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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第六部

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アウト・オブ・コントロール!

アウト・オブ・コントロール!




 桃色の地にダンダラ模様もようが白く染め抜かれた羽織はおりに身を包んだ老人が、邪悪な真実を叫んで群衆かきわけ突破して、ついにアベンシゾーが立つ壇上だんじょうへよじのぼろうと、自身の前に立ちふさがる断崖だんがいがごとく立ちふさがる壁にその手をかける。老人は力をふりしぼり、自身の身体をアベンシゾーのいる壇上だんじょうへとはいあがらせようとする。

 その時……

 あまりの想定外のできごとに凍りついていた空気が、老人が壇上だんじょうい上がろうとしたことでついに破られる!

「反システムだ! 国賊こくぞくだッ!! 日当もらって雇われたテロリストが、パーティにまぎれこんでいたぞッ!!」

 壇上の右方向から黒尽くろづくめのSystem Schutzstaffel隊員達が飛び出してくる。

「総統陛下をお守りしろッ!」

 黒尽くろづくめのSystem Schutzstaffel隊員が、間抜けヅラでぽかーんとしている危機対処能力ゼロの総統陛下をつかんで引きずり、舞台のそでに引き戻そうとする。

 大自民統一教会党のお家芸。絶対不開示ぜったいふかいじ使途不明しとふめいゼニー官房機密費かんぼうきみつひで買われた私兵ども、System Schutzstaffel隊員が、壇上だんじょうい上がろうとする桃色の地に白抜きダンダラ模様もよう羽織姿はおりすがたの老人の手を、激しく軍靴ぐんかで踏みつけ蹴飛ばして、老人を蹴落けおとそうとする。

「国賊がッ! この反Systemが! 自己責任を社会のせいにする、微塵みじんの左翼テロリストがッ!」

 大自民統一教会党の絶対不開示ぜったいふかいじな使途不明ゼニー、官房機密費かんぼうきみつひで買われた私兵達がよってたかって、桃色に白抜きだんだら模様の羽織姿はおりすがたの老人を軍靴ぐんかでもってめった打ちにする。

 それでも、桃色に白抜きだんだら模様の羽織姿はおりすがたの老人は、

「お願いがございます!」

 と叫び続け、Space Synthesis Systemの内部で毒々脈打つ暗部の心臓と呼ぶにふさわしい悪行を列挙れっきょし続ける。

 圧倒的多数にメッタメタに足蹴にされて、這い上がろうとした壇上に続く断崖がごとき壁からついに蹴落とされ、いまや涙まじりとなった老人の声は、それでも騒然となった会場の空気を震わせ続けた。

 想定外の事態に絶句していた会場をぐるぐる回る循環空気が、たったひとりの老人の絶叫によって、正体不明の変化を開始する。

「私達にも、お願いがございます!!!」

 会場のどこかで声があがった。

「私の家族は、高額の壺を銀河臣民統一教会に買わされて、すでに破綻はたん瀬戸際せとぎわです! 大自由神民民主主義党が、なぜ高額の怪しい壺を売りさばく詐欺的カルト宗教と一体となっているのか、説明を求めます!」

 その声は、群衆の中から発せられ、誰が発言したのか明瞭めいりょうではなかった。しかしその声は明確に、巨大高級航宙ホテル船シンジュ・ギョークエン級ニューコンチネンタル・オーダニー号のパーティー会場をぐるぐる回る循環空気の質を、さらにさらに変化させた。

「私の家族は、中小企業に勤めています。ト与太自動車よふとじどうしゃのような大企業に、私達下請けは徹底的に搾り上げられ、まともに生活することもできません!」

「私の子供は、教育を受けるために自衛大学に通わざるを得ません。もっと他の道を選ぶことができる社会であっていいと思います!」

「私の子供は、まともな食事をとるために、System Self-Defense Force SSFに入隊せざるを得ません! これは経済的な事情を利用した徴兵ちょうへいです!」

「アベンシゾー総統陛下と一緒に私は写真に映っているのだから、信用できる商売なのですよ。と言った詐欺師さぎしにだまされて、財産のほとんどを失いました! アベンシゾー総統陛下がなぜ、詐欺師と一緒に写真に映っているのか、説明を求めます!」

「子どもたちが貧困にあえぎ、大人達が不正に手を染め、なんとか生きている社会の中で、あなたたちがどんなパーティーを開いているのか観たくて、数十万ゼニーもするパティー券を買って私はこの会場にもぐりこんだのです! 聞けば招待客はたったの5000ゼニー! ただ酒ただ飯同然の、豪華過ぎる内容についての説明を求めます!」

 巨大高級航宙ホテル船シンジュ・ギョークエン級ニューコンチネンタル・オーダニー号のパーティー会場の各所から、強烈な同調圧力によって発することができなかった声が、今つぎつぎにあがりはじめる。

「空気悪いよ! なにやってんの! おテレビお文化人! 貴様ら〜、会場の空気が悪くなっているじゃないか! もらった甘い汁分の仕事をしろッ!」

 黒尽くめのSystem Schutzstaffel隊員が、巨大高級航宙ホテル船シンジュ・ギョークエン級ニューコンチネンタル・オーダニー号のパーティー会場の各所に散らばる、おテレビお文化人様達に強い叱責しっせきを叩きつける。

 ぽかーんとしていた会場各所のおテレビお文化人様達の瞳に、強い危機感をともなう光が宿る。

 まずいまずいまずい。これはまずい。

 普段はおテレビの中でこういう声からは完全隔離されて、少数派が何も言えない空気を醸成じょうせいすることを不断の努力でもってお仕事してきたわけで……

 おテレビにとっては微塵みじんの少数派の声が、我が身に直接突き刺さるような、おナマのお現場に立ったことのない膝が、がくがく震えてぐらぐら揺れてゲラゲラと笑う笑う。

 おテレビお文化人ってやつは、何もかもを棚上げにして、一方的に空気を作り出すためにいるんだぞ!

 こんなおナマの声がドロドロ渦巻く現場のおナカでは、オクして何も言えないに決まっているだろう!

 だとしても、だとしても!

 我々おテレビお文化人様は、総統陛下に都合のいい空気を作り出すことで飯を食ってきた。

 総統陛下のご都合にあわせたことを言うことで、ずーっとおテレビに出てゼニーを稼いできたのだ。

 ずーーっと続く体制側に、我々おテレビお文化人様は従うことで、おテレビお文化人様たり得て、生活を維持してきたのだ!

 おテレビに生涯出ることなんかできない、無知蒙昧むちもうまいかつ未開で下衆なすぐに世に流されるモブ生命体どもと、我々おテレビお文化人様は違うのだよ!

 よってたかって粉をはたかれキレイキレイに着飾って、Space Synthesis System スゴイスゴイ! のご唱和で、ポップで明るいおテレビに夢中のモブどもを濁流だくりゅうに放り込み、圧倒的多数の流れというものでなびかせる!

 それが、Systemの上位層、銀河神民であるおテレビお文化人様ではないか!

 悪くなってしまったパーティ会場の空気ひとつ、変えれなくてどうする?!

 その高慢こうまんなお感情が、おテレビお文化人様達をふるいたたせた。

「自己責任を、社会のせいにするの、やめてもらっていいですか?」

 論破され王ひろゆきちゃん寝るを運営する、中年男性がぽつりと言った。

 いまだ涙まじりの絶叫を続け、不都合極まる邪悪なる真実をわめき散らす老人を、よってたかって袋叩きの滅多打ちにしながら、黒尽くめのSystem Schutzstaffel隊員達が、空気を作るご唱和を開始する。

「それってあなたの感想ですよね! それってあなたの感想ですよね! 公文書は黒塗り済みか全部破棄、データなんてないんですよ!」

 つぎつぎに降り注ぐ軍靴キックのまっただ中で袋叩きにされる、たった一人の老人はそれでも邪悪な真実を絶叫し続ける。

世迷よまいごと言う老人は老害ですよ! 集団自決して、社会の負担を減らすことに貢献こうけんするべきだと思います!」

 四角と丸で構成された珍奇なメガネをかけた、おテレビお文化御用学者ぶんかごようがくしゃが怪奇的な自説を大開陳だいかいちん

「政治ってのはゼニーがかかるんですよ! 裏金がナントカそんなのは、無能ゆえにゼニーを持たない貧困生命体の遠吠えなんですよ!」

 公金まみれの時代遅れの宇宙船を作る、野菜嫌いのぶくぶく太った富豪豚が叫ぶ叫ぶ!

「野党が官僚かんりょうを吊るし上げたせいで、イチ公務員が自殺したんダッピ! ダメなのは野党ダッピ! 消去法で大自民統一教会党一択なんダッピ!」

 黒サングラスがトレードマークのダメ(X)SNSのインフルエンサーが、フェイクニュースとデマをひたすら叫び続ける。

 だが、すでに声をあげはじめた者達の声は止まらず、大自民統一教会の毒々しい暗部が、次から次に怒声となってあがっていく!

 お願いがございます!!! と声をあげた桃色に白抜きだんだら模様の羽織姿の老人がかき乱した空気は、今や収拾不能しゅうしゅうふのうの状態へ突入している。

 巨大高級航宙ホテル船シンジュ・ギョークエン級ニューコンチネンタル・オーダニー号のパーティー会場は、いまや収束不能しゅうそくふのうなシッチャカメッチャカの大混乱。

 大自民統一教会党の絶対不開示ぜったいふかいじ公的使途不明こうてきしとふめいゼニー、官房機密費かんぼうきみつひで雇われたおテレビお文化人様達とおネットインフルエンサー様達が必死に、いつもの物言えぬ空気に戻そうとひたすらがなる声と、不都合極まる邪悪な真実を口にしだした一般知的生命体達の怒声が入り交じって渦を巻く。

 そんな空気にのせられて、様々な協力関係にはあるが、冷や飯を食わされてきたお反社のお皆様がたの怒りまでもが、ついに爆発した!

「ちょっとアンタ! 選挙に協力して、対立候補をやっつけたのに、ケチってゼニー払わないのを、アンタ、生涯後悔させてやるよッ!」

 その声は!

 船首にヤカラ感200%のドクロマークをかかげる海賊放送船を、自分トコの若い衆と思い込み、ここまで連れてきてしまったおやっさんの声だった!

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