危険なサディの冴えた殺りかた
危険なサディの冴えた殺りかた
猫耳ついた銀髪きらめく頭のナカにいる、異次元に美形で吐息多めのイケボなアークに、ちびるくらいにめっちゃ素敵な女と、褒めちぎられたサディ戦闘要員。アークが絶賛する牙みたいにとがった犬歯をむきだして、サディはぐるぐる思考を巡らせる。
数字でしか物事を考えられない数勘定の話なら、ロリショタもろともアベンシゾーをブチ抜いて終わらせるのが、コスパもタイパも1番いいんだってわかってる。
生まれた時から狂ったカルト思想に浸けられジャッブジャブに洗われて、お国のために死ぬことが理想なんだって教え込まれちまったロリとショタ。
腐った権力者様がブックブクブク太るお国のために死ぬことこそが、美しいことなんだって仕込まれちまったロリとショタ。
お国のためだなんて言っても本当は……
前線に出てこないクッソデブどもを守るために、ひたすら犬死にする捨て石なのに……
お国のために死んだって……
御大層な予算はジャブジャブにつけるけど、超大手広告代理店に受注させて、ピンピンハネハネ中身ヌキヌキにキックバックして裏金ザクザクで身内ブクブクの果てに、信じられないような二束三文の不当価格で町工場に仕事を出した、ぺッかぺかの安物勲章が、残された家族にブラック大和の置き配で届くだけなのに……
でも、それがもっとも尊く美しくて勇ましいことなんだって、あの子達はずっとずっと教え込まれちまってる。
もしも、いい方法があって、大宇宙のクソの素スペースバトルシットからロリショタ達を救い出せても、狂ったカルト思想が抜けるとは限らない……
森羅万象宇宙戦艦アベンシゾーを沈めたあたし達をテロリストだと信じきったまま、死ぬ最後の瞬間まであたし達を憎み続けるのかもしれない……
生き残ったロリショタ達の中には、あたし達を生涯追い続ける復讐の鬼に育つコだっているだろう……
犯され奪われ搾取され、古くなったらポイされる運命だったあたしが、逆襲の女のコになったようにさ……
じゃあ、無邪気にありがとうございますを万回ご唱和し続ける、学校指定の性的カッコをさせられたロリショタもろとも、スペースバトルシット・アベンシゾーをブチ抜いて沈めるの?
だって、小さい時から、カルトの世界だけしか知らないあの子達に、未来なんか……
ううん。そんなことないよ。
昔のあたしと同じ境遇にいるあのコ達にだって、未来はあるんだ。
大人によって未来を閉ざされ、経済的に未来を閉ざされ、誤った教育によって未来を閉ざされた、学校指定の性的なカッコをさせられたロリショタ達は、昔のあたしみたいなもの。
かつて、手を出したらガチで違法なマジモンのロリだったあたし。学校指定の白いパンツと白いソックス履いていた、まだ何もしらない女児だった頃のあたし。
サディの記憶が、遥か彼方の昔へとブッ飛んで、まだアークと出会っていなかった頃のことを思い出す。
synthetic streamで暮らす銀河臣民の国民病、カロー病にかかったお父さんがあっという間に死んじゃって、たった一人になったお母さん。
あたしをやしなうために必死で働き続けたけど……
様々な税金を搾り取られて、さらにインポイスで収入からガッツリもっていかれて、インポイスの処理にめっちゃ手間をとられて時間を奪われ、消費税がさらにそこからイチ割もっていって、電気と水と少しのごはんを買ったら、後にはもうなにも残らなかった。
だから、お母さんとあたしはロクに食事もとれなくて、めっちゃ儚い身体になっちゃって……
リアルロリだった頃のあたしには、ちっちゃなお手々に職なんてあるわけなくて……
そう遠くない未来に、ジャニータウンの北側にある事務所で、イチ日中ソーセージを食わされる臭いミルク搾りの仕事につくことくらいしか、あたしには残されていなかった。
それが、手を出したらガチで違法なリアルロリだった頃のこと。学校指定の真っ白いパンツと真っ白いソックス履いたあたしに、約束されていたのは真っ黒い未来だけ。
あの頃あたしは、synthetic streamにもんで吸われて食い物にされるだけの、本当に幼い女児だった。
お母さんが引っかかっちまった変な第二お父さんに、もうじきあたしは突っ込まれ、ジャニータウンの北側事務所送りになって、時が過ぎて古くなったからポイされて……
あたしのたったひとつの生涯を、社会の名を騙るsynthetic streamに徹底的に利用し尽くされ搾取されて、最後は全部自己責任だよと見捨てられる。
それがたったひとつの現実で、あたしの未来と将来だと思っていた頃……
突然、空から降ってきた、ガチでバチバチな巨大なドクロ。
「君には無限の可能性があるんだ!」
そんなあり得ないようなことを本気で言う、大ホラ吹きみたいなマジモンのガチ野郎。
あたしの記憶が、アークと出会った奇妙な喫茶店へと飛んでいく。
クッソ怪しい流れ者風の男におごってもらった、おっきなパッフェ。おっきなパッフェを食べおえたら甘い言葉をささやかれ、あたしはお持ち帰りされて船でヤラレて、それをお代に船に乗せてもらおうと思っていたのに、奇妙な喫茶店のボックス席にあたしを残して
「じゃあな。またいつか、ここではないどこかで」
そう言ってゼニーをおいて、店を出ていこうとしたあいつの背中。
あの頃からあいつがずーっと着てる、ゴッツい濃紺のミリタリージャケットの背にメタルプレートとリベットで刻まれた、邪悪なる真実という言葉。
嘘みたいな言葉を背負って歩いていく背中に、リアルロリだったあたしは何もかもを賭けてしまった。
あたしの記憶がつぎつぎに、あふれだして流れ出す。
「船長! 期待の新入りがきましたぜ!」
ピクリともしやしないパンダ船長に紹介されて、なんじゃこりゃあ? と思った初日。
「お嬢さん。なれない寝床で眠れないかもしれないからな、特別にしばらくこいつを貸してやる」
アークがそう言って、いまでもアークの部屋に置いてあるパンダのぬいぐるみを手わたされた最初の夜。
起きたらアークが、ゴッツくてクソ重たい鉄のフライパンでモーニングを作ってくれていて……
あたしナニも突っ込まれていないのに、なんか突っ込まれた後みたいじゃん! と思った翌朝。
通常の二倍以上の量があるモーニングを食べ終えて、後片付けをしようと思ったら……
「料理以外はぜんぶ、こちらのメタル野郎殿に任せてる」
ギンギラメタルボディのロボットが、皿もマグカップも片付けてくれちゃう!
あたし上級銀河神民みたいじゃん! と思ったこと。
あの頃あたしはジュウゾウを、執事さんって呼んでたなんてことを思い出す。
そしてパンダ船長とアークと、様々な銀河と星をめぐった日々のこと。
イービル・トゥルース号の邪道場で、アークと過ごした日々のこと。
殴る蹴るどつくの暴行! そしてえいっ! と抱きついて押し倒す!
もしもあたしが押し倒されちゃった時には、下からぎゅーして失神させてあげるんだ。
はじめてアークに足を極められたこと、はじめてアークを殴ったこと、蹴ったこと。抱きつかれて押し倒されて、下から思いっきりギューッと絞めあげた時のこと。あたしが思いっきりぎゅーしまくって、アークの意識がとんでピクリともしなくなり、あたしはアークをあの世にイカセちまったのかと、怖くなった時のこと……
あたしじゃ絶対勝てないはずのアークが、軽く一発蹴っただけで邪道場のマットにうずくまり、あんよの間をおさえて青い顔してダラッダラと変な汗を流していたあの光景を、あたしは今でも思い出す。
めっちゃ体重軽い女のコでも、一撃必殺は本当にできるんだ!
あの時あたしは、自分のおナカのオクに隠されていた、無限の可能性ってやつに気がついた。
蹴って殴ってつかみ合い、組んずほぐれつ攻守交代であんなことやこんなこと。最後は極めてぎゅーっと絞めあげて……
ありとあらゆるヤリ方を、アークとあたしは邪道場でやりあって、互いに開発しまくった。
互いの肌をマットのうえで初めて合わせた時から、あっという間に時は流れて……
あたしに突っ込んでも合法になった頃から、あたしはいいよとめっちゃ匂わせてあげているのに、いまだあいつに一回もヤラれていない。
めっちゃイケメン (にサディがみえているだけで、現実は違う)、マジイケボ! (そうサディに聞こえているだけで、現実は違う)
あたしとあんたはナニのひとつもしちゃいないのに、あたしのお耳のお穴からあんたの赤ん坊が出てきちゃう! (つまりは、アークのお声で、サディちゃんはお耳が孕んじゃいますよという意味である)
だからあたしが、あいつにホレちまうのは宇宙の自然!
めっちゃ若い女のコが、あたしを食いなよと御膳みたいに前にいるなら、パクリとイクのが男の必然!
なのにあいつは、全然あたしに手をだしゃしない!
でも、この絶体絶命の危機からあたしがヌルリと抜け出して、ロリショタ達の大事な生命を救って、大宇宙のクソの素スペースバトルシット・アベンシゾーをきっちり沈めたら……
「サディ! さすが俺の見込んだ女だぜ!」
あいつがお目々をギラギラと輝かせ、ガマンもなにもきかなくなって、あたしにガンガンズブリと迫ってくるのが目に浮かぶ!
あいつはあたしに、もっと夢中!
かつてあたしを徹底的に搾取しようとした、社会の名を騙るsynthetic streamに告ぐ!
愛しい男と明後日のデートを約束したうえに、愛しい男に吐息多めで褒められて、本気になった女のコをなめるなよッ!
一般知的生命体を家畜のように扱う、社会の名を騙るsynthetic streamのド偉いミスターホワイトカラーども!
あたしは今からてめえらをブッ飛ばして、ロリショタ達を救うぞぉぉぉぉッ!
synthetic streamに未来をめちゃくちゃにされちまったロリショタに、危ないお姉ちゃんから素敵な未来をプレゼントだよッ!
「俺も君も家畜なんかじゃねえぞ!」
嘘みたいな本当をガンガンにアークが話す海賊放送船に乗ったあたしは、いまここにたどり着いた!
synthetic stream!! あたしは帰ってきた! 逆襲のサディとなって!
サディの意識が、アイアンブルーとガンメタルグレイで構成された艦橋の最前列、武器管制席へと戻ってくる。
イービル・トゥルース号を建造しようとしたら、いったいどれだけのゼニーがかかるかわからない。たった一隻でsynthetic streamに対抗し得る、驚愕驚異の宇宙戦艦の引き金を、あたしは今握ってる!
みた! 撃った! ドカンと沈めた! 数勘定ではタイパもコスパも、それが一番いいってわかってる。
でも、たったひとつの冴えた殺りかたってことに、素敵な銀髪きらめくあたしの頭は、ぎゅうぎゅうに縛りあげられていたのかもしれない!
あたしはできる! ここまできたんだ! あたしには絶対にできる! ロリショタ達を救って、イービル・トゥルース号も救うことが、あたしにはできる!
主砲照準器の中で交差する大腿骨の中心に、学校指定の性的なカッコで身を包んだロリショタ並べた、常軌を逸したどころではない異常極まるドデカいミスター異様な異次元様が浮かんでる!
覚悟しな! 絶対にブッ飛ばしてブッ壊してやるんだからねッ!
サディの中で、興奮と熱狂が渦巻いて、あらゆる殺し方という可能性の道を駆けていく!
アイアンブルーとガンメタルグレイで構成された艦橋最前列。武器管制席で、主砲照準器にお顔を突っ込んだまま、ビックビクビク猫耳を震わせるサディに、イービル・トゥルース号乗組員の視線が集中していた。
サディが沈黙してから、5銀河標準秒という気の遠くなるような時間がすでに経過している。
ついにサディが主砲照準器からお顔をはずし、巨大なリヴォルヴァーキャノンからお手々を離した。
「そうですよね……。撃てませんよね……。ケツまくって逃げ続け、ギリギリまで砲撃に耐えて……。アークがアベンシゾーの殺処分を完了させるのを、くちばしと歯をくいしばって待つくらいしか……」
タッヤがションボリと、肩を落とす。
「あたしはね。殺るのをあきらめたわけじゃないんだよ」
サディは静かにそう言った。
え? やっぱり殺るんですか!?
タッヤの羽毛が総毛立つ!
「ちょっとぉぉぉ!? ナニはじめるつもりなんですかぁ?」
もう何をどう計算すればわからなくなったタッヤが、バンソロをジャラジャラ振りながら言った。
「一番若くて体重軽い、めっちゃカワイイ女のコが、ヤッヴァイ覚悟をキメたんだ。この船に乗り込んだ、マジで自由なお姉ちゃんにお兄ちゃん、どいつもこいつも覚悟キメてついてきなぁ!」
銀髪きらめく頭上に猫耳をかわいく揺らし、サディはニヤリと笑ってタッヤに返した。
「くそが!?」
サディの通常の三倍以上に不敵な笑みに、ネガは悪態。
「ネガ、あんたは今いるここから一直線に、操縦桿をセンターに入れ続けてバックレまくりなぁ。どこまでもちゃーんとバックレないと、後で危ないお姉ちゃんが、あんたをマジモンの女にしてやるからね? 大事なことだからよーく聞くんだよ、ネガ。はじめて女になる時はね、めっちゃ痛いって相場が決まってんだ。わかったね?」
鮮血みたいに赤い口紅引いたお口から牙みたいに尖った犬歯をみせつけて、サディは銀河イチ逃げ足の速い操縦士にそう言った。
ギラギラにギラつく赤い警告灯みたいな赤い瞳でにらみつけられて、ネガは思った。
大きな声ではいわないが、この女はもう何人も殺してる。
もしももしもの万がイチ、俺がこの女の要求を満足させられない場合……
ふかし、ハッタリ、一切ヌキで、この女が本気で俺をマジモンの女にする可能性は99.89%以上!
ネガの大事な生命が震えあがってヒュンとなる!
「イービル・トゥルース号! 全力逃走ッ! 了解!」
ネガは声高く応答し、イービル・トゥルース号式の拳銃敬礼一発キメて、操縦桿をセンターに入れてスロットル。
アベンシゾー記念小学校のロリショタ並ぶスペースバトルシット・アベンシゾーにむかって、イービル・トゥルース号は突き進む!
「まさか……」
レーダー盤上にぐんぐん迫る、クソでかい光点! 絶対の冷静さを誇るAXEのうなじに流れる、ひとすじの冷たい汗。
この展開は……
「ガチでバチバチな別の暴力手段で、バチボコかつ徹底的にパンパンパンのズコバコと……」
ミーマがゴクリとつばを飲む。
「お嬢さんが博打に出たら、大穴どころじゃ済まないかしれないなぁ」
と機関室直結通信機からコタヌーン。
「バックリ大穴開けて大流血してしまう、痛いヤリかたがあるのかもしれません」
と言ったのはオクタヌーン。
「殺りまくりの危ないお姉ちゃんは、ガンガンガシガシガッツリ殺る気まんまんだよぉ! 船長! なんか文句あるなら今言いなぁ」
メタルケーブルぐるぐる巻きの刑に処されるパンダ船長に、サディは鋭い視線を向けて言った。
ブ厚い硬化テクタイトの先に浮かぶ、スペースバトルシットアベンシゾーをにらみつけ、パンダ船長は無言の同意。
サディがうなづきパンダ船長の意志を確認。そして、イービル・トゥルース号の暴力装置をオーバードライヴさせる、メタル野郎に視線をあわせる。
「昔、あたしの執事さんだったジュウゾウさん。めっちゃ大事な話があるから聞いとくれ」
真っ赤なリンゴみたいな瞳に、血の色みたいな炎を宿して、サディはジュウゾウをみつめてそう言った。




