表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第四部・白薔薇の君

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

128/372

マノア・ド・ラヴィで夕食を

マノア・ド・ラヴィで夕食を



晩餐会ばんさんかいのご用意ができました。シュライザーローズもお待ちです」

 再び部屋にやってきたクートゥは、例の優雅な礼をしてそう言った。

「おお、そいつはありがたい」

 アークがずーっと飲んでいる、しびれるように苦いお茶を飲み干して席を立つ。

「お魚。お魚〜。貝。貝〜」

 来るときにみた感じでは、この星には豊かな海がめっちゃある。それはつまり、豊かな魚介類が食べれるということだ。サディがるんるん気分で漆黒しっこく真紅しんくの和服を揺らして晩餐会へと向かう。

「いったいどんな料理なのかなぁ」

 コタヌーンはるんるんで歩くサディの背中をみつめながら、そう言った。



 クートゥに通された晩餐会の場は、これまたおもむきのあるアンティークなシャンデリアが頭上に輝く、古き洋館の一室だった。

 ゆったりとした純白のローブに褐色かっしょくの身を包んだシュライザーローズが、海賊放送船一同を迎える。

「シュライザーローズの晩餐会へようこそ。この星のお料理が、お茶と同じくお口にあうといいのですが」

 シュライザーローズの優雅な礼に、海賊放送船一同は独特どくとくの敬礼でこたえる。

 その後、アークは

「うーむ。こういう場所だと、どうしていいかわからんな」

 という表情ながら、どかりと席に腰をおろした。

 全員が席に着くと、ヘイガーとクートゥがぼんを持って現れ、ひとりひとりの前に料理を置いた。

 アークの目の前に置かれたのは、たった一杯のスープ。

 むむむ?

 アークは思った。

 これだけなのか……。と。

 むむむむ?

 サディは思った。

 具がないとは……。と。

 ですよね。

 AXEは普通に思った。

 コース料理ですね。と。

 わーお。

 ミーマは思った。

 こーゆーの期待してたの。と。

 むむむむむ?

 タッヤは思った。

 くちばしにこれは難易度激高なんいどげきたかいのでは? と。

 おー。

 コタヌーンは思った。

 高級ってやつですなぁ。と。

 あー。

 オクタヌーンは思った。

 これはお高そう。と。

 くそが……

 ネガは思った。

 ガスマスクしたまま食うのはめんどくせえな。と。



 料理がこれしかないとは……。という絶望の表情でアークはスープをちびちび飲み。サディは具がないのは残念だと思いながらも、ため息を押し殺し。タッヤはスープスプーンをうまくあやつりくちばし問題を解決し、その他の面々はスープを普通に楽しんだ。

 次に出てきた料理は生野菜の皿で、アークはほっとしたのだが、それにはちいとも手をつけず、クートゥが野菜は苦手なのかとさげようとすると

「そいつはとっておいて、最後に食いたいんだ」

 とアークが謎のわがままを言って、ヘイガーとクートゥを困惑こんわくさせた。

 そんなことがありつつ料理は進み、アークの席にだけいつまでも生野菜の皿だけが残り、生野菜以外、出てくる料理出てくる料理、火が通っていることに表情がくもりだしたサディが若干じゃっかんしょんぼりしつつも、晩餐会の会話は進み、シュライザーローズのかろやかな声が時にはクスクスころころと笑い声をあげた。

 上品ながらどこかに野趣やしゅが残る様々な料理が野蛮生命体達に食べ尽くされて、食後に甘苦い不思議なスイーツが出された頃……

 ようやく生野菜を口にしたアークがもしゃもしゃしつつ、シュライザーローズにこう言った。

「実はあなたに、かなり聞きたいことがある」

 シュライザーローズの紫の瞳を、アークがじっとみつめて言う。

「いったいどんなことでしょう?」

 シュライザーローズは、アークの瞳を紫の瞳でまっすぐに見つめ返してそう言った。

「あなたが放送で最後に流した曲。あの曲について聞きたいのさ。Space Synthesis Systemのク……。失礼。アホンダラーの能無し野郎どもが、あなたを撃ちだしたのは、明らかにあの曲が発端ほったんだった。俺はそう思っている。あなたはどうお考えだろうか?」

「あの曲については……。私としても不用意な面があったのかもしれません」

 シュライザーローズはそう言って、紫の瞳を伏し目がちに視線をティーカップに落とす。

「不用意だった? 通常、曲を流すことに不用意も何もないと思うが? 特に、あの曲には歌詞も何もない。政治的なメッセージも、反抗的なメッセージも、聞く限りではあの曲には存在していない。そんな曲を流すことがなぜ不用意だと?」

「確かにあの曲には、言葉は存在しません。ですが、あの曲は明確なメッセージを持っているのです」

 シュライザーローズは紫の瞳を再び、アークの瞳に合わせてそう言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ