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1 新転生

「おんぎゃ〜、おんぎゃ〜」


 小さな一室に生まれてまもない赤ん坊の声が響いていた。

 その子のそばには両親と思われる若い男女の姿がある。男の方は茶色の髪の毛の美形とも言い難い普通の男性。女の方もまた、どこにでもいそうな赤髪の村娘だ。

 二人揃って赤ん坊のことを覗き込んでいた。その顔はとても幸せそうで嬉しそうだった。



(また(・・)か・・・・・・)


 俺は心の中でそう呟いていた。そう、またなんだよ。俺は何回も何回もこの光景を見たことがある。この"転生"という事象をな。

 一回目は、本当に最高だと思ったさ。なにせ、誰も彼もが人生は一度きりだと思っているだろ?俺もそう思っているうちの一人だったんだ、喜ぶのは当たり前のことだろう。その時の俺は前世にやり損ねたことがたくさんあった、だから今世は前世でできなかったことをやり尽くそうと思っていた。剣や弓の達人、魔法の行使、世界旅行、未解読の歴史的遺物の解読なんかのいろんな案があった。いや、あると思っていた。そう、思っていただけで現実は違ったさ。

 二度目の人生は父は軍人、母は軍の医務院の医者だった。両親は俺が軍人になることを強いた。いや、それが普通のことなのだろう。20歳になれば銃を握らされ、それから軍人になるためのさまざまな訓練を受けた。結果、普通の軍人になって普通に出世し、普通に寿命で死んでいった。

 だけど、俺は死ぬ間際に思った、こんなつまらない人生は嫌だ。もっといろいろなことがやりたい。俺は死ぬ時に願った、もう一度人生があることを。

 今思えばそれがトリガーだったのかもな、俺はまた目を開けることができた。三度目の世界、四度目の世界、幾度となく死に、転生してきた。それほど語る必要のない人生など、無数にある。それをいちいち思い出して説明するなんてことをしたって意味がない。そうだろ?


 幾度となく転生を繰り返してわかったのは、全てが別の世界だっていうこと。いや、全ては言いすぎたか。時々同じ世界を経験することがある。

 最初の世界は平和で争いなどない世界だった。

 その世界には魔法があった。もし知らないやつに魔法を簡単に説明するなら、世界のいかなるところにもあり、人間の中にも流れている空気のような存在の魔力を自分の意のままに操って魔力を火や水に変えること。それが魔法だ。魔法の多くは魔物って言う魔力を持っている人間や動物を襲うやつを殺したりするのに使われていた。


 そんな当たり前のような魔法だが、二回目の世界ではそんなものは物語の中でしか存在しない、所謂ファンタジーって言うやつだった。

 二回目の世界は銃や大砲、ミサイルといった科学的な武器を使って世界中で戦争が絶えない世界だった。

 一度目の世界とは大違い、平和とは真逆でさらに言えば魔法とも正反対。


 大体はこんな世界だった。

 時には魔法を使った戦争、また違う世界では科学を平和のために使ったり、さらに自分が魔族っていう魔王って魔族や魔物の王様みたいなやつの人みたいな配下や魔物、動物や虫にだってなったことがある。


 転生では好きな世界は選べず、性別も種族も身分も選べない。ただ与えられた生を真っ当するだけだった。

 ある世界では蝉のように陽を浴びる時間が一週間だったり、ある世界ではエルフとして千年も生きたことがある。


 今も今世の俺の顔を覗き込んでいるこの両親よりも、よっぽど俺の精神年齢は高いだろうな。精神年齢が高い、ということだけで済ませていいのかはあれだが。

 そうそう、何度か俺以外の奴らにも転生について聞いたことがある。俺のように何度も転生してさらに一回一回の記憶があるやつはいるのかどうか。

 大体ファンタジー系の小説だと異世界転生で勇者になる!というたった二回の人生で終わっているものが定番だろう。

 結果、見事にそんな奴らは一人もいなかったわけだが。

 まあ、俺の様に何度も記憶を持ったまま転生している奴がいるとは思っていなかったが。

 だが、転生や転移をする奴らはいた。

 この転生や転移は俺のようなやつとは違って、一度きりしかできなかった。俺は何回も転生しては死んでを繰り返し、その全ての記憶を持っている。

 だがたまにいる転生や転移をする奴は違う。転生は一度だけ前世の記憶を持ったまま次の世界に行き、新しく生まれることができる。

 そしてその際、絶対に神と会うのだ。これは決まったことで、誰も神に会わずに記憶を持ったまま転生する奴はいないだろう。

 なぜそう言い切れるかって?その理由は二つ。一つは実際に転生したやつに聞いたことがあるから。一人や二人なんかじゃない、千人か、いや一万人以上には聞いたことがあるだろう。一人の人間がそう言っただけなら一蹴するところだが、そういうわけではない。数多の奴らに聞いてきている、まず違えないだろう。

 そして二つ目の理由は、俺自身実際に経験したことがあるからだ。とは言っても、これだけ転生して百かそこらなのだからすごい少ない。でも真実味はあるはずだ、実際に何度か体験しているわけだからな。

 転生する奴らのいう通り、神と名乗る奴が俺の前に立ち


『貴方をこれから異世界に送ります。最初は混乱するかもしれませんが、直にわかることでしょう。世界が救われることを祈っています』


 的なことを言って俺はいつもと同じ転生をする。

 いや、いつもと同じというわけではないな。神が直々に転生させてくるパターンは、大体世界の危機か、まあもしくは神の失敗か。世界の危機のときに転生する場合は"ギフト"って呼ばれる神がくれるチート能力を授かる。それは勇者という称号や賢者、ときには魔王や邪神なんていうやつを貰っている奴もいたな。

 とまあ、神が直接人間に転生させてあげるから世界を助けて〜なんていうのはごく稀だ。それこそ普通の人間は記憶を持つ人生なんて一回限りだから例えどれだけ面倒なことを押し付けられても文句を言うのは筋違いなんだろうな。

 あと、神の失敗について何だが、これは本当かどうか俺にもわからない。何せ俺がたった一度経験しただけであんなことになったやつの話は聞いたことがないからな。

 その当時は普通に人生を楽しんでいたんだが、ある日会社帰りに道路を歩いていたら急に空から眩しい何かが降ってきたと思ったら、次の瞬間は神の前にいた。俺もこれまでの転生の中でも全く知らないことだったから何事かと思ったよ。

 その神曰く、不慮の事故で神の雷が人間界に降りちまったのだとさ。全くもって意味不明だが次の世界で好きな能力を選んで持っていっていいと言われたからまあ悪くはなかったな。


 次に転移だが、これは神に会うんじゃなくて別世界の奴らに魔法や魔道具を用いて召喚されるやつだ。

 これには神なんてものたちとは関係なく人間、時には魔族なんかに呼び出されることもあった。

 だけど目的は大体一緒で世界の危機を救ってくれ〜だとか魔王を退治しておくれ〜みたいなことだったけどな。

 そいつらの私利私欲で呼び出されるなんてことはまずないだろうな。無いとは言っていないが。


 俺みたいに何回も転生してはその記憶がある奴はいないってことだ。

 それに神が何か俺にしているんじゃないかと考えたこともあったが、そういうわけではないらしいからな。

 会ったことのある神は特に俺のことを特別視しているわけでもなければ、普通に俺の前に現れて転生させてやるって言っているわけだからな。

 もし俺のことを任意に毎回記憶を持ったまま転生させているとしたら、そんなことはしないだろうからな。

 それに、毎回同じ神というわけではなさそうだからな。


 とまあ、今更になってこんな物思いに耽っているのにも訳がある。

 特別今回の世界がやばいとか、もうこの先転生できなさそうだとかそう言うのではない。

 どちらかと言うと誕生日のようなめでたい方のやつだ。

 なんと言っても今回で転生"百万回目"を迎えるんだからな。こんなめでたいことを記念しない奴はいないだろう?

 まあ記念できるやつもいないだろうがな。


 今までも一万回目や十万回目など記念できる時にはこうやって過去の出来事や面白いことを思い出していた。

 今回もそのうちの一つ。


 でも今回の世界はいつもと同じで終わろうとは思っていない。何せ記念すべき百万回目の世界なのだから。

 何をするかはその時に決めるが、一つ決めていることはある。

 それは"この世界を楽しみ尽くす"ことだ。

 それがこの百万回目の世界でやろうと思っていることだ。そのためにできることはなんでもやろう。長生きしたり、チートオブチートを目指したり。

 何せ百万回目と言う記念の日なのだ、今までやってこなかった一つの世界にとどまるというのも悪くはないだろう?


 そう言うわけでこの世界にはしばらくお世話になろうと思っている。

 そうだな、目標はこの世界の博士というところだな。長く生きていればそれだけ知識や技術も増えるだろう。あと他の世界のことを知り尽くすのも面白いだろう。


 それなら、全ての世界を知り尽くすのも悪くないかもしれない。この転生でちょうど百万回目なのだ、そろそろ全ての世界を見たと言っても良いのではないか?

 そうだな、俺は誰よりも色々な世界を見てきているんじゃないか?転生する時に見た神は全員違った神だったし、それに神は自分の領地とも言える世界に住んでいて他の世界になんて行くことはそうそうないらしいからな。


 これからは自分のことを叡智な者とかでもいいかもな。流石に調子に乗りすぎじゃ無いかって?だがそれだけのことはしているだろう?

 普通約百万もの世界を見ることなんて出来っこないだろう。神ですらそんなことをした奴はいないだろう。

 実際に神様よりも世界のことに詳しそうだし・・・・・・


『後天的永遠スキル、叡智なる者〜世界の全貌を知り得る者〜を獲得しました』


 は?

 今のは一体何なん・・・・・・


[後天的永遠スキル、叡智なる者〜世界の全貌を知り得る者〜を獲得しました]


 考え終わる前に自分で結論を導き出して答えをいうのはやめて欲しい。

 ていうか、それはもう分かった。そうではなくって、これ自体の説明が欲しい。後天的永遠スキルなんて聞いたことがない。叡智なるものとか、世界の全貌を知り得る者とかも何なんだ?

 さらにこの声にならない魂に直接情報を流し込んでいる感じはまるで・・・・・・


[後天的永遠スキルとは、後天的に身につけることのできる世界間の魂の移動でもなくならない永遠に消えることのないスキルです。

叡智なる者〜世界の全貌を知り得る者〜とは、全ての世界のすべての情報を所有者に伝えるスキルです。スキルの獲得条件は、如何なる者よりも様々な世界を知っており、自分が叡智な者だと認識することです。

この叡智なる者と神との関係性は皆無です]


 なる、ほど。情報は分かった、というかわからされたような気がするが。

 ていうかさっきも言った通り考え終わる前に結論を・・・・・・


 まあ、要するに「知りたいことがあったら何でも聞いてね♪」って言うことだろう。それも情報に誤りがあることは絶対にないってか。

 これ程までにチートなことがあっていいのだろうか?誰もがそう思わずにはいられないはずだ。だが、この無機質な声が嘘をついているなんて思えない。

 この魂に直接送り込んでくるような奴は、神俺たちを転生させる時に同じ方法でコミュニケーションをとってくる。そしてその端々に助けてほしいと言う願いや、面白いものが見れそうだなんかの好奇心などの本心がが丸見えになる。魂に直接思念を送り込まれるとそう言うところまで読み取れてしまう。神がそんなことを許していいのかとは思うのだが。

 そして今回の叡智なる者が送り込んできた情報には真実しかなかった。この情報は絶対に真実だと世界の全てがそう言っているような感覚だ。

 感情も思いと呼べるものもないんだが、それでもこれらが真実であるということがわかる、というかわからされる。


 俺はこの魂に直接送られるのは嫌いだ。自分も相手も全てを曝け出さなければならず、さらに全てが一度に送られてくるから頭が痛い。

 とは言っても相手の感情が見えるのは明らかなんだが、自分の考えでいることが筒抜けになっているのかはいまいちわからないからこそ不気味なんだが。

 俺はせっかく生きているのだから生きているものと会話がしたい。

 こんな無機質で機械音声みたいな奴は嫌なんだが。


[要求を受諾しました。これからは思念として脳内に情報を送り、生物らしく振る舞います。

これからよろしくお願いします、マスター]


 おっ、おお。急にガラリと変わった。さっきまでとは違う。本当に普通の人間らしい生気を感じられる。多少の堅苦しさは残っているが、神と話しているような気はしないな。

 これからもその調子で頼む、さとり。


[イエス、マスター。

ですがさとりさとりとはなんでしょうか?私の叡智も存じません]


 さとりっていうのはお前の呼び名だ。叡も智もさとりって言う感じの読み方があるんだ。

 毎回叡智なる者っていうのも変だろ?だから呼びやすいようにさとりだ。いいか?


[イエス、マスター。問題はありません。これからはマスターにさとりと呼ばれることを認識しました]


 そうしてくれるとありがたい。名前を考えた甲斐があるってもんだよ。

 この先ずっと一緒にいることになるんだろ?だからこれから色々なことを訊くと思うからこれからよろしくな。

 さとり。

 

 よくわからないが、さとりは面白そうだから良しとしよう。

 

 

 

 

小説を書くのって難しいですね。


いっぱい投稿、そして長文頑張ります

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