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捨てられ我が道を行く姫とたった1人の番犬  作者: ハル
人が好きな悪魔と番犬の秘密
24/164

24話

新章開始です。

 梅雨は嫌いだ。

 恵は湿度の高いこの季節が小さな頃から嫌いだった。

 なぜなら、体がだるく集中ができないからだ。そのうえ、蒸し暑さがあって食欲まで減り、何度低血糖で倒れそうになったことか。

 この季節になると、彼女は体調不良を理由に体育を休むことにしている。学校自体を休めばいいのだが、一度中学校時代に梅雨入りから梅雨明けまで休みたいと言ったら、たった一言『ふざけないでください。』と切り捨てられた。

 その時の妥協案として、体育は見学という形を取り、他授業で座っているのもままならない場合は保健室で休むことを許された。

 初めての高校での梅雨の時期到来で、恵はそんな体質が改善されるはずもなく例にもれず体調を崩し、教室に着くなり机の上に上体を倒す形になる。


「西さん、だから、今日はお休みになった方がいいと言いました。1日2日休んでも勉強なら私が見ますから。」

「いいです。あなたは前を向いていてください。」


 何度も同じ言葉を繰り返す瑛斗を適当にあしらった恵はため息を吐いて窓のほうに顔を向ける。

 朝なのに雲で太陽が隠れているせいか、どんよりと暗い外の雰囲気を見ていると落ち着く。


 そういえば、人は外の景色と自分の中の精神状態が一致すると気分が良くなるって言っていたな。


 ぼんやりと恵は重い頭で思い出す。

 隣では生徒が瑛斗の周りを囲んで楽しそうに話している。変わらない光景に息を吐く。そこに、自分なりに複雑な思いがあることを恵は何となく理解する。

 副担任の石川教師は教師を退職した、ということになり、それから1週間足らずで最初は生徒たちは動揺を隠せず色んな噂が飛び交ったが、今はもうほとんどない。

 

 それぐらいの存在だったのか、と恵は思いつつも逆にいつまでも黒い噂がなくてよかったと安堵する。他人にここまで想うのはきっと彼女と少しだけ境遇が似ていたからだろう。いや、最初からないものとして振る舞われた恵のほうがまだマシな生活を送れているのかもしれない。


 朝のホームルームから帰宅までこの調子なんだろうな、と思っていると、教室の扉が開いた瞬間、それまであったはずの騒音は一気に鎮まる。


「ほら、さっさと座れ。」


 鳴海教師の声が響く。

 椅子が引かれる音が響き、足音が止まり一瞬の静寂の中、恵は頭だけ教壇の方へ向ける。調子の悪さで彼女は頭を持ち上げて姿勢を正すことさえできない。

 しかし、教壇には鳴海教師以外に1人の青年と1人の少年がいて恵は驚く。


「皆に石川先生の代わりに副担任に就いてくれる秋元先生と本日から転校してきたレイドリック君だ。」


 彼の紹介にクラスの生徒が息をのむのがわかる。

 青年も少年も美形なのだ。青年は整えられた1つに束ねられた腰まである長い黒髪に色白で黒目、スタイルはほっそりとして頼りなさそうで女性に見えなくもない。性別を超えた美しさが副担任となった秋元教師にある。

 一方、少年は癖毛の金髪に青い目だけでも目を引くが鼻筋の通った外国人特融の顔をしておりスタイルは細身だが肩幅があり男性らしい体つきだ。人懐っこい笑みを浮かべていて少し子供らしい。瑛斗が丁寧な執事風だとすれば、彼はどこぞやの御曹司という出で立ちだ。

 そっと、思わず比較するように恵は横目で瑛斗を見れば、彼は口元を引きつらせている。明らかに動揺している彼を見るのは珍しいことなので思わず驚いてしまう。


「初めまして。これから皆さんの副担任を務めさせていただき秋元浩志あきもとこうじです。少しでも皆さんのお役に立てられるように頑張りますので、いつでも気兼ねなく相談してください。」

「初めまして。今日からこの学校に転入してきたレイドリック・オールウィンです。生まれはイギリスで育ちはイタリアです。日本語は独学なので皆さんにわかりにくいかもしれませんが、仲良くしてくれると嬉しいです。」


 2人の自己紹介は終わり、レイドリックはあいている席に座り他2人の教師はホームルームが終われば教室から出ていく。

 すぐに授業が始まったのだが、その際、瑛斗がこそっと耳打ちしてくる。


「先ほど紹介された2人には決して誰もいない場所で会わないようにしてください。」


 彼の忠告に対して、教室からほとんど出ない自分がそんな誰かと2人っきりで会うわけがないだろう、と恵は馬鹿にする。


 そう数時間前にしていたのだが、なぜか、今恵は秋元教師と2人っきりになっている。


 数時間前の自分の馬鹿!!


 恵は内心思いっきり自分を殴る。

 本当は物理的に実行したいのだが、彼女の両手は残念ながら目の前で笑みを浮かべているきれいな男性、秋元教師《変態》につかまり保健室に縫い付けられているのだ。彼は薄い口元に笑みを浮かべている。その笑顔は女神のように神々しさはあったが、やっていることは悪魔のそれだ。


 教師に保健室で襲われるなんてそんな18禁な展開、誰も求めていないよ!?


 恵は思いっきり戸惑い心の底から叫びたいのだが、口は思ったように開かない、無念な状態なのだ。

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