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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第六部

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ダイジョウブ。コワクナイ

ダイジョウブ。コワクナイ




「SS艦が発砲! ですが、斉射ではありません。各艦がそれぞれバラバラの目標もくひょうを狙っています」

 AXEがみつめるレーダー盤上を切り裂くように、電磁的衝撃波が生み出す光跡こうせきがいくつも走る。

「艦隊による一斉射ではないこと、照準しょうじゅんが本船および一般知的生命体船を狙っていないことから、シンセティック・ストリームは、実体弾の処理を最優先したものと状況を判断しますッ! 一般知的生命体船団が入る射線からSS艦が多数外れていきます! このまま本船がSS艦隊の注意を引き付け続ければ、一般知的生命体船団を守ることは充分可能と状況を判断できそうです!」

 SS艦隊が一般参加の知的生命体を撃つのではなく、イービル・トゥルース号がまき散らした死神達に夢中だと、AXEからわたされた光跡データからミーマが状況判断。

「あたしの読みどおりだよ! シンセティック・ストリームのクソ野郎どもは、とにかくやたらとケツの穴が小さい! モジャモジャに毛が生えた鈍感過どんかんすぎる暗部の心臓を持っているのかもしれないけれど、その大きさは単細胞生物ほどに小さいんだ。とにかく自分の身の安全を第一に奴らは動くんだよ!」

 巨大なリヴォルバーカノンと巨大なガトリング砲の引き金を、両の小さなお手々でガシガシガンガンに引き絞り、あらゆる艦にむかって一撃必殺の力を秘める実体弾を撃ちまくるマシンガン・サディが、猫耳つきヘッドセットマイクに吠えた。

 45口径46銀河標準センチメートル砲が次々に紅蓮ぐれん業火ごうかを吐きだし、船尾副砲が橙色だいだいいろの砲火をまたたかせ、船体各所の小口径パルスレーザー砲が高速で明滅めいめつする銃火をギラギラときらめかせる。

 アイアンブルーとガンメタルグレイで構成された艦橋を揺るがす、主砲発射がうみだす衝撃しょうげき轟音ごうおんが止まらない。

 ブ厚い硬化テクタイト製窓のむこうは、あらゆる暴力装置がどぎつい暴虐色ぼうぎゃくいろにギラつく炎を吐き出し続ける地獄絵図じごくえず

「しかし……。実体弾の残弾がすごい勢いで減っています。このまま実体弾を連射し続け、SS艦隊に処理を続けさせることは……」

 タッヤの目の前にある計器類が、どんどん減っていく実体弾の残弾数を無情むじょうに表示。イービル・トゥルース号の腹にたくわえていた実体弾がみるみる減っていくのを、タッヤは青い顔をしてみつめている。

「ずっと闇雲やみくもにブッ放していたら、なんとかなるとは思っちゃいないさ! 次の手はちゃあーんとあるんだ! 安心して危険なサディお姉ちゃんについておいで!」

 サディが巨大なリヴォルバーカノンと巨大なガトリング砲をブッ放しながら、猫耳つきヘッドセットマイクにがなりはじめる。


 イービル・トゥルース号総員へ! アブナイお姉ちゃんから大事な大事なお話があるよ!

 クソのかたまりみたいな、クソオブクソなドクソいミスターキングうんこ旗艦、アベンシゾーバトルシットがどこに隠れているかは現在不明!

 包囲網艦隊を率いるうんこ大将が乗るバトルシットを、主砲でねらってズドンとはじいて大団円だいだんえん遺影いえいッ!

 これは現状狙げんじょうねらえません!

 本船はこれより、シンセティック・ストリーム包囲網に対して、ガチでバチバチにマジモンのハードな突撃を行います!

 ネチョネチョに粘着質ねんちゃくしつな奴らがウヨウヨしているところを、蹴散らしブッ飛ばしてブチ抜き駆け抜ける!

 そうやって脱出した包囲網の外で、この船お得意の急速反転をぶちかます!!

 包囲網をブチ抜いて何もかもを置き去りにして、てめえだけは助かるんだとケツまくって逃げてくはずの船が、くるりと回ってとってかえしてマジモンの牙をむいて襲いかかるんです!

 包囲網の背後から想定外の強襲奇襲きょうしゅうきしゅうでケツの穴から襲撃しゅうげきされて、徹底的にドログチャに状況をかき乱されたシンセティック・ストリームの阿呆駄郎のケツの穴は、ヒリヒリするどころかパックリ裂けて血みどろのしっちゃかめっちゃか!

 あたしの大暴れでもって巻き起こされた血みどろ大混乱でグッチャグチャなケツの穴が痛くて飛び上がって、現場責任の現場判断による忖度でオタオタ右往左往しているシンセティック・ストリーム。そういう状況の中で、明確な指示をひとつも出せずにデーンとかまえているだけのクソ旗艦をみつけだし、主砲照準にとっ捕まえてブチ抜くんです!

 通常の三倍以上に危険なあたしが本気を出した、常軌を二倍以上にいっしたイカれた殺り方の前では、阿呆駄郎のケツの穴みたいなシンセティック・ストリームは、おちんたまをちぢみあがらせたまま、情けなくブチ込まれてぶっ潰されていくだけってことさ。

 あたし達がいまブッこんでいるのは、勝てないいくさなんかじゃない!

 たった一隻の冴えた船が、図体ずうたいがデカいだけの愚鈍ぐどんな軍隊様を徹底的にコケにする!

 嘘みたいな話だけど本当にできちゃう、マジモンの勝ち目がある戦争です!

 あたしはこれから、今までずっとがまんしてきた恨みと怒りと憎悪を、この船の主砲にたくしてブッ放す!

 あらゆるクソどもを焼き尽くすエネルギーをガンガンガシガシ、マシンガン・サディと呼ばれたあたしがブッ放すよッ!

 ギンギラメタルボディの野郎ども! アッツイどろとろしてるエネルギーが詰まった袋が、カラッケツになるまでハードワークだ!

 もしもカラッケツになって動けなくなったなら、あたしがたかーい電気をエネルギー袋にガンガンに注いであげるよッ!

 艦橋づめの知的生命体勢! ダイジョウブ! 死にゃあしニャアよ! (サディの頭上で猫耳がピクピク動く)

 そして、機関室づめのコタヌーンさん! オクタヌーンさん! エニグマ・エンジンが先にブッ飛んでイッちまわないように、お世話をお願いします!


「ヴーーッ! ガーーッ!」

 船体各所であがる、ヘヴィなメタル野郎どものブルータルな雄叫び!

「タカスギルデンキハ、モウタクサン!」

 と言ったのは、お高過ぎる電気をたっぷりと、サディに注がれたことのあるイクト・ジュウゾウ。

「ちょっとぉぉぉ! これ、本当に死にゃあしねえよで済む話なんですかぁ?!」

 とタッヤが叫び。

「くぅぅぅぅッそぉがぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああッ!」

 とネガ最大級の悪態が追加で炸裂!

「マジで大穴開けるつもりなんだなぁ」

 もしかして飲んでいるのか? そんなことさえ思わせる、この場に及んでガチな緊張感がないコタヌーンの声が、機関室直結通信機から流れる。

「包囲網に、突き刺さってしまうのかもしれません」

 酒をのまないオクタヌーンの声が冷たく響く。

 サディは、いつもの面々の恐怖が艦橋に満ちていくのを全身で感じた。

 まずいね。あたしは危ない女だけど……

 言ってることはわけわかんねーけど、なんだかんだ言って誰も彼もをついてこさせる、アークの意味不明に過ぎる力をあたしはもってない。

 今現在この船の指揮をとるサディの、銀髪きらめく頭上で猫耳がピクピク動き、内部に格納かくのうされた中枢神経細胞が思考をぐるぐる巡らせる。


 こういうマジモンのドンパチに、誰もがあたしみたいに突っ込めるわけじゃない。

 そんなことはよくわかっているつもりだよ。

 あたしとアークはダンチガイのイカレたバカップルであって、他の誰かとは違うんだって。

 今この船に通常の二倍以上に常軌を逸したあいつはいない。

 あたしはこの船をアークから任された。

 だから!

 船とみんなをこの地獄をくぐらせて生かしておくのが、ガチでバチバチなマジモンの戦闘要員!

 通常の三倍以上に危険な女。マシンガン・サディ!

 あたしはそういうことで、飯を食って生きている!

 やるよ! サディ! あたしがいま見ている未来ってヤツを、アークみたいに話すんだ!


 猫耳つきヘッドセットマイクに、サディはがなる。


 オクタヌーンさん! そうです! 突き刺さる覚悟かくごで突っ込んで、奴らの大事なとこをブチ抜くんです!

 現在本船は、シンセティック・ストリームのクソ野郎どもが作り出しつつある包囲網の内側にいます。

 突撃の目的はSS艦を沈めることじゃない。包囲網に穴を開けて包囲網の外に出ること!

 これは絶対に不可能なことなんかじゃない!

 だけど、万がイチのもしかして、包囲網をブチ抜けなかったら?

 あたしにはまだまだ策がある。

 緊急事態が発生! 緊急事態が発生!! あたしの人生に緊急事態が発生!!!

 イービル・トゥルース号は包囲網を突破できない!

 あたしはその緊急事態にどうするか?

 シンセティック・ストリームのお偉いさんが乗っている高そうな艦を、突撃刺突衝角とつげきしとつしょうかくでブチ抜いてあげるのさ!

 やめてやめてと叫んでいるのに、一番大事なところに無理やりに突っ込まれて、メッチャクチャにおナカのオクまでドロッドロのグッチャグチャにかきまわされる。そういう地獄をシンセティック・ストリームのクソ野郎どもに味わわせる。突撃刺突衝角で串刺しにしたお偉いさんとこの船を運命共同体にして、大宇宙中を引きずり回してやるんだよぉ!

 この船を撃ったなら、お偉いさんまで一緒にドッカーン!

 もしももしもの万がイチ、そんなおおやらかしをヤっちまったら……

 後々、徹底的に責任を追求されて、社会的に抹殺まっさつされる行為をヤッちまう度胸が、シンセティック・ストリームのクソ野郎どもにあるわけがない!

 圧倒的多数による完全包囲でよってたかって袋叩きの滅多打めったうちで、少数派を皆殺してつぶす。

 一方的な大量殺戮たいりょうさつりくの果てに、あらゆる責任をポイっと捨てて、知らん顔して生きていくことを想定している腰抜けSS艦ども。

 そういう奴らを、てめえの大事なタマが徹底的に責任を追求されてひきちぎられる、ガチで危ない想定外の状況にあたしがご案内してさしあげる。

 バチバチなマジモンの生き方をしたことがないクソ野郎どもなんざ、ガチでバチバチなモノホンの戦争の前では、クソカスゴミ以下のマッパなフルおちんたま丸出しの無能だってことを、血肉を潰して骨身に叩き込んでやるんだよ!

 どいつもこいつも、しぼんだ御珍砲おちんぽうをうなだれた情けねえ姿で、あたしの前に膝まづきやがれ!

 通常の三倍以上に危険と呼ばれたマシンガン・サディ様の前に、総員マッパで膝まづかせて作った道を、バトルブーツでふみふみ踏んでお弾弾たまたまを砕いて潰して歩いて、堂々とこの宙域を後にする。

 そういうアブナイ結末に、危ないお姉ちゃんが連れて行ってあげるってことさ!

 カピシ?


 タッヤの羽毛が総毛立そうけだつ。

 通常の三倍以上に危険な女とか、常日頃つねひごろから冗談めかして言っているけれど、常軌を二倍以上逸している男と同等かそれ以上に、マジでこのコはガチヤヴァイ!


 絶対の冷静さを誇るAXEのうなじを、冷たい汗がひとすじ流れる。

 かわいいパンダマークが自慢の、ファンシー雑貨貿易船に就職したつもりはもとよりない。

 だけど、こんな大立ち回りはしたくないから、海賊放送船などというマイルドよりな名前の船に乗ったわけでもあって……

 だけどだけど、もっとマイルドな展開がいいとか、いま言ってどうなる状況ではないわけで……

 なにより、こんなドンパチに突入してしまったら、危険極まりないドンパチで食っている、危険なあのコについていくしかない!


 ミーマはごくりとつばを飲む。

 情報分析状況判断士の知識と経験と知恵が弾き出した答えは、この船は危機を乗り越えられるかもしれないと言っている。

 だけどだけど……

 理屈りくつでは勝ち目がある戦いに、リアルでとつるには度胸どきょうが必要。

 いつだって理屈と現実は、そう簡単に握手あくしゅして仲良くなってくれない。

 ガチでバチバチなズコバコに殺りまくりでドログチャのど真ん中を、おしよせるヒダがごとき艦隊の群れを押しのけかきわけ、ガリゴリのガン突きで突きに突いて突っ込んで、おナカのオクの果てまでくぐり抜ける地獄のお蛮行ばんこうがこれから待ち受けているとなれば、ないはずのタマがひゅんとちぢむくらいに私は怖い。

 ブラック・レーベル作品の裏取引で鍛えた私のハートにも、限界点というものはある……

 私の度胸どきょうは持つのだろうか? この戦いが終わるまで……

 怖い。不安なんてものじゃない真っ黒いナニカが、半透明の身体のナカを踊り狂う。

 だけど、だけど……

 腐った組織が続く限り、他人のファックに口を出すクソ野郎が減ることはない!

 他人の言うことなんざ関係なく、愛する者同士が互いが思うがままにファックする!

 甘過ぎてドロッドロでみにくくすらある欲望なのに、それはあまりにもとおとい! それこそが、銀河中の乙女をうるおらす宇宙の愛ッ!

 私は、宇宙の愛のために生きるんだ!

 半透明の両の拳を握りしめてミーマは歯を食いしばる。 

 万がイチのもしかして以上に、マジで死んでしまうかもしれない地獄に、たった一隻の船に宇宙の愛をたくして突っ込むしか未来はないと、私、ミーマ・センクターは状況を判断します!


「くッそがぁぁぁッ!?」

 通常の三倍どころか、戦時下においても三倍以上に危険な赤いオーラをただよわせ、あらゆる砲を撃ちまくるサディの言葉に、ネガは恐怖し激しく毒づいた!

 逃げるんじゃなかったのか!? 全力でバックレるのではなかったのか?!

 あらゆる方向から俺を包囲してくるこの包囲網から、ありったけの力をふりしぼって一生懸命に逃走するのではなかったのか!?

 包囲網に立ち向かう! そんな前向きなことを、この俺ができるわけがないッ!

 だけどだけど、だけど……

 俺はずっとあらゆることから逃げてきた。銀河イチ逃げ足が速いと呼ばれた、自分の逃走本能には絶対の自信があるくらいだ。

 だけど、だけど、だけど……

 いまこの局面で、ただひたすらにバックレるだけでどうにかなるとは、くやしいことにこれっぽっちも思えない。

 だとしたら俺は、アーク以上にデンジャラスなこの女の言う事を聞かないと、マジで死んでしまうかもしれないわけで……

「くっそ、がぁぁぁぁ……」

 ガスマスクの中で涙を流しながら、ネガは操縦桿を握りしめ、スロットルペダルをふみこむ!


「カピスコ。と返しはしますが、お嬢さん。この船が消し飛んで、帰るとこがなくなって、地獄に住み込みの永久労働はごめんですぜぇ」

「それはつまり、全員死亡ということなのかもしれません」

 エニグマ・エンジンのメカニカルでヘヴィーな騒音とメタル野郎どもの雄叫びを背に、コタヌーン機関長とオクタヌーン機関副長の言葉が響く。

 ガンガンガシガシにマシンガンがごとく主砲と副砲とパルスレーザー砲を撃ちまくるサディは、いつもの面々の腹が決まったことを感じ取る。

 いける! イービル・トゥルース号はこの戦争に立ち向かえる!

「ダイジョウブ! 怖くないッ!」

 サディが巨大なリヴォルバーカノンから一瞬離いっしゅんはなした右の小さなお手々で、白骨化したユニコーンが描かれたボタンを叩く。

 ブ厚い硬化テクタイト製窓の先、地獄のように紅蓮ぐれんの炎が渦巻く暴力世界のナカを、凶悪で巨大に過ぎる死のとげがのびていく。

 太くて長くてサキッチョがマジでヤヴァイ! 宇宙海賊が好んで使うクソヤヴァイ暴力装置が、海賊放送船なのについている!

突撃刺突衝角とつげきしとつしょうかくでブッこんで、奴らのぷよんぷよんにぬるいおナカのオクにある大事なトコを、ブチ抜いて殺るんだよぉぉぉッ!」

 船首のドクロから生やした死のとげを、シンセティック・ストリームのクソ野郎どもに向けて、イービル・トゥルース号はケツにアッツイ青い炎をともして、紅蓮ぐれん業火ごうかに包まれた彗星すいせいみたいに突っ込んでいく!

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