表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
海賊放送船イービル・トゥルース号の冒険  作者: 悪魔の海賊出版
第三部・キャプテンパンダと愉快な仲間達号の冒険

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

101/362

ふたりで浴びる事後のシャワー

ふたりで浴びる事後のシャワー



 この船を何回めぐったのかわからない、再利用処理された温水がうみだす豪雨ごううの中に、サディとアークはいた。

「アーク、素敵だったよ」

 サディは降り注ぐあたたかい雨の中でそう言った。

「そいつは光栄だ」

 アークは降り注ぐあたたかい雨の中でサディに返す。

 再利用処理済みの温水がうみだす温かい雨の中で、ふたりはしばし無言でたたずんでいた。数分の時間がゆっくりと流れ、大量に降り注ぐ温水が、ふたりの激しい行為の後にこびりついた残滓ざんしを排水溝へと流し去っていく。

 ふたりの間にあった今までのいろんなことが、豪雨ごううのように心に飛来ひらいしては去っていく。

「アークはね。シンセティック・ストリームから逃げ回るあいだに、いつの間にかおちんたまがちぢみあがって、気がついたらおちんたまがなくなって、度胸までおちんたまと一緒にしぼんで消えてなくなっちゃって、本番の勝負に二度と本気で立てないんじゃないかって思っていたの」

 長い沈黙の後にサディが言った。

「そう思われても仕方ない」

 アークは返す。

「でもね。今日のアークはあの頃みたいに素敵だった。出会った頃のガチでバチバチだったアークは、ちゃんとまだ生きていたんだね」

 サディは言う。

「俺は丸くなったように見えるのかもしれないが、中身はあの頃のままだよ」

 アークは返す。

「今日のアークは本当に素敵だった。このあたしが、コイツだ! そう見込んだ男だったよ」

 サディは言う。

「ありがとうよ。ところで、サディ。俺にとってはガチでバチバチだった頃から長い時が流れさったわけだが……。今まさに常にガチでバチバチなサディには、おちんたまが生えてきたりはしてないか?」

「はあ?」

 真っ赤なリンゴみたいに赤い瞳のおめめをまんまるにして、サディは言った。

「おちんたまが生えてきたりはしてねえよな。ってことはだ。ガチでバチバチであることと、おちんたまの関係性はねえんじゃねえかって俺は思うんだが……。なあ、サディよ。どう思う?」

「うーん……。そうかもしれないけれど……。シンセティック・ストリームのケツの穴は間違いなく小さいよね?」

「ああ、それは間違いない。邪悪でも何でもない、そいつはむきだしの真実ってやつだ」

 アークはそう言って、ブルーナイトメアの操縦席から、エアロック内で稼働している機体洗浄装置のスイッチをOFFにした。

 多数の知的生命体の血肉と骨片こっぺんを浴びた機体をキレイに洗い流す、機体洗浄装置から降り注ぐあたたかい雨が止む。



 ぷしゅーー。

 艦橋の耐圧扉が開き、アークとサディがアイアンブルーとガンメタルグレイの世界にご帰還。

「おかえりなさい」

 鳥獣戯画ちょうじゅうぎがを描いた着物を大きく衣紋えもんを抜いて着付けて、ばっちりあでやかなうなじをみせつけながら、静かにレーダー盤に視線を落としていたAXEが顔をあげて言った。

「機体の損耗箇所そんもうかしょと、使用した弾薬とエネルギーパックの量を後で報告してくださいね。今回は船の経費としてあつかいますので」

 とは計器をみつめ続けるタッヤ。

「く、く、く、くそが……」

 ついさきほど全力で前進して突入までさせられてしまったネガは、刺突衝角しとつしょうかくで串刺しにした標的艦から離れてだいぶたつと言うのに、いまだにガタガタと震えている。

「どうでした? 腐った組織の腐った理屈りくつは聞けました?」

 ミーマが自席で足をぶらぶらさせながら、静かに問う。

「いや。相変わらず奴等はまったく話が通じない。まったくもって意味がわからん」

 そう言ってアークはどかりと自席に座ると、めいいっぱいシートを倒し、ブ厚い硬化テクタイト製窓の先に広がる星の海をみつめる。

 サディはいつもの漆黒しっこく真紅しんく薔薇柄着物ばらがらきもののおそでを揺らして自席に戻ると、久しぶりに自席の前に姿をみせている巨大なリヴォルバーカノンを模した主砲操作桿を、愛おしそうに小さなお手々でなでる。

「ついにこの船も、ガチでバチバチの戦闘艦にもどったんだねえ」

 そう言いながら、ブ厚い硬化テクタイト製窓の先に見える主砲をうっとりとみつめるサディ。

「この船は、海・賊・放・送・船」

 めいいっぱい倒したシートに身をあずけたまま、アークはサディにむかってそう言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ