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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第六部

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今宵、モロトフ・カクテルで素敵な宴を

今宵、モロトフ・カクテルで素敵な宴を




 巨大モニターに変わったブ厚い硬化テクタイト製窓に映し出される、まさかまさかの大混乱。

「おおおおおっ!?」

 めいいっぱい倒したシートに寝転がっていたアークが飛び起き、珍しく驚きの声をあげる!

「モロトフ・カクテルだッ! 祭りだッ! これは祭りだッ!」

 戦闘要員界隈せんとうよういんかいわいではモロトフ・カクテルと呼ばれる火炎瓶が、壇上だんじょうに投げつけられて炸裂さくれつし、クソの塊のドン真ん中、つまりはクソオブクソ、ドクソいミスターキングうんこマン、アベンシゾーの領域りょういきが大炎上!

 生オイオイスターの載った皿を持ちながら、興奮こうふんしたサディが真紅と漆黒のそでらして小躍こおどりする。

「ちょっとぉぉぉ……。これ、どうなっちゃうんですかぁぁ……」

 タッヤがぶるぶる震えながら、計器類の確認を開始する。

「野蛮生命体が大活躍するにふさわしい、大宴会になってしまいましたね」

 AXEが冷静にプレートを片付け、仮設テーブルに乗る料理達に高分子素材性のカバーをかけていく。

「これは……。想定外のクソヤヴァイ展開に発展する可能性があると、状況を判断します」

 ミーマが高級料理をねらって取り分けるのをやめて、自席にもどり情報表示盤を叩き出す。

「これだけ荒れると、大穴が当たる可能性が高くなってくるなぁ」

 サントソー提供ていきょうのタダ酒を、素早くテーブルの上から避難させつつコタヌーンが言う。

「これだけ荒れると、大穴どころか胴元どうもと破綻はたんしてしまうかもしれません」

 サントソー提供ていきょうのタダ酒を詰めたケースを、オクタヌーンが閉じつつ言う。

「オオアナアタッテ、ゴウカキャクセンガシズムノカッ!」

 タダ酒もタダ飯も口にできないイクト・ジュウゾウは叫び、イービル・トゥルース号の臨戦態勢りんせんたいせいを整えだす。

 勝手に動いた罪で今もメタルケーブルぐるぐる巻の刑に服するパンダ船長は、大混乱で大惨事な大騒動を真っ直ぐにみつめたまま、深い思慮しりょに沈んだまま何も言わなかった。

「この想定外の大騒動の一部始終いちぶしじゅうは、シンセティック・ストリームの住人には絶対に知らされない。ザヤカを見る会とか言うクソヤヴァイパーチーの実態じったいを、俺たちがシンセティック・ストリームの住民に届けるぞ! それが海賊放送船のやりかだ! そんでもってこいつは、クソヤヴァイドンパチがはじまる臭いがプンプンするぜ! 何があっても絶対に生き残るぞ! 総員! ドンパチ用意だ!」

 アークがめいいっぱい倒したシートをバチコーンと起こし、イカツイシートの戦闘用ハーネスがガチンガチンと留めだす。

 普通にシートに座ったアークをみて、サディが手元の皿にまだ残る生オイオイスターを、ペロンごっくんペロンごっくん、銀河最速と言ってい速度ですべてたいらげて、空になった皿をダストシュートにぶちこみ。

「やるぞぉぉぉッ!」

 と両の拳を握って気合を入れて、自席に飛び込み武器管制盤を叩き出す。

 一瞬で場にたちのぼる殺意に満ちた赤いオーラに、ネガはすくみあがりつつ、戦闘用のハーネスをちぢこまる身体に装着しながら

「クソがぁ!」

 と毒づく。

「機関室に急がないとなぁ」

 サントソー提供のタダ酒を詰めこんだケースをかついだコタヌーンが、アイアンブルーとガンメタルグレイで構成された艦橋を飛び出して行く。

「補助動力機関室で、ソフトドリンクを冷やしておくのがいいかもしれません」

 同じくサントソーのソフトドリンクを詰めこんだケースを担いだオクタヌーンが、コタヌーンの背中を追う!

 ガチでバチバチなマジモンのドンパチ態勢たいせいにイービル・トゥルース号が移行するなか、メインモニターとなっているブ厚い硬化テクタイト製窓では、さらなる展開が映し出される。



「自己責任社会における、自助による自力救済を実行するゥゥゥゥゥゥゥゥゥツ!!!!!」

 その叫びは、大混乱のさなかにある会場の空気を切り裂いた!

 そして続くは、聴覚器官をつんざく轟音!

 BA! AAAAAAAAAAA!! NNNNNNNNNNN!!!!!!!

 今度はなんだ?

 いったいなんだこの音は?

 花火か? それとも、何かの事故か?

 平和ボケした総統陛下と、System Schutzstaffelの黒尽くめ隊員たちが、ポカーンと動作を停止する。

 しかし、特にナニカが起きた感じはまるでしない。

 ポカーンとする群衆と、森羅万象をつかさどるくせに、まぬけ面して立ち尽くす危機感ゼロの総統陛下と黒尽くめの仲間達。

「初弾の自助は、外したかぁァァァツ! だが、俺にはまだ次の矢がある! 第二弾! 共助! 発射ァァァァァァツ!」

 自助でダメなら共助! 俺は二段階の自力救済手段を持つ!

 大自民統一教会党の第二総裁、ガース・ヒーデが提唱ていしょうした

「自助! 共助! まずは自分で殺ってね!」

 大自民統一教会党第二総裁、ガース・ヒーデ!! 俺はその言葉を実行するぞ!

 平和ボケしてゆるっゆるな警備を何なく突破し、ザヤカを見る会にもぐりん混んでいた男が、もうひとつの引き金を引く!

 平和ボケしてポカーンと立ち尽くす総統陛下と黒尽くめの仲間たちにむかって、ハートウォーミングどころではない、ドロッドロに熱い私怨しえんをこめて作った、自助共助自力救済じじょきょうじょじりきゅうさいハンドメイド・ダブルバレルショットガンが殺戮さつりくの雄叫びをあげる!

 BA!!! AAAAAAAAAAAAA!!!!! NNNNNNNNNNN!!!!!!!

 自助と名付けられた第イチバレルの次に、共助と名付けられた第二バレルが火を吹いた!

「頼む! 俺が俺の家族を救うために作りあげた自助の力! 俺の家族が堕ちた破滅のかたきを社会は絶対とってくれない! だから俺の力で、俺の家族を救済させてくれぇぇぇ!」

 カルト政党とカルト宗教がくっついたことにより、公的機関が野放しにする絶対無敵のカルト霊感商法。

 情け無用のカルト宗教ご自慢じまんの霊感商法によって、家族を骨のずいまでしゃぶられて、隅々(すみずみ)まで蹂躙じゅうりんされ破壊し尽くされ路頭ろとうに迷い、生涯しょうがいを滅茶苦茶にされた男の絶叫が第二射撃の銃声と合わさり、高級航宙ホテル船のパーティー会場を満たす循環空気を震わせる!

 火を吹く銃口! 飛び出す銃弾!

 ハートウォーミングを通り越し、地獄の温度に熱せられた自力救済の業火から生まれたハンドメイド・ダブルバレルショットガンから、森羅万象を豪語ごうごする男へと、自助の鉛玉の群れが時空を刹那せつなの速さで突進する!

 男の叫びと銃声が、巨大高級航宙ホテル船のパーティ会場の循環空気を震わせ終わり、唖然あぜんとするような余韻よいんだけが残る中……

 我は森羅万象と豪語ごうごする、総統陛下がぐらりと揺れた。

 絶対無謬ぜったいむびゅう豪語ごうごする、総統陛下が片膝をつく。

 その光景は、自助と共助という名の二本の銃身を持つ、ハンドメイド・ショットガンを握る男の心に、天上に昇るような晴れやかな正義の快楽を生み出した!

「当たった! 成った! 俺自身の自助による、自力救済が! 社会がまったく取り締まらない、巨大な悪のカルト組織の総統を討って、天誅てんちゅうをくだして宇宙に平和をもたらしたのだ!」 

 我は森羅万象をつかさどると豪語ごうごする男の体内に飛び込んだ鉛玉は、製作された時にたっぷり注ぎ込まれた憎悪ぞうおに比例する破壊力で、アベンシゾーの体内を駆け巡り、すべての臓器をドログチャの無意味な肉の残骸ざんがいへと変える。体内に体液を循環させる循環器官がブチ破られて、体液の送出を即時停止。圧倒的多数を維持するカルト勢力の、暗部の心臓であるアベンシゾーは冷温停止れいおんていし

 カルト宗教によって家族と自身の生涯しょうがいを滅茶苦茶にされた、ネットにウヨウヨいる情弱の一人がついに具体的になにかをなそうと立ち上がり、悪の総統を自助ではじいて自利救済じりききゅうさいをなして解決!!

 もしもこの世界が、国家の重大時には神風が吹いて、国益こくえきそこなう悪を綺麗きれいさっぱり殺処分して始末してくれるような、ご都合主義で終わる世界だったなら、そういうこともあるのだろう。

 国家の危機に吹いた神風が、悪の総統を殺処分してハイおしまい。悪の総統は殺処分されて、世の中は公正と明るさを取り戻し、新しい希望に満ちた美しい国を取り戻しましたとさ。

 めでたしめでたし。

 さらに遺体は焼いて粉にしてガラス固化体でぎっちり固めて、さらにはオーバーパックと呼ばれるフルメタルジャケットに詰め込まれ、地下450メートルの深さに存在する安定地盤に地下埋設処分されて、以後数万年の期間にわたりアベンシゾーの復活を絶対阻止しつつ、知的生命体から完全に隔離する。

 つまりは、国賊封印葬儀こくぞくふういんそうぎ、略称・国葬儀こくそうぎをやって、世の中はお祭り騒ぎで景気もアップ!

 あー、あいつはとんでもないクソの塊でしたなぁ! と国賊封印葬儀こくぞくふういんそうぎにやってくる様々な銀河からの来賓らいひんに、死体利用外交でコスパ最高! ウッハウハ!!

 でも、現実は、そんなご都合主義で終わるような甘いもんじゃない。

「おっと、脚がすべった」

 片膝をついたアベンシゾーはすくっと立ち上がる。

 その光景は、ハンドメイド・ダブルバレルショットガンを放った、ネトウヨネーム・静丘しずおかみっちゃんの心を激しくえぐる。

「バカなッ! 俺の自助共助から吐き出された鉛玉は! 神風となってこの国の暗部の心臓をつらぬいたはずだ! 嘘だ! 嘘だ! 嘘だぁぁぁぁッ!」

 あまりにも過酷な現実に、ネトウヨネーム・静丘みっちゃんこと、ヤマガ・ミタツヤは絶叫した。


 なんということだ! 暗部の心臓が公権力の中心で毒ん毒んと脈打ち、ゆえにあらゆる公的な力が悪に染まり、検察すら悪を不起訴にすることで、もはや自助共助の自力救済でしか、悪を正せなく成ったこの世界!

 俺の自助と共助による自力救済の鉛玉が、暗部の心臓を殺せないのなら、いったい誰が悪をさばくというのか?!

 憲法を歪め、憲法を無視し、法律の枠外で好き放題に暴れまわる、公的権力の中心に脈打つ暗部の心臓を、鉛玉で始末できないとあれば、いったいどうやって俺は自分を救うことができるのか!?

 俺は、ネットにウヨウヨいるお情弱の典型的なお一人様として、誰かに踊らされたまま何も成すことなく終わるのか!?

 ネトウヨネーム・静丘みっちゃんこと、ヤマガ・ミタツヤ……、それが俺の名。

 まるで俺の名が意味するように、何もかも俺は未達で生涯を終えるのか!?

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