青い狂戦士
青い狂戦士
ブルーナイトメアのメインモニターに映る、せまりくるニューコンチネンタル・オーダニー号のエアロック。
巨大航宙高級ホテル船ニューコンチネンタル・オーダニー号のエアロック付近には、おやっさんを救うために駆けつけたチバラ銀河仕様の魔改造ヤカラ武装船がすでに押し寄せていた。
しかし……
ニューコンチネンタル・オーダニー号のエアロックは、ヤカラどもの侵入を絶対拒否して固く口を閉ざして開かない。
チバラ銀河仕様魔改造ヤカラ武装船の定番武装、トヤレフ砲を乱射してブチこんではいるが……
エアロックはびくともしない。
クソオブクソのドクソいキングうんこ、アベンシゾーが訪れるような船だけあって、エアロックはエネルギー兵器を相殺するフィールドまで完備している。
エネルギー兵器での破壊は不可能と判断して、旧道会の若い衆が船外活動服に身を包んでエアロックに張り付いて、バールのようなものでエアロックをこじ開けようとするが……
相手は巨大航宙高級ホテル船。そういうヤカラの侵入は当然のごとく想定内とみて、バールのような物で襲いかかられても、エアロックはビクともしない!
「旧道会の若い衆! ここは俺に任せてくれや!」
アークはヘッドセットマイクから、公開通信チャンネルに言葉を放つ!
「その声!? あんた!? 親父が途中で拾った迷子の悪ガキかい?!」
トヤレフ砲を乱射していた、チバラ銀河仕様の魔改造武装船からの応答。
「路頭に迷っている坊やだった俺を拾ってくれた、恩を返しにやってきた! 俺がエアロックをぶち抜く! ちょいと場所をあけてくれい!」
アークから届いた公開通信に、バールのようなブツを持った若い衆と、チバラ銀河仕様の魔改造ヤカラ武装船が場所をあける。
エアロックめがけてブッ飛ぶ、フルメタルジャケット仕様の棺桶がはじけ飛び、内部からハード極まる武装状態のヘヴィ・メタルな青い巨人、ブルーナイトメア・スーパーエクスキューションが現れる。
頭部についた通信用ブレードアンテナは、お蛮行にバンバンはげむ蛮族自慢のモヒカンのごとくビンビンだ! 追加装甲まみれのボディはガチガチにマッチョでマジいかちぃ! あらゆるものをバラす蛮刀背負って、左腕を覆うのはクッソヘヴィな極厚シールド!
それは大宇宙を宇宙戦艦が飛び交い戦う時代にあらわれた、まさかまさかの先祖返り的な野蛮生命体型機動兵器!
「にいちゃん! ずいぶんかっこいいじゃねえかよッ!」
公開通信に響く、旧道会の面々の声!
アークはニヤリと笑い、操縦桿のトリガーに指をかける。
迫りくるニューコンチネンタル・オーダニー号のエアロック、ど真ん中に照準。
ブルーナイトメアが左腕のシールドをエアロックにむけ、アークの指が操縦桿のトリガーを引き絞る!
大宇宙を漂っていた青くペイントされた機動兵器のパーツから、ブルーナイトメアの左腕シールド内に移植した、俺の給料をぶっこんでレストアした秘密兵器。
ヘヴィメタルな青い巨人が、特別仕立ての武装を解き放ツ時がきた!
ブルーナイトメアの左腕シールドに急遽実装された例のヤツ。
驚異的な耐久力と持久力を持つ極厚装甲の内部で、爆裂する爆薬と電磁力によって発生した暴力的な推力によって、ヘヴィでハードなメタルパイルが射出される!
爆薬の爆発音とヘヴィでハードなメタルパイルがエアロックに突き刺さる轟音が、ブルーナイトメアの操縦席を震わせる。
「マジうるせぇぇぇぇッ!!」
サディならそう絶叫したであろう、金属同士の衝突と歪みが生み出す轟音が、ブルータルサウンドとなって操縦席を満たす。だが、アークは表情を変えることも、何か言うこともしなかった。
ブルーナイトメア・スーパーエクスキューションから放たれた、ヘヴィでハードなメタルパイルがブチ抜いたエアロックの穴に、今度は極厚装甲シールドの先端をアークがねじ込む。
真に空なる宇宙空間においては通常、音が伝達されることはない。しかし、いまやニューコンチネンタル・オーダニー号のエアロックとおナマで物理的に接触しているヘヴィメタルな青い巨人には、金属同士がこすれあう不気味な音が聞こえる。
極厚装甲シールドに、ブルーナイトメアの剛腕がそえられる。
支点、力点、作用点!
クソ長い梃子さえあれば、惑星さえもを動かす驚愕驚異の技術。
ブルーナイトメアの極厚装甲シールドが梃子となって青い巨人の力を増幅! 悲鳴のような重金属音をあげながら、ニューコン・チネンタルオーダニーのエアロックがこじあけられていく!
内部から吹き出す循環空気がブルーナイトメアの機体を撫でて風切り音を生み、梃子の力によって無理やり屈服させられてねじまげられる金属達の絶叫が混ざり合う。
無惨に開いた割れ目のおナカに、ヘヴィメタルな青い巨人の手が無遠慮に突っ込まれ、開口部をさらにこじ開け切り裂いて、4銀河標準メートルのメタルボディを、ニューコン・チネンタルオーダニー号内部の華美なエアロックの内部へと導く。
「イービル・トゥルース号へ、ニューコンチネンタル・オーダニー号への侵入を開始した。巨大な宇宙船の内部からでは、ブルーナイトメアの電波出力で船まで通信が届くか怪しい。サディ、船をたのむぞ」
すさまじい爆音が響くイービル・トゥルース号の艦橋から、真っ赤なリンゴみたいな赤い瞳の女の子が発する、了解の声がアークに届く。
「アーク、ブルーナイトメア・スーパーエクスキューション! いくぞ!」
ハードでヘヴィなメタル機体を、ニューコン・チネンタルオーダニーの内部へと、アークは突入させていく。
まじりっけなしの暴力による強制開放を検知した非常警報が鳴り響き、赤い警告灯が明滅するニューコンチネンタル・オーダニー号の内部に、ブルーナイトメア・スーパーエクスキューションは立った。
「迷子のにいちゃん! ありがとよッ!」
ブルーナイトメアがこじあけた開口部に、チバラ銀河仕様の魔改造武装船が突っ込み、船首の格納扉が開放。武装船内部から、これまたチバラ銀河仕様の魔改造武装二輪が次々と吐き出されていく。
おっ勃ったフロントカウル! 鬼のツノみたいに逆立つハンドル! 三人乗れない三段シート! 純白の地に赤い梅干星を描いた船外活動特攻服に身を包んだ旧道会の若い衆が、エアロックの先で窮地におちいっているおやっさんのもとへ我先にと、チバラ銀河仕様の魔改造武装二輪で走っていく。
「殺ったるぞ! おやじぃぃぃッ!」
パラリラパラリラ! ラリパッパ!
土曜日の夜によく聞く珍音を、ニューコンチネンタル・オーダニー号中にまきちらし、早くたどり着きたいのならまっすぐ走ればいいものを、なぜか意味不明な珍奇極まる蛇行を繰り返し、旧道会の若い衆が大珍走を開始する。
「俺は、そーゆーのは嫌いなんだよ」
パラリラパラリラ! ラリパッパ! と珍音をまきちらして走っていく大珍走団の背を、アークは冷たい瞳でチラ見。
海賊放送船イービル・トゥルース号を離れ、たった一人で大量殺戮パーティにやってきた、アークの表情がみたことのないものへと変わる。いつもは危険な青い炎が灯る瞳は、今やどんよりとにごりきり、そこにはもうなんの光もない。海賊放送で好き勝手なことを言い、はっはっはっはと豪快に笑う口は、ぞっとするような声なき不気味な笑みをうかべている。今ブルーナイトメアの操縦席にいるのは、自称海賊放送稼業の無免許もぐりの航海士などではなかった。
「森羅万象クソの素、アベンシゾー。俺はおまえを殺しに来た」
ブルーナイトメアは背負った巨大な蛮刀を抜き放ち、ニューコンチネンタル・オーダニー号の華美なエアロック内に鎮座する、ドBLACKな壺鉤十字を掲げたお召宇宙船の破壊を開始する。
「アベンシゾー。おまえが生きてこの船を出ることはないだろうが、逃げ道はふさいでおくぞ」
お召宇宙船の重要箇所を蛮刀で切刻み破壊して、アベンシゾーの座乗船を使用はできるが、宇宙空間に出ればドンガメ状態にしたてあげる。この破壊状態の船なら、万がイチ宇宙空間に脱出されても、ブルーナイトメアでも追いついてぶっ殺せる。
つまりは、森羅万象のクソを司る大宇宙のクソオブクソ、ミスターキングうんこまんアベンシゾーはクソ袋のナカの疫病ネズミ。もう逃げ出すことのできなくなった疫病ネズミを狩りに、アークはニューコン・チネンタルオーダニーの内部へと侵入を開始する。
「さあてこれから、野蛮生命体が大好きなお祭りが、始まりますよということだ」
アークは操縦席の大型レバースイッチを操作。
ブルーナイトメアの両足が腰の付け根の部分で90度に折れ曲がり、ヘヴィメタルな機動兵器をL字型に変形させる。
つま先からももの付け根までが接地状態となったことで、ブルーナイトメアの全高が半減。そして脚部前面に追加した、無免許もぐりの魔改造野郎が開発したギミックが動作を開始。追加装甲板でもあった脚部前面装甲部分が回転する履帯となって、ニューコンチネンタル・オーダニー号の床を蹂躙しだす。
大量殺戮が行われているパーティ会場に向かって、ブルーナイトメアは履帯を回転させる戦車となって、華美なホテルの回廊を突き進んでいく。
やがて操縦席のメインモニタに、無惨に大破して転がるチバラ銀河仕様の魔改造武装二輪が現れる。真っ赤に染まった船外活動特攻服がズッタボロになって散乱し、ドログチャにねじくれた肉の断片が、豪奢な回廊のあちこちに飛び散っている。
アベンシゾーの防衛にあたる、System Schutzstaffel突撃隊員に殺られたのだろう。だが、アークの表情は何一つ変わることなく、戦車と化したブルーナイトメアで、魔改造ヤカラ武装二輪を踏み潰し、真っ赤な梅干し描かれた船外活動特攻服のヤカラどもの残骸を、さらにひどいドログチャに変えて進んでいく。
「貴様ッ! 一体何者だッ!?」
ニューコン・チネンタルオーダニーの華美な通路を、猛烈な騒音をあげて履帯で蹂躙して爆走するブルーナイトメアに、黒尽くめのSystem Schutzstaffel突撃隊員達が押し寄せて誰何する!
その答えは冷酷だった。
押し寄せる突撃隊員の群れにブルーナイトメアが右腕をふるう。ヘヴィメタルな拳の先からのびたメタルワイヤーが、System Schutzstaffel突撃隊員達をあっけなく両断。
総員もれなく上半身と下半身に分断されて、臓器と血しぶきを撒き散らしくるくると空を舞う肉塊。やがては船内重力によって床に叩きつけられたSystem Schutzstaffel突撃隊員達の残骸を、ブルーナイトメアの履帯が踏み潰し何もかもをたったひとつに統一されたひき肉へと変えていく。
「アベンシゾーを守るなら、一切の容赦はしない」
ニューコンチネンタル・オーダニー号の華美な回廊を、無惨にひきつぶしたドログチャの残骸をまきちらし、機体をかえり血に染めて走るヘヴィメタルな暴力の塊に、System Schutzstaffel突撃隊員達は、絶句してしまって何も対抗できない。
ミーマが予想した、ニューコン・チネンタルオーダニーの内部通路図をみつめながら、アークが駆るブルーナイトメアは突進するたった一機の暴力装置と化して走る。
クソ袋の疫病ネズミとなったアベンシゾーが忖度を求め、部下たちに全ての判断と責任を押し付けて、大量殺戮に走らせたパーティ会場へむかって、たった一機の狂戦士は疾走する。
 




