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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第六部

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イービル・トゥルース号、発見される!

イービル・トゥルース号、発見される!




「アーク! アーク! 起きてください! イービル・トゥルース号は詳細不明しょうさいふめいの勢力に発見されたんです!」

 アークの聴覚器官ちょうかくきかんに響く、AXEの声。

「アーク! いいかげんに起きないと、おちんたま蹴っ飛ばすよッ!」

 これまたバイオレンスの極地を行く、サディの鋭い声が響く響く。

「ああ?」 

 眼の前にでーん! とあった、あまあまマシマシパフェが歪んで消え去り、アイアンブルーに染まるメカニカルな天井が現れる。

「さらに謎の存在から、公開チャンネルによる通信要求です! アーク!」 

 明滅めいめつする公開通信チャンネルの受信マークに、AXEが珍しくあせる。

 ああ……。夢だったか……

 はかなく消え去っていった、素敵なメイドさんとあまあまマシマシパフェの幻影を名残おしんで、アークは思った。

「……つないでくれ」

 アークは寝ぼけたまま、細かいことは考えずにそう言った。

「公開チャンネルに接続します!」

 緊迫きんぱくするミーマの声に、アークはでっかいあくびを返す。

「ふぁぁぁ〜。いいところだったんだがな……」

 めいいっぱい倒したシートから起きあがるアークを横目に、サディの赤い瞳が一瞬ギラつく。

「ちっ。お胸がデッカくお育ちになった女の夢でも、みていたのかねぇ……」

 舌打したうちしてサディは小声でつぶやいたが、その声はアークには届かない。

 しかし、アークを通り越してネガにはサディのつぶやきが届いたのか

「くそがぁッ!」

 とネガは毒づいた。

 アークがのびをして背筋はいきんをのばすなか、ブ厚い硬化テクタイト製窓がモニターに変わり、映像が浮かび上がる。

「旧」

「道」

「会」

 と一文字ずつデカデカと巨大な金縁きんぶちつきの文字が表示された後

「旧道会」

 のひときわデカい金縁文字列きんぶちもじれつが九回点滅した後に消滅。

 浅黒い肌に髪はオールバック。白スーツにサングラスをかけた、いかにもギャラクシーコード・エイト・ナイン・スリー。ハードコアな方面を走るそのスジのお方、といった男がモニターに現れる。

「アンタよぉ、はぐれてんじゃねーゾ?」

 ギャラクシー・ヤクザそのものな風体の男は、モニターの中でそう言った。

「ふぁ?」

 お昼寝中の素敵な夢から目覚めたばかりで、知的生命部分がいまだに半分以上おやすみ状態にあるアークはそう言った。

右舷後方うげんこうほう、かなりの距離から詳細不明の大艦隊が接近中であることを、レーダーがさきほど捕捉ほそく。公開チャンネルの受信電界強度から、おそらくこれが通信相手と推測されます」

 AXEの報告がアークのヘッドセットに入る。

 ふぁ? 詳細不明の大艦隊!?

 AXEの報告に、アークの思考がすこしづつ動き出す。

「暗黒宙域のデブリ帯じゃあ、迷っちまうのも仕方ないけどよォ。会に遅れたらァ、アンタ、生涯後悔しょうがいこうかいするゾ!」

 たたみかけるように続く、ギャラクシー・ヤクザさんの言葉が理解できず、アークの思考がぐるぐる回る。

「ふぁ?!」

「まあ、Space Synthesis System中枢閣大本営。アベンカールト銀河なんて、田舎モンのアンタにとっちゃ大都会の中の大都会、普通なら生涯来る用事もないとこだしなァ。迷っちまうのもしかたねェ。暗黒宙域のデブリ帯に回収し忘れたお宝が眠ってるかもと、デブリの中を漁ってた若い衆に、アンタちゃんとお礼いっときなよォ」

「あんな船やこんな船。それらに、とにかくありもの兵器をかき集めて載せました的な、なんちゃって武装艦で構成された大艦隊です……」

 アークのヘッドセットに、艦影照合を続けているAXEからの追加情報。

「主砲照準、艦隊捕捉かんたいほそく! ケツの副砲と船腹三番四番砲塔なら、いますぐ右舷後方を撃てる! 有効射程の遥か彼方の先だけど、ショボい船なら減らせるよ! 殺る!? アーク!」

 すでに巨大なリヴォルバーカノンの主砲操作桿を握ったサディの声が、アークの聴覚器官を激しく刺激する。

「ちょっとお。これなんなんですかぁ?」

 タッヤのぼやきが艦橋に響く。

「コウタイイキノ、ボウリョクハッテヤツカ?」

 そう言ったのは、イクト・ジュウゾウ。

「暗黒宙域のデブリ帯は、ギャラクシーコード・エイト・ナイン・スリーの定番シノギ、うまうまホワイトパウダー取引の場に選ばれやすい所です。アベノカールト銀河でも、そんな反社の皆様がしっかり存在していて、デブリ帯をご利用なさっている可能性を考えるべきだったと、状況を判断せざるを得ません」

 ミーマが今現在の状況を正確に判断。まさか、synthetic streamの大渦の中心、カルト政党とカルト宗教がくっついた大自民統一教会党の大本営部があるところまで、反社の皆様が存在したうえで、大手をふるって大活躍なされている可能性を考えなかった、自分達の甘さを指摘してき

「ふぁ?」

 アークの思考が覚醒かくせい睡眠すいみん困惑こんわくの間をフラフラさまよう。

「中古宇宙戦艦屋で五万ゼニーくらいで売ってそうな、航宙航行距離10万テラオーバーの前前前世以前ぜんぜんぜんせいぜんの超絶型落ち超格安艦に乗ってるそこの若い衆ゥ。とりあえず俺らのケツについてきなァ。そうすりゃ会までチャンとつけるだろうからよォ」

「ふぁい?」

 ようやく思考が迷走よりの覚醒側かくせいがわに近づいてきたアークが、目の前のモニターに写ったギャラクシー・ヤクザさんに問いを発する。

「遅れんじゃないよ! アンタ! 生涯後悔しょうがいこうかいするゾ!」

 浅黒い肌にオールバック、白スーツとサングラスで決めた、いかにもそのスジのお方の画像がモニターから消える。

「ギャラクシーコード・エイト・ナイン・スリー大艦隊、映像だします」

 ミーマが情報表示盤を叩き、ブ厚い硬化テクタイト製窓に、サディがとらえた主砲照準器からの映像を表示。

 そこには……

 硬化テクタイト製窓に濃厚なスモークを貼った、船体黒塗りの威圧的いあつてきな宇宙戦艦を先頭に、雑多ざった艦艇かんていが群がる謎の大船団が映し出された。



「これ……、どういうことなんでしょうね?」

 レーダー盤中心のイービル・トゥルース号周辺に、群がる光点達をみつめつつAXEが言った。

「どいつもこいつも、あらゆる場所からかきあつめてきた武器で、とにかくとりあえず武装してみましたって艦ばっかだよぉ」

 サディが主砲照準器にお顔を突っ込んで、周囲の武装艦を確認しつつ言う。

「ちょっとぉ〜。これ、なにかの事件に巻き込まれたんじゃないんですかぁ〜?」

 タッヤが情けない声で言う。

「統一性のない艦種に、バッタもんとパチもんだらけの武装、そしてめちゃくちゃな艦隊編成……。およそ正規の暴力装置ではあり得ない、勝手に過ぎる暴力集団にお仲間と勘違いされたと、状況を判断せざるを得ません」

 ミーマが氷砂糖のような半透明のお顔の眉をひそめて言う。

「ソウサレイジョウヲ、ダシヤガレッ!」

 と言ったのはイクト・ジュウゾウ。

「んんんー? どういう理由かまったくもってわからんが、こいつら全員アベンカールト名ばかり銀河の中心に向かって飛んでるのに、なんのおとがめもないみたいだからな。いいんじゃねえか? お仲間と勘違いされたまま、このまま寄せ集めの武装艦達にまぎれて、アベンカールト銀河のド真ん中までいきゃあ?」

 アークがあくびをしながらあまりにものんきに言うので、艦橋のいつもの面々は絶句ぜっくした。

 さすがのAXEの表情も青ざめ、タッヤの羽毛はざわついて、ミーマの半透明のお顔も凍りつき、ネガはぶるぶると震えだす……

「それは……、あまりにも雑に過ぎるのでは……」

 さすがのAXEも、冷静さを失った声。

「た、確かに、これだけ堂々(どうどう)とアベノカールト銀河を飛べる、反社の皆様とご一緒していれば、万がイチのもしかして、アベノカールト銀河の中心まで、うまく飛んでいけるかもしれませんが……。常識的に考えて、反社の皆様をハイ! どうぞー! と迎える、中枢閣大本営なんてないと状況を判断するしか……」

 ミーマが若葉色わかばいろの髪が揺れる頭を抱えてうめく。

「ちょっとぉぉ〜。細かいことはわかりませんけど、とんでもない額のミカジメゼニーとか、あとでとられちゃうんじゃないですかぁ?」

 とタッヤが心配そうにバンソロをみつめて言った。

「この船がいくらヤカラ的な風体ふうていの船だとしても、さすがに関わらないほうが得策とくさくなんじゃないのかなぁ?」

 と言ったのは、機関室直結通信機の向こうにいるコタヌーン。

「関わったら最後、骨のずいまでシャブられてしまうかもしれません」

 と言ったのは、オクタヌーン。

 アークはめいいっぱい倒したシートのうえに寝転びながら、主砲照準器が捉えた雑多な武装艦をつまらなそうにみつめて言う。

「ダイジョブよ。こいつらがこの船の正体に気づいても、我らがキャプテン・パンダーロック殿がちょいと本気だしたなら、どいつもこいつもブラックホールに落ちるスペースデブリ。ミカジメゼニーだなんだと、ゴチャゴチャもめるようなことになったら、ヤッチまえばどうということはねえ。だったら、グラジ・ゲートがごとく、無料でご利用させてもらやぁいいのよ」

 そして、アークはでっかいあくびをまたも一発。

「あ……、あのさ……。アーク」

 サディがお顔を突っ込んだ主砲照準器を、めいいっぱい倒したシートに寝転ぶアークのほうに向けて言った。

「なんだ? サディ?」

 主砲照準器でじっとみつめてくるサディに、アークは返す。

「前に、最近絶好調なんじゃない? みたいなこと、あたし、あんたに言ったけど……」

「けど?」

「ただ単に、どんどんテキトーになっているだけなんじゃない?」

 とサディは主砲照準器でアークをみつめたまま言った。

 サディの発言に同意して、かつマジなのかよ! と言いたいのか

「くそがッ!」

 とネガは毒づいた。

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