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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第六部

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機関長室でカフェラテを

機関長室でカフェラテを




「おー、めずらしいですなぁ」

 赤くするどいハードなレザースカートらして機関長室に現れた、ガチでバチバチにハードなバトルドレス姿のサディに、コタヌーンが言った。

「はあ、はあ……。戦闘服で失礼します。ちょっとワケありなわけでして」

 サディが息をととのえながら、赤く鋭いハードなレザースカートのすそを持って、コタヌーンに優雅ゆうがなしぐさで礼をする。

「あー、無免許もぐりの代行の件ですかなぁ?」

 だいたいの想像はつきますよ、という表情のコタヌーン。

「ですデスDeathッ! ここにきてませんか!?」

 イービル・トゥルース号の船首から船尾まで走りきり、いまだ息荒くハアハアしつつのサディの問いに、コタヌーンが答える前に奥から人影があらわれる。

「まあまあ、まずはお茶でも」

 はあはあと荒い息のサディに、オクタヌーンはそう言った。

 たった一隻でsynthetic streamに対抗し得る驚愕驚異きょうがくきょういの宇宙戦艦を、先っちょのドクロから素敵なお尻まで走りきったサディは、お言葉に甘えて機関長室の席に着く。

 簡素かんそながら温かみのある木製のテーブルに椅子いす。そして、いかにも家庭的なデザインのクッション。

 機関長室とは言うものの、ここはすでにヌーン夫妻の居間いまだった。

「せっかくお嬢さんがきてくれたんだから、とっておきをだしますかなぁ」

 そう言って、コタヌーンが機関長室の奥へと消えていく。

「どうぞ。かなり甘めに仕上げてあります」

 オクタヌーンがアイスカフェラテをすすっとサディの前に出してすすめる。

「いただきますッ!」

 怒りのあまり雄叫おたけびを上げ、乗組員各部屋のおナカに向けて背筋せすじが凍る素敵なお話をしまくり、さらには全力ダッシュで船内を駆け巡ったカラカラの喉に、サディがアイスカフェラテを流し込む。

「おいしぃぃぃ〜」

 サディから歓喜の声がれる。

「お疲れ様でございます」

 オクタヌーンが微笑ほほえみを浮かべる。

「だいぶお怒りのようですね?」

 触れたら切れてしまいそうなバトルドレス姿で、アイスカフェラテをごくごくするサディを、オクタヌーンがみつめて言う。

 ごくごくごく。

「おいしぃぃぃ〜」

 サディは空になったグラスを置いて、オクタヌーンに話し始める。


 だいぶではありません。激怒です。ゆるがた悪辣非道あくらつひどう卑劣行為ひれつこういです。

 あいつは誰もいないところで、視覚拘束具を外してあげると言った。

 だ・か・ら・あたしは、自分のお部屋でアークが視覚拘束具を外しにくるのを待ってたんです。

 みての通り、ガチでバチバチにハードな戦闘服姿ということになっていますけど……

 これは戦時を言い訳にした、アークにあたしの魅力をみせつける、大流血大サービスの大勝負服でもあるわけですよ!

 そしてついさっきまであたしは、そういう素敵な服に身を包み、自分のベッドのうえで正座して、お膝のうえで両手をあわせて!

 いまかいまかと、素敵な大勝負服をアークにはぎとられて、むきだしのあたしになるのを待っていたんですよ!!

 確かにあたしは、一人前以上の男が手を出して美味しくいただいてもダイジョウブな、合法年齢を通過してはおります。

 ですけども、純真無垢じゅんしんむくな心を持った、わかーいわかーい女のコなんですよ。

 それはもう心臓はバクバク! 胸はドキドキ!! 

 頭の中はあんなことやこんなことがぐーるぐる!!!

 あたしの中枢神経細胞が生み出す大宇宙を駆け巡るのは、ピンク色した閃光たちですよ!!

 そうしたら、いったい何が起きたと思いますか?

 たった一人でアークを待っているあたしの部屋に、視覚拘束具を外しに来たのは……

 ギンギラメタルボディのジュウゾウだったんですよ!!!

 しかも、アークであることを偽装ぎそうするために、アークの鋼鉄入りブーツまでジュウゾウは履かされてたんですよ!

 そんなわけでもってジュウゾウは、まんまとアークのふりをしてあたしの部屋を訪れ、おしとやかにベッドで正座して、素敵なドレスをむかれて襲われるのを待っている私の視覚拘束具を、背後から外したんですよ。

 アークだと思っていたのが、ギンギラメタルボディのジュウゾウだってわかった時は、そりゃあもう世界が真っ暗になった気がしました。

 大宇宙のケツの大穴、ブラックホールに落ちたのかもと、あたしは思いましたよ。

 あたしの意識は事象の地平面を突破して、特異点へと落ちていく……

 サヨウナラ。あたしのめくるめくるピンク色の夜……

 そして……

 大宇宙の漆黒しっこく、石炭袋の底から次にわきあがってきたのは、真っ赤な溶岩みたいな煮えたぎる怒りでした。

 いいえ、溶岩なんてあまいもんじゃありません!

 あれは次の宇宙がはじまっちゃったかもしれない、大爆発級の熱い怒りでした!

 私はすぐに抱きつきからタックルに移行して、ベッドから床の上に舞台をうつしてジュウゾウを徹底的に絞りあげました。

 さらに部屋の電源からとってきた、高級極まるたかーい電気を何回も流してあげて、ジュウゾウの電子頭脳回路に歓喜かんきってやつを渦巻うずまかせたんです。

「オネガイデス! デンキハモウタクサンダ!」

 そうやって泣いて喜ぶジュウゾウに、洗いざらいことのしだいを吐かせたんです。

 そうしたら、全部アークの差し金だってジュウゾウが言うじゃないですか!!

 許しがたいッ!

 またあのイカレ野郎は、指一本挿れてきもしないくせに、あたしをハメて!

 純真じゅんしんな乙女心ってやつを徹底的にもてあそんだんですよ!

 自室のベッドの上で、たった一人で視覚拘束具を着けたまま正座して、きれいさっぱり服をむかれてむきだしにされて、襲われるのを待っているわかーいわかーい女のコに、機械仕掛けのイクト・ジュウゾウを送り込んで済ませるようなあの野郎!!

 ちいとも覚悟かくごが決まらないフニャンフニャンなおちんたまを、このバトルブーツで最低一発は蹴っ飛ばしてやらないと、あたしの気が収まるわけないじゃないですかぁぁッ!!!

 

 ガッツーン!

 サディのバトルブーツのかかとが、機関長室の床と接触!

 バッチューン! と赤い火花を散らす!

 テーブルのうえでは空になったグラスが宙へと飛び上がる。空中を舞うグラスをオクタヌーンが器用きようにつかみ、そっとテーブルに置き直す。

「この船を船首から船尾まで駆け抜けてきた理由。よーくわかりましたけど、アークはサディさんが思っているほど、悪辣非道あくらつひどうではないのかもしれません」

 オクタヌーンは自分のアイスカフェラテをひとくち飲むと、サディの瞳をじっとみつめてそう言った。

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