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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第六部

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僕が絶対に届かない世界へ、逝ってしまった大事なモノ

僕が絶対に届かない世界へ、逝ってしまった大事なモノ




 ドブラックな壺鉤十字つぼかぎじゅうじ壺鉤桜つぼかぎざくら代紋だいもんかかげる戦闘指揮所の循環空気は、静まり返っていた。

 太くて長くてさきっちょがマジでヤヴァイ! バイオレンス極まる刺突衝角しとつしょうかくを抜き去って、ド旧式ドクロ宇宙戦艦はどこぞを目指してブッ飛んでいってしまった……

 メインモニタに映るのは、刺突衝角しとつしょうかくを根本までブチ込んだ艦首のドクロが衝突しょぅとつしたことできざまれた烙印らくいんの真ん中に、無惨むざんな穴がぽっかりと開けられた、かつては僕様ぼくさまの大事な大事な旗艦様だったモノ。

 外装がいそうのほとんどは無事だし、主砲もちゃんとついている。

 甲板上に整列していた、半ズボンにブルマ・スク水姿のリアルロリショタ達も全員生きている。

 いまでも公開通信チャンネルには、半ズボンにブルマ・スク水姿のリアルロリショタ達の、アベンシゾー総統陛下を賛美さんぴする素敵な声が鳴り響いているのに……

 だけど、僕様ぼくさまの大事な大事な旗艦様だったモノの内部は……

 もう僕様では絶対に届かない世界へイカされて、ナカのオクまでドログッチャのメッチャクチャになってしまった。

 双方向そうほうこうの戦闘行為に一切同意などしていない積極的平和主義者達は、不同意戦闘罪によって徹底的に蹂躙じゅうりんされたのだ!

 不同意戦闘という知的生命体道を外れた非道行為ひどうこういなぶられて、たまらず旗艦を脱出した船達は、救命艇も含めて全てもれなくブッ殺された……

 ああ、なんてひどい!

 白旗しろはたあげた救命艇を撃つなんて!

 銀河連合交戦規定ぎんがれんごうこうせんきていに反する、許されざる残虐行為ざんぎゃくこういだぞ!

 圧倒的多数様が積極的に平和力を行使して、ほんのちょっとの少数派を一方的に修正して、この宙域で発生した大変にまずい物事をきれいさっぱり消去する!

 そういう、積極的平和主義を積極的に行使した、平和維持行動を実行するための重要な忖度そんたくだったのだぞ!

 圧倒的多数様の前には、存在意義など微塵みじんもない少数派はだまって死んで、多数が正義の銀河神民民主義ぎんがしんみんみんしゅしゅぎ貢献こうけんするべきだったのだ!

 なのに! なのに! なのに!!

 圧倒的多数様の数%にも満たない少数ごときが、生意気なまいきにも自分の権利を主張して、抵抗ていこうしてきやがったのだ!

 銀河連合交戦規定ぎんがれんごうこうせんきていを無視して、宣戦布告せんせんふこくもなしに歯向はむかってきやがったのだ!

 たがいに殺し合う双方向戦闘そうほうこうせんとうなどという野蛮行為やばんこういに、一切同意していない積極的平和主義者を、奴ら少数派がブッ殺しまくりやがったのだ!

 想定外そうていがいだ! 予想外よそうがいだ!

 前代未聞ぜんだいみもん空前絶後くうぜんぜつご史上空前しじょうくうぜん悪辣非道あくらつひどうたる暴挙ぼうきょ暴虐ぼうぎゃく残虐行為ざんぎゃくこういだ!

 知的生命体道を外れた目をおおいたくなるような外道げどう所業しょぎょうが、圧倒的多数に属する僕様の目の前で実行されたのだ!

 まさか反撃してくるなんて!

 そんなの積極的平和主義への冒涜ぼうとくだ! 平和に対する挑戦だ!

 過半数を超える圧倒的多数様が絶対正義の、銀河神民民主主義ぎんがしんみんみんしゅしゅぎへの凌辱りょうじょくだ!

 てめえらSpace Synthesis Systemの生命体じゃねえッ!

 圧倒的多数様に属する僕様の目の前で、メインモニターに映し出される残虐画像。

 100%純粋まじっりけなしにブッ殺されて、永久保存のフリーズドライ死体になったマニュータ・ロー副総統陛下が、宇宙の果てを目指して気が遠くなるような速度で飛んでいく。

 ああ、もしかしたら……

「我は戦う覚悟を決めている。ゆえに、最後の瞬間まで、艦と我は運命を共にする」

 そういう根性こんじょうのある司令官様なら、まだ生きてナカでがんばっていられたのかもしれない……

 でも、サスキュー銀河を支配するマニュー財閥ざいばつのマニュータ・ロー副総統陛下は、誰よりも早く逃げ出した……

 ド旧式ドクロ宇宙戦艦は、非知的生命体道という外道の道をまっしぐらにひた走り、サスキュー銀河を支配するマニュー財閥ざいばつのマニュータ・ロー副総統陛下をブッ殺し、永久保存のフリーズドライ死体にきっちり仕上げて、宇宙の果てにむかってブッ飛ばした。

 こんな状況に何をどうすれば正解なのか?

 教科書にもマニュアルにも、大自民統一教会党の原理講論げんりこうろんにも、権畜心得十箇条けんちくこころえじゅっかじょうにも書いてない……

 だから僕様には、何が正解なのか、これっぽっちもわからない……

 どうしよう。どうしよう。

 テストの過去問にも出てこない、この危機的状況で、僕様は何をどうすればいいのだろう?

 想定外の予想外……

 こんな時、僕様のかわりに、すっと正解を出してくれる。そういう存在がいればいいのに……

 そうだ。僕様のかわりに答えを出してくれる。そういう存在がいたじゃないか!

 Space Synthesis Systemの艦は、人工知能を載せている。

 圧倒的多数に属する僕様の性癖せいへきにドンピシャな、アンダースコートなんです設定を振りかざしてせまくってくれる、パンモロ幼女萌ようじょもえボイスちゃんが、僕様達の指揮しきをとってくれるかも……

 僕様達の旗艦は、森羅万象絶対浮沈しらんばんしょうぜったいふちんと閣議決定された、最強の抑止力をもつ宇宙戦艦なんだぞ!

 大丈夫だ! パンモロ幼女萌ようじょもえボイスちゃんは、きっとまだ生きている!

 だって、森羅万象宇宙戦艦なんだぞ?! 絶対安全安心の科学的に不沈艦なのだから!!

 事実、森羅万象宇宙戦艦アベンシゾーは、宇宙空間にまだ存在している。

 だから絶対安全安心ダイジョウブ!

 あまりにも希望的に過ぎる、妄想じみた感情に動かされるままに、無線に言葉を投げ続ける。

「Space Synthesis System連合艦隊旗艦、森羅万象宇宙戦艦アベンシゾー応答願います! 旗艦森羅万象宇宙戦艦アベンシゾー応答願います!」 

 旗艦にむけて無線と発光信号で問いかけるが、森羅万象宇宙戦艦アベンシゾーは完全沈黙。

 これはアンダースコートなんですぅ設定を振りかざし、モロチラモロチラせまくる、パンモロ幼女萌ようじょもえボイスちゃんからの応答は一切ない……

 嗚呼ああ……

 死んだ……

 完全に死んだんだ……

 僕様の性癖せいへきにドンピシャな、パンもろチラチラでサイコーなサービスを満面の笑顔で提供ていきょうしてくれる、ロリでえてる素敵なあの子は、メッチャクチャにブッ叩かれてブッつぶされて、公共の場から排除はいじょされて消されたんだ……

 僕様の眼の前で実行された、Space Synthesis System式表現の自由をおかす、非道極ひどうきわまる野蛮やばん残虐ざんぎゃく検閲行為けんえつこうい……

 腹の中に、言いようのない怒りと憎しみが渦巻うずまいた。

 僕様の性癖せいへきにドンピシャな、素敵な女の子を公共の場から排除はいじょした、Space Synthesis System式表現の自由を侵す極悪非道ごくあくひどうのテロリストどもがぁぁぁぁアアアアッ!!!

 でも、でも、でも……

 青い炎を燃えあがらせて、どこかにブッ飛んでいったガチでバチバチなマジモンの極悪非道なドクロ宇宙戦艦に、僕様が乗る突撃艦が襲いかかるかというと……

 そんなこと、できるわけがないじゃないか?

 みんなの意見が大切だ。

 僕様のたった一人の意見で行動するなんてとんでもない……

「あのド旧式ドクロ宇宙戦艦に、積極的に平和力を行使しよう!」

 みんなの意見が完全一致かんぜんいっち全会一致ぜんかいいっちのオール・イエスマンがこの場にそろわないと、あのド旧式ドクロ宇宙戦艦を追うなんて、やっちゃいけない、しちゃいけない!

 思考がさまようさまよう。

 いろんな理屈がぐるぐるまわって、結局、僕様は何もしないのが現実的に考えたら一番いいんだという、Space Synthesis Systemで圧倒的多数に強く強く支持される、正解というものにたどり着く。

 だから、今日も僕様は、Space Synthesis System連合艦隊のモブ突撃艦のなかで、こうしてただのイチ権畜をやっている。

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