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捨てられ我が道を行く姫とたった1人の番犬  作者: ハル
人形を愛する傀儡術師
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14話

 急に押し寄せてきた数人の同級生たち、彼らは一体何なのかと思っていたが、恵にそんな余裕はなくなる。

 転がった彼らは匍匐前進になると、その方が俊敏に動けるようでまるでクモのように移動するのだ。そして、人ではなくなったのか、恵と瑛斗に向かって飛びついてくるので、それを紙一重ですべて躱す。ただし、多勢に無勢であり、いつ彼らの餌食になるかわからない。人とは思えないほどに大きな鋭い牙が恵と瑛斗を襲う。

 彼らの様相はよく見れば制服を着てはいるものの、そのまだ2か月ほどしか着ていないはずのそれがところどころ破けているうえに、彼らの体に合っていないのだ。袖や裾が短すぎるのだ。そして、1つ違和感に気づけば、人は次々とそれらを見つけてしまう。

 彼らの体躯は恵が覚えているより1.5倍大きくなっており、牙だけでなく爪も獣のように伸びており、髪の毛はベリーショートになっている。

 つまり、恵が覚えている人物像とはまるで別人で、先ほど覗き穴から覗いた時にこれほど雰囲気さえも異なる彼らを判別できた自分が不思議で仕方ない。


 そんな人とは思えない俊敏さと彼らが歩くたびに床に穴があく力を持つ彼らを見て、恵は最悪な予感が頭をよぎり冷や汗をかいているのに、自分をかばうようにして先ほどからこちらをフォローしつつ彼らと対峙している瑛斗には余裕がうかがえる。


「桜井さん、もしかして遊んでます?」

「いいえ、これでも結構本気です。」

「本当ですか?」


 怪しいいつもの笑みを浮かべる彼を疑わしく恵は見つめると、彼は肩をすくめる。


「そんな風に見ないでください。照れます。」

「いや、こんな状況で何を言っているんですか!片づけられるなら早くしてください。私はこれから試験です。時間が迫っています。」

「うーん、どうしましょうか?」


 ええ!?


 まさかの彼の返しに恵は驚愕する。

 ここで悩まれるとは思ってもおらず、恵の勘が当たっているようで、瑛斗は人に見える彼らを解決する方法があるようだ。それを実行しない理由は知らないが、恵はもうアップアップである。なぜなら、体力以上に時間が危機だから。


「もうどうでもいいんで、この人たちをどうにかしてください!!」

「では、恵さん、もし、彼らを元に戻してあなたを時間内までに学校までお連れしたら契約延長ということでいかがでしょうか?」


 この緊迫した状況でのまさかの瑛斗からの提案に恵はさらに驚愕する。空気読めない、どころの印象ではない。いや、彼の場合は明らかにわざとだろう。

 ここでそんなことを頼まれれば、恵は一も二もなく頷いたかもしれないが、ここで1つの予想が閃く。


「まさか、彼らにこんなことをしたのは。」

「いえ、それは違います。単なる偶然です。」


 それを恵が口にしたとたん、彼は即座に否定する。しかし、それがますます怪しく思ってしまうのは一度疑いを持ってしまったからだろう。


「本当ですか?」

「本当です。私の命に懸けます。」

「もういいです。わかりました。1週間の延長でいいですか?」


 これ以上に長引くと学校に行くまでの体力もなくなってしまいそうだったので、すぐに恵は匙を投げる。しかし、この期間に不満を言うのは彼の方だ。


「なぜそんなに短期間なんですか?あなたが高校を卒業されるまででよろしいではないですか?佐久良家の支援を受けて行かれるのですから。」


 彼が今まで恵が思っていたところをついてくる。


「ここでそれを引き合いに出しますか?それを言うなら、あなたは佐久良家ではないと言っていましたよね?でしたら、そこは別ですよ。」

「親戚とは言いました。」

「なんて、引き際の悪い人なんだ!大人として子供を脅すような真似をして恥ずかしくないんですか!?」

「はい、何でも使える手段は使え、と教えられてきましたから。」


 そんなことを教えたのは一体どんな大人ですか!?まともじゃない!!


 知らない大人に向かって思いっきり恵は悪態をつく。


「さあ、どうしますか?」


 そして、勝ち誇ったように瑛斗は時計と飛び跳ねて襲い掛かって来る彼らと恵を見て尋ねてくる。


 頷いても拒否しても恵には火にあぶられる自分が見える心地がするのだ。

 そして、そんな場面を見て彼女は1つの決断をする。


 恵は小さく頷く。

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