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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第六部

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そのスジ! プロフェッショナル仕事の流儀ッ!

そのスジ! プロフェッショナル仕事の流儀ッ!




挨拶アイサツ喧嘩ケンカは先手必勝! 殺る!? アーク!?」

 サディはすでにお顔を主砲照準器に突っ込んで、巨大なリヴォルバーカノンを模した主砲操作桿をお手々で握る。

 そんなサディにアークが言う。


 おいおいおいおい。 落ち着け、サディ。

 まだ射撃レーダーの照射しょうしゃもされてねえ。

 こいつは俺達にとっては、いつもの展開よりだいぶソフトでやさしい状況だ。

 まずは前戯ぜんぎでなめらかーになってから、本番ってやつをおっ始めましょうよ、以前の状況だぜ。

 挨拶はされる前にやっちまえ! の精神で、先にキッツイご挨拶をブチかまし、からっからっのギッスギスを無理やりに開いて突っ込み、ドッバドバドバの大流血で大惨事をこさえなくてもいいんじゃねえのか?


 すでに臨戦態勢りんせんたいせいの赤い瞳のお嬢さんに、アークはのんびりと言った。

「アイサツハ、センテヒッショウダッタノカッ!」

 と言ったのはイクト・ジュウゾウ。

「むむむ?!」

 確かにいつもよりソフトな展開ではあるな? とサディが主砲照準器からお顔をはずす。

「ちょっとぉ。これ、まずいんじゃないですかぁ? こっちはギャラクシー・ヤクザ艦隊に、なぜかお仲間として組み込まれているんですよぉ? 目をつけられちゃうんじゃないですかぁ?」

 タッヤが羽毛うもう毛羽立けばだたせ、ぶるぶる震えながら言った。

 ミーマが情報表示版に緑の瞳を走らせながら話し出す。


 シンセティック・ストリームに対抗し得る、たった一隻の本船の流儀は、集団無視の単独行動。孤高ここうの一隻航海が通常です。

 いつもの気高き態度でたった一隻、アベノカールト名ばかり銀河の中心に向かったら……

 目をつけられるどころではなく、それこそ右向け右のマスゲームを指さしてゲラゲラわらう、しごくまともな知的生命体がごとく注目のまと。

 ですが、今回はどういうわけか本船は、蛮勇ばんゆうあふれる勇気りんりんイキった大勇者様御一行の群れの中。

 本船自慢のドクロも海賊放送旗も、ガラの悪いなんちゃって武装船の群れにまぎれこんでます。

 これは、大気圏からマジで金塊落下級!! 略してタ・マ・キン。

 公厳警察に目をつけられない可能性が、非常に高くなっていると状況を判断します。


 ミーマが冷静に状況を判断。ことはこちらに有利である。と断ずる。

「タシカニ……」

 ふむむん。とサディが巨大なリヴォルバーカノンからお手々を離す。

「ギャラクシー・ヤクザ艦隊。停船命令を無視して、航行速度に変化ありません」

 周囲のヤカラ艦隊が相変わらずイービル・トゥルース号の回りを飛び、一切停船の意志を見せていないことをAXEが報告。

「とは言え、ギャラクシー・ヤクザ艦隊が、シンセティック・ストリームの防衛網を素通りできるとはとても思えない。というのが常識的な状況判断になるのですが……」

 そう言いつつ、ミーマが情報表示盤を緑の瞳でにらみ、この状況をいかに判断するべきか? 中枢神経細胞をフル回転中。

「こいつは万がイチに備えて、エンジンの準備はしておかないとなぁ」

 面倒くさいなぁ……、久しぶりのお仕事は、といった感じで言ったのは、機関室直結通信機の向こうにいるコタヌーン。

「思いがけない休暇きゅうかが、ついに終わりをむかえたのかもしれません」

 と言ったのは、オクタヌーン。



「止まれ! 止まれ! 止まれぇぇッ! 貴様らぁぁ! System権力様のご命令を、いったいなんだと心得こころえてやがるぅぅぅ!?」

 公開通信チャンネルに流れる、公厳警察の端役人ぱやくにんが放つ、横柄おうへいかつ圧倒的あっとうてき圧迫感あっぱくかんを持つ声。

「アンタ! そんなこと言ってるとォ、生涯後悔するよッ!」

 公開通信チャンネルに応答したのは、イービル・トゥルース号を難なく仲間に引き入れてしまった、旧道会のおやっさんの声だった。

「てめえら、たかが銀河臣民どもがぁ! System権力様のご命令に逆らってぇぇえ!? ただで済むと思っているのかぁぁぁ!?」

 本物のギャラクシー・ヤクザに負けぬ、圧倒的なヤカラ感でもって、公厳警察の端役人ぱやくにんボイスが返す。

「アンタ! そんなこと言ってるとォ、本当に生涯後悔するよッ!」

 さらに応答する、ホンマモンのギャラクシー・ヤクザボイス。

「たかがギャラクシー・ヤクザごときがぁぁ? 公厳警察様に逆らうだとぉぉぉ?!」

 さらにさらに横柄おうへいになる、公厳警察の木っ端役人ボイス!

「アンタねェ……。こちとらアベンダチ公なんだよ。難癖なんくせつけるとォ、生涯後悔することになるんだよッ!?」

 次に響いたホンマモンのギャラクシー・ヤクザボイスの声は、さすがそのスジのプロフェッショナル仕事の流儀! という、蛮勇ばんゆうあふれる勇気りんりんな大勇者様の響きをもって、星の海を震わせる電磁振動となって公厳警察をゆっさゆっさと揺さぶった。

「あ……、アベン……ダチ公……だ……と……?!」

 木っ端役人のおちんたまの付け根袋をぎゅっとつかんで液体窒素に突っ込んで、さらに激しくシェイクして差し上げたかのように、急速収縮きゅうそくしゅうしゅうを開始して震えあがって引っ込んで、かたーくなったボイスが響く。

「そうだよ! こちとらアベンダチ公だよ! 森羅万象をつかさどるアベンシゾー様のダチ公に、いつまでも難癖なんくせつけてるとォ、アンタ、生涯後悔することになるよッ!」

 旧道会からの圧倒的に強気な通信に、公開通信チャンネルが沈黙する。

 一秒二秒、そして四秒。……さらに八秒が経過する。

 長く続く沈黙の後に、公開通信チャンネルが蚊の鳴くような声で言う。

「アベンシゾー総統陛下の、お友達だという証拠しょうこを示せ……」



 アイアンブルーとガンメタルグレイで構成された艦橋に響いた、公開通信チャンネルでのヤヴァイやりとり。

「ちょっとぉぉぉ!? めっちゃくちゃに張り合っちゃって、これ、ヤヴァイ流れなんじゃないですかぁ!? 細かいことは存じませんけど、反社の皆様とアベンシゾーがお友達っていうのは、洒落シャレじゃ済まない話なんですけどもぉ!?」

 この先に起きる展開がまったく読めず、いったいどうなることやらの状況に、タッヤの悲鳴までもが響く。

「やっぱり殺る?! アーク!?」

 再び巨大なリヴォルバーカノンをガッシリ握り、引き金に指をかけた赤い瞳の女のコ。

「いや、まだだ。仮にドンパチになっても大混戦。おっぱじまったらケツまくってとっととバックレれば、この船のアシなら先手逃走せんてとうそうの完全勝利で丸儲け。焦ってドバドバ先に出してブッ放し、大流血の大惨事を呼ぶ必要は何もねえ」

 こいつはのんびり、ことの成り行きを観戦しますか、と言った感じで、イカツイシートをガコンとめいいっぱい倒しはじめたアークはそう言った。

「いくらなんでもそれは……、余裕よゆうブッこき過ぎの、舐めプレイが過ぎるのではないかと……」

 すでにシートに寝っ転がったアークに、AXEがまゆをひそめる。

「銀河ヒッチハイクガイドに検索をかけましたが、アベンダチ公がなんなのか……。情報の記載が一切がないため、状況の判断をしようがありません」

 情報操作盤を叩いて情報の精査せいさにつとめ、状況判断を行おうと奮戦ふんせいしていたミーマが、半透明の表情をさらにくもらせる。

「銀河ヒッチハイクガイドにのってないとすると、そんなにたいしたもんじゃないのかもしれないなぁ」

 機関室に直結した通信から、コタヌーン。

「銀河ヒッチハイクガイドにのっていないとすると、ほとんど無害なのかもしれません」

 とは機関室のオクタヌーン。

「ミチノ、ドクカモ、シレネエゾ?!」

 とはイクト・ジュウゾウ。

 未知の毒とはとんでもねえぞ?! と思ったのか

「くそが?!」

 とネガは毒づく。

「最終決戦に挑むラストダンジョンみたいなこんな状況で、ほとんど無害な展開なんてないと思いますけど……」

 レーダー盤上を満たす、群がる光点をみつめながら、AXEは冷静に言った。

 めいいっぱい倒したシートの上に寝転がったアークは、ブ厚い硬化テクタイト製窓の先に広がる星の海に浮かぶ、様々な艦と船をみつめて口を開く。


 一番ヤヴァイ毒ってのは、それが毒だとわからないブツだ。

 おそらくアベンダチ公は、半減期数万年以上のクソオブクソのうんこキングが地下埋設処分された地中から飛び上がって、あまりにも早すぎる社会復帰を実現しちまったくらいにクソミソにクソヤヴァく、社会にとってめっちゃくちゃに有害なはずだ。

 だがな、未知の毒でも、毒は食わなけりゃ皿まで食うことにはならねえわけだ。

 だから、俺達はその毒に、進んでバクリ! と食いつくようなことをしなけりゃいいだけだ。

 大変にご都合のよろしいことに、今回のお相手はおやっさんが引き受けてくれたしな。

 そのスジのプロフェッショナル仕事の流儀! おやっさんがどういうシノギをするのか? 俺はマジでみてみてえ。

 ここはどういう成り行きになるのか? 見守るのが今後のことも含めて得策とくさくだ。

 声の響きからして、公厳警察のおちんたまは縮退しゅくたいしちまった白色矮星はくしょくわいせいみたいにちぢみあがってる。

 ド派手なドンパチおっぱじめて、そのスジのプロフェッショナル仕事の流儀様の暴力に立ち向かう度胸どきょうなんざ、なにもしてねえのにてめえからすっ転ぶ、軟弱なんじゃくのお手本てほんみてえな公厳警察にはねえだろうよ。

 そういうことで、なんとなく以上、確定未満かくていみまんでダイジョブだ。俺達イービル・トゥルース号はデーンとかまえて、様子をみてりゃいいのさ。


 めいいっぱい倒したシートのうえにごろんと寝っ転がって、両手を組んで作った枕にズ太い中枢神経の詰まった頭をのせて、アーク・マーカイザックはそう言った。

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