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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
モッキンバード侵攻作戦

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とにかくずらかれ!

とにかくずらかれ!



「レーダー照射きました! SSに発見されました!」

 ミーマが点灯するレーダー照射警報を告げる。

「レーダーに感あり! 複数のSS艦が動き始めています」

 AXEがレーダー走査画面に点滅する複数の光点を確認する。

「はっはっはっはっ! synthetic streamども、意外と優秀じゃねえか」

 アークがヘッドセットのマイクスイッチをONのまま、海賊放送に高笑いを流しながら言う。

「クソがぁ……」

 アークの横で操縦桿を握りしめるネガがうなる。

「メインエンジン、反重力装置、出力上昇中」

 タッヤが計器類を読んで言う。

「機関長コタヌーン殿。全力でぶん回すぞ!」

 アークが機関室へ伝える。

「この星を飛び出して、そのまんま太陽に突っ込まない程度に回しますわぁ」

 機関室からコタヌーンの通信が返される。

「で、アーク。船長のご英断は?」

 迫りくるSS艦に、真っ赤なリンゴみたいに赤い瞳をギラつかせてサディが問う。

「ぱふぉっ!」

 艦長席に座るパンダ船長は、微動だにすることなく力強くそう言った。

「とにかくズラかれ! 船長はそう言った」

 アークがパンダ船長の言葉を即時翻訳。

「イービル・トゥルース号、全力逃走! 了解ッ!」

 パンダ船長を上回る力強さでネガが叫ぶ。

「くそがぁぁぁ!」

 ネガがスロットルを床までベタ踏む!

 艦橋の背後、イービル・トゥルース号の船尾で、理解不能の出力を叩き出すエニグマエンジンがフルパワーの咆哮をあげる!

 エニグマエンジンの生み出す強大な熱量によって一瞬で蒸発した海水が、強烈な水蒸気爆発を生み出しイービル・トゥルース号を空へと押し出す。船尾からの強烈な推力に、急激に船体を空に向かって上昇傾斜させるイービル・トゥルース号の船首が海中からすべて現れ、大量の海水がドクロから流れ落ちていく。

 背後で発生した強烈な水蒸気爆発が吹き飛ばした大量の海水が雨となって、艦橋前面の硬化テクタイト製の窓に土砂降りとなって降り注ぎ、空に輝くモッキンバード星の月が放つ月光にきらきらと輝く。

 艦橋の各所で明滅するRADIO・EVIL TRUTH NOW ON AIR!!の赤い文字。

「LIVE実況で宇宙へかえるぞ! 海賊放送船イービル・トゥルース号発進!!」

 アークがヘッドセットマイクに叫び、イービル・トゥルース号の巨体が海面を離れ、ついに空へと飛翔を開始する。



「System Self-Defense Force SSF支援迎撃隊へ告ぐ!! 緊急発進! 緊急発進! 完全に平定された所属不明戦艦の同型艦が出現した! 繰り返す! System Self-Defense Force SSF支援迎撃隊へ告ぐ! 緊急発進! 緊急発進! これは訓練ではないが戦争でもない! 繰り返す! これは訓練ではないが戦争でもない!」

「あのマ(以下略)ついに現れやがったな!!!!!!!」

 ヘル・ツゲルは手をつけようとした夕食を一口も口にすることなく、飛び上がるように立ち上がり、支援迎撃機に向かって走り出す。



 ビッグウエスト海洋に展開する、ビッグウエスト海洋第7艦隊、ビッグウエスト・セブンフリートにSpace synthesis systemから緊急入電!

「完全平定を確認した所属不明の宇宙戦艦の同型、弐番艦と思われる宇宙戦艦が現れた。現在、所属不明の宇宙戦艦同型二番艦は、ビッグウエスト海洋を横断し、首都モッキンバードタウンをめざしていると推測される。所属不明の宇宙戦艦ニ番艦の首都侵入を許すな!」

 ビッグウエスト海洋に浮かぶ第7艦隊が核熱ロケットエンジンをぶん回し、イービル・トゥルース号を追うために次々に空へと飛び立って行く。

 宇宙に帰ろうとする者と、宇宙に帰すまいと追うビッグウエスト・セブンフリート。そしてヘル・ツゲルの駆る支援迎撃機がモッキンバードの空を音速を超えて翔ける。イービル・トゥルース号が目指す先には、モッキンバードタウンの中心に超高層建築モッキンバードツリーがそびえ立ち、街中でありとあらゆるラジオが、イービル・トゥルース号からの違法な電波を受信し大騒ぎをはじめている。

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