臨時暫定指揮官とパンダ船長
臨時暫定指揮官とパンダ船長
サディによって生やされた頭の猫耳に、アークは大困惑中。
しかし時の流れは残酷だ。
万がイチのもしかして、ブルーナイトメアごとアークを突撃刺突衝角でブチ抜くかもしれない可能性をブッ飛ばし、急転直下の超特急的なバイオレンス救出劇でサディが稼いだ貴重な時間が、刻一刻と過ぎていく。
見た目がどうとか言っている場合ではない! とにかく今はこの緊急事態に対処しなければ!
猫耳生えた無免許もぐりの航海士が復帰した、アイアンブルーとガンメタルグレイで構成された艦橋は大問題への対応に動き出す。
アークが不在だった間のイービル・トゥルース号の行動を、ミーマ・センクターお姉様が的確に説明。
サディが大暴れの結果、船にためこんでいた実体弾がメッチャクチャに減って、財務的にかなりの打撃があったことをタッヤが説明。
だけども、敵艦からどっぷり抜き取った今現在、燃料とエネルギー弾の素はたっぷりあることを、コタヌーン機関長がきっちり説明。
もしかしたら、突撃刺突衝角での海賊行為は、かなり実入りがいいのかもしれませんと、オクタヌーン機関副長がヤヴァイ発言。
サディにおナカからオクをドログチャにかき回されて、連合艦隊旗艦スペースバトルシット・アベンシゾーは完全沈黙。
脱出する指揮官もろとも、どいつもこいつもイチバチが皆殺し!
狩った勝ったの大勝利! と思いきや……
クッソデッカイ移動要塞と思われる、おクソのおカタマリがご登場!
その後、細かい理由はよくわからないのですけども、公厳警察System Schutzstaffel混成艦隊は、全艦この宙域から急速離脱中。一般知的生命体が乗船する船達も、ちりぢりに逃げていまのところ無事であるとAXEが説明。
てめえがいない間、こっちはマジでクソだった。ネガはそう言いたいのか、クソがクソが! と何度も毒づく。
臨時暫定指揮官を示す猫耳をピクピクさせて、アークは乗組員の言葉にじっと聞きいっている。
「状況は理解した。俺は生身で時空を飛び越し、イービル・トゥルース号に帰還するという、大偉業を成功させたものの……。俺はやさしさという甘さから、アベンシゾーを仕留め損なっちまったわけだ……」
アークが静かにつぶやき、組んだ両手にひたいをつけて考え込む。
アークは深い思考に入る態勢をみせ、その頭上ではちぐにゃにゃん変身セットの猫耳が揺れている。
「あんたは時空を越えてイービル・トゥルース号に帰還したせいか、頭の回転がまだ遅いみたい。さっさとガチでバチバチなハードさでシャンとして、ガスゴスガンガンバリバリにヤッてくれないと困るんだけどねぇ?」
巨大なリヴォルバーキャノンとガトリング砲に両腕をかけてもたれながら、アークの猫耳頭を赤い瞳でみつめてサディがそう言った。
深い思考に沈むアークは、サディに答えなかったが……
「ぱふぉっ」
勝手に動いた罪で無期限謹慎処分中のため、メタルケーブルぐるぐる巻の刑に処されっぱなしのパンダ船長の声がした。
「アーク? ずいぶんひさしぶりに聞いたぱふぉだけど、船長はなんて?」
突然のパンダ船長発言に、巨大な暴力装置に艶やかな姿勢でもたれかかる、過激極まるお姿であられるサディお嬢様の片眉がぐいっとあがる。
頭上にピクつく猫耳にとらえたパンダ船長のお言葉を、アークが翻訳開始。
 
とにかく状況は大混乱の大混迷でドログチャな、クソミソにヤヴァイ状態のド真ん中に突入している。
こういうのを、シンセティック・ストリームのド偉いミスターホワイトカラーのクソ野郎どもはもっとも嫌う。
下々の者にパニックを起こさせるな!
下々の者にパニックが起きるくらいなら、下々の者をポイっと捨てる。
つまりは下々の者は皆殺し。
そうやってすべてを揉み揉み潰して消し去って、細かい理由は何一つ言わずに、絶対安全安心ドント・パニック!
つまり、マズイ事態をなかったことにする。
そうなるのが目に見えている。
だから……
い・や・が・ら・せ・デ・お・も・て・な・し・ガ・お・そ・ろ・し・や。
クソヤヴァイ最先端の腐れ外道を先進しているsynthetic streamのお家芸を、心の底からよーーくご存知であられるsynthetic stream混成艦隊は、てめえら自身までもがモミモミもまれて潰されて、抹殺されることに気づいて大脱走。
しかし……
どんなに逃げ惑おうと、ここは大宇宙のクソの素、アベンシゾーのクソが渦巻く大本営、アベノカールト銀河だ。
どこもかしもこなにもかも、大宇宙のクソの素アベンシゾーに抑えられている。
どんなに逃げても、グラジ・ゲートを封鎖されていたら、まるで袋の中の疫病ネズミ。そうなったら、テーマパークで夢心地になってる間に、さらっと身ぐるみ剥がされ地獄へGO TOと相場が決まっているわけだ……
絶対に脱出できない行き止まりは、いわゆるド壺にハマった大自民統一教会党政権下の一般市民状態ってやつだ。
この宙域にいた船は、どいつもこいつも敵も味方も、星の海なんて素敵なものじゃなく、血の海に沈められることが大確定だ。
そして、このイービル・トゥルース号もまったくもって例外ではなく、抹殺滅殺隠滅対象、そのことに間違いない。
大宇宙のクソの素、アベンシゾーの殺処分による公衆衛生の回復は未だ成らず。
暗部の心臓が毒ん毒んと脈打つ世界で、この大騒乱と大混乱の果てにやってくるのは、大虐殺による大滅殺隠滅行為という大破局であることは明白だ。
「キャプテン・パンダーロック殿は、ただいまこのように述べられたが、船長殿のご認識にお間違いはないか?」
アークの問いに
「間違いない」✕四乗組員
「トットト、モクロミショヲダシヤガレ」
とイクト・ジュウゾウ。
「次の殺しの依頼はまだか?」
とギンギラメタルボディのイクト・イチバチ。
そして
「くそが」
とネガは毒づく。
「で、どうしますかい? 海賊放送船を名乗る、この船は?」
銀河を渡り歩くギャンブラー、コタヌーン機関長の声が機関室から届く。
「この船の燃料計は、まだまだやれると言っているのかもしれません」
さらに続く、オクタヌーン機関副長の言葉。
臨時暫定指揮官を示す猫耳が、アークの頭上でピクピク動く。
「五秒銀河標準秒間、キャプテン・パンダーロック殿は、じっくりゆっくり考えて、きっちりキレイに終わらす案をだすそうだ」
アークはそれだけ言うと、猫耳を激しくピクつかせながら沈黙する。
一秒、二秒、そして、四秒……
通常の二倍以上に常軌を逸した男の頭上では、かわいい猫耳がゆらゆら揺れて時を刻んでる。
長い沈黙がアイアンブルーとガンメタルグレイで構成された艦橋に流れ去り……
ついに五秒が経過した。
「ぱふぉっ」
メタルケーブルでぐるぐる巻きの刑に服す、パンダ船長はまた言った。
「アーク? 船長はなんて?」
今再びくだされたパンダ船長のご英断に、サディの片眉がぐいっと再びあがる。
「この船は、たった一人の指揮官にひきいられる宇宙戦艦などでは断じて無い。だが、常軌を逸した特別予算兵器がこの宙域に皆殺しにやってくるのならば……」
「くるのならば?!」✕4乗組員と
「くそが?!」の悪態
「とっととケツまくってバックレろ! パンダ船長はそう言った」
臨時暫定指揮官を示す猫耳付きヘッドセットを装着した、アーク・マーカイザックは語尾をニャンにすることなくそう言った。
 




