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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第六部

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241/360

マンセー体操第一が終わったら……

マンセー体操第一が終わったら……




 総員〜、右向け〜! 右〜ッ!

 マンセー体操〜! ダイイチー!

 ちゃ〜んちゃらっちゃちゃ、ちゃちゃちゃらちゃ〜♫

 マンセー! マンセー!! また、マンセー!!!

 敵は鬼畜左翼! 撃ちてし止まん! 罵り倒して徹底排除!

 マンセー! マンセー!! また、マンセー!!!

 欲しがらせません一般庶民! 富はすべて上層部!

 マンセー! マンセー!! また、マンセー!!!

 ひと束まとめて搾り上げ、甘い汁は富豪の養分!

 マンセー! マンセー!! また、マンセー!!!

 膨らむ外敵! 思いやりをUnited Skin head of ALLへ注ぎ込め!

 マンセー! マンセー!! また、マンセー!!!

 有事の前に唸る反撃! 飛べ飛べミサイルどこまでも!

 ドカーン! バコーン!! ズッコーん!!!

 炸裂するのは平和力!

 爆散四散散華ばくさんしさんさんげはSpace Synthesis Systemの華!

 イケイケ! どんどん!! どこまでも!!!

 赤信号! みんなでわたれば怖くない!

 イケばわかるさ! その時に!


 手のひらを相手に向けてしまうと、それは降参こうさんの合図だからと、両の手のひらを内側にむけた滑稽こっけいきわまる動作のマンセー体操ダイイチを、ぴっぴっぴっぴと踊るはアベンシゾー総統陛下。

 壇上だんじょうのマンセー体操ダイイチに合わせて、踊り狂う大会場!


 いったんここでイッパツ! シメさせていただきます!

 それでは、お手を拝借はいしゃく

 よーおッ! マンセー!


 ラストのマンセーいっぽん締めの炸裂さくれつに、パーティ会場に熱狂がうずを巻く。


 はあ……、はあ……、はあ……(アベンシゾー、マンセー体操ダイイチをやめ、しばし息を整える)

 ……さて、マンセー体操ダイイチを行ったことで、ようやく場があったまってまいりました。

 この熱狂のただ中で、あらためてお話したいことがあります。

 お反社のお皆様。お宗教関係者のお皆様。普段ふだんから不断ふだん同調圧力どうちょうあつりょくで応援いただけている、テレビお文化人のお皆様がた。

 ここにお集まりの皆さんが生み出してきた、政治に興味を持つなんて思想の強い陰キャがやる痛々しいイキりですよ、という暗黙あんもくの空気のおかげで、大部分の知的生命体は選挙にもいきません。

 仮に選挙に行ったとしても、白票を投じて政治不信を表明ひょうめいしようキャンペーンのおかげで、無効票数は爆あがり。

 開票速報で白票の数がどうだとか、誰ひとり言いもしませんが……

 安心してください。見ちゃいないですよ!

 選挙前の白票キャンペーンにのって白票を投じるような情弱は、選挙の開票速報なんてみもしませんから。

 ゆえに、宗教と政治が一体となった画期的かっきてきな大政党、我が大自民統一教会党は大安泰だいあんたいの圧倒的過半数を常時維持でございます。

 過去には何かの間違いで、圧倒的過半数を割ることもあったりもしたのですが……

 大震災という未曾有みぞうの危機をうまく活用し、徹底的に敵を叩いて叩いてたたきまくり、ちょろっと政権を奪還だっかんすることができました……


 言葉につまったアベンシゾー、あふれ出た涙をそででぐいっとぬぐう。

 演説再開


 失礼いたしました。

 野党に転落した悪夢を思い出すと、今でも涙がこぼれるほど怖いのです。

 あの時代は、本当に我々にとって悪夢のような政権でした……

 ですので我々は、もう二度とそのような悪夢が訪れないように、対策を講じました。

 イシーンズや大国家民衆珉珉主義党だいこっかみんしゅうみんみんしゅぎとう (略称・大国眠眠主党)を用意したのです。

 大自民統一教会がダメならイシーンズ! 大自民統一教会がダメなら大国珉珉主党だいこくみんみんしゅとう

 まさに我々の思う壺!

 安心してください! 全部、大自民統一教会とつながってますよ!

 だから、野党連立による政権交代なんて絶対に起きないんです!

 裏で話をつけた後、派手にプロレスしてみせる!

 だけど結局、政策を通すためにと大自民統一教会党にすり寄って、結果、圧倒的過半数を常時絶対維持できるようになっているんです。

 このようなステルス与党、あるいは大自民統一教会党の補完勢力ほかんせいりょくという仕組みを作るために……我々がどんなに苦労したか……

 宙を斬る改革! 手取りをUP!

 そのような、涙ぐましい不断の広告をひたすらばらまく、ネット宣伝野郎・デマ耕作こうさくを使うことによって、我々は……

 我々は……、悪夢のような民主主義的支配から政権をついに奪還したのちに、政権交代など絶対不可能にしたてあげて、権力を完全掌握かんぜんしょうあくしました。

 あんな人達とかこんな人たちとかを、圧倒的多数でよってたかってフルボッコすることを、大手をふるって謳歌おうかできる世の中にしたのです!

 権力が支配する、いい時代になったもんだぁ! ということです。

 改めて心より感謝を申し上げます。

 そして、もっとも感謝を申し上げないといけないのは、悲願の改憲かいけんをなしたことであります。

 国家の根幹こんかんとは言うまでもなく国家であり、ただの一個の生命体など微塵みじんのようなものでございます。

 されど、その微塵みじんどもが一丸いちがんとなって一束ひとたばとなって、一糸乱いっしみだれぬかたまりとなって国家の存続そんぞくを最優先に考える。

 これが、Space Synthesis Systemのかかげる新しいシステムの形。

 国家やシステムを縛り上げるのではなく、一個の生命体を縛り上げて統制とうせいするものがシンの憲法であり、精強せいきょうかつ屈強くっきょう強大きょうだいな国家を生み出す原動力。つまりは原子の炉であります。

 微塵みじんのような些末さまつにすぎぬ一個の命も、一丸一束いちがんひとたばとなって原子の炉が生み出す炎の中で燃えあがる。

 その炉からしぼり出されたエネルギーこそが、社会と経済を回す原動力となり、我々の富を生み出すのです。

 それこそが、銀河臣民の本当の幸福であり、使命であります。

 天から与えられた使命の前にあっては、一個の生命体の思想信条しそうしんじょうなどというものは些末さまつな問題であり、それらは二次三次にじさんじはるかにしたまわる優先度しか持ちえません。

 シン憲法はシステムを縛るのではなく、微塵みじんのような一個の生命体を一丸一束いちがんひとたばにまとめあげた燃料へと変えて、強い力を生み出す素晴らしいものです。

 かつてのBig Synthetic Empireは一握りの優れた神民によって掌握しょうあくされ、すべての銀河臣民が一丸一束いちがんひとたばの火の玉となって突撃して燃えあがる、由緒正ゆいしょただしき素晴らしいシステムでありました。

 しかし、素晴らしきBig Synthetic Empireは……

 銀河連合軍に対抗し、東亜方面銀河を次々に開放する大義を胸に抱いて大進出を行ったことを非難されて、大宇宙戦争へ引きずり込まれるという、生存権の侵害にさらされてしまったのです!

 あの戦争によって、我らがシステムの主権は大きく侵害され、個人や民衆が主権を持つなどという、悪しき思想に汚された憲法を押し付けられ、美しかったシステムを急速に腐敗させられていったのです!

 まるで悪夢のようだ!

 巨大な組織は、個人より優先されることが正しい。

 だってそうじゃないですか?

 巨大な組織、つまりは国家と、たかが一個の生命体のどちらが大切だなんて、明白なことではないですか?

 たった一人のために、みんながどうこうする必要なんてないんです。

 たったひとりは黙って、みんなの言うことを聞けばいいんです!

 みんなとは誰か? 大自民統一教会党ですよ!

 だって私達は、圧倒的過半数なのですから!

 そんな自明じめい真理しんりの前に、

「社会問題は組織が責任を取れ!」

 などと、さもわかったような屁理屈へりくつをこねる、境界知性きょうかいちせいどもが後を絶ちません。

 いいえ、そんなことはありませんよ。

 組織の問題を、組織の頂点である、森羅万象を司るこの私が責任を取ればいいというものではない。

 組織の問題は、組織を構成する現場の責任。

 簡単に言えば、一個の生命体の生涯におけるチョンボのすべては、つまり自己責任であります。

 だって当たり前じゃないですか?

 自分のケツは自分で拭く。それが矜持きょうじというものです。

 なぜ森羅万象を司るということだけで、私が一個の生命体のケツを拭かないといけないんですか?

 そのようなことは、自己責任を放棄して何もかもを組織のせいにする、境界知性きょうかいちせいしかもたぬ愚鈍ぐどんな左翼どもの典型てんけい

 それこそ悪夢のような思想であります。

 少し話しがそれてしまいました。もっとも大切なことをお話しましょう。

 一番大切なこととは何か?

 今現在、我がシステムは大宇宙的競争にさらされ、となりの北挑戦銀河はミサイルを撃ちまくる危険きわまる敵となっております。さらに北挑戦銀河の後ろ盾たるティナ銀河は今や、怒鳴流怒どなるど・花札様が率ひきいるUnited Skin head of ALL (略称・USA)に歯向かうほどに巨大化している…… 

 この危機的な状態にSpace Synthesis Systemは、緊急事態宣言きんきゅうじたいせんげんなどという生ぬるいものではなく、緊急事態条項きんきゅうじたいじょうこうを発動しました!

 緊急事態なんだぞ! 選挙なんかやっている場合じゃない!

 そんな危機的状況でありますから、戦時中枢閣せんじちゅうすうかくがずーっとずーっと選挙すら行うことができずに、孤軍奮闘こぐんふんとうしているような状況です。

 #アベンシゾー寝ろ! のタグが、あらゆるSNSで沸きたっていいくらいなんですよ!

 そんな危機的状況における、唯一のよりどころとはなにか?

 宗教。宗教ですよ。神を信じるのです。

 何もかも確かではない世の中、神だけは絶対的な存在であり続ける。

 神を信じるのです!

 森羅万象を司るこの私がごとき、全知全能絶対無謬ぜんちぜんのうぜったいむびょうの神を信じるのです!

 神を信じれば、あらゆる屁理屈へりくつに悩まされることもなく、あらゆる心のゆらぎは収まるでしょう。

 あらゆるものを神の名のもとに合流させて、すべてを押し流すのです!

 結果、微塵みじんに過ぎぬ一個の生命体は、あらゆるものが一丸一束いちがんひとたばとなって燃えあがり、強大な力の源となるでしょう!

 ですから! 神を信じることは、絶対的に憲法で保証されなくてはなりません!

 我々、圧倒的過半数である大自民統一教会は、この悲願ひがんを成した!

 大自由神民民主主義党は銀河臣民統一教会とその意志をすり合わせ、押し付けなどではない理想の憲法を、改憲することで成したのです!

 押し付けられた憲法ではなく、宗教的信念によってなされた改憲マンセー!

 信狂の自由マンセー! 

 大宇宙の平和に積極的に貢献こうけんする、銀河臣民統一教会の父なる太陽、フミア・ザヤカ様マンセー!

 母なる月、カンツ・ルッコ様マンセー!

 銀河臣民統一教会をバックにのしあがり、一個の生命体の権利を収奪しゅうだつし、Space Synthesis Systemの実権を完全掌握かんぜんしょうあくした、大自民統一教会党マンセー!

 緊急事態宣言ぽい名前でごまかして、ヌルリとシン憲法に書き加えた、緊急事態条項きんきゅうじたいじょうこうマンセー!

 あらゆる権力を一極に集中させ、選挙などという悠長ゆうちょうでコストのかかる手段を廃した結果、今やビリビリパッパとしびれるように事態じたい侵攻しんこうすることができるのです!

 人権だ! 専守防衛だ! などと言うお花畑を、我々はすべて焼き払って灰にした!

 システムこそが最優先される! 大宇宙の理想を実現した楽園に、いま我々はたどり着いたのです!

 それでは、みなさん、大宇宙戦争の終戦によって銀河連合軍から押し付けられた憲法を廃し、Space Synthesis SystemがかつてのBig Synthetic Empireのような美しいシステムを取り戻したことを祝しましょう!

 さあ! すべてがたったひとつにまとめあげられたことを象徴しょうちょうする、壺鉤十字つぼかぎじゅうじが刻まれたグラスをあなたのお手に!

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