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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第六部

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大闘争! イービル・トゥルース号!

大闘争! イービル・トゥルース号!




「イーッ! ヤっほぉぉオッ!!」

 真っ赤なリンゴみたいに赤い瞳の女のコが、巨大なリヴォルバーキャノンの引き金をちいさなお手々でひきしぼる!

 synthetic streamを憂鬱ゆううつにする青い閃光が、漆黒しっこくの宇宙空間を切り裂き光跡引いて宇宙最速の速度で翔けていく!

 また一隻、synthetic streamのピンハネ中抜き中身スカスカハリボテ宇宙戦艦が、青い閃光にブチ抜かれる!

 否認ひにんすることのできない極大威力のぶっといエネルギーをおナマで艦のおナカのオクに突っ込まれた宇宙戦艦が、腹を爆裂させてねじくれたメタル臓器と知的生命体の残骸ざんがいをゴミのように撒き散らしてブッ飛んでいく。

「くッそぉがぁぁぁぁッ!」

 今現在いる場所からイービル・トゥルース号を全力逃走させるため、アイアンブルーの床までペダルを踏み込み、操縦桿を右に左に前へ後方へあらゆる角度に倒して、銀河イチ逃げ足の速いネガは奮闘ふんとうする!

 群がるsynthetic stream艦の間を、イービル・トゥルース号は身をくねらせるようにぬって、とにかくすさまじい速度でブッ飛んでいく。

「右舷左舷前方後方、上部下部! あらゆる方向にあらゆる種類のSS艦あり! 艦数多数! 艦影照合を全力で実行していますが、スペースバトルシットアベンシゾーはまだ発見できていません」

 不気味に明滅めいめつする光点に満ちたレーダー盤をまえに、絶対の冷静さをほこるAXEのうなじに冷たい汗が浮く。奥襟おくえりをぐいっとおろすのをやめて、きっちり着付けた着物からちらりとのぞく、AXEのうなじが閃光せんこうに照らされる。

 イービル・トゥルース号に搭載とうさいされたスペック不明の超絶電算機エニグマ・メインフレームがフル回転して、レーダー情報を処理して艦影照合を続けている。それでもまだ、森羅万象のクソの素、スペースバトルシット・アベンシゾーを発見できていない。

 詳細スペック一切不明のエニグマ・メインフレームの計算能力に問題があるのではない。

 あらゆる艦の背後に隠れ潜む。そういう卑怯卑劣劣悪ひきょうひれつれつあくなる森羅万象のクソの素、スペースバトルシットアベンシゾーの行動が、発見をいちぢるしく遅らせている。

 うなじに感じる冷たい汗にAXEが歯ぎしり。

 synthetic stream艦隊旗艦、スペースバトルシット・アベンシゾーの発見は、本当に間に合うのだろうか?

 いま艦橋を飛び出して、エニグマ・メインフレームのケツを蹴っ飛ばしにいきたいくらい。

 でも、そんなことをしたところで、艦影照合が早くなるわけじゃない。

 冷静に、冷静に、AXEは自分を抑え込む。

 ズッガーン! ドッカーン! バッコーン! ズッコーン!

 エネルギー兵器が対抗障壁領域で相殺そうさいされた際に発生した、電磁的衝撃波が船体に干渉して発生する轟音ごうおん

 アイアンブルーとガンメタルグレイで構成された艦橋前面、硬化テクタイト製窓は殺獣怪光線さつじゅうかいこうせんがビカビカ光る地獄絵図じごくえず

左舷被弾さげんひだん! 右舷被弾うげんひだん! 船首被弾せんしゅひだん! 船尾被弾せんびひだん! 甲板被弾かんぱんひだん! 船腹被弾せんぷくひだん! 船橋被弾せんきょうひだん! 前から後ろから、左右と前後に上から下に、とにかく、あらゆるところに突っ込まれてますぅぅぅ!」

 ミーマが氷砂糖のように半透明な顔を凍りつかせて、次々にイービル・トゥルース号の状況を読み上げていく。

「対抗障壁使用率68%! 船体温度著しく上昇中! 補助動力機関による冷却フルドライヴをずっと継続! めッちゃめちゃに食らってはいますけど、いずれも一斉射によるものではありません! まだ! まだこの船は耐えれます!」

 計器類が表示するこの船の余命よめいを、タッヤが次々に読み上げる!

 真っ赤なリンゴみたいに赤い瞳の女のコが撃ちまくる、イービル・トゥルース号の武装をフルドライヴさせる、ギンギラメタルボディな野郎どもに、次々に指示をだしながら、イクト・ジュウゾウは叫ぶ!

「ヨメイセンコクハ、イラネエゾッ!」

「こちら、機関室。全財産を大穴に流し込むように、エニグマ・エンジンはガンガンに燃料を呑んでますぜ。あとどれくらい賭ければいいのかなぁ?」

 機関室と直結された通信機から、コタヌーン機関長のヤヴァイ連絡。

「エニグマ・エンジンの計器類は、すでに全てがレッドゾーンの果てまで振り切れています。いつ限界をむかえて爆発するか……。それとも、限界の果てに沈黙してしまうのかもしれません」

 オクタヌーン機関副長の声は冷静だったが、冷たい現実をアイアンブルーとガンメタルグレイで構成された艦橋に伝えた。

「ちょっとぉぉ〜。アークからの連絡はまだないんですかぁ?」

 この船に残された余命よめいを示す計器類を目の前に、羽毛うもう総毛立そうけだってふるえだすのを必死で抑えこんでいるタッヤが言った。

「あの男から、連絡などないッ!」

 巨大なガトリング砲と巨大なリヴォルバーカノンを両手であやつる、サディが主砲照準機にお顔を突っ込んだまま叫ぶ!

「くそがぁぁあッ!」

 そいつはマジでくそだなとネガは毒づく。

 この船はいったいどうなるのだ!? あんのテキトー極まる無免許もぐりの航海士! 

 あとは頼んだと全部丸投げにしていきやがった!!

 アイアンブルーとガンメタルグレイで構成された艦橋を満たす循環空気が、重苦おもくるしい金属めいた雰囲気に包まれる。

 次々に対抗障壁への被弾を示す情報表示盤から、イービル・トゥルース号の現在状況をミーマが判断開始。


 本船は、公厳警察System Schutzstaffel混成艦隊によって形成された包囲網の一部を崩壊させ、現在、たった一隻による孤軍奮闘こぐんふんとうをもって、この場を徹底的にかき乱しています!

 本船が巻き起こす大騒乱だいそうらんの影響で、シンセティック・ストリームは大混乱だいこんらん

 一般知的生命体が乗る船への大量虐殺実行たいりょうぎゃくさつじっこうまで、シンセティック・ストリームは手が回っていない。

 ザヤカを見る会の会場にいるアベンシゾーの殺処分をアークが成功すれば、忖度そんたくによる一般知的生命体の大量殺戮たいりょうさつりくは実行されない。

 本船にできることは、アークがアベンシゾーを殺処分するまで、沈まずにいることと状況を判断します!


 漆黒のマニキュア映える小さなお手々が引き金を引き絞る!

「十数銀河標準年、シンセティック・ストリームのケツの穴から排出されず、はらわたの中に居座り続けた結果、クソが腐り果てた宿便みたいな、クソオブクソなドクソいミスターキングうんこマンのアベンシゾーを、なんでアークはとっとと始末できないんだよぉッ!」

 また一隻、否認ひにんできないナマの戦争をSS艦にブチ込んで、大破へと追い込んだサディが吠える!

「くそがぁぁッ!」

 アベンシゾーはマジで本物のクソであると、ネガは毒づく!

「てきとー過ぎる、無免許もぐりの航海士〜! まさかぁぁぁ! ニューコンチネンタル・オーダニー号のパーティ会場で、変な女に引っかかってるんじゃねえだろうなぁッ!?」

 連絡ひとつよこさないアークに、怒髪天どはつてんをつくがごとき怒りとともにサディが吠えて、また一隻SS艦をブチ抜く!

「ちょっとお〜。いくらなんでもそれはないんじゃないですかぁ?!」

 こんな状況で変な女に引っかかる。あまりにあり得ない展開てんかいなのだが、あり得ないようなアークだったら、有り得てしまう展開てんかいなのかとタッヤは震える。

「いかに無免許もぐりの航海士とは言えど、さすがにそれはないのではないかと状況を判断したいところですぅ」

 さすがのミーマも、ブラック・レーベル的には変な男にひっかかっているのかもぉ♥ などと思いはするが、実際に言うことはしなかった。

 ズッガーン! ドッカーン! バッコーン! ズッコーン!

 イービル・トゥルース号にむけてはなたれるエネルギー兵器が、対抗障壁領域で相殺そうさいされた際に発生した電磁的衝撃波が、船体に干渉かんしょうして発生する轟音!

 アイアンブルーとガンメタルグレイで構成された艦橋前面、硬化テクタイト製窓は殺獣怪光線さつじゅうかいこうせんがビカビカ光る地獄絵図じごくえず

 不気味な光で明滅めいめつする、アイアンブルーとガンメタルグレイで構成された艦橋。

 流れていく時間が一瞬のように去っていくようであり、同時に永遠にみたいにどろりとにごって居座っているみたいな異様な感覚。

 イービル・トゥルース号に搭載されたエニグマ・メインフレームが全力をあげて、あらゆるデータから大宇宙のクソの素、スペースバトルシットアベンシゾーを探す。

 エニグマ・メインフレームだけではない。AXEまでもが、レーダー盤に表示される情報を自分の目でアベンシゾー級の艦影と照合を行っている。

 これも違う、これも違う、これも違う……

 艦影照合をすれどもすれども、スペースバトルシット・アベンシゾーはみつからない。

 これが圧倒的多数が持つ力なのか?

 たった一隻が圧倒的多数に立ち向かうということは、たかが艦影照合だけでもこんなに不利なことなのか?

 AXEのうなじに走る冷たい汗のいやな感触。

 通常の手段では……、とてもじゃないがこの膨大ぼうだいな数の艦隊から、後方に下がっている旗艦を探し出すことは不可能なんじゃないのか?

 AXEの思考がさまよい出して、視界がぐにゃりと歪む。

 レーダー盤を駆ける視線が一瞬停止。ぼんやりとレーダー盤上をさだまらない視点でみたその時。

 目の前に突きつけられた、あまりにも多すぎる光点が群がる不気味な光景の中に、AXEは感じたことのない奇妙な違和感を感じる。

 なに? この違和感?

 レーダー盤上に踊るあまりにも多すぎる光点達は、もはや不気味に光る謎の雲のようにもみえる。

 不気味さとは違う感じたことのない違和感が、この雲のどこかからやってくる。

 この違和感の正体はなんなのか?

 AXEの中枢神経細胞が高速回転。

 この違和感を感じる部分に、ナニカ明確な違いがある?

 AXEの視線が違和感に引き寄せられるように、レーダー盤を走る。

 そしてAXEは、いままでみたことのない奇妙な光点が、ひとつだけあることに気づいた。

 なに? この奇妙な光点?

 奇妙、その言葉が中枢神経を駆け抜けた時、AXEはひらめいた。

 他の艦の影に隠れはするが、あまりにドデカいミスター宇宙戦艦様だから、前にいる宇宙戦艦に隠れきれずにいるのだと。隠れみのになっている前方の艦と隠れきれていない後方艦の露出部分がレーダーにとらえられ、通常ではありえない艦影として認識されて、それが奇妙な光点となって表示されているのだと。

 なんということか。

 他の艦を盾にして、その影に隠れる。この時点で卑怯卑劣劣等劣悪ひきょうひれつれっとうれつあく姑息極こそくきわまる軟弱貧弱なんじゃくひんじゃく、善悪の区別がつかないお情弱なのに……

 まさか、前にいる艦の背後に隠れきれない状態までもを使って、艦影を偽装ぎそうするところまでやるとは……

 森羅万象のクソの素。その異名いみょうはダテではない。

 自分が逃れるためには、味方を利用し、味方を見捨て、 味方を切り捨て裏切りでもなんでもする。

 でも、それももうおしまい!

「みつけたッ!」

 絶対の冷静をほこるAXEの珍しく怒りに満ちた声が、轟く雷鳴のような被弾音の中で響く!

「マジカッ!?」

 猫耳付きヘッドセットがピクリと動き、猫耳部分とサディのお耳がAXEの声に耳をすませる。

「みつけました! シンセティック・ストリーム艦隊旗艦! 森羅万象バトルシット・アベンシゾーを発見!」

 群がる不気味な光点の群れの中に隠れる奇妙な光点。

 奇妙な光点の一部が、森羅万象のクソの素宇宙戦艦の一部シルエットと一致する。

 ついにイービル・トゥルース号は、大宇宙のクソの素スペースバトルシット・アベンシゾーをとらえたのだ。

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