おまえは誰だ?
おまえは誰だ?
次の森羅万象絶対無謬総裁総理総合枢軸統一元帥総統陛下(しんらばんしょうぜったいむびゅうそうさいそうりそうごうすうじくとういつげんすいそうとうへいか)になられる、有能極まる我らが頂点!
効能多漏閣下の御前に、ご報告をさせていただきます!
我らが栄光の積極的平和主義推進使節団(せっきょくてきへいわしゅぎすいしんしせつだん)に内乱を巻き起こした、真なる原因。
つまりはシン・ゲンインが調査の結果、ついに発覚させていただきました!
事態は大惨事の渦中にいまだあり!
まずは結論から申します。
積極的平和主義推進使節団(せっきょくてきへいわしゅぎすいしんしせつだん)の全艦船を統合統制統一する、私番号樹脂板システムに、重大なる不具合があることが発覚いたしました。
最初に発生した三番艦隊による背後からの一斉射!
この大惨事の原因は、先頭一番艦隊に対して発せられたスカイカイト艦隊群への一斉射命令が、誤ってしんがりをつとめる三番艦隊に到達したものでありました!
積極的平和主義推進使節団(せっきょくてきへいわしゅぎすいしんしせつだん)の最後方をつとめる三番艦隊は、私番号樹脂板システムからの命令通り、自艦隊の正面に存在する艦隊、つまりは積極的平和主義推進使節団中枢構成艦隊(せっきょくてきへいわしゅぎすいしんしせつだんちゅうすうこうせいかんたい)の後方部に一斉射を叩き込みました!
続いて、旗艦キシガ・イフミーオが両翼より挟撃された、二回目の斉射についてご報告させていただきます!
これは裏切り者と判定された、しんがりをつとめる三番艦隊を挟撃殲滅するために発せられた、八番及び九番艦隊へ向けての挟撃一斉射撃命令が、旗艦キシガ・イフミーオの両翼を固め絶対安全安心な五重の防御壁を形成する、六番及び七番艦隊に誤って到達したことが発端です!
六番及び七番艦隊は、私番号樹脂板システムからの命令通り、自艦隊横に存在する旗艦キシガ・イフミーオが構成する一番艦隊へ、一斉射による挟撃を叩き込んだのです!
私番号樹脂板システムは、すべての艦船を私番号樹脂板に登録ひもづけ、統合統制して統一管理するものです。
ですが、システム自体の不具合か、あるいは情報の登録時に艦船が取り違えられ、誤ったひもづけのままシステムが稼働している可能性が非常に強く、それによってあらゆるコト物が錯綜し、同士討ちに至ったも
「絶対完璧なシステムを台無しにする、なんという現場の過ちだぁぁぁぁ! 次の報告ッ! どうぞッ!」
効能多漏の高級革靴キックが、報告中の権畜ナンバーズに炸裂!
玉座の前から蹴落とされ、階段をのたうちまわりながら転がり落ちた権畜は、動かくなくなった。
「私番号樹脂板という、完全無欠の統合統制統一デジタルシステムを、貴様ら現場のつまらない入力ミスが台無しにした! 最低限朝の4時まで全員残業して、徹底的な総点検を実施し、問題点を発見しだい現場の責任でもってなんとかしろッ! 私番号樹脂板自体にはなんらの問題もなく、システムを壊滅させるやらかしをしでかしたのは、すべて現場をあずかる貴様らだ! つまりは、指揮命令系統の頂点たる、有能極まるこの私にはなんの責任もなく、私が有能であることには一切の疑念疑惑疑問などありはしない! それは一点の曇もない事実なのだぁぁぁ!」
ブツリ。
何かが物理的に切れる音が、アベガスキー5663の中枢神経細胞の内部にひびいた。
「おまえは、誰だ?」
金ピカ時計ロレックズが自慢の、アベガスキー5663はそう言った。
「なんだ? いまなんと言った?」
効能多漏がアベガスキー5663の瞳を、危険なpower harassment shockwave (権力乱用い・や・が・ら・せ)光線が宿った目でにらみつける。
「おまえは誰だ? と言ったんだよ」
アベガスキー5663が、金ピカ時計をはめているほうの手で拳を固め、効能多漏の頬をぶん殴る。
「あひゃあ!」
効能多漏は間抜けな声をあげ、目を見開いて殴られた頬を手で押さえて震え上がる。
「お、お父さんにも殴られたことないのにッ!」
効能多漏の、無能な坊やみたいな台詞が響く。
「お父さんとは、効能傭兵団を率いる男のことか?」
効能多漏をぶん殴った衝撃で動かなくなった、金ピカ時計のロレックズを拳に巻き付けながら、アベガスキー5663はそう言った。
「そうだよ! 効能傭兵団を率いる、偉大なお父様のご子息であるこの俺を殴ったな! 貴様、完全に死んだぞ! これは匿名で人を批判と称して誹謗中傷でぶん殴る、そういう卑劣な行為を超える、本物の暴力行為だぞ! ブロックなどなまぬるい。貴様の命を生物学的にブロックして、永久に冷たく凍結するに足りる重大事案だ!」
「ふむ。なかなか面白いことを言う。だが、俺はおまえが誰か知らない。効能傭兵団を率いる団長様のご子息というのが、まずもって疑わしい」
アベガスキー5663が、金ピカ時計のロレックズを巻き付けた拳を、効能多漏へと叩き込む。
ロレックズを巻いた拳が、クズの腹にするどく食い込み、クズの口から悲鳴を吐き出させる。
「ぐっふぅぅぅ!」
効能多漏は悶え、玉座のうえで反吐を撒き散らす。
「効能傭兵団を率いる団長様のご子息だ? その証拠をみせてみろ。団長様のご子息という身分を証明する、私番号樹脂板をみせてみろ」
効能多漏の髪をつかみあげ、血走った目でにらみつけるアベガスキー5663。
「おまえは……バカか? 愚民に過ぎぬ銀河臣民の頂点に立つ上級存在、銀河神民であるこの俺様が、システムを維持するためだけの存在である、畜生どものすべてを管理するために作られた、私番号樹脂板なんか持っているわけがないだろうが……。あれは搾取されるために生まれた使い捨ての畜生どもにつけられた、管理用のナンバープレートなんだよ!!」
口から血反吐を吐き捨てながら、効能多漏はそう言った。
「ならば、おまえの身元身分は一切不明。出どころわからぬどこの生命体の骨ともわからぬ、正体不明のクソ怪しい正真正銘のクソだということだ!!」
アベガスキー5663が、金ピカ時計のロレックズを巻き付けた拳を、効能多漏へと次々に叩き込む!
くらえ! くらえ! くらえ! 俺の怒りをくらえ!
おまえに殺されていった部下達の怒りをくらえ!
沈んでいった艦の怒りをくらえ!
今はもう動かない、俺の金ピカ時計の怒りをくらえ!
ロレックズを巻いた拳が、クズの顔面にするどく食い込み、身元身分一切不明の何者かしれぬクズの顔面を、グズグズのぐしゃぐしゃに叩きつぶしていく。
打ち下ろされる金ピカの鉄拳! 無能な存在を打ち砕く、金ピカの鉄槌!
傲慢で不遜で尊大な、いけすかない正真正銘の無能なクソを突き潰す、金色にピカピカと輝く鉄拳制裁!
飛び散る血しぶき! 弾け飛ぶ歯!
悶えてわめきちらす効能多漏の悲鳴が、悲惨な響きで循環空気を震わせる!
振り下ろされる金ピカの鉄拳が、クズの性根を叩き直していく!
有能を標榜しながら、なにひとつ抗うこともできぬ無能がのたうちまわり、アベガスキー5663のすさまじい怒号が戦闘指揮所に響きわたる!
なんという無能だ!
俺はおまえの無能さに震えあがる!!
おまえは裕福な家庭に生まれ、高額の授業料を要求される、高度な教育を受けられる学校にも通った!!
凡百の一般知的生命体が受けられない高度教育を受けて育ったお前が、凡百の一般知的生命体をはるかにしたまわる、稀代の空前絶後なる超絶無能であることが、俺にはまったく理解できない!!!
なにひとつ、自分自身の手で成した仕事がないではないか!
なにもかも、現場任せの現場責任! 失敗したら自己責任!
成功したなら、あとはよきにはからえと全部丸投げした俺の手柄!
無能に過ぎる! おまえは無能に過ぎるのだ!
無能であるだけであったならば、おまえを哀れむことも、俺はできただろう……
だが、お前は! 限度を超える無能さだけではないのだ!
大宇宙にのさばる反社会的集団のヤカラにも劣る、粗野で尊大でビッグに過ぎるデカい態度で、俺達のように現場に生きる知的生命体を徹底的に愚弄する!
だから俺は、おまえをかわいそうなどとは、これっぽっちも思えない!
俺はおまえが許せない!
ここまで愚鈍で愚劣な劣悪に過ぎる悪党の大臣までに、おまえが成りあがったのが許せない!
どこまでも絶対に許すなと、俺の心が叫んでいる!
俺が俺様だというのだから、俺が俺様であることをおまえらは認めろよ! などとおまえは賢しげに言っている!
バカもやすみやすみ言え!
寝言を超える駄法螺は、永眠してから言え!
一般知的生命体が求められる最低限の礼儀と道理を、高額極まる高度教育を受けて育ったお前は、まるでなにひとつわかっちゃいない!
いまはもう動かない、金ピカ時計のロレックズがピカピカ輝く黄金の鉄拳を食らうたび、なぜこうなったのか死ぬ気になって考えろ!
だが、無能極まるおまえが、こたえを出せるとはまるで俺は思えない!
だから答えを言ってやる!
つまりおまえは、正真正銘混じりっけなし、純度100%のクソなのだ!!
打ち下ろされる、金色にピカピカ光る鉄拳と鉄槌。
まじりっけなしの純粋極まる研ぎ澄まされた言葉が、詳細不明正体不明身元不明(しょうさいふめいしょうたいふめいみもとふめい)のクソ怪しいクズの心に、残忍に切り込んでいき、残酷すぎる現実の激痛を中枢神経細胞に走らせる!
効能多漏は泣いた。
どんなに耳をふさいでもブロックできない、アベガスキー5663の混じりっけ無しの本音にあふれる、痛烈な言葉に泣いた。
なんという誹謗中傷だぁぁあ!
侮辱だ! なんという侮辱だ! 俺の名誉が汚される!
俺の心がちぎれる! 俺の臓腑がにえくりかえる!
俺を無能と呼ぶおまえらは、しょせんは権力に消費される犬畜生!
大量生産大量消費、使い捨てられるのが大前提の下級銀河臣民だろうがよぉぉぉ!
悔しい! 許せぬ! 理解に苦しむ!
まったくもって認められない!
否認してやる否認してやる否認してやる否認してやる否認してやる否認してやる否認してやる否認してやる否認してやる否認してやる否認してやる否認してやる否認してやる否認してやる否認してやる否認してやる!
何もかもを社会のせいにしやがる犬畜生どものわめき声など、有能なる俺がすべて遮断してくれる!
なのに!
有能極まる俺は、どうしてこいつらをブロックできない!?
金ピカの閃光を放ち、振り下ろされる鉄拳と鉄槌! 叩きつけられる暴言は止まらず、誹謗中傷は俺を一方的に蹂躙し続ける!
これはいったい、どういうことなんだぁぁぁぁッ!?
そしてどうして、こいつらこんなにバカで無能なのか?!
大自民統一教会党に所属する有能なる俺に、こんな暴力をふるってただで済むと思っているのかぁぁぁ!
権力をふりかざし、一方的に蹂躙することが許されるのは! 権力者様だけなのだぁぁぁ!
私番号樹脂板なんか持っていなくても、俺が俺であることは、この俺がそうだと言って証明しているだろうが!
この俺様は! 逆らうことなど絶対に許されぬ! 権力者様だとわかりやがれぇぇぇぇ!
どうしてそんな当たり前のことが、こいつらはこれっぽっちもわからないのか!?
私番号樹脂板を持っていないだけで、俺を俺様と認めない愚劣ども!
大量生産され大量消費されて使い捨てされていくだけの犬畜生!
下級一般知的生命体の群れどもが!
そんな愚民どもが! 有能なる俺を、まるで下級銀河臣民のように、踏みつけることができるのはなぜなのか!?
こんなことはありえない! 支配層がつくりあげた仕組み的に起こり得ない!
許せない! 許せない! 俺の偉大さを認めないおまえらが許せない!
俺を足蹴にするがごとく、叩き殴りつけてくるおまえが許せない!
俺様の心に一切の配慮などなく、誹謗中傷という暴力をふるう犬畜生どもが許せない!
ああ、俺は、あまりにも理不尽な暴力に蹂躙されたのだ。
俺はなんと不幸なのだ。俺はなんと可哀想なのだ。俺はなんと不憫なのだ。
顔が痛い。腹が痛い。心が痛い。あらゆるところが暴力に蹂躙されて、ぐちゃぐちゃのめちゃくちゃにされて痛んできしむ!
偉大なほどに有能な俺を、踏みつけるこの現実の理不尽さ!
こんな世界をつくった神は、正真正銘の無能なのだと俺はいま確信する!
顔面をぐしゃぐしゃにつぶされた、どこの生命体の骨ともわからぬ、私番号樹脂板を持たないイチ生命体がむせびなく。吐き出す血反吐とこぼれる落ちる歯に混じって、大粒の涙がとめどなく頬を流れ落ちていく。
泣きに泣く効能多漏だったモノをを無視して、アベガスキー5663はドBLACKな壺鉤十字を頂点に掲げる、華美な戦闘指揮所にむけて語り出す。
効能多漏はクソだ。
私番号樹脂板システムはクソだ。
なにが統合統制統一システムだ。
無能な効能多漏みたいな、何もかもを糞味噌にクソ統合統制統一した、マジクソカスのかたまりだ。
正真正銘のクソは、クソの役にも立たん。
数兆ゼニーをつぎこんだ末にできあがった、正真正銘のクソのカタマリによってひもづけられて戦うなどということが、すでに妄想領域に突入したの無能のクソがまき散らす駄法螺だ。
さっきまで旗艦に座乗しておられた、効能多漏閣下はどこを探してもみつからん。
効能多漏閣下を自称する、私番号樹脂板すら所持しないこいつは、いったいどこの生命体の骨ともわからぬ。
詳細不明正体不明身元不明(しょうさいふめいしょうたいふめいみもとふめい)の、私番号樹脂板を持たぬクソのかたまりみたいなゴミカスが転がっているだけだ。
積極的平和主義推進使節団(せっきょくてきへいわしゅぎすいしんしせつだん)は、事実上その機能を停止し、すでに組織的行動は崩壊している。
ならば、俺達は自分自身の思考と判断をもって、自ら生きのびる手段を選択し実行せねばならぬ!
ここから俺は、自分で考え、自分の言葉で、自分自身の行動をもって生きるぞ!
まずは手始め。
全艦に撤退命令!
繰り返す! 全艦に撤退命令!
大事なことだから三回言うぞ!
全艦に撤退命令!!
どれだけ私番号樹脂板システムに致命的な不具合があろうと、全艦への一斉撤退命令であるならば、どう取り違えようと全艦に届くはずだ。
全艦撤退! 繰り返す。スカイカイト星域周辺公宙域から、全艦撤退せよ!!
アベガスキー5663が突然にブチギレてブチかました、効能多漏への金ピカ鉄拳制裁を前に呆然としていた権畜ナンバーズ達は、アベガスキー5663を見上げたまま、恐怖に染まった表情を浮かべて絶句している。
「部下達よ。心配は不要だ。この責任は現場トップの俺が取ると断言する!」
アベガスキー5663はニヤリと笑うと、金ピカ時計を巻いた拳でボカンともう一発、効能多漏だった者をこづく。
現場トップの英雄的な行動と大英断に、権畜ナンバーズ達が、すさまじい速度で拳を天に突き上げて応える!
「イエス・マイ・責任者!!!」
その叫びは、ドBLACKな壺鉤十字を頂点に掲げる華美な戦闘指揮所を震わせ揺らし、歓喜の波となって旗艦キシガ・イフミーオ内部をかけめぐった!
「全艦に告ぐ! 撤退命令! 撤退命令がくだされた!」
「帰れるぞ! 故郷に帰れるぞ!」
「おかあさぁぁああん! 死ななくていいんだ! 死ななくていいんだぁぁ!」
私番号樹脂板システムに、全艦一斉撤退のコマンドが発せられる!
どこをどう取り違えようが、全艦への一斉撤退命令であるのならば、どれだけクソ致命的な不具合をかかえたカスシステムでも絶対届くはずだ!
「信じろ! 生きて故郷に帰れると!」
理解不能の致命的な不具合を抱えた私番号樹脂板システムに、全艦一斉撤退命令が流し込まれていく!
本宙域に展開するSpace Synthesis System全艦へ!
すべての責任をお取りになられると断言された現場責任者様より、たったいま撤退命令がくだされた!
この命令に従った貴殿らに、一切の責任は存在しない!
命令に従え! 即時この命令にしたがえ!
一斉射の直撃によって姿勢制御不能におちいった艦に告ぐ。
その場で待機し、近くの艦に押してもらえ。
180度の回頭さえできれば、この宙域からの脱出はできるはずだ。
Space Synthesis Systemは自己責任の世界だが、アホウタロウな無能野郎の命令で、こんな地獄まで連れてこられちまった仲間じゃないか!
きっと助けの手をさしのべてくれる僚艦がいる!
信じろ! 信じるんだ! 絶対助かると強く信じろ!
まるでアホウタロウのケツのアナみたいな同士討ちの果て、壊滅寸前におちいった積極的平和主義推進使節団(せっきょくてきへいわしゅぎすいしんしせつだん)すべての艦の通信機が、撤退命令をがなるがなる!
「無能駄郎な効能多漏をぶん殴った、現場トップの英雄が、全責任を取るってよぉぉぉ!」
この言葉が、あらゆるものを取り違えてひもづけられて登録された、致命的な不具合を抱える私番号樹脂板システムによって統合統制統一された宇宙戦艦すべてに届いた。
故郷から遥か彼方の遠い星域に、いきりたった御珍砲をみせびらかしてズカズカ踏み込んだ結果、瀕死のきわまで追い込まれていたすべての艦が、地獄からの生還をめざして、大撤退を開始する!




