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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
モッキンバード侵攻作戦

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Pirate Radio Ship The Evil Truth!! Now On Air!!!

Pirate Radio Ship The Evil Truth!! Now On Air!!!



「はじめてこの星で食った飯は魚焼きってやつだった。魚焼きなのに魚を焼いちゃいない不思議な料理で、魚焼きを食わせたダチは、俺が目を白黒させてビビると思っていやがった。ところがだ。俺が育った星にも似たような不思議な料理があってさ。俺はなんだか懐かしい気持ちになっただけだった。驚かせようとしたヤツは、さぞかし残念な気持ちだったろうな! はっはっはっはっはっ!」

 アークがヘッドセットに向かって話し、その声はナイン・シックス・ポイント・ナイン96.9銀河標準メガヘルツにのって、モッキンバード星の空を飛んでいく。アークの横に座るサディは、唇をとんがらせてアークの話を聞いている。

「SS艦隊! 本船の背後に集結中! 猛烈な速度で追跡してきます!」

「射撃管制レーダー照射されました!」

 AXEとミーマの状況報告が艦橋に響き渡る。

「クソがぁぁぁ!」

 全力でペダルを床までベタ踏みして、モッキンバード星の重力から、猛追してくるSS艦隊からネガは全力で逃走する。

「反重力装置稼働率100%。メインエンジン出力安定。機関室より異常の報告なし。このまま加速して、この星の重力をふりきれます」

 タッヤの冷静な計器読み。

「モッキンバードタウンまで数分。この船にむかって主砲をぶちかましたら首都にドカン! もあり得るわけで。射撃管制レーダーは無視でいいよね?」

 サディがつまらなそうに、武器管制盤に両肘をついたお手々の上にあごをのせてつぶやく。

 アークはサディにうなづき、ヘッドセットマイクに話し続ける。



 その後は、腹に虫がわくんじゃないかと思うくらい、モッキンバードシーの幸ってやつを食わせてもらったよ。俺の生まれ故郷も魚をナマで食う星でな。銀河を渡る長い旅の中で、ひさしぶりにナマ魚ってヤツを食えて俺は本当に嬉しかったよ! またいつか、この星に戻ってくる日には、今度は本当に腹に虫がわくまでナマ魚を食ってやりたいところだよ。

 この星はいい星だ。海があって山があって、うまい食い物があって、モッキンバードの街は猥雑と雑踏でざわめている。Space synthesis systemに組み込まれて、synthetic streamに合流して、なにもかもひとつになっちまうにはもったいないと俺は思った。 

 俺は、だよ。君がどう思うかはわからない。だけど、これだけは覚えていて欲しい。モッキンバードはモッキンバードなんじゃないのか?

 Space synthesis systemに組み込まれて、Space synthesis systemのモッキンバード州になっちまうのはもったいない。俺はそう思ったね。

 君がどう思うかはわからない。君がどう思おうと勝手なように、俺も勝手にそう思っただけさ。たった七日間、この星にお邪魔したお邪魔野郎が適当なことを、君の思考を邪魔するために何か言っていると思って聞いてくれればいい。だけど、たった七日間の海賊放送を聞いた君は、やっぱりいろんな勝手なことを考えたんじゃないか?

 SNSは大荒れに荒れていたよな。俺はみてるよ。君の言葉を。けれど、悲しいかな、俺はアークの海賊放送公式アカウントなんて持てないわけで。だから俺はこうして海賊放送をやるだけだ。そして、君にもっといろんなことを考えて、君が思うことを口にしてほしい。

 君だって何か言いたいことあるだろう? 俺はそうであって欲しいと願っている。このどこまでも広がる宇宙という海に浮かぶ星々は、様々で好き好きに自由勝手気ままで、だけど誰かを侵さない範囲において、究極に自由であるべきだと俺は考えている。

 宇宙が勝手気ままな自由な星々の海であるために、君はSpace synthesis systemに忖度も萎縮もすることなく、言いたいことを言える世界であるべきだと俺は思っている。

 ねえ、君はどう思う?

 またいつか、俺はこの星に帰ってくる。そして、君の話を聞いてみたい。もしも君が声をあげられない世界になってしまっているのなら、君のかわりに俺が好き勝手なことを言うよ。


 

 ビッグウエスト・セブンフリート司令が座乗する旗艦アイワオの艦橋では、艦隊司令ヘル・イカス部長中将が歯ぎしりしていた。

「所属不明の宇宙戦艦弐番艦、モッキンバードタウンに接近中です」

 弐番艦? ふざけるな。間違いなく平定したと発表したあの艦だろうが。

 イカスは拳をぎゅっと握る。

「もう数分でモッキンバードタウン上空に侵入します」

 さらなる報告にいらだちがさらにつのる。セブンフリート最大戦速をもってしても、あの艦にはまったくもって追いつけなかった。

 懐かしいレトロな未来感漂うデザインのあの艦は、とにかくやたらと意味不明なまでに逃げ足が速過ぎる。銀河レベルで考えても、あそこまで逃げ足の速い艦は他にいないだろう。

 いったいどんな機関と操縦士を?

 怒りにたぎる脳に、冷静な疑問がわく。

「射撃レーダー照射にもまったく動じません」

 さらなる報告に、ああ、そうだろよと、イカスは思う。

 やつらはいつも首都を背にしている。さすがに首都の上空に主砲をぶっ放すわけにはいかない。相手だってそれぐらいのことはわかっている。やつらの背後に首都がない位置をとりたいが……。とにかくやつらは銀河一早い逃げ足で飛んでいく。

 では? どうすれば?

 司令の脳は最大出力で回転し続けオーバーヒートしそうで、顔はもうずっと真っ赤だ。

「司令! Space synthesis system中枢閣より入電です!」

 部下の報告に、赤熱し回転する脳がさらに熱くなる!

「このクソ忙しい時に、中枢がなんだというんだ!」

 思わず叫んだイカスに、部下が飛び上がる。

「Space synthesis system中枢閣、森羅万象絶対無謬総裁総理総合枢軸統一元帥総統陛下から……入電です……」

 真っ青になった部下からの言葉に、イカスの表情が真っ赤から激怒に染まった赤黒いものへと変わる。

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