僕が絶対に届かない世界へ、逝ってしまった大事なモノ
僕が絶対に届かない世界へ、逝ってしまった大事なモノ
ドブラックな壺鉤十字と壺鉤桜の代紋を掲げる戦闘指揮所の循環空気は、静まり返っていた。
太くて長くてさきっちょがマジでヤヴァイ! バイオレンス極まる刺突衝角を抜き去って、ド旧式ドクロ宇宙戦艦はどこぞを目指してブッ飛んでいってしまった……
メインモニタに映るのは、刺突衝角を根本までブチ込んだ艦首のドクロが衝突したことで刻まれた烙印の真ん中に、無惨な穴がぽっかりと開けられた、かつては僕様の大事な大事な旗艦様だったモノ。
外装のほとんどは無事だし、主砲もちゃんとついている。
甲板上に整列していた、半ズボンにブルマ・スク水姿のリアルロリショタ達も全員生きている。
いまでも公開通信チャンネルには、半ズボンにブルマ・スク水姿のリアルロリショタ達の、アベンシゾー総統陛下を賛美する素敵な声が鳴り響いているのに……
だけど、僕様の大事な大事な旗艦様だったモノの内部は……
もう僕様では絶対に届かない世界へイカされて、ナカのオクまでドログッチャのメッチャクチャになってしまった。
双方向の戦闘行為に一切同意などしていない積極的平和主義者達は、不同意戦闘罪によって徹底的に蹂躙されたのだ!
不同意戦闘という知的生命体道を外れた非道行為に嫐られて、たまらず旗艦を脱出した船達は、救命艇も含めて全てもれなくブッ殺された……
ああ、なんて酷い!
白旗あげた救命艇を撃つなんて!
銀河連合交戦規定に反する、許されざる残虐行為だぞ!
圧倒的多数様が積極的に平和力を行使して、ほんのちょっとの少数派を一方的に修正して、この宙域で発生した大変にまずい物事をきれいさっぱり消去する!
そういう、積極的平和主義を積極的に行使した、平和維持行動を実行するための重要な忖度だったのだぞ!
圧倒的多数様の前には、存在意義など微塵もない少数派はだまって死んで、多数が正義の銀河神民民主義に貢献するべきだったのだ!
なのに! なのに! なのに!!
圧倒的多数様の数%にも満たない少数ごときが、生意気にも自分の権利を主張して、抵抗してきやがったのだ!
銀河連合交戦規定を無視して、宣戦布告もなしに歯向かってきやがったのだ!
互いに殺し合う双方向戦闘などという野蛮行為に、一切同意していない積極的平和主義者を、奴ら少数派がブッ殺しまくりやがったのだ!
想定外だ! 予想外だ!
前代未聞、空前絶後、史上空前の悪辣非道たる暴挙、暴虐、残虐行為だ!
知的生命体道を外れた目を覆いたくなるような外道の所業が、圧倒的多数に属する僕様の目の前で実行されたのだ!
まさか反撃してくるなんて!
そんなの積極的平和主義への冒涜だ! 平和に対する挑戦だ!
過半数を超える圧倒的多数様が絶対正義の、銀河神民民主主義への凌辱だ!
てめえらSpace Synthesis Systemの生命体じゃねえッ!
圧倒的多数様に属する僕様の目の前で、メインモニターに映し出される残虐画像。
100%純粋まじっりけなしにブッ殺されて、永久保存のフリーズドライ死体になったマニュータ・ロー副総統陛下が、宇宙の果てを目指して気が遠くなるような速度で飛んでいく。
ああ、もしかしたら……
「我は戦う覚悟を決めている。ゆえに、最後の瞬間まで、艦と我は運命を共にする」
そういう根性のある司令官様なら、まだ生きてナカでがんばっていられたのかもしれない……
でも、サスキュー銀河を支配するマニュー財閥のマニュータ・ロー副総統陛下は、誰よりも早く逃げ出した……
ド旧式ドクロ宇宙戦艦は、非知的生命体道という外道の道をまっしぐらにひた走り、サスキュー銀河を支配するマニュー財閥のマニュータ・ロー副総統陛下をブッ殺し、永久保存のフリーズドライ死体にきっちり仕上げて、宇宙の果てにむかってブッ飛ばした。
こんな状況に何をどうすれば正解なのか?
教科書にもマニュアルにも、大自民統一教会党の原理講論にも、権畜心得十箇条にも書いてない……
だから僕様には、何が正解なのか、これっぽっちもわからない……
どうしよう。どうしよう。
テストの過去問にも出てこない、この危機的状況で、僕様は何をどうすればいいのだろう?
想定外の予想外……
こんな時、僕様のかわりに、すっと正解を出してくれる。そういう存在がいればいいのに……
そうだ。僕様のかわりに答えを出してくれる。そういう存在がいたじゃないか!
Space Synthesis Systemの艦は、人工知能を載せている。
圧倒的多数に属する僕様の性癖にドンピシャな、アンダースコートなんです設定を振りかざして魅せまくってくれる、パンモロ幼女萌えボイスちゃんが、僕様達の指揮をとってくれるかも……
僕様達の旗艦は、森羅万象絶対浮沈と閣議決定された、最強の抑止力をもつ宇宙戦艦なんだぞ!
大丈夫だ! パンモロ幼女萌えボイスちゃんは、きっとまだ生きている!
だって、森羅万象宇宙戦艦なんだぞ?! 絶対安全安心の科学的に不沈艦なのだから!!
事実、森羅万象宇宙戦艦アベンシゾーは、宇宙空間にまだ存在している。
だから絶対安全安心ダイジョウブ!
あまりにも希望的に過ぎる、妄想じみた感情に動かされるままに、無線に言葉を投げ続ける。
「Space Synthesis System連合艦隊旗艦、森羅万象宇宙戦艦アベンシゾー応答願います! 旗艦森羅万象宇宙戦艦アベンシゾー応答願います!」
旗艦にむけて無線と発光信号で問いかけるが、森羅万象宇宙戦艦アベンシゾーは完全沈黙。
これはアンダースコートなんですぅ設定を振りかざし、モロチラモロチラ魅せまくる、パンモロ幼女萌えボイスちゃんからの応答は一切ない……
嗚呼……
死んだ……
完全に死んだんだ……
僕様の性癖にドンピシャな、パンもろチラチラでサイコーなサービスを満面の笑顔で提供してくれる、ロリで萌えてる素敵なあの子は、メッチャクチャにブッ叩かれてブッつぶされて、公共の場から排除されて消されたんだ……
僕様の眼の前で実行された、Space Synthesis System式表現の自由を侵す、非道極まる野蛮で残虐な検閲行為……
腹の中に、言いようのない怒りと憎しみが渦巻いた。
僕様の性癖にドンピシャな、素敵な女の子を公共の場から排除した、Space Synthesis System式表現の自由を侵す極悪非道のテロリストどもがぁぁぁぁアアアアッ!!!
でも、でも、でも……
青い炎を燃えあがらせて、どこかにブッ飛んでいったガチでバチバチなマジモンの極悪非道なドクロ宇宙戦艦に、僕様が乗る突撃艦が襲いかかるかというと……
そんなこと、できるわけがないじゃないか?
みんなの意見が大切だ。
僕様のたった一人の意見で行動するなんてとんでもない……
「あのド旧式ドクロ宇宙戦艦に、積極的に平和力を行使しよう!」
みんなの意見が完全一致。全会一致のオール・イエスマンがこの場にそろわないと、あのド旧式ドクロ宇宙戦艦を追うなんて、やっちゃいけない、しちゃいけない!
思考がさまようさまよう。
いろんな理屈がぐるぐるまわって、結局、僕様は何もしないのが現実的に考えたら一番いいんだという、Space Synthesis Systemで圧倒的多数に強く強く支持される、正解というものにたどり着く。
だから、今日も僕様は、Space Synthesis System連合艦隊のモブ突撃艦のなかで、こうしてただのイチ権畜をやっている。




