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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第五部 紅と蒼 & BLACK PINK

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おまえは誰だ?

おまえは誰だ?




 次の森羅万象絶対無謬総裁総理総合枢軸統一元帥総統陛下(しんらばんしょうぜったいむびゅうそうさいそうりそうごうすうじくとういつげんすいそうとうへいか)になられる、有能極ゆうのうきわまる我らが頂点ちょうてん! 

 効能多漏閣下の御前みまえに、ご報告をさせていただきます!

 我らが栄光えいこうの積極的平和主義推進使節団(せっきょくてきへいわしゅぎすいしんしせつだん)に内乱ないらんを巻き起こした、真なる原因。

 つまりはシン・ゲンインが調査の結果、ついに発覚はっかくさせていただきました!

 事態じたい大惨事だいさんじ渦中かちゅうにいまだあり!

 まずは結論けつろんから申します。

 積極的平和主義推進使節団(せっきょくてきへいわしゅぎすいしんしせつだん)の全艦船を統合統制統一とうごうとうせいとういつする、私番号樹脂板システムに、重大じゅうだいなる不具合ふぐあいがあることが発覚はっかくいたしました。

 最初に発生した三番艦隊による背後からの一斉射!

 この大惨事の原因は、先頭一番艦隊に対して発せられたスカイカイト艦隊群への一斉射命令が、あやまってしんがりをつとめる三番艦隊に到達とうたつしたものでありました!

 積極的平和主義推進使節団(せっきょくてきへいわしゅぎすいしんしせつだん)の最後方さいこうほうをつとめる三番艦隊は、私番号樹脂板システムからの命令通り、自艦隊の正面に存在する艦隊、つまりは積極的平和主義推進使節団中枢構成艦隊(せっきょくてきへいわしゅぎすいしんしせつだんちゅうすうこうせいかんたい)の後方部に一斉射を叩き込みました!

 続いて、旗艦キシガ・イフミーオが両翼りょうよくより挟撃きょうげきされた、二回目の斉射についてご報告させていただきます!

 これは裏切り者と判定された、しんがりをつとめる三番艦隊を挟撃殲滅きょうげきせんめつするために発せられた、八番及び九番艦隊へ向けての挟撃一斉射撃命令きょうげきいっせいしゃめいれいが、旗艦キシガ・イフミーオの両翼を固め絶対安全安心な五重の防御壁ぼうぎょへきを形成する、六番及び七番艦隊にあやまって到達とうたつしたことが発端ほったんです!

 六番及び七番艦隊は、私番号樹脂板システムからの命令通り、自艦隊横に存在する旗艦キシガ・イフミーオが構成する一番艦隊へ、一斉射による挟撃きょうげきを叩き込んだのです!

 私番号樹脂板システムは、すべての艦船を私番号樹脂板に登録ひもづけ、統合統制とうごうとうせいして統一管理とういつかんりするものです。

 ですが、システム自体の不具合か、あるいは情報の登録時に艦船が取り違えられ、あやまったひもづけのままシステムが稼働かどうしている可能性が非常に強く、それによってあらゆるコト物が錯綜さくそうし、同士討どうしうちにいたったも


「絶対完璧なシステムを台無しにする、なんという現場のあやまちだぁぁぁぁ! 次の報告ッ! どうぞッ!」

 効能多漏の高級革靴キックが、報告中の権畜ナンバーズに炸裂さくれつ

 玉座ぎょくざの前から蹴落けおとされ、階段をのたうちまわりながら転がり落ちた権畜は、動かくなくなった。

「私番号樹脂板という、完全無欠かんぜんむけつ統合統制統一とうごうとうせいとういつデジタルシステムを、貴様ら現場のつまらない入力ミスが台無だいなしにした! 最低限朝の4時まで全員残業して、徹底的てっていてき総点検そうてんけん実施じっしし、問題点を発見しだい現場の責任でもってなんとかしろッ! 私番号樹脂板自体にはなんらの問題もなく、システムを壊滅かいめつさせるやらかしをしでかしたのは、すべて現場をあずかる貴様らだ! つまりは、指揮命令系統しきめいれいけいとう頂点ちょうてんたる、有能極ゆうのうきわまるこの私にはなんの責任もなく、私が有能であることには一切の疑念疑惑疑問ぎねんぎわくぎもんなどありはしない! それは一点のくもりもない事実なのだぁぁぁ!」


 ブツリ。

 何かが物理的に切れる音が、アベガスキー5663の中枢神経細胞の内部にひびいた。


「おまえは、誰だ?」

 金ピカ時計ロレックズが自慢じまんの、アベガスキー5663はそう言った。

「なんだ? いまなんと言った?」

 効能多漏がアベガスキー5663の瞳を、危険なpower harassment shockwave (権力乱用い・や・が・ら・せ)光線が宿った目でにらみつける。

「おまえは誰だ? と言ったんだよ」

 アベガスキー5663が、金ピカ時計をはめているほうの手で拳を固め、効能多漏のほほをぶん殴る。

「あひゃあ!」

 効能多漏は間抜まぬけな声をあげ、目を見開いて殴られたほほを手で押さえて震え上がる。

「お、お父さんにも殴られたことないのにッ!」

 効能多漏の、無能な坊やみたいな台詞せりふが響く。

「お父さんとは、効能傭兵団をひきいる男のことか?」

 効能多漏をぶん殴った衝撃しょうげきで動かなくなった、金ピカ時計のロレックズを拳に巻き付けながら、アベガスキー5663はそう言った。

「そうだよ! 効能傭兵団をひきいる、偉大いだいなお父様のご子息であるこの俺を殴ったな! 貴様、完全に死んだぞ! これは匿名とくめいで人を批判ひはんと称して誹謗中傷ひぼうちゅうしょうでぶん殴る、そういう卑劣ひれつな行為を超える、本物の暴力行為だぞ! ブロックなどなまぬるい。貴様の命を生物学的にブロックして、永久に冷たく凍結とうけつするに足りる重大事案じゅうだいじあんだ!」

「ふむ。なかなか面白いことを言う。だが、俺はおまえが誰か知らない。効能傭兵団をひきいる団長様のご子息しそくというのが、まずもって疑わしい」

 アベガスキー5663が、金ピカ時計のロレックズを巻き付けた拳を、効能多漏へと叩き込む。

 ロレックズを巻いた拳が、クズの腹にするどく食い込み、クズの口から悲鳴を吐き出させる。

「ぐっふぅぅぅ!」

 効能多漏はもだえ、玉座ぎょくざのうえで反吐へどらす。

「効能傭兵団をひきいる団長様のご子息だ? その証拠をみせてみろ。団長様のご子息という身分を証明する、私番号樹脂板をみせてみろ」

 効能多漏のかみをつかみあげ、血走った目でにらみつけるアベガスキー5663。

「おまえは……バカか? 愚民ぐみんに過ぎぬ銀河臣民ぎんがしんみん頂点ちょうてんに立つ上級存在、銀河神民ぎんがしんみんであるこの俺様が、システムを維持いじするためだけの存在である、畜生ちくしょうどものすべてを管理するために作られた、私番号樹脂板なんか持っているわけがないだろうが……。あれは搾取さくしゅされるために生まれた使い捨ての畜生ちくしょうどもにつけられた、管理用のナンバープレートなんだよ!!」

 口から血反吐ちへどを吐き捨てながら、効能多漏はそう言った。

「ならば、おまえの身元身分みもとみぶん一切不明いっさらいふめい。出どころわからぬどこの生命体の骨ともわからぬ、正体不明しょうたいふめいのクソ怪しい正真正銘しょうしんしょうめいのクソだということだ!!」

 アベガスキー5663が、金ピカ時計のロレックズを巻き付けた拳を、効能多漏へと次々に叩き込む!

 くらえ! くらえ! くらえ! 俺の怒りをくらえ!

 おまえに殺されていった部下達の怒りをくらえ!

 沈んでいった艦の怒りをくらえ!

 今はもう動かない、俺の金ピカ時計の怒りをくらえ!

 ロレックズを巻いた拳が、クズの顔面にするどく食い込み、身元身分一切不明みもとみぶんいっさいふめいの何者かしれぬクズの顔面を、グズグズのぐしゃぐしゃに叩きつぶしていく。

 打ち下ろされる金ピカの鉄拳! 無能な存在を打ち砕く、金ピカの鉄槌てっつい

 傲慢ごうまん不遜ふそん尊大そんだいな、いけすかない正真正銘しょうしんしょうめいの無能なクソを突きつぶす、金色にピカピカとかがや鉄拳制裁てっけんせいさい

 飛びる血しぶき! はじけ飛ぶ歯!

 もだえてわめきちらす効能多漏の悲鳴が、悲惨ひさんな響きで循環空気じゅんかんくうきを震わせる! 

 振り下ろされる金ピカの鉄拳が、クズの性根しょうねを叩き直していく! 

 有能を標榜ひょうぼうしながら、なにひとつあらがうこともできぬ無能がのたうちまわり、アベガスキー5663のすさまじい怒号どごうが戦闘指揮所に響きわたる!


 なんという無能だ!

 俺はおまえの無能さに震えあがる!!

 おまえは裕福ゆうふくな家庭に生まれ、高額の授業料を要求される、高度な教育を受けられる学校にも通った!!

 凡百ぼんびゃくの一般知的生命体が受けられない高度教育を受けて育ったお前が、凡百ぼんびゃくの一般知的生命体をはるかにしたまわる、稀代きだい空前絶後くうぜんぜつごなる超絶無能ちょうぜつむのうであることが、俺にはまったく理解できない!!!

 なにひとつ、自分自身の手で成した仕事がないではないか!

 なにもかも、現場任げんばまかせの現場責任! 失敗したら自己責任!

 成功したなら、あとはよきにはからえと全部丸投げした俺の手柄てがら

 無能に過ぎる! おまえは無能に過ぎるのだ!

 無能であるだけであったならば、おまえをあわれむことも、俺はできただろう……

 だが、お前は! 限度を超える無能さだけではないのだ!

 大宇宙にのさばる反社会的集団のヤカラにもおとる、粗野そや尊大そんだいでビッグに過ぎるデカい態度たいどで、俺達のように現場に生きる知的生命体を徹底的てっていてき愚弄ぐろうする!

 だから俺は、おまえをかわいそうなどとは、これっぽっちも思えない!

 俺はおまえが許せない!

 ここまで愚鈍ぐどん愚劣ぐれつ劣悪れつあくに過ぎる悪党の大臣だいじんまでに、おまえが成りあがったのが許せない!

 どこまでも絶対に許すなと、俺の心が叫んでいる!

 俺が俺様だというのだから、俺が俺様であることをおまえらは認めろよ! などとおまえはさかしげに言っている!

 バカもやすみやすみ言え!

 寝言を超える駄法螺だぼらは、永眠えいみんしてから言え!

 一般知的生命体が求められる最低限の礼儀れいぎ道理どうりを、高額極こうがくきわまる高度教育を受けて育ったお前は、まるでなにひとつわかっちゃいない!

 いまはもう動かない、金ピカ時計のロレックズがピカピカかがやく黄金の鉄拳を食らうたび、なぜこうなったのか死ぬ気になって考えろ!

 だが、無能極まるおまえが、こたえを出せるとはまるで俺は思えない!

 だから答えを言ってやる!

 つまりおまえは、正真正銘混しょうしんしょうめいまじりっけなし、純度100%のクソなのだ!!


 打ち下ろされる、金色にピカピカ光る鉄拳てっけん鉄槌てっつい

 まじりっけなしの純粋極じゅんすいきわまるまされた言葉が、詳細不明正体不明身元不明(しょうさいふめいしょうたいふめいみもとふめい)のクソ怪しいクズの心に、残忍ざんにんに切り込んでいき、残酷ざんこくすぎる現実の激痛げきつうを中枢神経細胞に走らせる!

 効能多漏は泣いた。

 どんなに耳をふさいでもブロックできない、アベガスキー5663の混じりっけ無しの本音にあふれる、痛烈つうれつな言葉に泣いた。

 なんという誹謗中傷ひぼうちゅうしょうだぁぁあ! 

 侮辱ぶじょくだ! なんという侮辱ぶじょくだ! 俺の名誉めいよが汚される!

 俺の心がちぎれる! 俺の臓腑ぞうふがにえくりかえる!

 俺を無能と呼ぶおまえらは、しょせんは権力に消費される犬畜生いぬちくしょう

 大量生産大量消費たいりょうせいさんたいりょうしょうひ、使い捨てられるのが大前提だいぜんてい下級銀河臣民かきゅうぎんがしんみんだろうがよぉぉぉ!

 くやしい! ゆるせぬ! 理解りかいくるしむ!

 まったくもってみとめられない!

 否認ひにんしてやる否認ひにんしてやる否認ひにんしてやる否認ひにんしてやる否認ひにんしてやる否認ひにんしてやる否認ひにんしてやる否認ひにんしてやる否認ひにんしてやる否認ひにんしてやる否認ひにんしてやる否認ひにんしてやる否認ひにんしてやる否認ひにんしてやる否認ひにんしてやる否認ひにんしてやる!

 何もかもを社会のせいにしやがる犬畜生いぬちくしょうどものわめき声など、有能なる俺がすべて遮断しゃだんしてくれる!

 なのに!

 有能極まる俺は、どうしてこいつらをブロックできない!?

 金ピカの閃光を放ち、振り下ろされる鉄拳てっけん鉄槌てっつい! 叩きつけられる暴言ぼうげんは止まらず、誹謗中傷ひぼうちゅうしょうは俺を一方的に蹂躙じゅうりんし続ける!

 これはいったい、どういうことなんだぁぁぁぁッ!?

 そしてどうして、こいつらこんなにバカで無能なのか?!

 大自民統一教会党に所属する有能なる俺に、こんな暴力をふるってただで済むと思っているのかぁぁぁ!

 権力をふりかざし、一方的に蹂躙じゅうりんすることが許されるのは! 権力者様だけなのだぁぁぁ!

 私番号樹脂板なんか持っていなくても、俺が俺であることは、この俺がそうだと言って証明しているだろうが!

 この俺様は! 逆らうことなど絶対に許されぬ! 権力者様だとわかりやがれぇぇぇぇ!

 どうしてそんな当たり前のことが、こいつらはこれっぽっちもわからないのか!?

 私番号樹脂板を持っていないだけで、俺を俺様と認めない愚劣ぐれつども!

 大量生産され大量消費されて使い捨てされていくだけの犬畜生いぬちくしょう

 下級一般知的生命体の群れどもが!

 そんな愚民ぐみんどもが! 有能なる俺を、まるで下級銀河臣民のように、踏みつけることができるのはなぜなのか!?

 こんなことはありえない! 支配層がつくりあげた仕組み的に起こり得ない!

 許せない! 許せない! 俺の偉大さを認めないおまえらが許せない!

 俺を足蹴あしげにするがごとく、たたなぐりつけてくるおまえが許せない!

 俺様の心に一切の配慮はいりょなどなく、誹謗中傷ひぼうちゅうしょうという暴力をふるう犬畜生いぬちくしょうどもが許せない!

 ああ、俺は、あまりにも理不尽りふじんな暴力に蹂躙じゅうりんされたのだ。

 俺はなんと不幸なのだ。俺はなんと可哀想かわいそうなのだ。俺はなんと不憫ふびんなのだ。

 顔が痛い。腹が痛い。心が痛い。あらゆるところが暴力に蹂躙じゅうりんされて、ぐちゃぐちゃのめちゃくちゃにされて痛んできしむ!

 偉大いだいなほどに有能な俺を、みつけるこの現実の理不尽りふじんさ!

 こんな世界をつくった神は、正真正銘しょうしんしょうめいの無能なのだと俺はいま確信かくしんする!


 顔面をぐしゃぐしゃにつぶされた、どこの生命体の骨ともわからぬ、私番号樹脂板を持たないイチ生命体がむせびなく。吐き出す血反吐ちへどとこぼれる落ちる歯に混じって、大粒おおつぶの涙がとめどなくほほを流れ落ちていく。

 泣きに泣く効能多漏だったモノをを無視して、アベガスキー5663はドBLACKな壺鉤十字つぼかぎじゅうじ頂点ちょうてんかかげる、華美かびな戦闘指揮所にむけて語り出す。


 効能多漏はクソだ。

 私番号樹脂板システムはクソだ。

 なにが統合統制統一とうごうとうせいとういつシステムだ。

 無能な効能多漏みたいな、何もかもを糞味噌くそみそにクソ統合統制統一とうごうとうせいとういつした、マジクソカスのかたまりだ。

 正真正銘しょうしんしょうめいのクソは、クソの役にも立たん。

 数兆ゼニーをつぎこんだすえにできあがった、正真正銘しょうしんしょうめいのクソのカタマリによってひもづけられて戦うなどということが、すでに妄想領域もうそうりょういきに突入したの無能のクソがまき散らす駄法螺だぼらだ。

 さっきまで旗艦に座乗ざじょうしておられた、効能多漏閣下はどこを探してもみつからん。

 効能多漏閣下を自称じしょうする、私番号樹脂板すら所持しょじしないこいつは、いったいどこの生命体の骨ともわからぬ。

 詳細不明正体不明身元不明(しょうさいふめいしょうたいふめいみもとふめい)の、私番号樹脂板を持たぬクソのかたまりみたいなゴミカスが転がっているだけだ。

 積極的平和主義推進使節団(せっきょくてきへいわしゅぎすいしんしせつだん)は、事実上その機能を停止し、すでに組織的行動は崩壊ほうかいしている。

 ならば、俺達は自分自身の思考と判断をもって、自ら生きのびる手段を選択し実行せねばならぬ!

 ここから俺は、自分で考え、自分の言葉で、自分自身の行動をもって生きるぞ!

 まずは手始てはじめ。

 全艦に撤退命令てったいめいれい

 繰り返す! 全艦に撤退命令てったいめいれい

 大事なことだから三回言うぞ!

 全艦に撤退命令てったいめいれい!!

 どれだけ私番号樹脂板システムに致命的ちめいてきな不具合があろうと、全艦への一斉撤退命令いっせいてったいめいれいであるならば、どう取り違えようと全艦に届くはずだ。

 全艦撤退! 繰り返す。スカイカイト星域周辺公宙域から、全艦撤退せよ!!


 アベガスキー5663が突然とつぜんにブチギレてブチかました、効能多漏への金ピカ鉄拳制裁てっけんせいさいを前に呆然ぼうぜんとしていた権畜ナンバーズ達は、アベガスキー5663を見上げたまま、恐怖に染まった表情を浮かべて絶句ぜっくしている。

「部下達よ。心配は不要だ。この責任は現場トップの俺が取ると断言だんげんする!」

 アベガスキー5663はニヤリと笑うと、金ピカ時計を巻いた拳でボカンともう一発、効能多漏だった者をこづく。

 現場トップの英雄的な行動と大英断だいえいだんに、権畜ナンバーズ達が、すさまじい速度で拳を天に突き上げてこたえる!

「イエス・マイ・責任者!!!」

 その叫びは、ドBLACKな壺鉤十字つぼかぎじゅうじ頂点ちょうてんかかげる華美かびな戦闘指揮所をふるわせらし、歓喜かんきの波となって旗艦キシガ・イフミーオ内部をかけめぐった!

「全艦に告ぐ! 撤退命令! 撤退命令がくだされた!」

「帰れるぞ! 故郷こきょうに帰れるぞ!」

「おかあさぁぁああん! 死ななくていいんだ! 死ななくていいんだぁぁ!」

 私番号樹脂板システムに、全艦一斉撤退ぜんかんいっせいてったいのコマンドが発せられる!

 どこをどう取り違えようが、全艦への一斉撤退命令であるのならば、どれだけクソ致命的ちめいてきな不具合をかかえたカスシステムでも絶対届くはずだ!

「信じろ! 生きて故郷こきょうに帰れると!」

 理解不能の致命的ちめいてきな不具合を抱えた私番号樹脂板システムに、全艦一斉撤退命令が流し込まれていく!

 

 本宙域に展開するSpace Synthesis System全艦へ!

 すべての責任をお取りになられると断言だんげんされた現場責任者様より、たったいま撤退命令がくだされた!

 この命令に従った貴殿らに、一切の責任は存在しない!

 命令に従え! 即時この命令にしたがえ!

 一斉射の直撃によって姿勢制御不能しせいせいぎょふのうにおちいった艦にぐ。

 その場で待機し、近くの艦に押してもらえ。

 180度の回頭さえできれば、この宙域からの脱出だっしゅつはできるはずだ。

 Space Synthesis Systemは自己責任の世界だが、アホウタロウな無能野郎の命令で、こんな地獄まで連れてこられちまった仲間じゃないか!

 きっと助けの手をさしのべてくれる僚艦りょうかんがいる!

 信じろ! 信じるんだ! 絶対助かると強く信じろ!


 まるでアホウタロウのケツのアナみたいな同士討どうしうちの果て、壊滅寸前かいめつすんぜんにおちいった積極的平和主義推進使節団(せっきょくてきへいわしゅぎすいしんしせつだん)すべての艦の通信機が、撤退命令をがなるがなる!

無能駄郎むのうだろうな効能多漏をぶん殴った、現場トップの英雄が、全責任を取るってよぉぉぉ!」

 この言葉が、あらゆるものを取り違えてひもづけられて登録された、致命的ちめいてき不具合ふぐあいかかえる私番号樹脂板システムによって統合統制統一とうごうとうせいとういつされた宇宙戦艦すべてに届いた。

 故郷こきょうからはる彼方かなたの遠い星域に、いきりたった御珍砲おちんぽうをみせびらかしてズカズカ踏み込んだ結果、瀕死ひんしのきわまで追い込まれていたすべての艦が、地獄からの生還せいかんをめざして、大撤退だいてったいを開始する!

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