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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第四部・白薔薇の君

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ああ……、お願い、イービル・トゥルース号

ああ……、お願い、イービル・トゥルース号




「イシーンズ! よく言ったぁぁぁぁ!!!」

 ヘル・オトス親衛隊大将オーバーグルッペン・フューラー大音声だいおんじょうが、ガース・ヒーデの華美な戦闘指揮所にとどろいた。

 政治的に、我らSpace Synthesis Systemの寝首ねくびをかこうとねらうイシーンズ。そのことはわかっているが……。

 いまこの瞬間しゅんかんに、やつらの存在そんざいは我々にとってこのうえなく都合つごうがいい!

 そういう意味で、アーホ・まあ♡快楽かいらくとか言う、学校にも通っていない低学歴ていがくれき低収入ていしゅうにゅうどころか、定職ていしょくにもつかぬ住所不定じゅうしょふてい自己責任じこせきにん無知蒙昧むちもうまいかつ礼儀知れいぎしらずの社会のゴミカスとは利用価値りようかち断然違だんぜんちがう!

 イシーンズの物言ものいいに、あのクソやべードクロ宇宙戦艦は食いついた! そうなれば、イシーンズとあのクソやべードクロ宇宙戦艦のドンパチがはじまるのは間違まちがいない!

 イシーンズがあのクソやべードクロ宇宙戦艦の相手をしてくれるなら、こちらの負担はだいぶ減るだろう。

 これはチャンスだ。絶好ぜっこうのチャンスだ! 

 どこか西の方角ほうがくからやってきた、エクストリームな圧倒的あっとうてき援護えんごだ! これを利用しない手はないッ!

 宙域斬撃ダイハン・バンパク艦隊だったか? 独自どくじの経済的に刺激的なイベント艦隊を持って銀河経済大復興ぎんがけいざいだいふっこうだと豪語ごうごし、結局けっきょくあらゆる予算よさんオーバーにつぐオーバーで資金しきんがショート。大自民統一教会党にすがりつき、流してもらった金でなんとかしたてあげたプレハブ宇宙戦艦どもに、後手後手ごてごてでハリボテを追加して、ゴテゴテしたアクの強い見てくれに仕上げた、張子はりこ虎的とらてきなスーパー宇宙戦艦どもも、今回は想定外に役に立つか。

 レーザーブレードを腹にブチこまれて殺されて、湯気立ゆげたちのぼる血の海にしずむ、公的こうてきには自殺したことになっている自分の死体映像が、オトスの脳裏のうりから急速に消えていく。

「俺と貴様らイシーンズの関係性は、与党様である俺様と、野党を名乗るが実は第二与党だいによとうのイシーンズ。物事ものごとには道理どうりというものがある。何もかも反対の方向に行く、というのは、それこそ野党のバカのひとつおぼえというものにぎん。イシーンズはあのクソ邪魔なドクロ宇宙戦艦の信用度をおとしめる的確てきかくな発言をした! 我々はその積極的せっきょくてき平和推進へいわすいしん賛同さんどうするぞ! イシーンズにSpace Synthesis System艦隊を一部貸す! とにもかくにも、あの弩級どきゅうに邪魔なドクロ宇宙戦艦をまずは始末しまつするのが、宇宙の平和を維持いじする積極的平和主義せっきょくてきへいわしゅぎにとって最善さいぜん行動こうどうだ!」

 Space Synthesis System艦隊司令として、ヘル・オトス親衛隊大将オーバーグルッペン・フューラー誤英断ごえいだんが、華美な戦闘指揮所から全艦に向けて発せられる!




 シュライザーローズ号のメインモニターの中で、Space Synthesis System艦隊から分離ぶんりした大隊規模だいたいきぼの艦達が、イシーンズの意味不明いみふめい過度かどにカッコよくカスタムされたスーパー宇宙戦艦達と合流していく。そして、その砲を一斉にイービル・トゥルース号へと向ける。

「なんという……」

 まったく予期よきすることのできなかった展開てんかいに、クートゥが言葉をうしなう。

「彼らと彼女らが、私達との関係を拒絶きょぜつしたのは、こういうことをするためですか」

 あらゆる補給ほきゅうことわり、サウザンアライアンズ銀河に組み込まれることを拒否きょひし、たった一隻であることを選択したその真意しんいを、いまヘイガーは理解する。

 だが、シュライザーローズの口からは深いため息がれる。

「ですが、イービル・トゥルース号がただの一発でも撃ってしまえば……。一発も撃つことなく、この戦いを最後まで生きき相手の心をる。サウザンアライアンズ銀河艦隊群の作戦の持つ意味は瓦解がかいする。すべてが瓦解がかいしてしまうのです……」

 シュライザーローズのむらさきひとみに涙が浮かぶ。

 涙ににじみ出すメインモニター。トゲトゲしいヤカラ感あふれるスーパー宇宙戦艦で構成こうせいされたイシーンズ艦隊と、Space Synthesis System 艦隊分遣大隊かんたいぶんけんだいたいに砲をけられたイービル・トゥルース号はどう動くのか?!

 ドレトロでなつかしい未来感をただよわせる、禍々(まがまが)しいドクロを艦首かんしゅかかげるたった一隻の宇宙戦艦に、この宙域すべての視線が集中する。

 45口径46銀河標準センチメートル砲三連装四基十二門は、イシーンズに向けられるのか!? あるいは、いいsynthetic streamを作り出すために!?

 白薔薇しろばらつぼみの背にサウザンアライアンズ銀河艦隊群をひきいる、肩書かたがきのない事実上じじつじょうの女王は、ぎゅっと拳をにぎりしめる。

 お願い。アーク……。撃たないで……

 自身が願ったその言葉に、シュライザーローズは驚愕きょうがくする。

 にぎりしめた拳が、ふるえていることにシュライザーローズは気づく。

 撃たないで。それはつまり、アークに死ねと言うことだ。

 Space Synthesis Systemは殺すんだよ! という意味のことを無邪気むじゃきに言う、あの純粋極じゅんすいきわまるするどいナイフのような光を赤い瞳に宿やどすす少女に、死ねということだ。

 あいくるしい巨大スズメであるタッヤに死ねということだ。

 銀河の乙女おとめらしてうるおす、ブラックレーベル作品の素晴らしさを教えてくれたミーマに、死ねということだ。

 いつも冷静に、なのにいなせに着物の衣紋えもんを抜いた着付けで、あでやかに優雅ゆうがなうなじをみせつける、AXEに死ねということだ。

 苦虫にがむしつぶしたような顔でジャーデン・サベージ星のお茶を飲みし、いやー、この星の酒はうまいですなぁとほがらかに言ったコタヌーンに、死ねということだ。そして、コタヌーンの横で微笑ほほえむ、オクタヌーンに死ねということだ。

 つねにガスマスクをはずさず、クールに沈黙ちんもくするネガに死ねと言うことだ。

 たった一隻の宇宙戦艦が、一発も撃ち返すことなく、生きのびることなどできるわけがない……。

 私は今、イービル・トゥルース号に黙って沈めと、心の中で願ったのだ。

 なんということを……。私は……。

 シュライザーローズの瞳が涙にあふれる。

 それでも、私は……、サウザンアライアンズ銀河をまもらなくてはいけない。ただの一発も撃つことなく、すべての砲撃ほうげきあらがくっすることなく立ちはだかり、Space Synthesis System艦隊の残弾ざんだんきさせて、心をへしらなければならない。

 私は……、サウザンアライアンズ銀河を守る。だけど……、イービル・トゥルース号を守れない。

 シュライザーローズの涙は流れ、メインモニターがにじんでいく。

 涙でにじんだ星がきらめく海に浮かぶ、たった一隻のドレトロなデザインの宇宙戦艦がついに動く。

 ドレトロでなつかしい未来感デザインの宇宙戦艦の艦尾かんびに、アッツイ青い炎がともる。艦尾かんび濃密のうみつなブルーにまるドクロ旗をひるがえし、たった一隻の海賊放送船は行動を開始した!

 イービル・トゥルース号は、イシーンズを撃つのかッ!? synthetic streamを撃つのかッ!?

 いいや、そのどれでもない!!

 イービル・トゥルース号の選択せんたくは、シュライザーローズのすべての予想をはずれたものだった。

 思いもかけないイービル・トゥルース号の行動に、涙にれたシュライザーローズのりょうの目が、びっくりまなこに変わる。

 銀河と銀河が衝突しょうとつする戦場のど真ん中に飛び込んできた船は、驚異的きょういてきな速度で一目散いちもくさんにこの宙域から逃走を開始したのだ!

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