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捨てられ我が道を行く姫とたった1人の番犬  作者: ハル
新たな付き添いは神様?
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89話

 恵たちは結局お土産が決まらずにホテルに帰宅することにしてホテルに向かって歩き出す。

 その道中、瑛斗が恵の手に握られているネックレスに注目する。


「恵さん、それはどうしたんですか?」


 彼に言われるまで恵は気づかなかったのだが、それを見て彼女は思い出す。


 迷子から救ってくれたゲームで言えばレアアイテムなのに。。


 恵は苦笑して彼らに見せびらかす。


「これは成り行きで買うことになったんですが、出店で買ったネックレスです。光沢がある石できれいですよね?それに、これが光って桜井さんたちと引き合わせてくれたんです。あなたたちに近くなると光が強くなったんですよ。」


 恵はそういうが、しかし、先ほどのまばゆい光になっていないので説得力がない。彼女はどうしようかと戸惑うが、彼ら3人は自然と受け入れる。


「初めて見ます。珍しいものを手に入れましたね。」

「知っているんですか?」


 瑛斗が感心するように言うので、買った本人である恵が思わず尋ねてしまう。


「ええ、それは神石といいます。原料は神が宿っている石であり、それを加工する技術は代々受け継がれる家がこの香港にたった1件です。」

「そんな貴重なものだったんですね。じゃあ、あのおじいさんがその家の人だったのかもしれません。これ以外にも多く売られていました。」


 瑛斗の説明に恵は相槌をうち先ほど見た老人のことを思い出す。


 そんなにすごい人には見えなかったけどな。それも失礼かな。


 恵は思いだし笑いをするが、3人はそんな風に笑えないほどに緊張感がある顔をしている。


「あの何かまずいんですか?」

「いえ、そういうわけではありません。ただ、神石と言われて販売されたものは数多ありましたが、本物は1つもありませんでした。それはこの販売権を作成者であるその家の者であり、当主である人物しか有していないのと彼しか作れないからです。だから、その人が気に入らなければ販売されず、そのうえ、彼以外が作ったものは全て似て非なるものなんです。」

「そうなんですね。じゃあ、あのおじいさんが当主ということですか?」


 恵の質問に瑛斗は重々しく頷く。

 それだけのことなのに、そんなに周囲が慎重になる理由は恵にはわからない。


「それで、なんでそんなに神妙な顔をしているんですか?」

「当主に気に入られたということは、つまり、その石に宿る神に恵さんが気に入られたということです。しかし、その神がどんな神かはそれを作った者しかわかりません。それが邪神である場合もあり、遠い昔、伝記によれば、当主から怒りを買ったものに邪神が宿った神石を渡したことで相手をだんだん死に追いやったり、人間とはいいがたい姿にしたそうです。」


 うへえ。


 恵はやっとここで理由がわかる。

 つまり、この石は持ち主にとっては諸刃の剣と言うわけだ。


「そんなものならお土産1つ買えるお金を払わなければよかったですね。」


 恵は苦笑し、握っているネックレスの扱いに困る。荷物になるので首に下げようと考えていただけに行方を困るのだ。そこで、返品をしようと思う。クーリングオフなんて贅沢を言わないので、出店に暗くなってしまったので明日出向いておじいさんに返そうと思う。


「それでいいですよね?」


 恵は瑛斗に尋ねると彼は苦笑いで頷く。まだ何か彼は言っていないことがあるようだ。


「なんか曖昧ですね。」

「恵さん、おそらく返品は無理だと思うよ。」

「ええ?」


 今度は瑛斗ではなく反対隣を歩く奏が言う。それに恵は驚愕していると、彼は同情しているような顔をする。


「伝記を僕も読んだことがあって返品しようとした人が過去にいたようで、当時の当主は決してそれを受け取らなかったんだ。」

「どうして?」

「さあ、それは知らないけど、当主から『私は神に言われて渡したまで。今は要らないと思ってもあなたにとって必ず必要となるでしょう。』と言われただけだったらしい。だから、きっと、それを渡されたなら恵さんに何かがあってのことだと思う。」

「確かに、現状役に立ちましたね。迷子から救ってくれました。あとは特に役に立ちそうにないので、私は袋に入れてキャリーケースの中にしまっておきます。願いがたくさんあると神様だって疲れてしまいますから。」

「そうだね。」


 恵は貴重品用の袋の中にしまい、ホテルに帰ると速攻で石を小さな巾着袋に入れてキャリーケースの奥深くに入れる。


「こんなものを持っていたら人変わりそう。」


 恵はそれが怖くて仕方なく、忘れることにする。


 コンコン


「恵さん、夕飯食べに行きませんか?」

「はーい。」


 奏と一緒に使っている寝室なのでノックの必要がないのだが、彼は律儀にそれを守る。同じ年なのでそう緊張する必要もなく、彼は恵を姉だと思っているのでダブルベッドに並んで寝たのだが、彼はそれで緊張しているのだ。理由は恵にはわからない。ダブルベッドで広いので恵と奏は人1人分以上あけて寝ている。その寝室にキャリーケースを置いているので恵はそこにいる。その部屋から出るとすぐ共有廊下なので、奏は恵が何かしているときには必ず部屋から出ているのだ。


「お待たせしました。ごめんなさい。」

「待っていないから大丈夫。もしかして、急かした?」

「ううん、そんなことはないですよ。さあ、行きましょう。」


 恵と奏はホテルを出て下で待っていた白鳳と瑛斗とともに近くの夕食を食べに行く。本当はホテルに朝と夜はついているのだが、朝はともかく夜は白鳳が連れて行きたいようでキャンセルをしている。もったいないと恵は思ったのだが、彼からのご厚意を無駄にしない方がいい、と父から助言されて渋々受け入れたことは恵にとって記憶に新しい。あの時、初めて父とまともな会話をしたというか、父らしさを見た気がしたのだ。


「神石はどうしたんですか?」

「キャリーケースの奥深くにあります。あれをどう扱うかは帰国してから考えます。しばらくたったらその神様の力は弱まっているかもしれませんし。」


 恵は恐怖を言わずに笑っておくと、


「さあ、それはどうだろうな。」


 4人以外の声が聞こえ、その瞬間、全員に緊張が走る。

 すれ違った時に言ったようで恵が一番早くに振り向くと、その人、ネックレスをくれた帽子をかぶり杖を突いた老人、も振り向く。


「やあ、先ほどぶりだね。お嬢さん。さっきは購入してくれて助かった。」


 先ほど一言も口をきかずにただ杖で指示を出していた人物とは到底思えないほどに流暢な話し方だ。


 ??


 そこで恵は重要なことに気づき唖然とする。


「日本語!?」

「・・・・プッ。」


 恵の驚愕した声に老人が噴き出して笑いだす。


「本当に面白い。さすが、あいつが選んだだけはある。あいつは好き嫌いが激しい以前に好きになったものが1つもないやつで、やっと気に入ったものが現れたからホッとしているんだ。これは忠告だが、神は力が強いほどに執着もすさまじい。手放そうなど決して考えるな。わしの祖先のようになってしまうからな。」


 老人は言うだけ言って気づいたら消えている。


「えっと、つまり、大切に扱えってこと?」


 恵の疑問に誰もが同情した顔を向けるだけで何も返事はない。だが、その顔が雰囲気が返答を物語っている。


 恵はため息を吐く。

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