海賊放送船を名乗る意味
海賊放送船を名乗る意味
星空のしたに広がる、野薔薇と様々な花が咲き乱れ絡み合う野生の庭園で、アークはサディに話し出す。
45口径46銀河標準センチメートル砲三連装四基十二門を背負い抱き。船尾に副砲三連装一基三門。各部に迎撃用パルスレーザー砲多数。船首には特装宙雷発射口六門。さらに突撃刺突衝角一基。こいつらをフルどころかオーバー・ドライヴさえさせる、強力無比なエニグマ・エンジン及び、それを冷却する補助動力機関を搭載する驚異の船。
海賊放送船なんて名乗っちゃいるが、イービル・トゥルース号はガチでバチバチの暴力兵器を積んだ、マジモンの宇宙戦艦だよ。
だが、イービル・トゥルース号は、それでも船と名乗ることに、意義がある。
俺達は戦争をしたいわけじゃない。俺達は消極的戦争主義に染まった、本物の戦争屋だ。
権力者様の言い分を右から左にお流しする、神様の公共放送みてえなもんとはまったく違う。あらゆる権力のケツを蹴っ飛ばす、残弾無限の海賊放送が俺達のシノギだ。俺達のシノギは、微力ながら世界に波紋を生み、その波紋はいつか大きな波になるだろう。そういう思いでやってきた。
なのに、なんでだろうな……。世間様ってやつはどうにも身勝手でわがままで、本当にままならねえ。
結果はこうだよ。やってきたのは戦争という名の、人為的大災害がもたらす津波だよ。
俺達のやっている海賊放送稼業が、時代遅れになっちまったってことなのか?
だけど俺は思うんだ。結局こうなっちまった今こそが、俺達がやってきたシノギが、本当に必要な時代なんじゃねえかって。
なのに、現実には今、シンセティック・ストリームに突っ込んで、海賊放送をやったって、とっくの昔に遅過ぎるんだ……。
海賊放送船イービル・トゥルース号が、いつもの海賊放送稼業の道を選べば、たぶんシュライザーローズは死ぬだろう。
俺は俺のやりたいシノギで、結果的に誰かが殺されるってのは納得できねえ。
なのに、じゃあ、海賊放送船が、ガチのバチバチの宇宙戦艦として、シュライザーローズに加勢しようってのも、そいつは俺達のシノギじゃねえよなって思っちまうんだよ。
サディはアークの言葉を聞くと、野生の庭園に転がる小石をコツンと蹴って話しはじめる。
アーク。いまはもういつかの昔になっちゃったあの頃。あんたはあたしにこう言った。
「ただの暴力でも暴虐でもない、だけどガチでキツイヤツを撃たせてやる」
あの時、あんたの言葉をあたしは信じた。だからあたしは、いまも海賊放送船に乗っている。
あんたが基本的に暴力的な暴威で、イカレてるくらいに残虐だってことはわかってる。だけど、あんたはそれを必死で抑え込もうとしているのもわかってる。
本気を出せばガチでヤヴァイのに、必死で猫を被って、一見パンダみたいな日々をおくっていることも理解してるよ。
……だけどさ。だけどさ……
ずっとずっと猫被って、誰かがぶん殴られてるのを前に、だんまりしているヤツじゃないってこともわかってるよ。
あのころ。いまはもういつかの昔になったあの頃の言葉、そろそろ本当にしてもいいんじゃない?
来るべき時がきたんじゃなくて。来てはいけない日がきてしまったんだよ。だとしても、来てはいけない日に、どうふるまうかは決めることができる。
どっちの選択も、100%の正解はないよ。
どちらを選んでも、どこかに不本意な気持ちは残るだろうね。
だけど、結果は違う。
事実上見殺しにした VS 俺はあの時立ち向かった。
たった一隻の宇宙戦艦の加勢が大局を左右するなんて、この私だって思っちゃいない。
だけどさ。
あの時、見殺しにしなかった。
この事実は永遠にかえることのできない、むきだしの真実だ。
あの時、俺には俺のやり方がある。と言って、結局見殺しにしちまった。
その事実は、永遠にかえることできない邪悪なる真実だ。
なにより、最初に殴ってきたのはあいつらだ。
アーク。おちんたまついてんだろ? 殴られっぱなし、奪われ放題なんてのは、あんた一番嫌いだろ。
だったら、アーク。
あんたはいったいどっちを選ぶの?
……。
言いたいことはわかるよ。毎度毎度、なんで俺のおちんたまについて、イチイチ言及するのかだけはわからねえが……
だけどな……
死ぬかもしんねえけど、やろうや。
なんて言えるかよ。
俺だけがドンパチするなら、そっちのほうが本業なんだ。喜んでいいシンセティック・ストリームをバンバン作るぜ。
だけどな、俺一人が乗っている船じゃねえ……
アーク。ガキが乗ってる船じゃねえんだよ。
アークにそそのかされて、ドクロのツラしたヤヴァイ船に乗っている、坊やとお嬢さん達じゃないんだよ。
そこを尊重しなよ。アーク。
AXEはいつも冷静に考えている。ミーマは腐った世界に関しては直情的だけど、状況はしっかりみてる。
計算にはうるさいタッヤだって、なぜか今回はやるって言ったんだ。
いつもいつもいつもいつも、バックレることばっか考えているネガだって……。
コタヌーンさんもオクタヌーンさんも、夫婦で決意固めたんだよ。
アーク。あんたはいいかげん、パンダのきぐるみを脱ぐ時がきたんだ。
アーク。わかるだろ?
サディはアークの胸ぐらをつかみ、真っ赤なリンゴみたいに赤い瞳を、ふたりのひたいとひたいがくっつくほどに接近させる。
夜空のしたで暗い色に沈むアークの瞳を、サディは赤い瞳でにらみつけて、口を開く。
「ガキじゃねえんだよ!! あんただってさ!!!」
野生の庭園の静けさを、すべてかき消けすほどの大声で、サディはアークにそう言った。




