キシガ・イフミーオは正気の沙汰ではない
キシガ・イフミーオは正気の沙汰ではない
ドブラックな壺鉤十字を頂点に掲げる、華美な戦闘指揮所は不気味な沈黙に包まれていた。
これから重力井戸の底に沈む、未知の死に方をした死体になることは確定している。
まだ生きている今現在の状態を、徹底的なまでの死体撃ち的な発言にさらされて、今まであったいかなる状況とも類似しない、想定外の状況に呆然とする、メガネっ娘人工知能。
「キシガ・イフミーオをなめるなよッ!!!」
呆然とするメガネっ娘人工知能の手から、必勝と書かれたメシトリベラをひったくり、メインモニターにつきつけてハイワン・ツァオミャオが絶叫する。
「System Schutzstaffel主力森羅万象宇宙戦艦アベンシゾー級三番艦というのは、ただの看板に過ぎない! この艦は、壱番艦弐番艦とは注ぎ込まれた予算が違う! 壱番艦弐番艦のような旧来予算の安普請とはワケが違う! それこそ予算倍増級に違う! 異次元の増税による異次元の銀河臣民搾取によって異次元の速度で建造された、本当に異次元の艦なのだ! その異次元の力が生み出すおそろしさをみせてやるッ!!」
ハイワン・ツァオミャオが叫び、必勝と書かれたメシトリベラを、文字を描くようにふりまわす。
反・撃・能・力・行・使
Space Synthesis System標準語でそう読み取れる文字を、ハイワン・ツァオミャオは必勝と書かれたメシリトリベラで空に描き切る。
「イジゲンノ! ヘイワヲツクリダスンダヨォォォォ!」
事実上稼働を停止していたメガネっ娘人工知能が、投入されたコマンドに活動を再開。
今再び、糖質過剰のあまあまモエモエボイスが、異次元の積極的平和力行使を宣言する!
「キシガ・イフミーオに異変あり!」
すべての推力を噴射しながら巨大ブラックホールへと引き寄せられつつ、レーダー盤上で形を変えはじめた光点を睨むAXEの声。
「映像出します!」
ミーマが情報操作盤を叩き、艦橋前面のブ厚い硬化テクタイト製窓をモニタに変える。
特大サイズのドデカイミスター宇宙戦艦の各所に、謎の開口部が次から次に開かれていく。
キシガ・イフミーオを全体を、死病が生みだすような不気味な黒点が次々に現れていく。
その黒点は……。発射口だった。
またひとつ、発射口が口を開き、またひとつ、またひとつ、次から次に不気味な黒い穴が口を開き続ける。
最終的にキシガ・イフミーオを覆いつくした発射口の数は……
その数400!
400の不気味な黒点が群がり、破滅的な兵器を放つぞ! 放つぞ! と叫んでいるようにみえる。
「これは、だいぶ予算を注ぎ込みましたね……」
今や全身を黒点に覆われた怪物へと変わったキシガ・イフミーオの姿に、タッヤの声が思わずもれる。
「あいつらぁ! このあたしより先に、また撃つつもりかよぉ!」
公開処刑放送のあおり役をこなしたサディが、激しい怒りを爆発させる!
「くそがぁぁぁぁ!」
ネガはサディに同意して、力強く毒づく。
アークはドクロのお面を被ったまま、いまだに手に持つグラスに口をつけ、しゅわしゅわと泡立つ白い液体、ミルキーウェイをごくりと飲む。その表情はふざけたドクロのお面に覆われて、一切読み取ることができない。
「異次元反撃能力行使を開始せよッ!」
メガネっ娘人工知能から奪い取った、必勝と書かれたメシトリベラを力強くツァオミャオが振り下ろす!
「タマッテイルノヲ、ゼンブダシテヤルンダヨォォォッ!!」
糖質過剰のあまあまモエモエボイスが炸裂! はだけることを前提に設計された、極小布面積のスカートを完全にはだけさせ、設定上はアンダースコートということになっている、下着ド200%のブツをモロにあらわに、人工知能がMの文字を両脚で形作る、Space Synthesis System的な表現の自由ポーズを決める!
「キシガ・イフミーオ! 異次元反撃能力行使!! TO MA HO KU!!!」
ハイワン・ツァオミャオが、膨大な予算を注ぎ込んで実装させた、切り札の名を高らかに叫ぶ!
TOo
MAny
HOming Missileを
KUraiyagare!!!!!!!!!!!
糖質過剰なあまあまモエモエボイスが絶叫し、Мの文字を両足で形作ったメガネっ娘人工知能が、高速で腰をグィングィンとうごめかす!
メガネっ娘人工知能が高速で振り乱す腰の動きにあわせて、キシガ・イフミーオに開口した400の発射口から、破滅的な破壊力を秘めた兵器が次から次へと発射されていく。
「コレガ! ヒョウゲンノ! ジユウダヨォォォ!」
眼の前で表現の自由ポーズをキメて、高速で腰を振るメガネっ娘人工知能に、ツァオミャオは激怒する。
最後の最後の瞬間に、場にふさわしくない行為をまるだしにしやがって!
こんな性的過剰演出の人工クソ幼女モドキと死ねるものか! ミサイルが全て吐けたら、その瞬間に貴様を破壊してやる!
「ミサイルハッシャヲ! ジユウニヒョウゲン、スルンダヨォォ!」
糖質過剰なあまあまモエモエボイスが絶叫し、明らかにダメ (X)な理論を開陳しながら、高速で腰を振って振って振り乱す。
ツァオミャオはメシトリベラを握りしめて歯を食いしばり、すべてのミサイルが一刻も早く吐き出され、性的過剰演出の人工クソ幼女モドキの始末を開始することを、心の底からせつに願う。




