イービル・トゥルース号を追えッ!
連載再開となります。
よろしくお願いいたします。
イービル・トゥルース号を追えッ!
「大見栄切ったくせしやがって! ケツまくって逃げるんかーい!」
カッコよくデキる雰囲気にキメながら、どうしても隠しきれないアクの強さがにじみ出るおっさんが、西の方角にある銀河的な本能のままに突っ込んだ!
「イエス! ダイハン! バンパク!」
ヨシモトムラ・ギョーコーズが、はいその通りでございますと、手刀で空を切り右方向に一直線に伸ばすチョップをビシッと決める。
「所属不明の低学歴低収入間違いなしの、負け組ドクロ宇宙戦艦に、イシーンズに逆らった代償を払わせてやる! 宙域斬撃改革艦隊は、これより、宙を斬る改革を実行する! あのドクロを追えぃ!」
「イエス! ダイハン! バンパク!」
バラエティー番組が始められそうな戦闘指揮所で、ヨシモトムラ・ギョーコーズが、手刀で空を切り右方向に一直線に伸ばすチョップをビシッと決める。
廉価版プレハプ宇宙戦艦 (タイプX)の、一般的な実用エンジンに火が入る。排気系だけをクソうるさい社外品に交換し、中身に関してはどノーマルな実用エンジンが、クソうるさい稼働音を撒き散らし、平凡な出力をしぼりだす!
設計的に無意味な、巨大過ぎるブレードアンテナでイカツクきめた、イシーンズのクソカッコイイスーパー宇宙戦艦達が、ドレトロなデザインのドクロ宇宙戦艦の追跡を開始した!
スーパー宇宙戦艦で構成された艦隊の誇る宙域斬撃改革砲が、緑黒い閃光をまきちらしイービル・トゥルース号に直撃する!
「イエス! ダイハン! バンパク!」
主砲による斉射が直撃するたびに、ヨシモトムラ・ギョーコーズ達が、空を右方向に一直線に切るチョップがビシッと決まる。
Space Synthesis System艦隊から別れた大隊規模の艦隊も、ドレトロなデザインのドクロ宇宙戦艦を追う!
Space Synthesis System艦隊の大自由神民主主義銀河神民統一砲が、赤黒い光弾をイービル・トゥルース号に直撃させる!
「ダーイ! ジーク! ジミンッ!」
人の名を持たない権畜、ナンバーズのときの声が、主砲直撃のたびにドブラックな壺鉤十字を掲げる華美な戦闘指揮所を揺るがす!
だが、あらゆるヘイト値を集結させて高めまくる、あの憎き船はいっこうに沈まない。
それどころか、もしかして、こいつは追いつけないんじゃないか? と思わせる速度で、一目散に逃げていく!
ドッカーン! ズッガーン! バッコーン!
直撃する宙域斬撃改革砲の緑グロい光弾と、大自由神民主主義銀河神民統一砲の赤黒い光弾が、対抗障壁領域で相殺されて凄まじい閃光と電磁的衝撃を発生させる。電磁的衝撃が船体に干渉して振動させて、クソうるさい轟音を生み出して、アイアンブルーとガンメタルグレイで構成された艦橋の空気を震わし揺らす。
「くそがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」
轟音に負けじとすさまじい悪態をまきちらし、船のスロットルペダルを踏み込み操縦桿を繊細に動かし、銀河一逃げ足の早い操縦士が本気を出す!
「あ、あ、あ、あ、アーク」
真っ赤なリンゴみたいに赤い瞳のお目々(めめ)をひんむいて、ハードなレザー仕様のバトルスーツでガチガチに身を固めたサディが、その身をぶるぶる震わせている。黒いマニキュアが映えるお指で、巨大なリボルバーカノン型の主砲操作桿をサディは握るが、その指はわなわなと震えている。さらにサディはお口を数回パクパクさせた後、ようやくアークの名を口にしたのだった。
「なんだ? サディ」
戦闘用フルハーネスで、自席にいつもの濃紺のミリタリージャケットに包まれた体をガッチリ固定しているアークが、でーんと腕を組みつつ、横目でなんだか様子のおかしいサディを見る。
「な・ん・で・逃げるんだよ…………。撃とうよ……。ブッ放そうよ……。これだけ撃たれているんだよ……。あいつら、あたしたちをマジで殺すつもりなんだよ……。自衛するんだよ……。やりかえすんだよ……。あいつら全員ぶっ殺して、知的生命体を撃つってことがどういうことか、骨身にたたきこんであげようよ……」
サディはお口を数回パクパクさせた後に、なんとか言葉をしぼりだしてそう言った。
「サディさん。撃っていいと言った弾の数。覚えていますか?」
上昇していく対抗障壁使用率を読み上げることもなく、タッヤは静かにサディに言った。
「この船のうるわしのケツを追っかけ回す艦の総数は、撃っていい弾数をとっくの昔に超えています」
レーダー盤に視線を落とし、気持ち悪いくらいに群がる光点をみつめて、AXEが冷静な声で言った。
「例え、一門一隻必中の一撃必殺で仕留めていったとしても、イシーンズ及びSS艦を全数沈めることは、不可能な状況と判断します」
ミーマが冷酷に、残酷な現実を状況分析。
「カナシイコトニ、シュミレーションデハツンデイル」
イクト・ジュウゾウが珍しく、ロボットらしく静かに言った。
「それじゃあこのまま、あたしは一発も撃つことなく死ねって言うのかよ! アーク! あんたが一回もおナカにおナマでおイレしてもいない女のために、このままあたしに死ねって言うのかよ?! アーク! おめーのおちんたま勘定は、いったいどうゆう作りになっているんだよぉぉぉぉぉ?!」
サディが絶叫し、ふりあげたちいさな拳を武器管制盤に振り下ろす!
ブチますッ! ドッカーン!
サディの全身全霊の台パンが生み出す衝撃に、巨大なリボルバーカノンを模した主砲操作桿がゆらいで動き、イービル・トゥルース号の主砲塔が旋回を開始する。
「敵艦! 主砲塔が旋回を開始!」
イシーンズ宙域斬撃改革艦隊旗艦、鮮烈斬撃スーパー宇宙戦艦ヨシム・ラーヒフロミのメインモニタに、はじめて動きをみせたドレトロデザインの主砲が映し出される。
「ノーーォォ! ヒガシ! ブラック! ウッドンッ!」
ヨシモトムラ・ギョーコーズ達が、両手を前に突き出し振って拒絶して、両足で地団駄を踏んで否認する!
カッコよくデキる雰囲気にキメながら、どうしても隠しきれないアクの強さがにじみ出るおっさんの心は、その映像にピクリと揺れた。
まさか……。撃ってくる?!
こちらは多数。そっちは一隻。圧倒的過半数の前に、黙って沈むのが流れってものだろうが……
もしも……。もしも……。一発でも撃ってみろ……
後で、弁偽師としての全力をもって、法的にスラップスラップ。そのツラ、叩き飛ばして……。やるからな……
「敵艦! 照準を合わせようとしています!」
大自由神民主主義銀河神民統一教会党、通称・大自民統一教会党所属、総合任務担当大臣、ハイワン・ツァオミャオの座乗する、森羅万象宇宙戦艦キシガ・イフミーオの戦闘指揮所にどよめきが走る!
まさか……。撃ってくる!?
ツァオミャオの背中に冷たいものが流れる。
ヘル・オチタのクソ野郎の立場を危うくするために、こっちはそっちを沈めちまわないように、メッチャクチャ忖度して手加減して主砲の出力をしぼりまくって、だけどやってる感だけはでるように、とにかくたくさん撃ってやっているんだよ!
それにくらべて、西の方角から現れたイシーンズ艦隊は、全力フルパワーでてめえらにブチこんでいるんだ! と言っても、見た目はスーパー宇宙戦艦だが、その中身は吊るしの廉価プレハブ宇宙戦艦タイプX (ダメ)。それが宙を斬る改革イシーンズの実態。プレハプ宇宙戦艦の格安廉価砲にかざりをつけた、見た目だけは巨砲の破壊力なんてたかが知れてる。貴様が沈むことはないだろう?
撃つならイシーンズを撃て!
ツァオミャオは心から、旋回を開始した砲塔がイシーンズに照準をあわせることを祈った。
「ウチカエサレルナンテ、アリエナイヨ……。コワイヨ、コワイヨ、コワイヨ、コワイヨォォ……」
必勝と書かれたメシトリベラをふりまわし、はだけることを前提に設計されたスカートを想定どおりに揺らして乱して、下着ド200%な設定上アンダースコートをモロチラモロチラさせながら、メガネっ娘人工知能が涙まじりにモエモエボイスでイヤイヤイヤイヤと繰り返し、か細い身体をクニャンクニャン。
くそがぁぁぁぁ……。
このクソイラつかせるモエモエボイスと、性的過剰演出な人工的に製造された模造品のクソメガネ幼女モドキめ。
いっそウサギのきぐるみでもかぶせてやれば、ちっとは神経逆撫でするのを減らせるだろうか?
ハイワン・ツァオミャオは、ガチでバチバチのドンパチ局面で、そんなことを思ってしまう。
 




