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捨てられ我が道を行く姫とたった1人の番犬  作者: ハル
別荘は休暇ではなく、災難ばかり
43/164

43話

 部屋に入ってまたも風呂に入る。恵は1日で一体何回風呂に入るのかとため息を吐く。そして、問題に気づいた恵は持ってきたキャリーケースの中を覗き見る。


「しまった。今回、下着の替えは持ってきていたけど、洋服はジャージだけだった。」


 そう、彼女は出発と帰宅は同じ服を着てそれ以外はジャージで過ごす予定だったので、2着と寝巻と下着のみしかケースの中には入っていない。


「まあ、寝巻でも大丈夫大丈夫。どうせ、外には出ない。」


 恵は自分に言い聞かせるようにして呟いた後、風呂で血を洗い流してから寝巻に着替えてジャージを手洗いする。


「家でもほとんどしないことを2日連続でするなんて厄日だろうか。」


 恵はため息を吐く。


 昼食前に瑛斗が部屋を訪ねてくる。

 その時には手洗いできれいに落としたジャージを新塚に渡して洗濯と乾燥をしてくれることを頼み終わっていたどころか、時間ができたのでやっとPCでネットサーフィンをしていた。

 ノックをした瑛斗に返事をすると、開けられた扉は彼が入るとすぐに閉められる。彼は正座し恵のほうを見る。


「恵さん、どうして寝巻なんですか?」

「これは他に着替えがなかったからですね。」

「なぜ?予定では5泊のはずですが?」

「ああ、それは行きと帰りは同じ服、他はジャージで過ごそうと考えていたからです。まさか、ジャージも買って初日の服もあんなにすぐに汚れるなんて予想できませんでした。」


 PCを前から避けて瑛斗のほうに体を向けて座りなおす恵は瑛斗からの疑問に答えながら苦笑を浮かべる。しかし、彼のほうは、冗談ではない、というような不快そうな表情をする。


「恵さん、良ければ洋服は私のほうでご準備します。」

「ああ、要らないです。別に部屋から出ても寝巻でも他の2着でもそんなに変わりません。それに、今着ているのはルームウェアというやつなので、屋内なら誰に見られても恥ずかしくないでしょう。」

「そういう問題ではないかと思います。あなたの恰好はその少々露出が多いかと思いますので、部屋を出ることは遠慮した方がよいかと。」


 見慣れているだろう瑛斗にそんな風に言われることに恵は疑問に思う。

 恵の恰好はショートパンツと二の腕がほとんど出ている丈の半そでのTシャツ、露出が多いのは夏用の服なので当たり前だ。それに、休日に買い物を行かない日はほとんど寝巻であるこの格好で家をウロチョロしており、瑛斗は見慣れているはずだ。

 

「桜井さんは見飽きるほど見ているじゃないですか。こんな格好は普通ですよ。夏なんですから。」

「それはそうですが・・・やはり洋服はこちらで準備しますよ。」

「とりあえず部屋から出なければいいんですよね?」


 面倒になった恵は強く瑛斗に確認すれば、彼は頷く。


「では、私はジャージが乾くまで部屋にいますよ。」

「かしこまりました。では、部屋に食事を持っていくように言っておきます。他に何かありませんか?」

「・・・・・何か言いに来たのでは?」


 まさかの瑛斗は洋服の話だけで部屋から出て行こうとするので恵は恐る恐る確認する。まるで、虎の尾を踏むようだ。

 瑛斗は相変わらずニコリと笑っている。


「確かに何か言おうとしたのですが、踏ん切りがついたと言いますか。とにかく、どうでもよくなりましたから。」

「そうですか。」

「説教でもされると思いましたか?」


 彼には恵の考えなどお見通しのようで彼女は言葉に詰まる。


「・・・はい、正直に言えば小言でもあるのかと思っていました。」

「私も最初はあなたからの言伝を聞いたら小言の1つや2つは言おうと思っていましたよ。ですが、それが間違いだと気づいたのです。あなたには思うがままに、他人から制限されることのほうがあなたにとっては負担でしょう。」


 いや、私に限ってではなく誰にとってもそれは負担じゃないだろうか。


 恵は瑛斗の話を聞きながら思うのだが、彼は彼女の表情から何を読み取ったのか苦笑をする。


「しかし、小言を言わないからと言って、あなたを心配している、この気持ちだけは常にわかっていただきたいのです。」

「・・・わかりました。」


 瑛斗は恵が頷くのを見て笑みを浮かべる。いつも通りのこちらを気遣うような笑みだ。それを見て、恵は自分の反応が間違いないとわかる。

 平常を装っているが、恵は混乱している。初めて言われる”心配”という他者から抱かれる感情に戸惑っており、どんな反応をすればよいのかわからないのだ。

 瑛斗はそれを最後に恵の部屋から出ていく。


「私にどうしてほしいのか、さっぱりだ。」


 恵はため息を吐いてテーブルに突っ伏す。

 木の冷たさに熱くなっていた頬がじんわりと冷えていくのを感じる。

 夏の暑さは最高潮だろう。


 恵はその冷たさに身を任せて少しのつもりで眠りにつくことにする。

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