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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
モッキンバード侵攻作戦

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宇宙をみあげろ!

宇宙をみあげろ!



「真正面から突入してくる戦闘機が散開していきます……」

 レーダー上の不可解な動きをAXEが告げる。

「戦闘機が散開? 事実上、この船に攻撃できる唯一のチャンスのはずだが?」

 アークが小首をかしげる。

 何か、他に手があるということか?

 アークの脳が回転を始める。モッキンバードタウンに極大威力の対艦エネルギー砲でもあるのか? 

 いや、ありえない。この時代にあって、機動力ゼロ、固定ポイントからの射撃しかできない大型固定砲台を地上に作るなどということはありえない。そんなもの、首都上空から街をながめた時にありはしなかった。ありえるとすれば、普段は地下にでも隠蔽いんぺいされている状況だが……

「モッキンバードタウンの公共放送、及びSNSをモニターしていますが、都市に動きはまったくありません」

 ミーマがアークの思考を読んだかのように言う。

 地下に隠蔽した極大威力の対艦エネルギー砲を稼働させるためには、周辺のエネルギー供給制限と避難指示が必要になるはずだ。イービル・トゥルース号がモッキンバードタウンにたどり着くまで後数分。とうてい間に合わない。公共放送が何も言っていないということは、イービル・トゥルース号がモッキンバードタウンの上空に飛来することさえ、synthetic streamは一般市民に伝えていない。

 直上からの軌道衛星砲攻撃? これもありえない。この星に降りる前に、軌道衛星砲が存在しないことは確認している。もしも隠蔽いんぺいされた軌道衛星砲が存在するとすれば、もっと速い段階で砲撃しているはずだ。モッキンバードタウンに被害が及ぶ可能性のある直前まで待っての砲撃などありえない……。だとすると……ありえるのは……

「前方より戦闘機が一機! 真正面から本船に突入してきます!」

 レーダー盤の上で散開する光点の中から飛び出した、たったひとつの光点を発見してAXEが叫ぶ。



「隊長! 隊長! 隊長ぉぉぉ! 命令違反です! 隊長の社会的生命が死んでしまいます!」

 無線からは隊員達の悲痛な悲鳴が、社会的生命の悲惨な末路予想をツゲルに告げる。

「お前達はマ(以下略)な命令に従って生きろ。俺はこの世界を守るためにいく」

 ヘル・ツゲルは操縦桿を倒し、全力で所属不明の宇宙戦艦の艦首真正面、ドクロマーク部分に存在する、たったひとつの射角の空隙を狙って突入していく。

 クラッキング不能とSpace Synthesis System中枢閣で閣議決定された、絶対安全安心の緊急回線経由の命令であっても、意味不明まったく理解不能の命令は、やはりあのマ(以下略)艦からの欺瞞ぎまん行為である可能性はあり得るとツゲルは判断した。

 だが……、あの理解不能意味不明の命令が、本物の命令である可能性もまた高かった。

 ならば、俺がいくしかない。

 部下を連れて命令違反の積極的平和力行使突入を実行することは、部下達が言うように、部下達の社会的生命までもを殺す可能性がある。

 だが、俺ひとりなら知ったことか!

 俺はこの世界を守る。System Self-Defense Force SSF 主任特務大尉ヘル・ツゲルなのだ!

 ツゲルの駆る支援要撃機は音速の数倍の速度に達し、所属不明艦との一騎打ちに直進する。

 ツゲルの肉体が耐えられる限界加速度の中で、ツゲルは血の気が引き暗くなる視界の中に、この世界に侵入してきた邪悪なる標的を睨みつける。

 レーダーに映るあのマ(以下略)艦との距離が急速に縮まっていく。

 5……4……3……2……1……0!!

 正面衝突をギリギリ回避できる距離に達した瞬間、ヘル・ツゲルはすべての平和力を積極的に解き放つトリガーを引き絞り、全力で操縦桿を倒す!



「真正面より突入してくる戦闘機より対艦ミサイル多数発射!!」

 レーダー盤を高速で接近する光点を確認し、AXEが叫ぶ!

「船体おこせ! 宇宙をみあげろ!」

「クソがぁぁぁぁッ!」

 ネガはかじりついた操縦桿を全力で引き、イービル・トゥルース号の船体を宇宙へと向ける!

「1発残らず撃ってやるよ!」

 真っ赤なリンゴみたいに赤い瞳をギラつかせたサディが、照準機にお顔を突っ込んで対空パルスレーザー砲の引き金に指をかける。

 艦橋前面、硬化テクタイト製窓の向こうにみえていた、モッキンバードタウンの夜景が沈んで消えて、いちめんの星空に変わる。

 イービル・トゥルース号は船体を傾斜けいしゃさせ、宇宙をみあげる。

「射線確保!」

 サディが叫び、ミサイルを射角内にとらえた船の腹側のパルスレーザー砲の引き金を引く!

 鮮烈な青い閃光が硬化テクタイトの窓を一瞬染め、橙色だいだいいろの光の明滅へと変化する!

「ひとつ! ふたつ! みッつ! よッつ! いつつ! むッつ! ななつ! やッつ!!」

 サディが引き金を引くたび、硬化テクタイトの窓に対空パルスレーザーが生み出す青い閃光と、ミサイルが爆裂する橙色だいだいいろの光が明滅する!

「ざまあみろ! 全部叩き落としてやったよ!」

 照準器からお顔を引き剥がし、サディが叫ぶ!

「ミサイル迎撃全弾成功! モッキンバードタウンへの誤射ありません」

 ミーマの声に

「マシンガン・サディと恐れられたあたしの腕を舐めるなよッ!」

 とサディが笑う!

「マシンガンって、狙い撃つものじゃないんですけどねぇ……」

 とタッヤがつぶやいた時、遅れて届いたミサイルの爆裂音が艦橋を満たし、タッヤの声がサディに届くのを防ぐ。

「ありがとう。さすが本船の砲手だぜ!」

 アークが横のサディに拳に親指を立てて、硬化テクタイト製窓の外に視線を戻す。

「船体傾斜そのまま。モッキンバードタウンの中心、モッキンバードツリーの真上を飛んで宇宙にかえるぞ。それと、例のやつを用意しよう」

 アークの言葉に

「クソがぁぁぁ!」

 とネガはガスマスクの中で答え、全力で操縦桿をひきあげ続ける。



「クソがぁぁぁぁぁッ!」

 ヘル・ツゲルは全力でマ(以下略)艦との衝突を回避しながら叫んでいた。 

 積極的に解き放った全ての平和力は、全てレーザー砲の迎撃にあい、海上で爆散四散霧散していた。

 もはや撃沈を演出する必要などない、所属不明の宇宙戦艦からの迎撃は恐ろしく完璧だった。

 極大威力のビーム兵器を搭載した宇宙戦艦の前には、航空母艦、及びその艦載機はまったくの無力。

 おまえは時代遅れの男なのだと、世界が俺を笑っている気がする。

 ツゲルの眼下を、首都上空へと侵入するマ(以下略)艦の禍々(まがまが)しい姿が通過していく。

 残念! 無念! 慚愧ざんきにたえぬ!

 こうなることはわかっていた。それでも、ツゲルは守りたかった。守るために何かをしたかった。

 だから命令違反。社会的な死を覚悟して、俺はたったひとり、あのマ(以下略)艦に立ち向かったのだ。

 だが、この後に待っているのは、生物学的な死より厳しいものだろう……

 それとも、あの緊急通信は本当に奴らの欺瞞工作で、俺は英雄になれるのだろうか?

 ツゲルの脳内で様々なことがぐるぐるとまわりだした時、支援迎撃機の無線がツゲルに告げる。

「ヘル・ツゲル。貴様を英雄にしてやろう」

 Space synthesis systemからの通信であることを表示した無線は、冷たくツゲルにそう告げた。

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