歌おう。死に絶えるまで殺戮を
歌おう。死に絶えるまで殺戮を
「スカイカイト艦隊群が動くよ! 主砲塔が旋回してる!」
主砲照準器にお顔を突っ込んだサディが叫ぶ。
スクリーンには、synthetic stream艦隊に射線を合わせはじめるスカイカイト艦隊群の光景。
「完全に終わったな……」
めいいっぱい倒したシートにごろんと寝転ぶアークが、アイアンブルーで構成された天井をみあげて深いためいきをつく。
「くっそがー」
ネガの明るい声が艦橋に響きわたる。
「これ……。いったいなんの意味があるんでしょう……」
気が遠くなるようなゆっくりとした速度で進んでいく、数百はあるであろう巡航ミサイル達を示す光点がレーダー盤のうえに瞬く。静止しているかと思うほどに、動きの鈍い無数の光点の明滅をみつめながら、AXEが言った。
「最後のあがきにもならない……。破滅的な滅殺を呼ぶ自殺的挑発行為と状況を判断せざるを得ません……」
ミーマがこれから起こるであろう惨劇の予感に震えながら言う。
「再現映像に出てきたスカイカイトの女王様。ちょっとサディさんみたいな感じ。ありましたものね」
タッヤがバンソロを弾き、これから起こるであろう被害を計算しつつ言う。
「ブッパナシタラ、ブッパナサレテ、ブッコロサレルゾ」
いまさら言っても遅いことを、イクト・ジュウゾウがハードに言った。
「ちょっとぉ? あたしに似ているところがあるとは、いったいどーゆとこがなの?」
ガンメタルグレイ色の構造物を、バトルブーツで蹴っ飛ばしはしなかったが、主砲照準器にお顔を突っ込んだまま、サディはタッヤにそう言った。
バンソロをぱちぱちと弾き終え、そこに現れた数字にタッヤは震え上がり、サディに何も言葉を返せなかった。
「俺たちは、いったいなにを撮りにきたのかわからなくなってきた。そうなっちまうくらい、あまりにもイカれ過ぎている。だが、理解不能の現実なんてのは、あまりにもありきたりにそこら中にあるのは確かな話だ。最後まで見届けよう。それが海賊放送船イービル・トゥルース号がやっている、海賊放送屋のしのぎってやつだ」
めいいっぱい倒したシートにごろんと寝転び、どんよりとにごった瞳でアークは静かにそう言った。
公開チャンネルに、魂を震わせるビートと、鋭く歪んだギターサウンドが流された。
アイアンブルーとガンメタルグレイで構成された艦橋に、躍動するビートが響き渡る。
アーク好みの熱い音楽。歌詞すら無いただの音楽。だがそれは……
Buzz Suckerノ夜行と名付けられた、鋭利に歪んだギターサウンドが奏でる殺戮の歌。
かつてBig Synthetic Empireが返り討ちにあい、皆殺しにされた屠殺場で流された音楽。
Space Synthesis Systemが心の奥底に押し込んで、忘れようとしていた事実を掘り起こし、狂気じみた憎悪を燃え上がらせる音楽。
そして遥か彼方の昔、嘘みたいな真実号だったかもしれないイービル・トゥルース号が、公開チャンネルに流して殺戮の凶行に及んだ音楽。
歌詞すらない。そこには言葉などない。だが、この音楽が表明する意志は、するどく研ぎ澄まされた刃物のようにつきつけられる。
「俺はお前らを皆殺す」
音階とリズムが混ざり合って疾走してなだれ込み、歪んだサウンドが絶叫する殺戮の歌。
スカイカイト星域領宙直前の公宙域で、殺戮の雄叫びが、いま再び真空を震わせた。
これから行われるであろう凶行を前にして、ただありのままの現実をみつめ続ける、海賊放送船イービル・トゥルース号。
それから先に起きたことは、もはや戦争と呼べるものではなかった。
戦争と呼べるようなことではなかったとは言え、Space Synthesis Systemが積極的平和主義などと呼ぶ、口当たり良く耳に心地よい言葉がふさわしいものでもなかった。
いま目の前で起きたことは、あまりにも凄惨で惨憺たる結果を生み出した惨状だった。
気が遠くなるようなゆっくりとした速度で、スカイカイト星域艦隊群を目指し、ドンブラコードンブラコーと宇宙空間を進む多数の巡航ミサイル達は、ダークピンクの閃光に呑まれ、あっという間に消滅した。
ミライルだけ消してサヨウナラ。
そんな都合の良い極大威力のビーム兵器は実在しない。
多数の巡航ミサイルを呑み込んだダークピンクの閃光は、そのまま宇宙最速の速度で直進し、Space Synthesis System 積極的平和主義推進使節団(せっきょくてきへいわしゅぎすいしんしせつだん)へ到達。
私番号樹脂板システムによって統合統制統一された、前代未聞の同士撃ちによってすでに半壊していた艦隊は、もはやアンチ・エネルギー・シールドに回す余力をほとんど持っていなかった。
大事な大事なアンチ・エネルギー・シールドという膜を、残酷なまでの残虐さで無惨にブチ破られて、否認することのできないナマの戦争を、すべての艦のナカのオクへとブチこまれ続けた。
ダークピンクの閃光は、あらゆる艦の内部をドログチャに溶かして壊して掻き回し、メチャクチャにねじくれた無機物とグチャドロの有機物の混合体を生み出し、あらゆるものを命なき物質へと変え続けた。
金属で構成された重要機関が溶けて歪んで砕け散り、機能を失った不純物だらけのねじくれた粗悪なマテリアルまで戻された。
有機物で構成された生命体は、その肉体が蒸発して消失し、死を認識するいとまさえあたえられることなく、次々に生命を無くしていった。
即死をまぬがれた生命体は、ブチ破られた艦から真空の宇宙へと吸い出され、かしこで爆ぜる艦がうみだす破片に切り刻まれて、もはや知的生命体ではない有機物の断片へとかえられていった。
駆逐艦が、軽巡が、巡洋艦が、重巡が、巡洋宇宙戦艦が、宇宙戦艦が、そしてもっともドでかいミスター宇宙戦艦様が、かしこで爆ぜて散っていった。
きらめく星が満ちる海のただなかに、爆沈し、爆裂し、爆散がつくりだす戦火のきらめきが、残虐的に美しい大輪の華を咲かせた。
破滅の華が崩れ砕けて散った後には、散華した生命体の残骸が肉片の塵となって、宇宙空間へ四散していく。気圧零の宇宙で流された血は一瞬で沸騰して蒸発し、すべての肉片は急速にフリーズドライされて、永久保存された惨劇の残滓となって、どこか遠い宇宙の果てに存在する、あらゆる死骸が最後に流れ着く墓場へと、捻じくれ曲がり引きちぎられた破片達と混ざり合って流れていった。
殺戮が生んだあまたの残骸と死体が生み出す死の濁流が、星の海のどこかに存在する永眠のふきだまりへむかって、ゆっくりとゆっくりと流れていく。
アークはめいいっぱい倒したシートに寝転がって、その惨劇をすべてみた。
歌詞すらない、熱くてハードでヘヴィな音楽にのって、純粋混じっり気なしのむきだしの暴力が、星の海に戦火のきらめきを瞬かせ、すべてを破壊し尽くし、あまたの命を宇宙の真っ黒い石炭袋の底へとつぎからつぎに送り込んでいくのを、にごった瞳でみつめていた。
「これが戦争ってやつだよ」
アークは静かにそう言ったが、その声はアイアンブルーとガンメタルグレイの艦橋にいる、誰にむけられたものでもなかった。
大きな声では言わないけれど、今まで何人も殺してきたサディは、主砲照準器にお顔を突っ込んだまま、殺戮の炉と化した宙域をみた。
あたしは戦うのが好きなんだ。
たった一人の、めっちゃ体重軽い女の子に過ぎないあたしが、圧倒的に強大な存在である群がるsynthetic streamどもに引き金を引くのさ。
体重だけはあるけれど、どうがんばってもタダのおっさんに過ぎないくせに、やたら強権的にビッグな態度で権力と暴力をふりかざし、ちっちゃなあたしを無理やりハメようとしてくるヤツを、どこにもいやしない神様のかわりに、次々に地獄に叩き落としてやるのがあたしは好きさ。
だけど、今目の前にある光景は、そんなちっちゃなあたしが立ち向かう戦いの世界とは、まったくもって全然違うものだった。
ただそこには、一方的な殺戮だけがあった。抵抗するとか、抗うとか、そんなことが一切入り込めない、純粋なる殺戮があった。
先に撃ったのはsynthetic streamだった。
そんなことはわかっていた。
だけど……
いま目の前で繰り広げられるのは、流血などという言葉ではおさまりきらない、星の海を染める血の濁流だった。
大きな声では言わないけれど、あたしはいままで何人も殺してきた。
ただし、生物学的に精神的にそして性的にあたしを殺そうとしてきた奴らをだ。
いま目の前で死んでいるのは、そういう類の奴らなんだろうとわかってはいる。
でも、あまりにも一方的過ぎる。
牙を向き爪をたて、互いを殺そうとむさぼりあう。
そういう戦いなんかじゃない。
自分が殺されるかもしれないリスクを背負って、もうこうなったら殺し合うしかないのだと、ビビりながら足を踏み入れる世界なんかじゃない。
ただ一方的に相手の生命を貪り殺す。その光景は、ザディの心にトゲを刺す。
邪魔になるほどデカくなるつもりはないけれど、まだまだ大きくふくらむ予定のあたしの素敵な胸の中にいる心を、鋭いナイフの先がつんつんと突くような痛みを、サディは感じていた。
レーダー盤のうえから、次から次に消えていく光点を、AXEはみつめていた。
消えていく光点ひとつが、数百単位の知的生命体の命であることが、AXEにはよくわかっていた。
私はなぜ、こんな殺戮が吹き荒れる屠殺場みたいな宙域の前にいるのだろうか?
かわいいパンダマークがご自慢の、ファンシー雑貨貿易船に就職したつもりはもとよりなかった。海賊放送船などと名乗ってはいるけれど、どう考えてもヤヴァイ船だとわかっていた。
45口径46銀河標準センチメートル砲三連装四基十二門を背負い抱くのに、かたくなに船と名乗り続けるあやしい職場は、あまりにも自由だった。
服装自由。髪の色自由。肌の色自由。瞳の色自由。種族自由。性別自由。経験経歴学歴不問。勤務時間は船に支障がない限り自由。
船内恋愛禁止などとは、どこにも書いてないし言われてもいないが、モフモフ羽毛がかわいいタッヤさんは別枠扱いで、私の標的になるようなまともな男はひとりとして乗ってない。
掃除雑用その他もろもろ、ロボット乗組員が担当いたします。だから、数百人規模が乗り込み生活できる船は、二桁未満の野蛮生命体が使い放題。
そのうえ、イカツイ艦長服を着たパンダのぬいぐるみが、たった一隻でsynthetic streamに対抗し得る驚愕驚異の宇宙戦艦の最高責任者でありオーナー様なのだと無免許もぐりの航海士が断言する、ぶっ飛び過ぎた自由に満ちた船。
それが私が乗る船。海賊放送船イービル・トゥルース号。
かつて私は自由に生きたいと願っていた。
そしてある日、いつかの過去にどこかで起きた嘘みたいだけど本当にあった運命の交差が、私をこの船と出会わせた。
もしかしたらこの船なら、あらゆる星とあらゆる考えとあらゆる想いが、勝手気ままに暮らせるほど広い宇宙を、どこまでもどこまでも自由に翔けることができるんじゃないかと思って乗り込んだ。
45口径46銀河標準センチメートル砲三連装四基十二門を背負い抱くこの船は、確かに私を乗せて、自由すぎる星の海の世界へとぶっ飛ばし、未だに私はこのシノギから降りていない。
確かに自由だった。
だけど、いま、私はここにいる。
大宇宙をたったひとつにせんと流れる不可解な潮流、synthetic streamが血の濁流へと変えられていく、戦争とは呼べないような殺戮の前に、今私はいるわけで。
目を覆いたくなるような情報が、次々に表示され続ける自席で、ミーマは緑の瞳をうるませながら状況を判断していた。
情報表示盤に踊る数字が涙でにじむ。この数字が意味することは、絶望的な暴力が生み出す、あまりにも多すぎるまじっりけなしの死だ。
すさまじい速度で増えていく数字。止まることのない砲撃。情報分析状況判断士でなくたって、誰だってわかる邪悪なる真実。
この殺戮は、みんなが死ぬまで終わらない。
戦争にはルールがある。宇宙戦争にだってもちろんルールがある。ルールは守られるべきだ。
降伏とか、捕虜とか、停戦とか。そういうことがあるのはわかっている。
だけど……
フェアバトルの精神で、正々堂々(せいせいどうどう)バトルパーソンシップにのっとって戦いまーす!
そんなことが、現実の戦争であり得るわけがない。
もしもそんなことを前提に戦争を考える者がいるとするならば、そんなの夢物語に過ぎないお花畑が頭の中にパンパカパーンだということを、ミーマはよくわかっている。
現実はいつも、残酷なまでに残忍で残虐だ。
暴力と暴力が互いにあらゆる手段を使って、あらゆる理性をかなぐり捨てて殺し合う、それが現実の戦争なんだと頭の中ではわかってはいる。
その引き金を先に引いたのは、synthetic streamだった。
積極的平和主義抑止力顕示(せっきょくてきへいわしゅぎよくしりょくけんじ)とか言ってやらかした、あの艦隊直上に向けての威嚇射撃。
そして、無意味に過ぎる大量の鈍足ミサイル発射行為……
それが殺戮の炉に火をくべた。
かつて、Big Synthetic Empireに、引き金を先に引かれたことがあるスカイカイト星域は、二度目の蛮行にたいして一切の容赦をしないだろう。
ここは大宇宙のかたすみに存在する、まだ誰のものでもなく、どんな法もまだ存在しない、どこにも悲鳴が届かない公宙域。
この殺戮は、みんなが死ぬまで終わらない。
どうしてそのことを、synthetic streamは状況を判断できなかったのだろう?
私にだって、いや、知的生命体と呼ばれるものだったら……誰にだって判断できるはずのことなのに……
どうして?
ミーマの緑の瞳からこぼれた涙が、情報表示盤へポタポタと落ちていく。
恐るべき数字を弾きだしたバンソロを前に、タッヤはガタガタ震えていた。
眼の前で行われている殺戮によって、これほどの数の知的生命体が死ぬのかと。
タッヤは自分で計算したことがある。この広過ぎる宇宙で、どれだけの確率で生命が誕生し、そのなかから高度な知能をもつ知的生命体が現れるのかを。
その確率は、あらゆる星とあらゆる考え方とあらゆる想いが、自由勝手気ままに存在できるほどに広過ぎる宇宙にあっても、そう簡単にはおこりえないものだった。
簡単に言ってしまえば、高度知的生命体が宇宙に存在するのは、奇跡に等しいということだ。
宇宙はあまりに広いから、確率的に奇跡的なことが実際にいくつも起こってしまって、ぜんぜん奇跡ではないように思えてしまう。だけど本当は、あらゆる高度知的生命体の存在は、まぎれもない奇跡であることに違いない。
そんな奇跡の存在が、科学と技術を発展させて、重力をふりきって母星を飛び出し、本当の自由が存在する可能性が満ちる宇宙を飛び交うところまでいったのに……
なぜ、いつもいつもいつも、宇宙戦争に至るのか?
なぜ奇跡同士が互いを殺し合うのか?
大宇宙の果てにたどり着いた者はまだいない。こんなにも広過ぎる宇宙にあって、なぜ知的生命体達はよってたかって集まって、互いを殺す選択を選ぶのか?
タッヤにはわからない。どんなにバンソロを弾いてもわからない。
イクト・ジュウゾウは、サディが次から次にとらえる残酷動画を、ソリッドステートストレージに記録し続けていた。
次々に破壊され、ねじくれ歪んだスクラップへと変えられていく、巨大精密メカ達。
アイツラモ、オレノドウルイナノダヨナ……
キカイハシナナイ
ダカラ、シゴノセカイハ、モトヨリナイ
ダケド……
「ロボットニ、ジンケンヲ」
イクト・ジュウゾウは、たんたんと記録を続けながらそう言った。
あらゆる人権を蹂躙していく血の濁流の前で、ジュウゾウの中枢制御部を構成する回路には、いったいどんな波形が流れているのか。
ネガはガスマスクのレンズの先を流れていく、血の濁流をみつめていた。
クソがクソがクソがクソがクソがクソがクソが!
世界はどうしてこうもクソなんだ?
男はクソだ。女はクソだ。二人はクソだ。みんなはクソだ。社会はクソだ。国はクソだ。つまり世界はクソだ。
クソがクソがクソがクソがクソがクソがクソが!
ガスマスクのレンズの先を流れる血の濁流。こんな血まみれのクソみたいな世界から逃げ出したい!
イービル・トゥルース号よ。
そのケツに青い炎を燃えあがらせて、銀河をのみこもうと流れるクソ濁流から、俺をここではないどこかに逃げ出させてくれ。
艦橋から転送された、凄惨な画像がうつる機関室のモニターを消して、コタヌーンはエニグマ・エンジンをみあげる。
計算上あり得ない出力を叩き出す謎のエンジン。
こいつが鬼火のような青い炎を燃えあがらせて、この船を戦場へと突っ込ませていかなかっただけで、良かったなぁ。
我ながら残酷な考えが浮かぶものだと、コタヌーンは思う。
なのに私は、優しいと誤解されることが多いからなぁ。
コタヌーンは思う。
優しいから怒らないのではないのだと。私はただ冷酷なだけなのだと。
どうでもいいから、私は怒ることもしないのだと。
なのに、世界はわりとどうでもいいことで怒り続ける。本当に大事なことには怒らないのに。
世間様ってのは、よくわからないバケモノだなぁ。
そんなよくわからないバケモノは、いつか制御不能な巨大な怪物になって、あらゆるものを貪ろうと動き出し、こんな惨劇をおっぱじめてしまう。
コタヌーンは深いため息をつく。
大量殺戮の真っ最中に、謎の出力を叩き出すエニグマエンジンをのんびりみあげるコタヌーンの背中を、オクタヌーンはみつめている。
長い付き合いになるのだけれど、謎の多い人なのかもしれないと。
本当はあの人のことを、私はほとんど知らないのかもしれない。
連れあってからも長いのだけど、時が流れれば流れるほど、衝突することが増えるのはなぜなのだろうか?
さっきまでモニターの中に映し出されていた惨劇。
たったふたりの知的生命体が、これだけ長く連れあっても衝突が起きるのだから、戦争が起きるのもしかたないと思うこともある。
だけども、モニターの中に存在する殺戮は、取り返しの付かない結果しか出さない。
なぜ知的生命体はうまくやれないのだろうか?
あらゆる計器類が異常な値に突入していく、この謎だらけのエンジンは計算上は全く成立しないのに、なぜかうまくやっているというのに。
世界は不可解で不条理過ぎる不可思議なものなのかもしれません。
オクタヌーンは深いため息をつく。
あらゆる想いが渦巻く、海賊放送船イービル・トゥルース号の艦橋。
その最奥に存在する艦長席で、いまだにメタルケーブルでぐるぐる巻きにされているパンダ船長は、そのつぶらな瞳でまっすぐに前を向いて、ブ厚い硬化テクタイト製スクリーンに投影される惨状をみつめている。
アークがイービル・トゥルース号と出会う前から乗っている、この船最初の乗組員。
イカツイ艦長服姿のパンダ船長が、いったい何を思うのか?
それは誰にもわからない。
大変ながらくのご愛読ありがとうございました。
海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険、第五部・完
明日、日曜夜より第六部が開幕し、イービル・トゥルース号は新たな冒険へと船出します。
新しい冒険の日々に、再び君が海賊放送船に乗り込んでくれることを願う。




