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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第六部

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突入! Synthetic Stream!!

突入! Synthetic Stream!!




 ブ厚い硬化テクタイト製窓の先に広がる宇宙の大穴。なにひとつ電磁波が帰ってこない漆黒しっこくのその先は、大宇宙をひとつにせんと渦巻くsynthetic streamの勢力圏内。

 ネガはぶるぶる震えた。

 この先には、いったいどれだけの逃走が待ち受けているのか!?

 俺はずっとずっと、何もかもから逃げ続けている。

 だからついに、平穏へいおんからも逃げ出すハメに、俺はなってしまったのかもしれない。

 平穏から逃げ出した先に待っていたのは、ケツの穴がきゅっとなり、棒と玉が縮こまるような危機からの逃走だろう。

 逃げる。逃げ出す。逃げまくる。

 前に進んじゃダメだ! 前に進んじゃダメだ! 前に進んじゃダメだ! 前に進んじゃダメだ! 

 前に進んじゃダメなんだ!

 目標をセンターから外して、ペダルを床まで。

 俺はどこまでも逃げ続けていく。

 俺の逃走はいったいどこまでいくのだろうか?

 宇宙の果てには、まだ誰もたどり着いたことがないと言う。

 このクソ広すぎる宇宙は、俺の果てなき逃走をどこまでも許す世界だ。

 我が逃走。

 いつか、銀河イチ逃げ足の速い操縦士の自伝を書くのなら、題名はそうしようとネガは心に決めた。

「くそがぁ!」

 ネガは力強く毒づきながらも、身体のほうは正直で、いかにもしぶしぶながらと言った感じに、足がゆっくりとペダルを踏みこむ。

「エンジン、出力上昇〜」

 機関長コタヌーンの声が通信機から響き、イクト・フタロク・メタル係長の号令とメタル野郎どものヴーッ! ガーッ! の叫びが轟く。

 イービル・トゥルース号のケツにアッツイ青い炎が燃えあがり、宇宙にあいた漆黒しっこくの大穴、グラジ・ゲートへと船首のドクロがズルリと入り、ぬるりぬるりと船が漆黒の大穴に呑みこまれていく!

 甲板に並ぶ最前列の45口径46銀河標準センチメートル砲三連装一基が漆黒のおナカのオクに消え、続いて艦橋に近い砲塔が暗闇へと突入。

 そして、ブ厚い硬化テクタイト製窓が、宇宙の大穴の漆黒に満たされ、ついに艦橋がグラジ・ゲートに呑み込まれる!!

 てめえは、できそこないの世界を作っちまった、正真正銘しょうしんしょうめいの無能だ。

 そう非難ひなんされることを恐れて、世界を作り上げた後に冷や汗ダラダラこっそり不眠不休ふみんふきゅうで作り上げた、神のチート行為が炸裂さくれつする!

 ブ厚い硬化テクタイト製窓の外は、意味不明理解不能の万華鏡まんげきょう七変化しちへんげ✕1024!

「これが宇宙の愛なのかしらぁ〜?」

 ミーマがうっとり。

「うぉぉぉぉお! 目が回……らないぞぉぉぉッ!」

 あのできごと以来、視覚拘束具を絶対拒否するサディの、真っ赤なリンゴみたいに赤い瞳がうつろに揺れる。

「レーダー……。復帰します……」

 常に冷静なAXEの、ため息混じりのご報告。

 いつものお約束が完了し、宇宙の大穴グラジ・ゲートから、別の銀河の公宙域へとイービル・トゥルース号が出現する。

「ついにきたな」

 マジでホントにいろいろあったが、数々の致命的な危機を乗り越えて、俺の大事な主砲と弾薬庫を守りきった、アーク・マーカイザックがそう言った。

「周囲に観測できるブラックホール及びパルサー、恒星系、遠方に確認できる銀河から現在位置を割り出した結果、本船は現在、synthetic stream勢力圏内、ジャンポップ・クロジャン銀河の辺境、ポイント・エイト・ゼロ・ダブルゼロ・付近を航行中と状況を判断します」

 ミーマが周囲状況から、海賊放送船の現在位置を告げる。

「くそがああ!」

 いくつもの銀河を駆け抜けて、いくつものグラジ・ゲートをくぐり抜け、ついに突入してしまったsynthetic stream勢力圏内に、ネガの悪態あくたい炸裂さくれつする。

「周囲に複数の艦船を確認しましたが、艦影照合の結果、System Self-Defense Force SSF及びSystem Schutzstaffelの艦ではありませんでした」

 レダー盤上の光点を艦影照合に素早くかけて、とりあえずの安全をAXEが告げる。

「ついに海賊放送船の本懐ほんかい、海賊放送の出番ですね」

 グラジ・ゲート通過で誤差ごさが発生しているかもしれない計器類を、タッヤが点検しつつ言う。

「俺たちの欺瞞放送ぎまんほうそうを信じた、グラジ・ゲート封鎖ふうさド間抜け艦隊は、どれくらいあそこでぼーっと待っていたと思う?」 

 ブ厚い硬化テクタイト製窓の先に広がる、synthetic streamに支配された星の海をみつめて、アークが問う。

「あらゆる要素を考慮こうりょした結果、細かい解説はスッ飛ばしますが、どんなに少なく見積もっても七銀河標準日、イービル・トゥルース号はド間抜け艦隊に先行していると判断していいと状況を判断します」

 情報表示盤に現れる様々な要素から、複雑極まる思考をへた果てに、ミーマが簡潔かんけつな状況判断。

「幸いにして、synthetic streamの艦は周囲にいない。そして、時間は有限だ。とっととやっちまおうぜ! サディ!」

「あたしがもらってる給料以上に、ブッ放させてもらいたいねぇッ!」

 自席の武器管制盤上のドクロマークが描かれた、真っ赤なリンゴみたいに赤いボタンをサディが叩く。

 サディの前に、巨大なリヴォルヴァーカノンを模した、主砲操作桿が現れる。

 巨大なリヴォルヴァーカノンの円筒形弾倉 (シリンダー)を、サディの小さなお手々が回転させていく。実体弾、花火弾頭、極大威力のビーム、そして、ドクロマークの弾倉がクッソイカツくヘヴィなメタル銃身の中へと飲み込まれ、主砲操作桿が装填信号そうてんしんごうを発する。

 四基の主砲塔直下直上のヘヴィなメタルマシーンどもが、くっそ重たい稼働音をガンガンに響かせて、鈍く輝く弾頭を砲身内部に装填そうてんしていく。

 艦橋でサディが操る巨大なリヴォルヴァーカノンの撃鉄げきてつは、暴力をもってなにもかもを破壊する鉄槌てっついのようにみえる。凶悪な鉄槌がごとき撃鉄に、交差する大腿骨だいたいこつを背にしたドクロマークが青く点灯。

 サディの真っ赤なリンゴみたいに赤い瞳に、青いドクロが写ってきらめく!

「全砲門、零式海賊放送弾装填完了!」

 続けてサディが、巨大なリヴォルヴァーカノンの鉄槌がごとき撃鉄を、両のお手々でガチン! と起こす!

 振り上げられた鉄槌を思わせる撃鉄に点灯する、交差した大腿骨を背にしたドクロマークが、赤表示へと変化。

「45口径46銀河標準センチメートル砲、全門安全装置解除!」

 そして漆黒しっこくのマニキュアが映えるお手々で、サディが巨大なリヴォルヴァーカノンの引き金に指をかける。

「海賊放送船イービル・トゥルース号! 斉射用意よし!」

 サディの言葉に、アークが手で形作った拳銃をアイアンブルーの天へと向ける!

「主砲実体弾斉射、対衝撃制御準備!」

「くそがぁッ!」

 ネガはガスマスクの中で毒づき操縦桿を握り、ブーツのソールをペダルにのせて、強烈な反動を生み出す主砲発射に備える。

「派手にいくぞ! 目標! ジャンポップ・クロジャン銀河のあらゆる方角! 海賊放送船イービル・トゥルース号! 撃てぇぇぇッ!」

 アイアンブルーの天から、手で形作った拳銃をアークが振り下ろす!

「いっくよぉぉぉ!」

 巨大なリヴォルヴァーカノンを模した主砲操作桿の引き金を、サディの漆黒マニュキュアが映えるお指が引きしぼる!

 振り上げた鉄槌を思わせる撃鉄が打ち下ろされて、ヘヴィなメタル薬室のケツをぶっ叩き、光の速さで駆けめぐる発射信号を主砲全門へと送り出す!

 甲板上に背負う二基の一番二番砲塔、腹に抱える三番四番砲塔が、45口径46銀河標準センチメートル砲からあらゆる方角に、すさまじい爆炎を吐き出す!

 震える艦橋! 響き渡る轟音! 艦橋前面、ブ厚い硬化テクタイト製窓に紅蓮ぐれんの炎が満ちる!

 すべての砲塔が明後日の方向を向いた、45口径46銀河標準センチメートル砲三連装四基十二門が、銀河の果てに向かって零式海賊放送弾を解き放ツ!

「くッそがぁぁっ!」

 主砲発射の反動に暴れる操縦桿を抑え込み、反動を打ち消す推力調整をペダルで繊細せんさいに行うネガの、繊細さを一切持たない毒づきが艦橋に響く。

 あまたの星がまたたく海をあらゆる方向にむかって、彗星すいせいのように光跡こうせきを引いてブッ飛んでいく、十二発の零式海賊放送弾!

 それは花火ではなかったが、とても美しい光景だった。

「零式海賊放送弾、ジャンポップ・クロジャン銀河のあらゆる方角に拡散中」

 レーダー盤の彼方かなたを目指して翔ける、零式海賊放送弾の光跡をAXEが追う。

 アークはヘッドセットマイクのスイッチを入れ、機関室に通信をつなぐ。

「機関長、コタヌーン殿。本船はこれより、うるわしの本船の素敵なケツにアッツイ炎を燃えあがらせて、synthetic streamが満ちるクソの海を焼き尽くすがごとく銀河を翔ける! ありとあらゆる細かいことをブッ飛ばして、エニグマ・エンジンだけブッ飛んでいかないように、ヘヴィなメタル製機関達のめんどうをたのむ」

「了解でさぁー。エンジンだけブッ飛んでったら、大変なことになりますからなぁ」

 と機関室からコタヌーン。

「エンジンだけブッ飛んで、無事なんてことがあるわけがありません」

 とは機関副長オクタヌーン。

「この船は沈まず。腐った組織は崩れ落ち、ブラック・レーベル作品 (通称BL)が再び恒星の光のもとに、自由に読める世界を作るために銀河を翔けるべきと状況を判断します」

 ミーマが自席に置いてある、ブラック・レーベル作品のアツアツな表紙をみつめて言った。

「腐った世界を駆け抜ける。ですが、私達の財布まで腐らせない。それを忘れていはいけませんよ。アーク」

 タッヤがバンソロをジャラン! と鳴らす。

「ロボットニジンケンモ、ゼッタイニワスレルナ」

 と言ったのは、かつてアークの命令を聞いたせいで、サディによって知的生命体道を完全に外れた大変な目にあわされたことがある、イクト・ジュウゾウ。

「これより海賊放送船イービル・トゥルース号は、synthetic stream勢力圏内で、ガチでバチバチの海賊放送を開始する! 腐った組織の勢力圏が、耳が痛くなって崩れ落ちちまう。そんな、まるで嘘みたいな本当の話ってのを叩き込むぞ! 零式海賊放送弾による第二斉射用意! 俺たちは星の海を満たす真空の時空にすら波風なみかぜをたてる! 海賊放送船イービル・トゥルース号、海賊放送航行開始!」

「くそがぁぁぁ!」

 ネガは毒づきペダルを踏み込み、目を血走らせて追っかけてくる公権力どもからの大逃走を、イービル・トゥルース号に開始させる!

 たった一隻でsynthetic streamに対抗し得る、驚愕驚異の海賊放送船のケツに灯るあっつい青い炎が燃え上がり、銀河の向こうがわを目指してブッ飛ばす!

 いつかどこかの銀河でみつけた、放棄ほうきされた光子力帆船こうしりょくはんせんから作った、濃密のうみつなブルーを背にしたドクロ旗が、銀河を吹く太陽風にたなびいた!

「第二斉射、いーーっ! やっーほぉー!!」

 またサディが引き金を引き絞り、振り上げた鉄槌がごとき撃鉄が、ヘヴィなメタル薬室のケツをぶっ叩き、ブ厚い硬化テクタイト製窓の先が紅蓮に再び染まる。

 震える艦橋、満ちる轟音。踊り狂う紅蓮の炎! そして、星の海を翔けていく、新たにうまれた十二発の彗星がごとき光跡達。

「第イチ斉射、拡散じゅうぶん。零式海賊放送弾による海賊放送領域、どこまでも拡大中」

 レーダー盤上をまるで花火が広がるがごとく翔けていく、24発の流れ星達をみつめてAXEが冷静に言った。 

「ミーマ! 海賊放送を開始するぞ!」

 アークが再び、手で形作った拳銃をアイアンブルーの天へと向ける!

「ナイン・シックス・ポイント・ナイン! 96.9銀河標準メガヘルツ!」

 片手で形作った拳銃を振り下ろすアークにあわせて、ミーマがふりあげた氷砂糖のように半透明の拳を、ドクロマークが描かれた青いボタンへと打ち下ろす。

 アイアンブルーとガンメタルグレイで構成された艦橋中のモニター達が、濃密のうみつなブルーに染まり、交差する大腿骨だいたいこつとドクロが現れる。

「RADIO・EVIL TRUTH NOW ON AIR!!」

 ミーマが叫び、イカツイ字体の赤文字がドクロの前に踊る!

「大宇宙を流れるおクソのお濁流だくりゅう、シンセティック・ストリームよ! てめえのクソちいせえケツの穴を蹴っ飛ばすために、俺は帰ってきたぞ!!」

 アークがヘッドセットマイクのスイッチをONにして、クソの濁流に叩き込む言葉を次から次に語りだす。

 Space Synthesis Systemが銀河臣民ぎんがしんみんをがんじがらめにするために作った法を完全に無視した、純粋混じっりけなしのマジモン非合法電波が邪悪なる真実号から発射される!


 

 おうおうおうおう。

 アークの海賊放送が、ついにsynthetic streamに今再びご来訪だ!

 どうだ? 元気してたか?

 何? 全然元気じゃない?

 そうだろうな。知っているよ。

 ここはクソまみれのクソダメみたいな、バッテンマークだらけの恐ろしいまでに不正だらけの、クソつまんねえダメダメ世界だ。

 そりゃあ、君が元気じゃなくなるのは当然だ。

 そんな腐った世界に、海賊放送船イービル・トゥルース号は帰ってきたぜ。

 ありとあらゆるクソ屁理屈へりくつをブッ飛ばす、嘘みたいな本当の話ってやつを胸いっぱいに抱えてだ。

 あ? 話なんかいらねえよ。まずは飯を食わせてくれ?

 そうだな、いつの間にか飯もまともに食えない世の中になっちまった。

 どうしてそうなった?

 十年ちょっと前のことを思い出してみろよ。こんな世の中じゃなかったはずだ。

 この十年ちょっと、この世界をメタメタにしたのはいったなんだろうな?

 あ? ごたくはいらねえ? 飯を食わせてくれ?

 あいにくこの船はたった一隻。世界中をやしない救うようなゼニーは背負ってねえんだ。

 だがな、そんなことは関係ねえ。この船は言いたいことを言う。

 世界を救うゼニーはねえ。だが、この船には残弾無限の言いたいことってやつがある。

 あ? 俺が言いたいことってのはなんだって?

 俺はいつだって希望を語る。俺が言いたいのは、たったそれだけの話さ。

 希望ってやつが存在していることは、邪悪なまでに真実であることに違いはない。

 なんでそんなに根拠こんきょもなく、自信満々に希望なんて言えるのかって?

 簡単な話さ。

 この世界が絶望だらけなのは、クソみたいな絶望をまきちらすクソみたいなヤツが、クソダメみたいにクソダマの山のてっぺんで、我こそがド偉いミスター権力者様でございと、クソ尊大そんだいにふんぞりかえり、クソみてえなてめえの都合がいいように世界を、どんどんクソまみれにしていやがるからだ。

 そんなクソダメクソ山のクソ頂点におっ立つ、うんこの権化総統陛下ってヤツのケツを、俺はクソミソに蹴っ飛ばしてやる。

 クソみたいな絶望しかない、クソダメみたいな社会の、クソヤマの頂点を蹴り落とせば、世界はちっとはクソではなくなるはずだ。

 だって、クソみたいな世界の頂点様なんだぜ! そいつは真のクソの中のクソ野郎、つまりは森羅万象のクソカスゴミに違いない!

 そーゆークソ野郎は、とっとと蹴り落として交換するのが文明社会ってやつだと、ド野蛮の極みの俺は思ったりするわけだ!

 どうだ? 俺は頭がやわかいだろう?

 素晴らしきかな! 柔軟思考!

 だがな! 俺はクソダメクソ山の頂点クソ権化総裁ごんげそうさいを、この船が背負い抱く主砲でブチ抜こうってわけじゃない!

 そういうこともできるだろう。

 そういうことが一番てっとり早いのかもしれない。

 そういうことが、公権力を暴力としてふるい、あらゆるものを蹂躙じゅうりんし、社会をしゃぶっているようなクソ野郎にはふさわしいのかもしれない。

 なんでも効率を求める。そんな世界だ。

 コスパにタイパを追い求め、効率よく生きるのが時流ってやつよ。

 だったら黙って、クソ野郎のド頭をブチ抜くのが、一番効率がいいのかもしれない。

 クソはクソのように処理されて、ジャーっと流され下水の果てに消えるのが一番いいのかもしれない。

 だがな、俺はそういう一番効率のいい方法を選べるほど頭がよろしくない、イカレ切った危ない野郎だ!

 だから俺は!

 あまたの銀河とあらゆる星が、様々な思想と考え方で誰かの権利を侵害することなく存在できる、ぶったまげるほどに広すぎる宇宙に、実体弾でも極大威力のビームでもないことを、残弾無限でもってブッこみに俺達はやってきたんだ!

 それが海賊放送船イービル・トゥルース号が、どこかの誰かである君の心に届いてほしいと願う、海賊放送ってやつさ!

 そんなことを言ったって、何にもなりゃしない。

 なんて言うヤツもいるけれど、そんなヤツこそ口をつぐんで指をくわえて、俺が好き勝手やってる背中をながめていりゃあいい。

 あんたは負け犬の遠吠えだなんて言うけれど、そう言うあんた自身は遠吠えさえできないくらいに負けちまった、負け犬の中の負け犬なんじゃないか?

 俺は反抗はんこう狼煙のろしをあげるぞ!

 たった一人の遠吠えが、ここではないどこかの誰かに届き、その心に火を灯し、反抗を決意する遠吠えを呼ぶだろう。

 遠吠えが遠吠えを呼び、広すぎる世界をわずかに震わせ、それはやがて世界を満たす大気さえ震わせていく!

 俺は絶望していない。俺は今でも夢見ている。俺にはいまも希望がある!

 なぜか? この広すぎる宇宙には、俺ではない誰かである、君がいるからだ!

 俺は君に届けたい。もしも君に言葉が届くのなら、希望はまだある。

 世界は絶対絶命の絶望でしかないなんてことはない!

 あらゆるものをひとつにし、俺と君との境界線さえ失わせ、なにもかもを自分にしようと目論む、クソみたいなクソ濁流だくりゅう

 それを俺は、synthetic streamと呼ぶ!

 もしも何もかもがひとつになってしまったら、俺と君との境界線がすでに存在しないなら、俺はどうやって君のために泣けばいい?

 なにもかもをたったひとつになんて、クソ喰らえだッ!

 たったひとつの冴えないやりかたしかない、そんな世界はクソみたいだ!

 誰も彼もが、君もあいつも、彼女もあのコも、たったひとつのクソにされちまうなんて、俺はまっぴらごめんだぜ!

 俺ではない君がいる世界が、俺は大好きだ!

 あいつがいて、どこの誰かも知らない誰かがいて、様々な思いと考えが混じり合い、まったく新しい冴えたやりかたが生まれ、それが新しい希望をつぎつぎにみせてくれる!

 そんな可能性に満ちた世界が大好きだ! 

 synthetic stream!! 俺たちは帰ってきた!

 何もかもひとつにしようとする、ドデカイミスタークソの塊様かたまりさまみたいなてめえらに、俺たちはどこまでもどこまでもあらがうぞ!

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