表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第四部・白薔薇の君

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

142/361

ヘル・オトスのビッグ・マグナム

ヘル・オトスのビッグ・マグナム




 純白と鮮烈せんれつな赤とでいろどられ、ドブラックな壺鉤十字つぼかぎじゅうじ頂点ちょうてんえる華美かびな戦闘指揮所のモニターに流れる映像に、イエスしか言わない者だけを選別せんべつした、ガース・ヒーデ乗組員達が総員絶句そういんぜっくした。

 ヘル・オトス親衛隊大将オーバーグルッペンフューラー股間こかんが、しゅんとしてこじんまりとキューーッとなる。

 俺の主砲、大自由神民主主義銀河神民統一砲一門が、豆も撃てないコンパクトさへとハイテクノロジーに変形する。一撃で億千万の弾丸を放つことを実現する、ゴールデンな二棟にとうのまあるい弾薬工場が稼働かどうを停止して、この窮地きゅうちにきゅーっと業務ぎょうむ縮小しゅくしょうする。

 あいつらだ……。民主主義がナントカカントカとか、この世界の主権しゅけんにぎるのは一般人なんだとか、知的生命体には生まれ持っての絶対の権利があるなどと言う、悪夢みたいにイカれきった与太話よたばなしを、それこそ本当にイカレたように言いはなちまくる、意味不明なまでに傍若無人ぼうじゃくぶじん暴威ぼういな奴らだ。

 あいつらは、俺が沈めたことに公的こうてき公式こうしきおおやけになっている。いまさら俺がうそをついたとか、そういう話にならないのは安心できる。

 Space Synthesis Systemは、公式こうしき公的こうてきに絶対に間違まちがえることがないとおおやけにされている。そういうのが政治的に公平性をたもたれた、おおやけの発言を右から左に流すのが放送ってもんだろうが。

 そして、その放送を俺達はにぎっている。その放送を生み出すもと、広告ってやつをうみだす、電痛とかいう広告代理店も握っている。

 だから大丈夫。

 そこはどっかりしっかり、あぐらをかいていられる。

 だが……

 あいつらがこの場のど真ん中に、第三者の視点からの事実なんて、これまた悪夢みたいなことを言い放って乱入してくるとなると……

 マズイマズイマズイマズイマズイ

 こいつはまったく想定外の予想外だ。予想をななめ上どころか、はる彼方かなた明後日あさってまでぶっ飛んだ、ヤヴァイことをしでかすに違いないというか、すでにそんなことをもうやらかしていやがる。

 グラジ・ゲートを封鎖ふうさして、他の銀河への特定秘密とくていひみつ機密情報きみつじょうほう漏洩ろうえいを防止し、サウザンアライアンズ銀河を圧倒的な平和力でもって、徹底的てっていてきに平定する。

 勝てば官軍かんぐん。歴史は後から修正し放題。

 それが、現実をしっかり見据みすえる、大人の良識りょうしきというもの。

 すべてが終わった後に、つぎはぎ当てたのちに、きれいにウォッシュしてペカペカに仕立したてあげたほこり高き歴史で、人心じんしんを美しく染めあげる。そういう計画だった……

 そういう計画だったのだ!

 だが……

 あれはマズイ。本当にマズイ。

 他にもいろいろっているのだろう……。そのことは容易ようい想定そうていできる……。

 あの船が万が一生き残ってこの銀河を脱出だっしゅつして、あのような映像を宇宙中にばらき拡散するなんてことになると……

 Space Synthesis Systemはビクともしないさ。そんなものは、正体不明の船が流す不正確な情報で、100%のデマなんですと100回言えばそれが圧倒的多数、つまりはおおやけの真実という物になる。

 だが……、俺は違う。俺は責任を取らされる。間違いなく取らされる。

 あの御方おかたはそういうヤツだ。気に食わないことをした。たったそれだけのことで、俺を社会的に殺すどころか、生物学的に殺すところまでやるだろう。そしてまた、俺の殺害を依頼いらいしたヤツに約束したゼニーを出さないから、また家に火炎瓶かえんびんをブチこまれるんだろう。

 そんなことはすでに社会的に生物学的に死んだ俺にはもうどうでもいいことになっていて、あの御方おかたの家にブチこまれた火炎瓶で、俺はスカッとジャアポンッ! なんてできないわけで……。

 俺は表向おもてむきは自殺として処理されて、もちろんSpace Synthesis Systemは安泰あんたいだ。

 社会的に殺され、生物学的に殺され。なのに公的こうてきには、のしかかる自責じせきねんに耐えられずということで、いさぎよく自らの腹にレーザーブレードをブチ込んで、湯気ゆげのたちのぼる血の海にみじめに沈んだ自分の死体がリアルに見える。

 その恐怖が、ヘル・オトスの虎の子、たった一門の大自由神民主主義銀河神民統一砲と、その弾薬製造工場である二棟のゴールデンでまあるい弾薬工場が、収縮しゅうしゅくに収縮を重ねてその加速度をあげていくほど、マジでホントにちびりそうになる。

 畜生ちくしょう……。畜生ちくしょう……。

 俺はここまで出世したじゃないか。あまたの権畜けんちく閣下かっかとあがめたてまつられて、銀河臣民ぎんがしんみんの生き血と、粉にしてやった身を焼いて、甘い汁をたっぷり吸わせたパンケーキをむさぼり食らってきた栄光えいこうの日々。

 それが……終わってしまう……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ