表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第四部・白薔薇の君

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

141/360

あの時、俺たちは

あの時、俺たちは




「くそがぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

 全身をレザースーツに包んだガスマスク男が叫ぶ。操縦桿をシンセティック・ストリーム艦隊に向けて倒し、イービル・トゥルース号をブッ飛ばすエニグマ・エンジンに、全力をブッちぎって燃えあがるんだよという意志を伝えるスロットルペダルを、アイアンブルーの床までみこむ。

 180度回転させた方向計ほうこうけい

 今おまえは全力で逃げているのだと、ガスマスクの男へ明確めいかくに告げている。

 なぜか一面岩石だらけの硬化テクタイト製窓。その窓が、赤黒い閃光に包まれる!

 艦隊規模の一斉射があらゆる物質を、100%混じりっけなしの純粋な暴力で徹底的に破壊しくす。

 破滅的なエネルギーがあらゆるモノを破壊するさいに生じた電磁的衝撃でんじてきしょうげきが、船体に干渉かんしょうして強烈な振動を生み出し、船内循環空気せんないじゅんかんくうきふるわせ轟音ごうおんとなってひびきわたる。

 硬化テクタイト製窓をおおっていた岩石が破壊され、爆裂ばくれつ爆散ばくさんし宇宙の果てへ向かって四散霧散しさんむさん

 赤黒い光弾が生み出した残光ざんこうの中にあらわれる、星の海に浮かぶ必勝と書かれたメシトリベラを艦首にかんする、キシガ・イフミーオとその権畜達けんちくたちの宇宙戦艦。

 問答無用もんどうむよう! 次の斉射がキシガ・イフミーオと権畜達の宇宙戦艦から放たれる!

 再び赤黒い閃光で満たされる硬化テクタイト製窓! 

 破滅的なエネルギーと護身ごしんの力がせめぎ合って生まれる電磁的衝撃によって、あらゆるものが振動し直近ちょっきん直撃ちょくげきした落雷らくらいのような轟音ごうおんがアイアンブルーとガンメタルグレイで構成された世界にとどろちる!

おそろしく邪魔じゃまな野郎は、いつだってとんでもなく不都合ふつごうな時に現れる。それこそが邪悪なる真実だ!」

 濃紺のうこんのミリタリージャケット姿で、ヘッドセットマイクを装着そうちゃくした男の後ろ姿が力強く叫ぶ。

「くそがぁぁ!」

 さらに悪罵あくばが続き

対抗障壁領域健在たいこうしょうへきりょういけんざい船体温度上昇中せんたいおんどじょうしょうちゅうですが、補助動力機関ほじょどうりょくきかんによる冷却順調れいきゃくじゅんちょう

 急にたんたんとした報告が続く。

「海賊放送船イービル・トゥルース号、現在位置シンセティック・ストリーム射線上しゃせんじょうにあり」

 艦隊規模かんたいきぼの斉射をびているとは思えない冷静な女性の声。

「ロボットノジンケンヲ、コウリョシヤガレ!」

 冷たいメタリックボイスが、意味不明のぬくもりある発言。

「この恐ろしいまでに野蛮で不敵ふてきえる瞬間をセルフィーするぅ」

 なんだかきゃっきゃうふふな声がして、画面はアイアンブルーとガンメタルグレイで構成された世界を飛び出して、星の海のまっただなかへ。

 画面は、艦首に必勝と書かれたメシトリベラをかんするドデカイミスター宇宙戦艦率うちゅうせんかんひきいる艦隊と星の海だけの世界。

 その世界が水平方向に流れ出す。

 ぐるりと180度回転したその先にうつるのは、白薔薇しろばらつぼみの前に立ちふさがる、艦首に禍々(まがまが)しいドクロをかんしたドレトロな未来感をただよわせる、たった一隻の宇宙戦艦。

 


 俺達はどこの銀河にもぞくさない。どこの星にも帰れない。住所不定学歴不問無免許じゅうしょふていがくれきふもんむめんきょもぐりの自称海賊放送屋じしょうかいぞくほうそうや。そんな最高にカッコいい肩書かたがきが大好きだ。そして、だからこそ、どんな権力にもなびかねえ。あらゆる思想と主義とおもいが、誰かの権利をおかさない範囲はんいにおいて、自由気ままに存在できるほどに広い、このバカみてえな広さを持った大宇宙を勝手気ままに航行する、服装髪色肌ふくそうかみいろはだの色なんでもござれのこしが抜けるほどに自由な船だ。

 そんな第三者どころじゃねえほど蚊帳かやの外のヤツが、この目でみた事実ってやつをいまみてもらっている。

 これがこの一方的な戦争をおっぱじめる発端ほったんとなったできごとの、嘘みたいな本当ってやつだ。

 なあ、あんた。恥ずかしくないのかい?

 平和だ。積極的平和主義だ。世界を安定させる平定こそが平和だと。てめえ自身が信じていることが信じられねえくらいの言葉を、まるっきし信じているみてえに言いまくり、てめえのチンケなおちんたまとはくらべものにならない、やったらドデカイ砲をガマンもできずに早々に真っ先にドッカンズッコンドカンバコン。

 俺だったら恥ずかしくて心臓が止まっちまうぜ。

 だけどな、あんたらの胸でどくどくんしているのは、真っ黒いモジャモジャお毛々に包まれた暗部あんぶの心臓なのかもな。

 だからこういうことができるんだ。

 どう思おうがそれは自由だ。

 だがな、それを口にするどころか、砲をぶちかますとこまできたら、俺は不都合極ふつごうきわまりない、邪悪なる真実として本気で邪魔にしにやってくるのさ!!



 ヘル・オトスは絶句ぜっくした。

 ハイワン・ツァオミャオは絶句した。

 人の名を持たない権畜、ナンバーズ達は絶句した。

 下着ド200%なアンダースコートをみせつけるのもやめて、必勝と書かれたメシトリベラをポトリと落として、メガネっ娘人工知能さえモエモエボイスを封印ふういんして絶句した。

 純白と鮮烈せんれつな赤でいろどられた、ドブラックな壺鉤十字つぼかぎじゅうじ華美かびな戦闘指揮所のメインモニターに流れた、我々(われわれ)に配慮はいりょした政治的公平性など一切存在しはしない、邪悪極まりない一方の言い分を一方的に放送する、私達にとって一方的に不適切ふてきせつ存在そんざい

 そして、いま現実に、この目の前に嘘みたいなのに本当に存在しているのは……

 圧倒的な積極的平和力行使のただ中に、本当にリアルタイムの割り込み突入をブチかましてきた。たった一隻のドレトロなデザインの艦首にドクロをかかげた宇宙戦艦。

 そして、星の海に浮かぶ不敵ふてきなドクロの背には、ひたすら斉射を叩き込まれて、アッチッチーのパンパカパーン寸前の、白薔薇しろばらつぼみひきいるサウザンアライアンズ銀河艦隊群。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ