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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第六部

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公厳警察をブッ飛ばせ!

公厳警察をブッ飛ばせ!




「いっくよぉぉぉ!」

 きらめく銀髪キラキラ揺らしてお顔を主砲照準器しゅほうしょうじゅんきに突っ込んで、漆黒しっこくのマニキュアが映えるお手々で巨大なリヴォルバーカノンの引き金にか細いお指をかける、真っ赤なリンゴみたいに赤い瞳の女のコが、牙のようにとがった犬歯をむいて叫ぶ!

「イービル・トゥルース号! 撃てぇぇぇ!」

 濃紺のうこんのミリタリージャケット姿の男が、アイアンブルーの天へと向けた手で形作った拳銃を、ブ厚い硬化テクタイト製窓の先に浮かぶオッマポ・ダワンワン級三隻に向かって振り下ろす!

「いーやっほぉぉぉ!!」

 めっちゃ体重軽い女のコのか細い指が、冷たい引き金を引き絞る!

 振り上げた鉄槌てっついがごとき撃鉄げきてつが振り下ろされて、フルメタル薬室やくしつのおケツをぶっ叩き、主砲よ火を吹け! とえる信号をヘヴィなメタルマシーンへと送り出す!

 どぉぉぉッかぁぁぁぁんッ!!

 45口径46銀河標準センチメートル砲のおナカのオクの薬室で、大爆発する強大な力!

 発射衝撃に震える艦橋! 腹の底まで届く轟音!! ブ厚い硬化テクタイト製の窓を染めるは紅蓮ぐれん業火ごうか!!!

「くッそがぁぁぁッ!」

 イービル・トゥルース号の主砲一斉射によって発生する、宇宙の果てへとこの船をブッ飛ばそうとする凶悪なまでの反動に、銀河イチ逃げ足の早いガスマスク野郎が操縦桿にかじりつき、ペダルを踏み込み叫びあらがう!



「任意質問対象船発砲ォォォォッ!!」

「あり得なーーーいッ!」

 むきだしの真実である現実を、おナマで叩き込まれたことを必死に否認ひにんする言葉が、自分の口かられるのが聞こえる!

 任意質問対象船が、発砲することなど想定外だ!

 公権力をふりかざす、俺達公厳警察に逆らう一般知的生命体などいやしない!

 だいたい、一般知的生命体ってのは、非武装丸腰ひぶそうまるごしなのが普通だろう!

 そういう想定のうえにあぐらをかいた、完全舐めプ度200%なビッグ態度でいたがために、俺はアンチ・エネルギー・シールドを展開していなかった……

 詰んだ。終わった。おしまいだ。

 大事なことだからもう一度言おう。つまり俺は、死ぬ。

 極大威力のエネルギー兵器に対して、アンチ・エネルギー・シールドなしで生き残ることは、絶対に不可能だ……

 あらゆるものを原子レベルにまで破壊する、極大威力のエネルギーにすべてを焼き尽くされて、俺の世界は真っ白になる。

 大自民統一教会党の支持母体しじぼたいである銀河臣民統一教会が、過去にさかのぼってご先祖様せんぞさまにいたるまで平穏へいおんをもたらすと喧伝けんでんする、通常の生活ではとても買えない高価極まる大自民大宇宙統一壺だいじみんだいうちゅうとういつつぼが、真っ白になった世界の上空から降りてくるのを俺は待つのだ。

 苛烈過酷かれつかこく忠実ちゅうじつなる滅私奉公めっしほうこう徹底的てっていてきに要求する任務に、イチ権畜として奉仕ほうし尽くした果てに、勇猛果敢ゆうもうかかんなる壮絶そうぜつな死をむかえた俺は、自身の職務に最後まで忠実であったおまえへの褒美ほうびだと、天へと俺は召されていくのだ。

 大自民大宇宙統一壺だいじみんだいうちゅうとういつつぼの中へ、俺は英霊として収められるのだ。

 英霊である俺のたましいを収めた大自民大宇宙統一壺は、天上にむかって高く高く上昇していく。

 大宇宙を統一するSpace Synthesis Systemの中枢を構成する、大自民統一教会党が提唱ていしょうする天国へと、俺は高く高く昇っていくのだ。

 俺にはみえる。大自民統一教会党が喧伝けんでんする、現世げんせの向こうにある楽園が。

 そこではゼニーの雨が降り、下着がもろチラもろチラもろチララと見えることを意図的いとてきにデザインされた、極小極薄生地ごくしょうごくうすきぢの性的制服に身を包んだ見目麗みめうるわしい少年少女が、よだれが出るような成長過程にある未熟みじゅくな体を俺の前に投げ出して

「どうぞ私をお食べください」

 と両手両足をくぱぁと開いて、少女少年が持ち得るすべての性的魅力をあますところなくさらけだし、俺の奴隷どれいにされることを心から願い欲っする。

 現実世界では手にできなかった額のゼニーが俺に与えられ、現実世界ではふるこうことに制限のあった俺様だけの権力が、俺が召された天国ではどこまでもどこまでも無制限に行使することが許されて、俺が望むがままにあらゆる者を好き放題に蹂躙じゅうりんする自由が許される理想世界。

 あらゆる利権りけんを俺が牛耳ぎゅうじり、あらゆる者の富を俺が奪いとってかき集め、あらゆる性的対象を俺が自由に蹂躙じゅうりんむさぼって、味に飽きたらすみやかにポイ捨てできる。

 夢の新自由理想世界へと、俺は高く高く昇っていくのだ。

 通常の生活では決して買えない、高価極まる大自民大宇宙統一壺の中に、英霊として俺の魂が収められてだ。

 そして、普段はネトネトに粘着質にウヨウヨSNSで群がる奴らが、その気持ち悪い態度と全否定Botモードを一変させて、安い国神社に神として収められた俺を英霊と呼んでたたえて感涙かんるいを流す全肯定Botに変身し、マンセー三唱さんしょうを叫ぶ歓喜の声でもって、英霊である俺を徹底的てっていてきめたたえるのだ!

 そうだ! 俺はSpace Synthesis Systemの英霊! つまりは、安い国神社の御神体ごしんたいになるのだ!

 これだけの死後の幸せが保証されているのであれば、俺は生きている頃のあらゆる不満をチャラにしていいと思う!

 権力の前にひざまづき、イチ権畜として生きた、イチ生命体としてはあらゆる不満だらけの生涯しょうがいを投げだして、俺はSpace Synthesis Systemのために死ねる!

 素晴らしい! 素敵じゃないか! 大自民統一教会という政教複合体せいきょうふくごうたいは!

 生活が破綻はたんするくらいの寄付をしたけれど……

 死後にこれだけの見返りがあるのなら……

 宗教最高! 神様信じてよかった! 現実世界から天国に転生して、チート級に無双してウェーイッ!

 宗教組織の大広告塔でもあらせられる、森羅万象アベンシゾー総統陛下マンセー!!

 ダーイ! ジーク! ジミンッ!

 ダーイ! ジーク! ジミンッ!!

 ダーイ!! ジーーク!!! ジミンンッ!!!!

「圧倒的多数の幸福ではないか……。大自民統一教会は……」

 恍惚こうこつ絶頂ぜっちょうで、先走ってドロドロれだす、俺の声が聞こえる聞こえる。

 ……?

 なにかおかしい?

 自分の声が聞こえるということは……?

 俺の聴覚機関がまだ物理的に存在し、声帯の振動が音となって聞こえることを意味する。

 くわしいことは、恐ろしく高価極まる大自民統一教会の聖典せいてんである、原理講論げんりこうろん一切記載いっさいきさいされてはいないが……

 死後の世界にも、肉体がちゃんとあるのだろうか?

 確かに……、肉体がなければ、見目麗みめうるわしい少年少女を俺が自由に好き勝手に蹂躙じゅうりんし、少年少女の未成熟な成長過程にある肉体のおナカのオクにあるドロドロにあったかい美味なるモノを、思う存分ぞんぶんにおあじわうという、俺にとっての新自由理想天国行為は実現できない……

 であるならば、俺はもう大自民統一教会党が喧伝けんでんする、夢の新自由理想天国に到着しているということなのか?

 死の恐怖にぎゅっと閉じていた目を、夢の新自由理想天国の期待におまたをふくらませてガバッとひらけば……

 眼の前にあるのはドBLACKな壺鉤桜印つぼかぎさくらじるし、つまりは公厳警察紋章がみえてくる。

 ここは……、公厳警察グラジ・ゲート周辺宙域特別警戒勅命分隊長座乗旗艦、オッマポ・ダワンワン級の思想捜査指揮所しそうそうさしきしょ……

 どういうことだ!? 死後の世界にまで、職場が存在していいわけがない!!

 話がちがう! 約束が違う! 

 滅私奉公めしほうこうの果てに殉職じゅんしょくされた英霊様が、あの世でまで働かされるとは、これはいったいどういうことだ!?

 だがしかし、だかしかし! ここは間違いなく俺が現世で通い続けた職場だ!!!

 右のほほをぶっ叩き! 左のほほおを差し出して!

 バチコン! バチコン! セルフ往復ビンタで顔面を右往左往うおうさおう

 痛い! 痛い!

 これはもう絶対に現実に違いない!

 痛みを感じることは、つまり生の実感!

 だとすると俺は……、まだ生きている?!

 夢の新自由理想天国へとされるのを待っていた俺の意識が急速に、苛烈かれつ過酷かこく残酷ざんこく過ぎる現実へと帰ってくる。

 ドBLACKな壺鉤桜印つぼかぎさくらじるしを高々とかかげて、公権力を一般知的生命体にふりかざして一方的に行使して、無実であろうとかまわず起訴して永遠に続く裁判を繰り返す! そうやって捜査対象の生涯しょうがいを徹底的にメッチャクチャに破壊する力を、いい加減に好き放題にふるいまくる絶対無謬ぜったいむびゅう思想捜査指揮所しそうそうさしきしょに、俺の意識が帰ってくる。

「巡査部長伍長殿! ご命令を! ご命令を!」

 ドBLACKな壺鉤桜印つぼかぎさくらじるしかかげる思想捜査指揮所を満たすのは、絶叫する部下達の声、声、声!

 眼の前のメインモニターには、紅蓮ぐれんの炎が生み出す尾を引いて、刻一刻こくいっこくと迫ってくる火の玉達!!

「なんだ?! これは?!」

 理解不能の光景に、抑えきれずに言葉が漏れる。

「実質的に強制の任意質問対象船が発射した実体弾です! 弾頭自身に推進力はないと推測され、これ以上増速することはあり得ないと想定しますが、このままではあと数分でこの艦に着弾します! 我が艦は暴力にブチ抜かれ、艦内にドバドバ暴力を注ぎ込まれ、我々はめっちゃくちゃになるまでヤラレてしまいます! 巡査部長伍長殿! ご命令を!」

 なん……だと……?!

 俺はいったいどれぐらいの時間、大自民統一教会が喧伝けんでんする、夢の新自由理想世界という天国を夢見ていた?

 下着がもろチラもろチラもろチララと見えることを意図的にデザインされた、極小極薄生地の性的制服に身を包んだ見目麗みめうるわしい少年少女が、よだれが出るような成長過程にある未熟な体を俺の前に投げ出し、両手両足をくぱぁと開いて性的魅力をあますところなくさらけだす光景を、俺はどれだけの時間ジトーーッと舐め回すように鑑賞かんしょうしていたのだ!?

 数秒、あるいは十数秒? もしかしたら数十秒? 最悪の場合は数分くらい?

 具体的な数字は測っていないからわからぬが……

 それなりにかなりの時間、こいつら部下どもは何もせず、実体弾が宇宙空間をドンブラコーと飛んでくるのを、ギャーギャー騒ぎながらみつめていただけということなのか?!

 それはつまり……

 ……あえて言おう!

 無能なのではないか?!

「ご命令を! 巡査部長伍長殿ぉぉぉぉ!」

 自分は何をすればいいんですかと、しつこく問う部下の声が、頭に響いて痛い痛い。

 まあ……。仕方がない……ことなのか?

 Space Synthesis Systemの組織にあって、捏造改ねつぞうかいざんを率先的そっせんてきに行う忖度以外そんたくいがいのことを、イチ知的生命体が自発的に行うなど……

 自分には自主的に考える危険極まる能力があり、つまりはSpace Synthesis Systemの脅威きょういとなり得る存在、思想危険分子であります! 

 と起立きりつして挙手きょしゅした手に爆弾を握ってかかげて、自分は思想犯罪テロリスト因子がバリバリです! と自分で表明し、全員右にならえで赤信号をわたりましょうという社会のナカで、たったひとりだけ左をむいて青信号をわたるに等しい。

 そういうことをすることで、最終的に永遠の自宅警備員に終身雇用が約束されて、最後にはナニも使い道のなくなったネクタイを創意工夫そういくふうし活用し、自分の首をネクタイでくくって吊るすことになるようなものだからな……

「とっとと38式オッマポ砲で……」

 うんざりしつつも命令を口にしはじめた時、目の前で火の玉達が身をよじり、複雑怪奇ふくざつかいきかつ摩訶不思議まかふしぎ挙動きょどうを開始する!

「なにぃぃッ!?」

 みたことのない動きに、俺の視線は釘付けにされてしまう。

 メインモニターの中で、紅蓮ぐれんの炎を引く火の玉達が、星の海をキャンバスに踊り狂う!

 次々に曲がりくねり、交差しすれ違う火の玉達が描き出した、超絶美麗3Dプロジェクションマッピング的な光景が星の海に浮かび上がって、とにかくビッグでヤカラフェイスの車が、星の海でブイブイやりだす!

 そして、公開通信チャンネルから、クッソリズミカルに、宣伝文句がズコバコがなる!


 ビッグな企業が作ったビッグな車格が、あなたのビッグな態度たいどを、ビッグなバックでケツモチバッチリ! 強力アシスト!

 コワモテヤカラなフロントデザインが、周囲を圧倒的な威圧いあつでもって威嚇いかくして、あなたのイキリぶりと縄張なわばりを強く強く主張!

 これはもう、公道でオラオラしまくりのウェーイ・デ・ヒャッハー! 

 あなたのやりたい放題が、保証されたようなもの!

 あなたはもう、公道の王様DAッ!

 さあ、圧倒的多数が支持する! 大宇宙規模でビッグな超有名大企業!

 ト与太よふと自動車のビッグな車で、少数派で貧弱ひんじゃくなスモールなカーどもを、ビッグな態度でイキリ倒してブイブイやろう!

 アフォファード&バカファイヤー!

 ヤカラウェーイ・スター仕様! 緊急限定新発売!


 あんぐりと口がひらいた。そしてガクンと、アゴが外れた!

「あがッ! あががが、あがぐぅーが!?」

 これが! 珍奇チンドン航法によって行われる、ド派手な大宣伝というものなのかッ!?

 そう言ったつもりだが、ハズれたアゴが言うことを聞きやしない!

 すごーいすごーい! こんな高いゼニーのかかった大宣伝ができる大きな企業、ワタクシ初めて!

 ワタクシのお心のおナカのオクまで、大宣伝がしっかり届いて、感じるトコをトントントン!

 気持ちいいとこに手が届く! アレが届く! ナニが届く!

 すごーい! すごーい! こんなこと、ワタククシ、一度もされたことなーい!

 大企業が超大手広告代理店に大ゼニーを注いで作り出した大広告が、俺の大事なお心のおナカのオクの感じるトコを、執拗しつよう執拗しつようにトントンしまくり、俺を徹底的にわからせていただける!

 わかった! わかった! 俺は完全にわからされた!

 これは本物の航宙宣伝船に間違いない!

 そして、公厳警察オッマポ・ダワンワン級の思想捜査指揮所の公開通信チャンネルから、アーレ・マー・テキトッスの話が続く。


 さて、いかがだったかな?

 珍奇チンドン興行協会に所属する、真っ白ドクロは頭ガ真っ白号がその実力を行使した、珍奇チンドン航法によるドすげえド派手でクールな大宣伝というやつは?

 これだけの大宣伝を行える本船は、態度がビッグ過ぎる超大手の大スポンサー様より、厳密げんみつ行程こうていでしかるべき時間と場所での大宣伝活動実行を強要されるがごとく、強く強く要求されていてな。

 これ以上の遅延ちえんは、すさまじい額の遅延損害金ちえんそんがいきんの発生につながってしまう。

 たった今行った珍奇チンドン航法による大宣伝の実演でもって、本船が航宙宣伝船であることは、これ以上ないほどに貴官はよーくおわかりいただけたと思う。

 今回の大宣伝に使った特殊効果に費やしたゼニーについては、特別大目玉の限定大サービスということで、請求せいきゅうしないということにしておくのでな。

 どうだ? 俺はやさしいだろう?

 ということで、そろそろ通ってよろしいかな?

 カピシ?

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