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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第六部

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オクタヌーンかく語りき

オクタヌーンかく語りき




「なんですと!? あんのふにゃふにゃおちんたま野郎が、悪辣非道あくらつひどうではないですとッ!?」

 驚愕きょうがくに見開かれる、サディの真っ赤なリンゴみたいに赤い瞳のお目々。

「いいですか? 私の話を一度聞いてみてください」

 オクタヌーンが話し出す。


 ついこの間、本船の無免許もぐりの航海士が、大宇宙戦争時代の大殺戮大魔王だいさつりくだいまおうかつ、不死身のモンスターなんじゃないか疑惑ぎわく、というものがありましたよね。

 例によってイカれてる無免許もぐりの航海士は、俺は永遠の十四才だ! なんてふざけきったこと言っていましたけど、あんなの完全に嘘だってわかりますよね。

 確かに、年齢不詳ねんれいふしょうのみためをした男ではあります。

 正確な年齢は誰にもわからない。

 本人も知らないそうですけど……

 だけど、どうみたって、十四才ではありえない。

 だとすると、大宇宙戦争の頃から生きているとは言い過ぎだとしても、アークは本当はかなりの年齢である可能性もある。

 広い宇宙です。歳をとっても外見は若いまま、そういう知的生命体は普通にいます。

 そのことを考えたら、ついこの間、あんなことやこんなことをいたすのが合法の世界に入ったサディさん、あなたとアークの間には年齢の差があり過ぎるんですよ。

 サディさんにいろいろ言いたいことがあるのはわかります。でも、サディさんとアークの間には、かなり広い時間のへだたりが存在する。

 ここまではいいですか?

 ちょっとだけでいいので、思い出してほしいのですけど……

 イービル・トゥルース号から離れて、brain distraction号でたどりついた頭狂二重惨苦星の死武夜街で、私達だけでやっていた時のことです。

 あの時サディさんは、殺してしまうほどに着飾ってロリな姿で街に立ち、夜のシノギの餌役えさやくをやっていましたよね。

 あの時、カモにしてきた男達。

 あいつら、ほんのちょっとでも、サディさんとホテルに行くのをためらったヤツがいましたか?

 意図的に徹底的にロリロリな姿に仕立てたをサディさんを、彼らが食べることを一瞬でもためらいましたか?

 ためらいませんよね。

 これはいい食い物をみつけたと、よだれをたらして大喜びでホテルに連れていったのではありませんか?

 そういうことを考えたら、サディさん。

 あなたはアークに、とっても大事にされていると私は思いますよ。

 

「ぐ……、ぬぬヌヌヌ」

 テーブルの上で、とげとげメタルスタッズ付きオープンフィンガーグローブに包まれた拳を、サディがぎゅーっと握りしめる。

「もっと言えば、お身体をモミモミもまれているわけではないですけども、サディさんはアークに手塩にかけてもみにもまれて、腕一本で食っていけるイチ人前の戦闘要員に育てられている。私からみたらちょっとかわったやり方とは言え、サディさんは特級特別で別格なお嬢様扱いに大事にされている。サディさんは間違いなく、アークの特別な存在ですよ」

 オクタヌーンはカフェラテを手にそう言った。

「ぐググ、ヌヌヌぬぬッ」

 テーブルの上で握りしめるサディの拳を包む、とげとげメタルスタッズ付きオープンフィンガーグローブがぷるぷると震えだす。

「まだ納得なっとくがいきませんか」

 オクタヌーンはため息をつくと、さらに話し出す。


 サディさんがいくつの時からこの船に乗っているのかまで、私は存じておりません。

 ですが、ガチで違法のロリな頃から、というサディさんの言葉からしてみて、相当若かった頃からなのだと予想はできます。

 もしも、アークが悪辣非道あくらつひどうなどうしようもないヤツだったとしたら……

 サディさんはとっくの昔に、おナマでガンガン突入されていて、おナカのオクにドバドバ出されて、無免許もぐりのロボット助産師の手を借りて、この船で子供をバンバン産むハメになっていたはずです。

 生まれたら、産み終わるのを待ってましたとばかりに、またもおナマでおナカのオクに突っ込まれ、突きに突かれてドバドバ出されて、またまたサディさんのお腹は膨らみ。また産み終わったら待ってましたと、おナマでバンザイ突撃の繰り返し。

 気がつけば、この船は……

 アークとサディさんの遺伝子が絡み合いまくった、危険な坊やと危ないお嬢さんがドンドンわちゃわちゃ増えている。

 十五の時からこの船に乗っていたと仮定しても、今頃五人くらいは子供がいるでしょうね。

 でも、そこで話しは終わりません。

 通常の二倍以上に常軌じょうきいっした男と、通常の三倍以上に危険な女のコがやりまくったら……

 最低でも、2✕3で通常の六倍以上にヤヴァイことになるのは、もう目に見えています。

 イチ銀河標準年に一人づつ。それぐらいの勢いで危険な坊やと危ないお嬢さんが増えていく。

 アディとか、サークとか、真面目に名前をつけていたのも最初だけ。

 そのうちジュウゾウ達みたいなナンバリングネームになって、ギンギラメタルなロボット乗組員ほどの数まではいかないでしょうが、通常の六倍以上の数に達したちっちゃいけれど手に負えない、危険な乗組員達がこの船を嵐のように駆け回ることになります。

 その嵐のド真中で、またもお腹がふくらんだサディさんが、

「ほら、アディ! 主砲は撃っちゃダメっていったでしょッ! ほら、サーク! ネガ席のペダルを踏んじゃダメッ!」

 と赤い瞳をギラギラさせて、最近また生まれた子供の口に、哺乳瓶ほにゅうびんを突っ込むことになってるんですよ。

 わかりますか?

 そーなっていないのは、無免許もぐりでクソ怪しいイカレ野郎だとしても、サディさん、あなたのことを真剣に考えて大切にしているからなんですよ。


 オクタヌーンの言葉にサディの想像力が刺激され、中枢神経細胞がここではないどこかの宇宙の光景を急速生成。

 サディの頭の中に、ぽってりお腹で哺乳瓶を手にして、十何番目の子供かわからない赤ん坊にミルクをやっている、なんかずいぶん老けた感じになった自分の姿が思い浮かぶ。

 ここではないどこかの並行宇宙にいるかもしれないあたしの銀髪は、きらりときらめくことは一切なく完全にくすんでいて、まるで総白髪そうしらがのようにみえてしまう……

 しかもその周囲には……

 アイアンブルーとガンメタルグレイで構成された艦橋を走りまわり、武器管制盤をおもちゃのようにいじりまわす、クソヤヴァイリアルショタとリアルロリ。

 そんなリアルショタとリアルロリを、般若はんにゃのようにギラつく赤い瞳でにらみつけてはガミガミ言ってる、血走ったお目々がイヤーな感じのくたびれきったあたし……

 うぉぉぉぉッ!?

 確かにそうだ! あたしはそういう未来に、ブチ込まれていた可能性もあるにはあった!!

 だぁぁぁ、がぁぁぁ、しかぁぁぁ、しぃぃぃぃ!

 あいつは今夜のむふふで素敵なふたりの約束を、思いっきりブッちぎってすっぽかしたわけなのだッ!

 

「オクタヌーンさんのおっしゃる通りです! ですがぁぁぁ! だとしてもぉぉ! 嘘をついてあたしをハメるのは、許せなくないですかぁ!?」

 とげとげメタルスタッズ付きオープンフィンガーグローブでガッチリキメた両手の指を、ワキワキさせつつワナワナと震わせながらサディは言った。

「いやー、あの人、嘘はついてないんじゃないかなぁ」

 奥からお盆を手にして出てきた、コタヌーンの声がのんびりと響く。

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