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捨てられ我が道を行く姫とたった1人の番犬  作者: ハル
家族を拒否したら番犬付き
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5話

読んでいただきありがとうございます。

できる限り短いスパンで更新していきますのでよろしくお願いします。

 恵は変わらず学校と家の往復の毎日を過ごす。

 クモさん以来、変な生き物に遭うことがないので快適であり、彼女はすでにあの時の出来事を記憶の彼方だ。


「眠い。」


 午前の授業が終わった昼休み、窓際の席ということもあり窓から差し込む温かい日差しにまどろんでいる。


「西寺。」


 と担任に呼ばれる。

 良い気分だったのに急降下することではあるが、それはおくびにも出さずに彼の元に行く。ここでは、と言いよどむので相談室に2人で向かう。学校の悩みとか人前でできない話をするのに、教師と生徒が使用する部屋だ。

 鳴海教師と向かい合わせに座ると、彼は口を開く。


「学校生活はどうだ?なれたか?」

「1か月経ちますから慣れました。」

「そうか。じゃあ、楽しいか?」

「普通です。ご用件は何ですか?」


 なかなか本題を切り出さないので、恵から尋ねてみる。

 昼休みのご飯はおにぎりなのでそんなに時間はかからないが、寝る時間の確保が難しいと判断したからだ。


「実は、お前だけ修学旅行の積み立てをしていないと聞いてな。もし、今支払いが無理なら分割でも可能か確認するから。」

「もともと納付する気もないので気にしないでください。」

「は?」


 当たり前に支払う方向で話を進める鳴海教師に対して否を言えば、彼は呆気にとられた様子だ。


「中学校も小学校も修学旅行行かないどころか積み立てしていませんでしたから問題ありません。私が通っていた母校に連絡を取っていただいても問題ないです。親がいないので家を数日あけることは不可能ですし、お金も余裕がないし、学校に旅行に行きたいほど親しい誰かがいるわけでもありません。せっかく心配してくださいましたが、私は結構ですよ。」


 恵は言い切った。はっきりと気持ちいいほどに。


「マジ?」

「はい、マジです。こんなことを冗談では言いません。」


 再度確認されたので大きく頷いて見せると、


 はあ


 と、こちらの気分まで下げるような大きなため息が聞こえる。

 鳴海教師は疲れたように頭を押さえる。


「まあ、言いたいことはわかった。本当にいいんだな?」

「はい、構いません。話がそれだけなら戻ってもいいですか?」

「いや、あと進路のことなんだが、理系と文系簡単に考えたりしているか?」

「理系かな、と考えてはいますけど。大学進学しないので特にこだわっていません。人数調整でどちらかに入れていただいても構いません。」

「はあ?」


 またも鳴海教師は呆気にとられたようだ。確かに、T大K大常連のような県内一の進学校から進学しない生徒は前代未聞だろう。


「マジ?」

「はい、マジです。」


 2度目の会話が続く。

 それで、今度は彼が固まってしまったので、その隙に軽く挨拶だけして恵は相談室を出る。

 教室に戻ると、今度は昼食を食べるために恵の席に座っているのだろう生徒が談笑している。それにも構わず恵はそこに迷わず進む。


「あの、その席は私の席なので食事が終わったなら退いて。」

「はあ?休み時間にどの席に座ってもいいよね?それにあんたいなかったんだし。」

「いえ、私がいなかったのは担任に呼ばれたから。あなたがそこに座っているせいで私が食事できない。一応、この瞬間は私の席はそこだと決まっているのだから退くのが普通だと思うけど。」


 クラスの中心人物的な女子だったのか、彼女は恵の苦言に苛ついたようであるが、周囲も恵を睨みつけている。


「昼食が終わったなら他の場所で話していればいいと思うけど。私が邪魔されたら食事抜きで授業受けることになるから、早く退いて。」

「いいじゃん、食事抜きで。いなかった自分を恨めよ。」

「自業自得。」


 食事を摂っていないせいで苛ついた恵に対して、その集団はあざ笑う態度に変更する。それに堪忍袋の緒が切れる音がする。

 退かないなら力づくで退かすまで。

 恵は座っている女子生徒の腕をひっつかみ、そのまま持ち上げて無理やり席から退かす。ちょうど自分の上を彼女が浮いて移動する。

 恵の身長は平均より少し高い168センチ。対して、向こうは恵より少し低いぐらいだが、体型でいえば圧倒的に校舎のほうが体重はあるだろう。しかし、そんな重さをもろともせずに恵はその女子を持ち上げた。

 信じられない現実に唖然と座りこむ女子生徒とその集団。

 そんなことも気にせずに恵はご飯を食べ始めるのだ。

 冷めたご飯に黒ゴマと鮭の最高コンビは栄養不足になった恵の体に染み渡る。

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