表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第五部 紅と蒼 & BLACK PINK

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

191/360

ドアーホ・マーカイザックを破壊せよ!

ドアーホ・マーカイザックを破壊せよ!




「ねーえー? これでオアイコ。ってことで、私達は仲直なかなおりしたんじゃないのぉ?」

 ブ厚い硬化テクタイト製窓の前に、濃紺のうこんのミリタリージャケット+自室用のパンダがプリントされたハーフパンツ姿で、むすーっっとした表情で立っているアークに、サディが問いかける。

「まったくオアイコなんかではないと思うが? 少なくとも俺は、全員の命を救おうとしたんだぞ」

 むすーっとした表情のアークが、腕を組んだまま言う。

「いいじゃん。アーク。かわいかったよぉ。だから許してあげるってぇ」

 サディがニヤニヤ笑いながらアークに言う。

「くそがぁぁあッ!」

 真横で繰り広げられるイチャこらに、ネガの激しい悪態あくたい炸裂さくれつする。

「……まったく……」

 そんな艦橋最前列でのやりとりを、AXEは優雅ゆうがな姿勢しせいで自席に座ってながめている。久しぶりについた自席は、水中にいるためにレーダーはまるで役にたたず、特にすることはないくらいにひまでもあった。

「あんな感じではありますけれども、袋にたっぷりたまった体液をドバドバおらす、そんな特殊とくしゅな時間を共有した今となっては、ふたりはドロリとより親密しんみつな関係になったと状況を判断します」

 閉鎖へいさされたアイアンブルーとガンメタルグレイの世界で行なわれた内部事情を、じつはいろいろ知っているミーマが冷静に判断する。

「……そろそろ。真面目まじめな話をしたいのですが……」

 タッヤが計器類を点検しつつ言う。

「ふむ? 真面目まじめな話とはなにかなぁ?」

 そう言ったのは、艦橋で行なわれた惨劇さんげきの後に、しれっと戻ってきたコタヌーン。

真面目まじめな話というのは、これからの話なのかもしれません」

 とオクタヌーン。

 タッヤがうなづき、話しはじめる。


 その通り。これからのお話です。

 様々な謎は残りつつも、イービル・トゥルース号に今再びいつもの面々が集結しゅうけつしたわけです。

 あらゆる銀河をたったひとつにたばねようとするシンセティック・ストリームに、あらゆる銀河を渡り歩きながら反抗はんこうし続けてきた私達は、いまもってシンセティック・ストリームに合流して、たったひとつとなることをよしとしません。

 そして今再び、シンセティック・ストリームは銀河侵攻艦隊をスカイカイト星系に送り込み、戦乱せんらんを巻き起こそうと画策かくさくしています。

 では、私達はこれからいったいどうするべきか?

 そのお話をしたいのですよ。


「決まってるじゃないか。いいシンセティック・ストリームは、ダークマターにかえったシンセティック・ストリームだけさ」

 真っ赤なリンゴみたいに赤い瞳をギラリと光らせ、サディが答える。

「ジャーデン・サヴェージ星のお姫様に、いいところをみせようとした結果、シンセティック・ストリームを皆殺みなごろしにするようなことを、またするつもりなんですか?」

 AXEがきびしい視線をサディに向けて言う。

「この船には、正体詳細一切不明しょうたいしょうさいいっさいふめいながら、その大殺戮だいさつりくを行うことができる実力が存在すると、状況を判断せざるを得ません」

 サディが殺ろうと思えば思うがままに、この船は大殺戮だいさつりくできてしまう事実を、ミーマが冷静に指摘してき

「殺し過ぎるのよくないなぁ」

 コタヌーンがおだやかに指摘してきする。

「殺し過ぎるのは、本末転倒ほんまつてんとうかもしれません」

 とはオクタヌーン。

「俺は好きで殺しまくっているわけではないぞ」

 濃紺のミリタリージャケット+パンダがプリントされたハーフパンツという、大宇宙の果てを翔ける斬新ざんしんなファッションでキメたアークが答える。

「あのねぇ。アーク。前に誰もいない宙域で、ふたりきりで突っ込んで、思いっきり殺りまくったじゃない。あの夜のことを忘れたの?」

 とサディが唇をとんがらせて言う。

「ダイジョブだ。あれはなかったことにしていいはずだ」

 あれは二人の一夜限りのあやまちで、いまとなってはノーカン扱いだ。と言いたいそうな表情でアークは言った。

「はぁぁあ? なかったことにしていいってのは、いったいどういうことなのさ?」

 ふたりで殺りまくったあの夜を、なかったことにしろと言われたサディはそう返す。

 ギラつくサディの真っ赤なリンゴみたいに赤い瞳を、アークはじっとみつめて口を開く。


 俺と君が熱くなって、ふたりで激しくドロッドロになるまで殺りまくったあの夜は……

 誰もいない宙域での、たったふたりだけの秘め事だからな。

 つまりは、あの時あの場所で行われた、過激かげき行為こういについての観測者かんそくしゃというものは、存在していないってわけさ。

 この広すぎる大宇宙においては、その存在を観測かんそくする者がいなければ、それはつまり存在しないと同義どうぎだ。

 あの夜、あの宙域で俺と君とで行われたことは、誰にも観測かんそくされていない。

 つまりあの時に行われたあの行為こういは、誰にも認識にんしきされず認知にんちもされず、ゆえに事実として起こっていない可能性がいまだに存在しているということだ。

 だから、俺と君が熱く燃えあがって、激しい運動の果てにドロッドロになるまでやらかした、殺りまくりのお蛮行ばんこうという事実は、どこにもエビデやンスも何も存在しないため、それは実際には起きなかったことなのだとも言っていい。

 アホウタロウのケツのアナから漏れ出す無能駄郎むのうだろうなシンセティック・ストリームの世界では、俺が今言ったことはじゅうぶんに通じる論破力ろんぱりょくってやつだ。

 シンセティック・ストリームはマジカスアホのクソクソだが、俺は何もかもを全否定しかしないBotじゃない。

 ということで今回俺は、シンセティック・ストリーム的な論破力ろんぱりょくに満ちあふれる、こういう認識にんしき採用さいようしたい。

 つまりだ、とある誰もいない宙域で、キャプテン・パンダと愉快ゆかいな仲間たち号に問答無用もんどうむようでブッ放した結果、無惨むざんにぶっ殺されたあの宇宙戦艦は、とある一夜の過ちどころか、完全にノーカン扱いでもいいということだ。

 いいか、サディ。

 物事ものごとってヤツは、柔軟じゅうなんに考えることが重要じゅうようだ。

 柔軟にやさしく接っするように、思考をモミモミしまくれば、物事ものごとってヤツはドロリと濡れたように、なめらかにスルッとぬるりと奥へとズンズン突き進む。

 素晴らしきかな! 柔軟思考じゅうなんしこう! 俺はそうやって生きてきた!

 この俺の存在自体そんざいじたいが、最高のエビでヤンスってやつなのさ!

 こいつはもう、アッハ! アッハ! と笑うのが、やめられない止まらない!

 つまりは、アッハエビでヤンス!

 とは言えとは言え、だがしかし

 ここスカイカイト星域では、いろんなことがまったく違う。

 あらゆる衆人環視しゅうじんかんしのまっただ中で、いま再び俺と君が熱く気持ちを燃えあがらせて、ふたりで殺りまくりのしまくりでブッ放し、シンセティック・ストリームをブッ殺してまわるというのはあまりに目立ち、様々な知的生命体に観測かんそくされ過ぎる。

 当然、俺達にカメラを向ける者もいるだろう。

 そうなれば、俺と君の燃えあがるような激しい行為が生み出した、ドロッドロのグッチャグチャな無修正映像が、この大宇宙にどんどん拡散かくさんされてバラまかれていくことになる。

 こいつはまずい! 消してまわるぞ!

 そうは言っても今更遅いまさらおそい。

 俺と君が殺りまくりでしまくりの、バンバンでバコンバコンなお蛮行ばんこう動画どうがは、コピーがコピーを生んでバイバインにボンキュッボンと増えまくり、広すぎる宇宙に果てしなく拡散かくさんしていき、永遠になくなることはないだろう。

 そうなったら、さすがに俺も

「あの夜あったことは一夜の気の迷いで、なかったことにして欲しい」

 なんてことを、しれっと言えなくなっちまうからな。

 だ・か・ら

 殺りまくりのしまくりで、バンバンバンのバコンバコンとブッ放し、シンセティック・ストリームを殺してまわる。

 そういうことは、今回はおあづけだ。

 わかるな? サディ? 

 熱く燃えあがる気持ちに流されて、殺りまくりのしまくりを、今回はぐっとがまんしろってことだ。

 そして、最後に大事なことを言うぞ。

 俺たちはマジでバチバチに武装したマジモンの戦争屋だが、いつも最初に撃ちたがる積極的平和主義者せっきょくてきへいわしゅぎしゃ対極たいきょくに存在している、ガチガチの消極的戦争主義者しょうきょくてきせんそうしゅぎしゃであることを忘れるな。


 濃紺のミリタリージャケットの前で腕を組みながら、パンダがプリントされたハーフパンツ姿で立つアークは、ビシリとサディにそう言った。

「えー。そんなんでどーやってスカイカイトにやってくる、積極的平和使節団せっきょくてきへいわしせつだんとか言う、にせ看板かんばんをデカデカかかげた、ガチの侵攻艦隊とやりあうって言うのさぁ」

 サディがさらに唇をとんがらせる。

「スカイカイトは、昔勝ったんだろ? 俺達の加勢かせいなんか、この星はいらねえかもしれない」

 アークは静かにそう言った。

「つまりは、すべてをスカイカイトにゆだねると?」

 アークの予想外の答えに、AXEが眉をひそめる。

「確かに、ガチでバチバチなハードさ極まる実績じっせきほこるスカイカイト星系なら、私達が加勢しなくても……。なのかも」

 とミーマが状況を判断する。

「たまにはのんびり過ごしてもいいんじゃないのかなぁ」

 とコタヌーン。

「たまにはドンパチに顔突っ込まなくてもいいのかもしれません」

 とはオクタヌーン。

「オレニキュウカヲ、ヨコシヤガレ」

 とはイクト・ジュウゾウ。

「いや、なにも関わらないとは、俺は一言も言ってない」

 アークがブ厚い硬化テクタイト製窓の先に広がる、スカイカイト星の深海をみつめて言う。

「じゃあ、どう関わるのさ?」

 アークが履くハーフパンツにプリントされたカワイイパンダを、サディが赤い瞳でみつめながら言う。

「この船のいつもどおりのやりかたでだ。しかし、前ヤッたみたいにドンパチのド真ん中に、頭を突っ込んでズコズコ奥まで割って入ってイク。そんなことはしない。なんてったって、ジャーデン・サヴェージ星の時みたいに、こういう女はどうしても助けてやりたいと俺が心の底から思っちまう、キモのすわった素敵なお姫様と、俺達はつながっているわけではないのだからな」

 アークの言葉に、サディの瞳に危険な光がギラリと輝く。

「あたしの純真じゅんしん乙女心おとめごころに対する配慮はいりょをなにひとつ、貴様は学んでおらんのかぁぁぁ! このドアーホ・マーカイザックがぁぁぁッ!!」

 サディがあげる怒りの絶叫が、循環空気じゅんかんくうきを震わせる!

 そして、いかつくカワイイブーツが全力全開全速ぜんりょくぜんかいぜんそくで、目標物もくひょうぶつ全損ぜんそんねらう破壊力でもって、アークのハーフパンツに叩き込まれた!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ