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捨てられ我が道を行く姫とたった1人の番犬  作者: ハル
新たな付き添いは神様?
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93話

 部屋にいた恵は奏とともに荷造りをして、明日の帰宅準備をする。午後一の便に搭乗するのだが、朝早くに出て再度李白鳳の母と祖父に挨拶をしてから空港に向かう手はずになっている。


「奏さん、白鳳さんから連絡ありましたか?」

「まだだね。多分、問題ないとは思っているんだけど。」


 すでに1時間以上は経過しているのだが、連絡がないことに奏は不安を感じているようだ。


「そういえば、さっきは何か言いかけていなかった?」


 奏が唐突に恵に尋ねる。すでに、荷造りも終わってしまいお互い手持ち無沙汰になったからだろう。部屋に設置されているお茶セットで淹れたお茶を飲みながら話をしている。

 恵は悩んだが自分の勘違いで出た態度でさらに彼を不安にすることを避けるために言いかけたことを口にする。


「これは私のただの勘違いなんですけど、さっき見たあのナンバー2とか言われていた男性は異能を使えるような気がしたんです。なんでかわからないんですけど、白鳳さんと同じような感じがしました。」

「そうなの?僕には全然分からなかった。血が覚醒してまれにそういった人がいないわけではないけどね。その神石も神剣と言われるものを作る職人がいるというけれど、そういうのは異能の才を持ち自然と作ったものに宿らせてできた偶然の産物だっていう説があるんだ。」

「なるほど。神剣もあるんですね。」

「うん、日本に1本だけだけど。今は作れる人がいなくて修復することしかできないみたい。そういった鍛冶職人の末裔が神剣の使い手になることもあるんだって。」

「へえ、会ってみたいですね。」

『主!私というものがありながら、剣の方が大事なの!?』


 神剣に興味を示す恵に縋りつく盤古なる神。


「そういえば、あなたに名前がなかった。」

『ええ!?今そんな話していない。』

「名前何がいい?」

『自然とスルーは止めて。』


 恵は彼の言葉に耳を貸さず彼の名前を考える。


「恵さん、名づけはそんなに簡単にしていいものじゃないと思うんだけど。」

「そうなの?」


 その思考に奏が邪魔をして恵のそれは途切れる。

 それを感じ取ったように絶世の美貌の神は何か騒いでいるが、クモの糸によって口をふさがれかけそれをよけることで精いっぱいになる。


「でも、名前がないと話すことさえ難しいから、やっぱりつけようと思います。」

「恵さんが決めたのなら良いよ。あと、できるなら僕にも彼らと同じように楽に離して。」

「それはそれで気が引けます。」

「なんで?」

「腹違いの弟っていう間柄のうえに、今後私は家を出ていくけど、あなたは家を継ぐからですね。そういう地位がある人に対しては分別として分けることは大事なのではないかと思います。」

「そんなことは気にしないで。本当なら恵さんが継ぐべきものなんだから。」

「あんなに大きなものはちょっと要らないですね。」


 この時初めて恵は自分の本心を外に出す。

 彼に対していつまでも丁寧な言葉なのはここでため口にしてしまうと、周囲で何かしらある可能性を考えてのことだ。ただでさえ、恵にはうまく使えないが目のことで周囲から特別扱いが多いので、これ以上、家に踏み込めば何かしら不穏が出てくるだろう。恵はそれを危惧している。うまく回っていたものが回らなくなることを。


プルルルル


 そこで奏の携帯が鳴る。

 恵の携帯は海外に出てから電源を切っているので、そんな電子音が鳴るのは奏の携帯ぐらいなので、すぐにわかり彼はそれに飛びつき電話を取る。

 相手は李白鳳だ。

 内容はホテルの外で夕食の誘いだ。奏は安全の確認をして恵に電話で話しながら頷く。これを受けて恵はカバンを肩にかけてお金も一応持って出る準備をする。

 奏が電話を切るとすぐに恵とともにホテルを出てすぐの場所で待っていた2人と合流し、彼らとともに向かったのは高いタワービルにある個室の食事場所だ。


「おお、こんなに高い場所があるんですね。少し怖いような気がします。」


 恵が言うと、3人は苦笑している。

 テーブルには4人席ではなく8人分の椅子が配置されている。

 それを不思議に思ったのは奏も同じで白鳳に話しかける。


「白鳳兄さん、今日は他に誰か来るの?」

「ああ、まあな。とりあえず座ろう。奏と恵は真ん中だ。俺らは両端に座るから。」


 ちょうど中心線から半分を埋めるように座って恵たちは相手を待つと5分後ぐらいに彼らはやってくる。

 黒いスーツを着た冷酷そうな人相の集団。黒いサングラスをしているイメージがある裏の住人たちがやってきて、ドアの両側に立った人2人と最後に入った男性が最初に席に座る。その男性は見覚えがすごくある恵は驚く。ホテルで女性を肩に抱いていた人だ。そして、あの夕食を摂ったお店でも。

 真正面から見ると、整った顔であるだけに彼からの威圧感は想像以上のものになる。もう1人、彼の後ろに立っていた眼鏡の男性のみが椅子に座り、他の2人はそのままドアの両側に立っている。どうみても、出入り口を封鎖しているようにしか見えず、恵は困惑する。


「そんなに怯えなくていい。李白鳳さんからお話を聞いて、こちらで確認をするためにこちらの者に連絡を取り、そのうえで、当事者であるあなた方にも話を聞きたいと私から願い出た。」


 日本語を流暢にその整った男性は話す。

 この声は恵が今まで聞いたどの声よりも心に重くのしかかるものだ。言葉か声かに圧力があるように、言うことを聞かないといけないような心境に陥る。


「あなた方の手合いの方はなんと言っているのか?」


 奏が尋ねると、その男性は肩をすくめる。


「なんでも賭け麻雀に急にやってきた若者に4回戦全て勝ち逃げされた上に、50万円ものお金を持っていかれた。その連勝も、初心者のような手つきだったのに全て振り込まず、そのうえで大差だったとか。それだけなら、負けたうちの手合いの運の無さで損を出した者たちの責任だ。だが、彼らは君たちが何かいかさまをして勝ったのだと大声で言うのでね。それをしたかどうかを聞きたい。」


 彼の目が鋭くなり、恵と奏を値踏みするように見る。


「いかさまって、そんなの入ったばかりの僕らができるわけがない。」

「確かに、私もそうは思うが、奴らも罰が重いとわかっているのに、そんな嘘を吐くわけがないと思ってね。」

「それで確かめに来たと?」

「ああ、そういうわけだ。ところで、どちらが席に座った?」


 男性の質問に恵は手を挙げる。

 それを見て眼鏡の男性は驚いていたが、メインの男性は笑みを深くする。


「年は?」

「16歳です。」

「その年でこれだけ儲けられるとはな。」


 ハハハッ


 男性は急に笑い出す。

 何がおかしいのか、恵を含めて4人はその人を見ていたが、向こうは男性を除く3人は呆れたような困ったような顔をする。


「いかさまなんて見破れなかった時点でこちらの落ち度だ。だが、君はそんな小技をするようには思えない。」

「実際、していません。私はいかさまの方法がわかりませんから。」

「だろうな。ところで、そんな年でよく賭け麻雀に参加しようと思ったな。それも観光客だろう。あそこがこちらの縄張りだと知らなかったのか?」

「さあ、そういうのは考えたことがないので。」

「そうか。李家のお坊ちゃん、これは本当に大したお嬢さんが来ているな。」

「まあな。あと、お坊ちゃんとか言うな。お前とはそんなに年が違わない。」

「一回り以上違えばそういうものだ。」


 白鳳がそんなに子供っぽく話す姿に男性は余裕の笑みで見る。先ほどの張りつめたような威圧感は全くなく、いつの間にか自然の風が通るようだ。


「これは提案なんだが、今から俺とこいつ、お嬢さんともう1人そちら側から出して4人で麻雀をしないか?そして、もし、俺かこいつが勝ったらそのお金は全て返金、負けたら倍の額を追加で支払おう。」

「わかりました。」


 恵は一も二もなく頷く。その即決に3人は唖然としているが、恵はその3人にニッコリとする。


「恵さん、博打好きだったんですね。」

「麻雀は教えてもらいましたから。博打は好きですよ。」

「あれだけ平穏な人生を願っていたと思うんですが。」

「それとこれとはまた別でしょう。」

「そうですか?」


 瑛斗とのやり合いに恵は苦笑する。彼は恵の言葉に矛盾があることを指摘したいのだろう。恵は彼に答える気はなく、彼の質問に明確には答えずに流しておく。

 メンバーは恵と瑛斗、向こうは指定があった2人でする。


 結果は恵と瑛斗の圧勝に終わり、金額が増えることになる。

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