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海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第四部・白薔薇の君

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アーク・マーカイザックの証明

アーク・マーカイザックの証明




「ウテウテウテウテウテェ!」

 必勝! と書かれたメシトリベラを、ぶんぶん振り回しては、みだされてはだけることが前提ぜんていの極小スカートから、これでもかとド下着200%な設定上アンダースコートをもろだしながら、キシガ・イフミーオ搭載とうさいのメガネっ娘人工知能が脳がとろけるモエモエボイスで叫びまくる!

 ドブラックな壺鉤十字つぼかぎじゅうじ頂点ちょうてんにいただくメインモニターの中では、平和力でもって何もかもを食らいつくそうとする、赤黒い光弾がうみだす濁流だくりゅうのただ中に、白薔薇しろばらつぼみがいまだに浮かんでいる。

 すでに第七斉射。しかし、白薔薇しろばらつぼみ健在けんざいだ。

「たかが一隻をどうして沈められない!?」

 メイン・モニターの中に存在し続ける白薔薇しろばらつぼみを、ツァオミャオは呆然ぼうぜんとみつめる。



つぼへのエネルギー充填率じゅうてんりつ88%」

 アベガスキー1255が大自由神民主主義銀河神民統一砲へのエネルギー充填率を報告する。

「大自由神民主主義銀河神民統一砲、砲身温度いちじるしく上昇中」

 スガガスキー4532が、圧倒的あっとうてき抑止力よくしりょくを持つ平和力が、オーバーヒート気味ぎみですと冷静に告げる。

「どういうことだ?」

 Space Synthesis System艦隊旗艦、森羅万象宇宙戦艦アベンシゾー級弐番艦、ガース・ヒーデ司令艦長ヘル・オトスは困惑こんわくする。

 Space Synthesis System中枢閣によって、宇宙最強唯一無二の絶対無敵圧倒的抑止力と閣議決定された、大自由神民主主義銀河神民統一砲の艦隊斉射を、どうしてあの船は耐えられる?

 積極的に平和を追い求め、むきだしの平和力をギラつかせてむらがる、赤黒い光弾達をつぎつぎに受け止め、ただの一発も撃ち返してはこない白薔薇しろばらつぼみ

 なんだ……。似たようなことが……、前にもあったような……。

 思考がさまよいだす。オトスの手のひらに嫌な汗が浮かぶ。

 前にも、意味不明に……

 や・た・ら・と・斉射を受け止めた船がいたような……

 詳細しょうさいはすでに記憶にごさいませんが、なんだかとてもまずい展開になったような……

 背筋に、わきに、俺の大自由神民主主義銀河神民統一砲周辺に、脂汗あぶらあせがじわりと浮かび、嫌な湿り気が不快にこもる。

「………………公開チャンネルに通信要請つうしんようせい

 キシダイスキー7342の声が、仄暗ほのぐらい思考にさまよいだしたオトスを、純白と鮮烈な赤で彩られたドブラックな壺鉤十字つぼかぎじゅうじ華美かびな戦闘指揮所へと引き戻す。

 ん? 公開チャンネルで通信要請つうしんようせい

 なんだ。やはり限界だったのか。

 オトスの口元に笑みが浮かぶ。

「限界か。通信開け。奴らの無条件平和賛同宣言むじょうけんへいわさんどうせんげんを受けいれてやろうではないか」

 満足気にヘル・オトス親衛隊大将オーバーグルッペン・フューラーが、口にすると……

 キシダイスキー7342の表情が真っ青に変わる。

「よ、よろしいのですか?」

「いいからつなげ。積極的平和力はビリビリしびれるように、パッパと平和をもたらすものだ」

 ためらう部下に、オトスは得意げにそう言った。

 ドブラックな壺鉤十字を頂点にいただく、メインモニターが濃密なブルーへと変わっていく。

 そして、そこに現れたのは、一輪の白薔薇しろばらではなく、うつろなふたつの黒い穴でこちらをみつめるドクロだった。

 RADIO・EVIL TRUTH NOW ON AIR!!!

 濃密なブルーを背に、ドクロと交差こうさする大腿骨だいたいこつのうえに文字がおどる。

「はあああああ?!」

 純白と鮮烈な赤でいろどられたドブラックな壺鉤十字つぼかぎじゅうじ華美かびな戦闘指揮所に、驚愕驚異きょうがくきょういふるえるヘル・オトスの頓狂とんきょうな声が満ちる!




 ようようようよう。はじめましてか? それとも、やあ、またあったね、かな? もしかしたら、やっと出会えたね♡ かもしれねえな。

 こちらは、ナイン・シックス・ポイント・ナイン! 96.9銀河標準メガヘルツにてお送りしている、アークの海賊放送だ! 大宇宙のお騒がせ放送様が、大宇宙で大騒動おおそうどう大舞台だいぶたいど真ん中に、スペシャル番組ってやつをぶっこみにきてやったぜ!

 未開みかいの宇宙のてから、憲法けんぽうも法律もない荒野こうやみてえな無法の世界をブラブラしている野蛮生命体を満載まんさいし、ぷかりぷかりと銀河を渡り歩いてたらよ。

 広過ぎる宇宙にあまたに浮かぶ銀河の辺境へんきょうで、派手にドンパチしているのかと思いきや、なんだかずいぶんと一方的な、双方の同意が一切ない、マジでガチのイカレポンチーンな強攻きょうこうおよんでいる奴らがいるじゃねえか。

 あらゆるものがスッカラカンの、バカみてえなくらいしんくうなる空間で、ドッカンズッコンバッコンドッカン、クソデカい豆鉄砲を一方的にブッ放して突っ込んでくるってのは、マジでドタマがスッカラカンだからなのかもしれねえな。

 そういうスッカラカンのドタマのくせに、言葉なんてのはなぜかまったくひびかねえ。

 だから、真実ってやつをぶっこみにきた。

 真実はいつもいつもあんたらにとって不都合で、あんたらはそれを邪悪とさえ言いもする。

 かまわないぜ、どんなにののしっても、事実は事実だ。

 アホウタロウのケツノ穴。暗部あんぶ心臓毒しんぞうどくどくん、カスミテエデマジデヒデェ、正気の沙汰さたではありえない岸GUYヤロウ。

 てめえらはシンセティック・ストリームのクソ野郎にしてクソ濁流だくりゅう。こいつは罵詈雑言ばりぞうごんなんかじゃねえ。事実をそのまま言っただけ。

 おっと。話がそれちまったぜ。

 さあ、いってみよう!

 サウザンアライアンズ銀河群、シンセティック・ストリームのクソ濁流だくりゅう、Space Synthesis Systemいずれにもぞくさない、第三者視点だいさんしゃしてんってやつから、この一方的な凶行きょうこうドンパチの発端ほったんてやつをみせてやる!


 RADIO・EVIL TRUTH NOW ON AIRの文字が消える。

 うつろなふたつの黒い穴でみつめるドクロと、交差こうさする大腿骨だいたいこつが消える。濃密なブルーが一面の星の海へと変わる。

 星の海に浮かぶのは、艦隊規模の宇宙戦艦の群れ。その先頭には、艦首に必勝と書かれたメシトリベラをかんした、森羅万象宇宙戦艦アベンシゾー級三番艦、キシガ・イフミーオの勇姿!

 そして、絶望へと言葉で立ち向かう、シュライザーローズのおだやかでりんとした声が、艦隊規模の宇宙戦艦が浮かぶ星の海へと流れ出す。


 ……こちらは、RADIO・シュライザーローズ。サウザンアライアンズ銀河を航行するすべての船と艦に、この星の海にまたたく星々に、私は呼びかけています。

 情勢は厳しい。圧力はどんどん強くなっている。

 あなたはもうだめだと思ったりはしていないでしょうか。

 私だって、もうだめなんじゃないかと思う時だってある。

 だけど、私はあきらめることができない。私は戦いたくありません。ですが、圧力の前にただ無言のまま屈することはできないのです。

 応答はいまだありません。ですが、私はこの無言の圧力を持った空気に、ただくっしたくはない。

 ですが、暴力を私は好みません。

 こんな時、くっしてしまいそうなあなたを、くっしてしまいそうな私を、ささえてくれるのはいったいなんでしょうか?

 言葉すらむなしく思える時、私とあなたをささえることはできないのでしょうか?

 私はそれでも希望を捨てません。私とあなたを、このくっしそうな場所でふるいたたせてくれるものを、私はたった一つ知っています。

 しばし、言葉すらないこの音楽に耳をかたむけて、私とあなたがもう少しもちこたえることを願いましょう。

 そして、魂を鼓動こどうさせるように弾けるドラムが、ひずんだ音色のギターがかなでる熱狂ねっきょうを生む旋律せんりつが、臓腑ぞうふから躍動やくどうさせるようなベースラインが星の海におどる。巨大過ぎる力に立ち向かう者の心を燃やし、シンセティック・ストリームのクソ野郎の頭をアッチッチに過熱かねつさせる音楽。Buzz suckerノ夜行が、RADIO・シュライザーローズの言葉の後に流れ出す。

 星の海に浮かぶ、艦隊規模の宇宙戦艦群。艦首に必勝と書かれたメシトリベラをかかげる森羅万象宇宙戦艦アベンシゾー級三番艦を先頭に、問答無用もんどうむよう艦隊規模かんたいきぼの一斉射が開始される。

 複数の宇宙戦艦から発射され、秒速29万9792銀河標準キロメートルの速度で宇宙を走る赤黒い光弾のたばが、星の海に浮かぶ白薔薇しろばらつぼみに直撃する。だが、白薔薇しろばらつぼみは、赤黒い濁流だくりゅうを浴びても微動びどうだにしない。

 決して撃ち返しはしない。だが、決してくっすることのない白薔薇しろばらつぼみに、次々と襲いかかる第二斉射。第三斉射。第四斉射。

 たった一隻の白薔薇しろばらつぼみに、赤黒い光弾のたばが次から次に直撃。破滅はめつをもたらす暴力と、それに全力であらがい守ろうとする力がぶつかり弾け、星の海にすさまじい閃光をき散らす。

 第五斉射。第六斉射。第七斉射。第八斉射。

 これでもかとなぐられながらも、白薔薇しろばらつぼみはただの一発も撃ち返すことをしなかった。だが、絶対にくっすることなく、この暴虐ぼうぎゃくに立ち向かう意志を広過ぎる星の海へと伝える、何よりも強いものだけが持ちえる勇姿ゆうしがあった。

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