60話
次回から新章に入ります。
引き続きよろしくお願いします。
~後始末 瑛斗~
佐久良家に来た瑛斗は当主である敏明の前に座る。
時は奏たちが恵の家から帰った後になる。恵の家を結界で守護してから瑛斗は恵と話した後に少し離れた場所で車の中で待っていた奏たちとともに佐久良家に向かったのだ。夜も遅い時間だというのに、敏明のほかに貴明と李白鳳、沖と霧島当主が座っている。女性たちは眠っているようでここには男性しか集まっていないのだが、不思議とむさくるしさは感じない。
「瑛斗、報告を。」
「はい、恵様は女郎蜘蛛の力を借りてあの場から自身の力で逃げており、学校に戻った際に確認しましたが全く健康に問題はありませんでした。恵様は今回の一件をなかったことにすることと、今回の主犯である宮地達也の親への伝言を預けられました。」
「なかったことに?」
「はい。あの方なりに宮地達也と話して何かを感じられたのかもしれません。私には自分を怖い目に合わせた相手にあれほど同情することはできませんが。」
「わかった。まあ、残念なことだが、すでに宮地達也はこの世にいないうえに、宮地家は息子を捨てたからこれ以上こちらが何かをすることができない。本当に悔しいな。」
「いない、とは?」
悔しげに顔をゆがませる一行の中、瑛斗は首をかしげる。彼が屋敷にいたときはまだ宮地達也は生きていた。少しばかりけがをさせたが確かに呼吸はしていたし意識ははっきりとしていた。
瑛斗の質問に答えたのは対処した沖だ。
「魂縛、しかも、宮地家が封印した異能力は自分の中にある夢に奪った魂を入れるものだ。夢は彼らの専売特許であり、夢は彼らにとっては目に見えるものだ。そうでなければ他人の夢に介入することなどできない。他人が見えて自分が見えないという場合があるが、本来は自分の夢を使って修行をするため彼らにとって自分の夢を操作するというのはあり得る話。魂縛は自分の夢を通して対象者の夢から侵入して意識そのものを奪い取るものだ。わかるか?」
「つまり、出すことはできないからあの瓶に入れて散ったという宮地達也の発言は偽りであり、取り出すには取った人物の中にあるその意識が囚われている場所を探しあててそこから引きずり出すしかない、ということでしょうか?」
「そう。彼らの夢はたいてい脳の中にある。その部分に手を入れて引きずり出した。脳を死なせて体を焼かなければ、また囚われる可能性がある。夢は一度つなぐと次につなぐことは簡単にできてしまうそうだ。」
「そうですか。お嬢さんは無事でしたか?」
瑛斗は沖の説明に納得して隣に座る今回の件で最大の被害を受けた霧島家の当主に問いかける。
「ああ、娘も祠も無事だ。何とか持ちこたえてくれた。ただ、最初に祠を守っていた者たちは無理だった。彼らはすでに心臓が抜き取られていた。どう考えても人がやった行いとは思えない。」
「人ならざるものが関与していると?」
「おそらく、としか言えないが。」
「そうですか。宮地達也が言うには初めて会った人と言っていましたから、人に化けた人ならざる者たちかもしれませんし、私の親族たちのようなものかもしれません。彼らの目的もまだわかりませんが、誰かがこの街に人ならざるものたちを誘っていることは確かです。」
瑛斗の情報に誰もが食いつく。
「どういうことだ?」
「私の母が言うにはこの街に来る前は別の場所にいたそうですが、とあるものにこの街が居心地が良いといわれてやってきたそうです。それが誰か分からなかったそうですが、ただ1つわかったことはそのものからは死の匂いを纏っていた、と。」
「そうか。」
「それと、先日の傀儡術の石川教師の件でもそのものがかかわっているかもしれません。石川教師になくした人を取り戻す方法として例の方法を教えた人物がいました。人と人ならざるもの、両方からそのとあるものがこの街、いや、もしかしたら、目的は。」
「わかった。そこまでで十分だ。どうやら、我々は誰かに喧嘩を売られたようだ。咎人はどんな方法を使ってでも見つけ出し命を落とした者たちのために罪を償わせる。」
瑛斗の言葉を途中で切った敏明は周囲を見渡して決意を表に出す。
「今後も瑛斗には恵の傍にいてもらう。本当なら、彼女にはここに居てほしいのだがな。無理そうか?」
「まあ、そうですね。」
先ほどまでの緊張感はなく困ったように祖父の優しい顔に戻る敏明に瑛斗は肩をすくめる。
「困ったな。今のところは大丈夫だろう。何とかサポートはできそうだ。瑛斗、あの子を守り抜け。いざとなったら、枷は外して構わない。」
「はい。」
敏明の命令に瑛斗は強く頷き一礼してからその場を後にする。
瑛斗は恵がそのとあるものに興味を抱いていることは言わなかった。そんなことを知れば、瑛斗を悪者にしてでも止めるように命令されたかもしれないからだ。
瑛斗にとって最重要は彼女に嫌われないで好感度を上げつつ命を守りながら傍にいる時間を長くすることだ。
悪魔らしく、彼は自己中であった。




