表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
モッキンバード侵攻作戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/362

我が家への帰還

我が家への帰還


 翌日、モッキンバードタウンへの最後のさようならをモッキンバードポートで済ませ、brain distraction号はビッグウエスト海洋へと出港した。

 操舵輪を握るのは寝ぼけたアーク。昨夜のバカ騒ぎの後、アークは街をふらふらしていたようで、半ば眠りながらbrain distraction号を操船するものだから、船は安定性をバッチリ欠いて波間にもまれながら、イービル・トゥルース号との合流地点をめざしていた。

「クソが……」

 安定性をバッチリ欠いた船の挙動に毒づきながら、ネガは上下する水平線をみつめている。

 モッキンバードタウン上陸作戦の時、元気に船上パーティーを繰り広げていた面々は、オクタヌーンを除いて全員二日酔いで怖いほど大人しくなっている。オクタヌーンは休暇中におりをみて確認していたメインエンジンの不可解なデータを思いながら、その謎を抱える船へと帰ることに想いをはせている。

 クルーザーに偽装されたbrain distraction号の貨物エリアには、コタヌーンとタッヤがカードラジオを売りさばいて作った札束と、ミーマが地下組織兄冥土から仕入れたブラック・レーベル物(略称・BL作品)がぎっちぎちに詰まっている。

 アークがつけたラジオからは、96.9銀河標準メガヘルツにのって、再放送のアークの海賊放送が流れてくる。

 潮風と揺れる波。寝ぼけたアークの操船で、brain distraction号はイービル・トゥルース号との合流地点にゆらりゆらりと向かっていく。



「おかえりなさーい」

 イービル・トゥルース号の格納庫にタッヤの声が響く。

「ただいまだ〜」

 brain distraction号から降りてきたアークは、心の底から眠い。という顔をしていた。

「昨夜はお楽しみでしたね?」

 タッヤはまたやったな。という思いを抑えてそう言った。

「うーむ。そうだな。存分にミルクは楽しめた」

 返すアークの言葉に

 ああ、またやったのだな。とタッヤは確信する。

「お昼寝が必要ですね?」

 タッヤが言う。

「お昼寝が必要だ」

 アークはそう言って、自室へと向かっていく。

「昼寝が必要なのは俺だけじゃないがな」

 最後のアークの言葉に、タッヤが視線をbrain distraction号に向ける。

「うううう……」

 二日酔いで真っ青な顔をしたサディが、よろよろと降りてくるところだった。



「ぱふぉっ」

 艦長席に座るパンダ船長の声が、イービル・トゥルース号の艦橋に響く。

 パンダ船長の言葉にこくりとうなづいたアークが、船長の言葉を即時に翻訳。

「メインタンクブロー! 海面に浮上後、本船は再び宇宙をめざして出航する!」

 ……アーク。この船にメインタンクはないんですよ……

 心の中でタッヤはそう言ってから、イービル・トゥルース号の反重力装置の逆転率を落としていく。

「反重力装置逆転率0%。重力バラスト使用率0%。トリム安定。イービル・トゥルース号、浮上します」

 タッヤの声に、艦橋全体にこの星ともお別れか、という空気が流れる。

「お昼寝と思ったが、ガッツリバッチリ寝ちまったからな! 気合い入れて飛び立つぞぉ」

 アークが肩をぐるぐる回し、ぽきぽき音をさせながら言った。

「ふぁ〜」

 その隣で、アークと同じくらいガッツリお昼寝していたサディが、可愛らしくあくびをする。

 艦橋前面、硬化テクタイト製の窓の外を泳ぐ魚達が、どんどん窓の下へと消えていく。

「新鮮なお魚達ともお別れかぁ〜」

 サディの悲壮な声が艦橋に響く。

「まだ食べたりないんですか……」

 最後の夜に、お腹に虫がわくんじゃないかと思うくらい、ナマモノをアークと食べていたのに……

 とAXEは思いながら言う。

「新鮮な魚介類に対しては、私はブラックホールよ」

 サディは後ろの席に座るAXEへ振り返って、ニヤリと笑う。

「引き続きソナーに感なし」

 ミーマは冷静に周囲のSS潜水艦の不在を確認。

「浮上後は頼むぜ。ネガ」

 アークが右隣の操縦士に言う。

「クソがぁ」

 操縦桿を握ったネガは力強く答える。

 ついに艦橋前面の硬化テクタイト製窓に大気の層が現れ、イービル・トゥルース号は海面へと浮上した。

 ビッグウエスト海洋の夜空には、満天の星空とモッキンバード星の月が輝く。そして、この星々が灯る宇宙へと、この船はこれから帰る。

「イービル・トゥルース号、浮上完了」

 ミーマが告げる。

「それでは、いってみますかぁ。メインアンテナ伸長!」

 アークが左の手の平に右の拳を打ち付ける。

「メインアンテナ伸長」

 タッヤは冷静に操作盤のドクロマークを押す。

 イービル・トゥルース号の艦橋背後に、ドクロマークの海賊旗を掲げたブレードアンテナが空へむかって伸びていく。

 ビッグウエスト海洋の夜空に、濃いブルーを背にしたドクロマークの海賊旗が海風にはためく。

「さあて、いったん最終回、いきますか!」

 アークがヘッドセットのマイクスイッチをいれる。

「ナイン・シックス・ポイント・ナイン! 96.9銀河標準メガヘルツ。レディオ・イービル・トゥルース放送開始!」

 操作盤のドクロマークが描かれた赤いボタンを、ミーマがふりあげた拳を打ち下ろしてONにする。

 艦橋に多数設置されたモニター達が、濃いブルーを背にドクロに大腿骨を交差させた海賊旗を表示。RADIO・EVIL TRUTH NOW ON AIR!! の赤い文字が海賊旗の上に踊る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ