13話
サブタイトルを編集しました。
10話が抜けていました(泣)
瑛斗との共同生活が始まって2日目、結果から言えば彼は完璧である。
まず、彼は家事を完璧にこなす。
料理、掃除、庭の水やりまでこなし、料理はもはやプロのような腕前であるし、実際に外食をしたことがないから分からないが、明らかに恵が作った食事よりおいしい。掃除は清掃会社に依頼してきれいに仕上げたように床もキッチンの油汚れ、窓の淵の黒すみ、風呂のカビ、排水溝、などなど挙げたらきりがない。そのうえ、契約通り恵にはリビング兼ダイニング以外の場所では一切干渉してこない。
まさに、恵の完敗である。この2日ほど恵は生活がとても快適だ。自分で作らなくても時間になれば料理が出てきて、いつの間にかピカピカの空間で過ごせる。こんな贅沢なことは他にないだろう。
「どうですか?おいしいですか?」
「はい、とてもおいしいです。」
そして、3時のおやつが必ず出てくる幸福。
恵は今人生で一番の幸福を大福という形で口いっぱいに頬張っている。
瑛斗が住んでいた場所はおやつの時間があることが当たり前であり、その習慣もあって、彼はこの時間に合わせて甘いお菓子とお茶を用意する癖がついているらしい。
正直、この生活があと数時間で終わることは恵にとっては惜しいと思うが、このままズルズルと彼をここに置いておくと、それは以前切った家族という集団との関係が続くと同義だ。いや、まだあと3年は彼らとお金の付き合いはあるので、瑛斗を追い出しても関係はあるのだが、このまま彼に慣れるのは危険だと思い、正直恵は迷っている。
「それは良かったです。今日は多めに作ったのでおかわりもあります。」
「ありがとうございます。」
豆を練りこんだ大福もイチゴとあんこが絶妙に入っている大福もおいしくて手が止まらない恵は満面の笑みでうれしい情報をくれる瑛斗にお礼を言う。彼もそんな彼女を見て嬉しそうに微笑む。
「試験勉強は順調ですか?」
「はい、問題ありません。とりあえず、赤点回避はできると思います。」
「目標が小さいですね。」
プライベートがどこまでかという境界が曖昧だったので、初日に彼から、
『私から好きに質問を投げるので違反すると思われたら答えなくていいです。』
と言われたので、それに恵は乗ったのだ。それからはこんな他愛無い話題が出る。
恵の目標を聞いた彼は苦笑いだ。
「高校は卒業できるだけで満足です。進学はしませんし。」
「進学なさらないんですか?ですが、あなたの通っている学校は進学率100%の名門校と聞きましたが。」
「誰からそんなに上げた評判を聞いたのか知りませんが、私は進学せずに就職ですね。」
「そうなんですか。どんな職業を希望なんですか?」
やけに将来の話に首を突っ込みたがる瑛斗を不思議に思いながら恵は
「家でできる仕事なら何でもいいです。」
と答える。
「プログラマーが妥当かと思っていますけど。」
「そうですか。」
瑛斗の良いところはこんなことを言っても反論もなくただ聞いてくれるところだと恵は思う。
「どうなるかわかりませんが。まだ、2年もありますし。」
「そうですね。ゆっくり考えたらいいですよ。」
そんなことを話して彼との2日間はあっという間に終わった。
そう、終わった、はずだった。
しかし、何にでもトラブルはつきものだと、そして、それは予想外なものだということを恵は忘れていたのだ。
その異変が起きたのは、瑛斗がこの家を去る朝のこと。
いつも通りに制服に着替えて彼が作る料理本に掲載されていそうな理想的な日本の朝食を食べている。
ピンポーン
なぜか家のインターホンが鳴る。2人揃って突然の音に驚きつつ、彼は火の前にいるので動こうとする彼を制して恵が応対する。時刻はまだ7時で他人の家を訪問するには早い時間帯だろう。
こんな早くに誰?と思いながらドアの覗き穴から覗けば、同じ制服を着た見覚えのある女子が立っている。
見覚えがあるのは当たり前だろう。彼女は恵のクラスで中心グループの女子で恵によって宙に浮かされる醜態を晒した女子なのだから。名前は知らない。
知り合いの部類に入る人物を前に玄関を開けるべきか知らないふりを決め込むべきが悩んでいると、恵が戻ってこないのでこちらにやって来た瑛斗が怪訝な顔でドアを睨んでいる。
「恵さん、こっちに。」
彼はそう言って恵の腕をつかみ、そのまま自分の背後に彼女を移動させる。
その瞬間、
ガンッガンッ
大きな音が響いたと思えば、ドアから鋭利な刃物が姿を見せる。
あっという間に木製のドアは破られて数人の同じ制服を着た男女が現れる。全員片手にのこぎりやスコップや斧を持っている。
どこから持ってきたの!?
恵は彼らが持っている武器に突っ込まずにはいられない。
彼らがゆっくりと近づいてくるので問題なかったが、現実離れした事実に呆けてしまい動けなかった恵を慣れているのか瑛斗は全く動揺した様子もなく彼女の腕をつかんでリビングのほうに引っ張る。
ドアを閉めてすぐに洗濯を干すつっかえ棒で栓をした瑛斗はそのまま恵をベランダのほうへ移動させ、庭へと出られるドアを開けてその前に彼女を置いて彼女をかばうように彼は立つ。
ガンッガンッ
玄関のドアが破壊された時と同じようにリビングのドアもあっけなく刃物によって壊される。しかし、つっかえ棒がまだ生きているため、それに前から躓きドミノ倒しのごとくその集団は倒れこむ。
おおー
その光景に感動したのもつかの間、彼らはゆっくりと起き上がるかと思えば、腕を伸ばして這いずって移動する。まるでホラーだ。そんな動作を見て恵は、生きている人とは思えないほどに単純にしか動かないことに、彼らが人なのか疑念を抱く。




