いてきた長い冒険の中で、何度となくそう言われ続けたのがこの船、海賊放送船イービル・トゥルース号だ。

 そびえ立つ艦橋があるだと? 

 艦橋ってのは水平線の先をみるためのもんだぞ?

 水平線の向こう側なんてどこにもない、宇宙空間でいったいなんの意味がある?

 現代宇宙空間戦闘において、不合理に過ぎる意味不明なデザインだと?

 地獄の業火ごうかであたためた真っ赤なメタル棍棒こんぼうをケツのお穴に突っ込まれるような、ヒリヒリするどころじゃ済まねえ、ガチな鉄火場てっかばにきたこともありゃしねぇ! どこの誰かもわからん匿名野郎とくめいやろうが、散々ネットに書き続けてきたことについて、俺の頭はマジで怒りに満ちている!

 それは、本船のオーナーかつ最高執行責任者であられる、キャプテン・パンダーロック殿も同様だ。

 どこの銀河のどいつなのやら、こまかいことはなにひとつわからねえ野郎を押し倒して抑え込み、うえからおっかぶさって三発殴って撃破するどころか、三十発以上はぶん殴ってわからせて、野蛮生命体になめた口をきくとてめえの明るい未来がどんな感じに輝くことになるのかみせてやりてえと、俺は本気で思っているくらいだ。

 パンダ船長殿はめっちゃ大人のケダモノだから、そういうことはしないとは思うが、腹にすえかねていることは間違いない。

 とは言え、この場にいないで、ネットにネチョネチョと粘着質に書き込み続けるウヨウヨしている匿名野郎を、今ここでぶん殴ることは物理的に無理なのは、悲しいことに邪悪なほどに真実だ。

 なのでまずは、うるわしき本船の素敵におったつ艦橋に、匿名とくめいでなされた的外まとはずれ過ぎる批判に対して、俺は言いたいことがある。

 この船に艦橋があるのには、もちろん合理的な意味がある。

 ということは、いわれもない批判をブッ飛ばす、ケチのつけようがない反論をふりかざしてぶん殴り、ネットに好き放題書きやがった匿名野郎をこれからオーバーキルするということだ。


 アークは自席を立ち、艦橋前面をおおうブ厚い硬化テクタイト製窓の前に立つと、無限に広がる星の海をじっとみつめる。

 一秒、二秒、三秒、四秒。

 そして五秒の時間が経過して、アークの口が言葉を発する。


 様々な銀河とあまたの星々がきらめいて、それぞれの想いを持ちながらも、互いの領域を決して犯すことなく存在することができる。

 どこまでも続く深淵しんえんに浮かぶ星たちの光がまたたく広大過ぎる海は、文字通り無限の可能性を持っている。

 どうだ? 最高にいいながめだろう?

 まるで嘘みたいだが本当に実在している広過ぎる世界が、どこまでもどもまでも果てなく続く無限を、自分の目でもってナマで見ることができる。

 これが、イービル・トゥルース号が艦橋を持つ理由のひとつだ。


 そういうとアークは、今度はブ厚い硬化テクタイト製窓に背を向けて立ち、アイアンブルーとガンメタルグレイで構成された艦橋に向き直る。上半身マッパにミリタリージャケットを羽織る野蛮ファッション。ジャケットの間から、ガチでバチバチにハードなマジモンの男特有のモリモリのお胸をもろチラもろチラみせつけて、頭上に生やした猫耳がマジで映えるを通り越してるアークが話し出す。


 現代宇宙戦艦は、もはや艦橋を持つものなど存在しない。

 水平線の先をみようとか、そういうロマンのかけらもねえ、無粋な船乗りしかいないからだ。

 そういう理由だけじゃねえ。

 大宇宙最速の速度で進む、回避不能な極大威力のエネルギー兵器が持つ破壊力と、それを相殺そうさいするシールドの耐久力勝負になった現代。

 司令部は艦橋ではなく、艦内奥深くの一番安全とされる場所に設置されるのだ。。


 アークはつまらなそうに、鋼鉄芯入りのブーツのつま先でアイアンブルーの床を軽く蹴る。

 カツーンとんだ音がする。


 もしも、シールドがたった一度でも、耐久限界を超えたら?

 それは即、艦と乗員の死を意味する。

 艦内奥深くの大事なトコロにしまった戦闘指揮所も、残忍ざんにんな暴力に無惨むざんにブチ抜かれるだけだからだ。

 それでも、高貴こうきだとか高尚こうしょうだとか高知能こうちのうだとか有能ゆうのうだとか、いろんなことを自称する僕様どもは、怖い怖い前線にできるだけ立ちたくなくて、おナカのオクにある戦闘指揮所に閉じこもる。


 アークは深いため息をつく。

 全てをモニターで見るがゆえに、なにひとつおナマでみることができない狭い場所に、できるだけ前線の後方にいたい腰抜けどもがウヨウヨとひしめいている。

 そんな息がつまるような戦闘指揮所に、一人前以上の暴威ぼういは心の底からうんざりするのだ。

「だが、俺たちは違う」

 そう言ってアークは、鋼鉄芯入りブーツでガツン! アイアンブルーの床を強めに蹴る。

 アークの鋼鉄芯入りブーツのつま先から、青い火花がバチン! ときらめく。

「イービル・トゥルース号の乗組員は、常にドンパチの最前線。地獄と俺たちをへだてるのはたった一枚の硬化テクタイト。そういうたましいがひりつく世界に、俺達野蛮生命体は存在しているわけだ」

 アークはそう言って、サディ、ネガ、タッヤ、AXE、ミーマへと、視線を動かして視線をあわせる。

「どうだ? カッコいいだろう? これが、この船が艦橋を持つ理由のふたつめだ」

 両腕を広げて、ガバっと開いたジャケットからバイオレンスなマシマシお胸を見せつけて、頭上には猫耳ついたアークの言葉に絶句ぜっくしたのか? アークの演説を清聴せいちょうしているのか? 誰一人何も言わなかった。

 アークは再びブ厚い硬化テクタイト製窓にむきなおり、星の海と自分をへだてる透明な壁に手をあてて話し出す。


 大宇宙で最高クラスの硬度をほこり、しかも透明という、嘘みたいだけど本当に実在する硬化テクタイト。

 この窓の向こうには、信じられないくらい真に空と呼ばれさえする、からっぽな時空がある。

 たった一枚の硬化テクタイトの向こう側は、どんなに口うるさい奴もひとたび放り出されたならば、一言も言葉を発することのできない、サイコなバイオレンスさに満ちている世界でもある。


 アークは再び艦橋側に振り返る。燃えあがる青い炎が宿ったアークの瞳を、乗組員達は見る。


 確かに今現在の状況は絶望的だ。

 だけどここは、あらゆる希望と絶望が混ぜ合わされた、どこまでも続く広すぎる世界だ。

 億千万の絶望があふれていようが、たったひとつの希望をつかみとりさえすれば、どうということはない。

 何より今、俺たちは確かに生きている。それは邪悪なまでの真実だ。

 そして俺達は、明日も生きる。明後日あさっても生きる。明明後日しあさっても生きる。

 むこう200銀河標準年先まで予定を確認しても、死ぬ予定はまったくもってひとつもない。


 サディが、タッヤが、AXEが、ミーマが、ネガが、こくりとうなづく。機関室で船内放送を聞いている、コタヌーンとオクタヌーンもうなづいた。

「うむうむうむうむ。さすが、海賊放送船イービル・トゥルース号に乗り込んだ、ブッといたましいの持ち主だぜ!」

 アークは満足そうにうんうんとうなづくと、パンダ船長に視線をあわせる。

 イービル・トゥルース号最初の乗組員にして、オーナーかつ最高執行責任者。

 遥か彼方の昔から大宇宙のあまたの銀河を渡り歩いて今現在にたどり着いた、サイコーにモフモフでクールなキャプテン・パンダーロック殿。

 船長。ここから先は、あんたにもからんでもらう。

 アークは心の中で、そうつぶやいて話し出す。


 さて、ここからが本題だ。

 体液まみれでドログチャ大惨劇だいさんげきのパーティ会場で突如とつじょ、大宇宙を舞う死神に襲われた俺は、地獄までイっちまうかもしれなかったところだが……

 どういう理屈りくつがあるのかまったくもってわからんが、俺は時空を飛び越えイービル・トゥルース号に見事生還みごとせいかんしたわけだ。

 常日頃つねひごろてめえ勝手にお先にドバドバ出すことしかしねえ、クソカスみたいなsynthetic streamのクソ野郎をブッ殺すという、俺の日頃の善行の数々が、大宇宙を舞う死神様のかんだいなるはからいにつながったのではないかと俺は確信するわけだ。

 さらにさらに、まったく何がなんだかわからねえのだが、ニューコンチネンタル・オーダニー号に突撃刺突衝角とつげきしとつしょうかくがブッ刺っている!

 この状態は、マジでハードなバイオレンスに過ぎていて、俺の大事な生命たまがヒュンとなるくらいだが……

 今現在のこの状況は、あふれかえりまくる絶望の中で、たったひとつの希望をつかんで天国に凸れる。大変にオイシイ体勢であることに気づかないほど、俺は間抜けな僕様ではない。

 この状況は、大気圏外からマジで金塊落下級 (略してタ・マ・キン)のウッハウハな状況なのさ。


 アークの長い話しを聞いていた、格闘技界隈かくとうぎかいわいでは最軽量級で当たり判定最小が自慢じまんの危険なマシンガン・サディちゃんは、こう思う。


 相変わらずアークの話しは、意味がよくわからんうえにクッソ長いが……

 つまり、アークは、あたしがブチかました超特急の救出行為が、クールに鋭くマジで危険な暴力の匂いで満ちていて、ハードな男のおちんたまとお胸がキュンとなるくらいに魅力的! と、あたしをほめまくってくれている!


 アークのお言葉に、サディがほほを赤らめる。

「じゃろう! じゃろう!」

 サディはうれしそうに、巨大なリヴォルヴァーキャノンのシリンダーをギュイーーンッと回す。

 視界にすみでサディがみせる喜びように、アークの猫耳がピクピク動く。

 俺の記憶には謎の欠落部分があって、明確なことは言えないのだが……

 大宇宙を舞う死神とサディの間に、なにか匂うものを俺は感じる。

 このドンパチが終わったら、ブルーナイトメアに記録されたログを全部振り返り、どうやって俺が時空を飛び越えたのかを解明かいめいすれば、この謎の違和感の正体もわかるはず。

 そして……

 大宇宙の叡智えいちあふれる密着バトルスーツの件のことについても、あとでゆっくりじっくりたっぷりと、俺はサディと話し合う必要があるはずだ……

 アークは心の中で明後日あさっての予定を決めた。

「ぱふぉっ」

 いまだ無期限謹慎処分中むきげんきんしんしょぶんちゅうのパンダ船長の声がする。

 猫耳つけて臨時暫定指揮官りんじざんていしきかん就任しゅうにんした途端とたん、その肩書を嫌がってパンダ船長のご英断に頼りだしたアーク。

「アーク。船長はなんて?」

 パンダ船長のご英断を、アークに問うサディ。

 アークが自席に着き、戦闘用ハーネスで自身の身体を固定しつつ、バンダ船長のご英断を翻訳ほんやくしだす。


 どういうことやら細かい理由はわからんが、巨大航宙ホテル船ニューコンチネンタル・オーダニー号に突撃刺突衝角とつげきしとつしょうかくをブッ刺した状態に、イービル・トゥルース号はある。

 つまり本船は今現在、巨大なニューコンチネンタル・オーダニー号の背後にうまいこと隠れている。さらにさらに、本船自慢のそびえ立つめっちゃカッコいい艦橋が、ちょうどよく巨大航宙ホテル船のうえからちょこっとだけはみ出している状態だ。

 なんてったって俺は自席からおナマで、艦橋の前に広がる星の海をながめているんだからな!

 これがいったい何を意味するか?

 海賊放送船イービル・トゥルース号は、ニューコンチネンタル・オーダニー号に隠れながらも、メインレーダーも主砲照準も使えるという、相当そうとうに優位な状況にあるということだ。

 し・か・も!

 どうしてそうなっているのか?

 これまた細かい理由はなにひとつわからないのだが、イービル・トゥルース号がブッ刺した巨大航宙ホテル船は、かなりの速度で星の海を今現在かっ飛ばしているわけだ! 

(注・サディが最大戦速で突撃刺突衝角をブッ込んだ勢いが、巨大航宙ホテル船を今現在もすさまじい速度で星の海をかっ飛ばしているのである!)

 こいつを生かさないボンクラ坊やは、この船に乗ってねえ!

 これより海賊放送船イービル・トゥルース号は、巨大航宙ホテル船ニューコンチネンタル・オーダニー号に隠れ潜んだ状態を維持しつつ、予定通りの大逃走を開始する!


アークが翻訳したパンダ船長のご英断に、ネガはイービル・トゥルース号の操縦桿をガッチリ握る。

「イービル・トゥルース号! 全力逃走! 了解ッ!」

 銀河イチ逃げ足の速い操縦士ネガは、嬉しさと楽しさと元気にあふれてそう言った。

「でも、どこへ向かって逃げるんです?」

 正体不明の超巨大異次元異様要塞カルト・スターを示す楕円だえんが不気味に光るレーダー盤から顔をあげて、AXEが冷静に問う。

 アークがニヤリと笑い、逃走先を発表する。

「海賊放送船イービル・トゥルース号の逃走先は、ガンガンどんどんクソミソに接近してきている超巨大異次元異様要塞カルト・スターだ!」

「はぁぁぁぁっ!?」

 サディが、タッヤが、AXEが、ミーマが、コタヌーンが、オクタヌーンが言った。

「くぅそぉがぁッ!?」

 さっきまで嬉しそうだったネガは、ガスマスクの中で真っ青になって毒づいた!

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