100話
ついに100話突入です。
始めて3桁まで行きました。
引き続き読んでいただけれた幸いです。
監視につけていた人から連絡がつかなくなったのは、翌日のことだ。
恵と瑛斗、レイドリックと秋元教師はホテルの部屋で待っていたのだが、全くその人たちから連絡がこないので、瑛斗から監視責任者に連絡を取ろうとしたら、携帯がつながらない状態になっている。
『無理やろうな。あれはあんたらみたいなのが相手していいやつじゃない。わしと同等以上の力を持っているからな。まあ、そう心配することはない。向こうは人を恨んでいるかもしれんが、それと同じように好ましく思っている。運がよければそいつらは生きている。』
ライは連絡が途絶えたことに動揺している瑛斗を笑って言う。瑛斗はライに詰め寄って笑う。無機質に。
「なんでそんなことを知っているのか教えてもらおうか?」
いつもと違う丁寧とは程遠い瑛斗の口調に恵は驚く。本当の口調を隠してまで付き人をしていた彼に恵は呆れる。
きついことを強いていたんだ。でも、つらいなら辞めればいいのに。
恵は内心つぶやく。
ライは恵の方を一瞬見やるとすぐに瑛斗の方を見る。
『なんや、あんた半分こっち側とは別やけど、それに似た類の血が入っているのに、さっきの男からなんも感じんかったんか?間抜けやな。そっちのお兄さんもか?』
ライは秋元教師に視線を向けると、彼は肩をすくめる。
「異様な気配がしたとしか分からなかったよ。人と深く関わりすぎたせいかな。」
『うーん、そんなことはないと思うけどな。わし、もう長いこと人と関わっているけど、そういう気配はわかるんや。なんや、別のものだとお前たちは鈍感になるのか?それとも、お前たちの力を脅かす可能性がないと相手を下に見ているから気づかないだけか?』
『もともと、こやつらはああいう気配の正体のインプットがされていないから気配を感じても何かわからないんだろう。あれは私たち神に並ぶものだから。』
盤古がライに助言をして、そのうえで恵たちを見やる。
『あれは、最初の異能者たちが倒したはずの百鬼夜行の長の一人で羽衣狐の気配だ。おそらく、あの男に狐はとりつきながら様々な人物とさらって自分の養分にしているのだろう。お前たちが何人いてもおそらく倒せるはずはない。そして、一年前から人が行方不明になる事件の発端はあの男と狐の出会いがそのころだったと思われる。主が言ったようにあの男がこの地に足を踏み入れた。』
盤古の途方もない話に恵はめまいがする。
「あの、まるで羽衣狐・・さんがこの京都にいることを知っているような口ぶりですね。」
『羽衣狐はこの地にある神社にいたんだ。羽衣伝説を知っているか?あれはどれだけ時が移り変わっても人は何となく知っている。だが、その数だけで奴は力を得られるんだ。お前も知っているだろう?我も含めてそうだが、人ならざるものは人に知られている限り存在できる。』
「確かに、そうですね。でも、羽衣狐のことさっきライさんは神と同等だって。」
『いくら同等の力を持っても、やつはそれにはなれない。決して超えられない壁がある。』
「そうなんですね。じゃあ、さっきの養分ていうのは力を得るために?」
『いいや、おそらく自分の望みのためだ。』
「望み?」
恵は首をかしげると、クモさんは少々口ごもるがはっきりと言葉にする。
『羽衣狐の望みは叶えられなかった恋仲になった相手の子を産み育て、そして、家族を得ることだった。それを何度生まれ変わっても再現しようとしている。その恋仲になった相手には裏切られる結果で命を絶たれ、憎しみがあるのに人との間に子供を産むことを祈っている。あれの中でまだ人を好いている気持ちが残っているからな。』
「そうだいな話ですね。」
『ああ、そうだな。そして、人の子を産むためには養分が必要なんだ。人の心を形成する記憶というものが。それを全て吸い込むと記憶のない人など亡骸と変わらない。』
恵は難しい内容を自分の中でかみ砕く。
「でも、それだけの人の体は残っているんですよね?今まで数十人の人がいなくなっているってことは、大きな部屋が必要ですよね?それを提供しているのが浅間教授なんでしょうか?」
『どうだろうな。あれは羽衣狐が選択した今回の相手だろうが、部屋を用意しているかはわからない。羽衣狐は百鬼夜行の長であるから、その一部が人を操って準備させている可能性もある。奴らは知恵が働くから人に混じって生活することはたやすいんだ。』
「そうなんですね。じゃあ、あぶり出しは難しいですね。そういえば、浅間教授の研究室にあった黒い布の下って何かわかりませんか?」
恵はだいたい聞けたので、昨日のことを思い出してクモさんに問いかける。彼の説明が最もわかりやすいからだ。
『それはわからん。だが、おそらく良くないものだろう。決して目に映してはいけない。』
「あれが、人の体たちってことは考えられませんか?」
『さあな。悪いが、我は人の体にそれほど興味はない。』
『わしも、あれは見たくないな。ほんまに人っていうのはこっちが予想もつかないことをする。』
『おぬし、笑い事ではない。主、これは私からの切なる願い。どうか、この地を離れましょう。今ならまだ間に合います。』
盤古はへらへらするライの頭を叩いたかと思えば恵に懇願する。
「なんであなたたちが最初に強くこの地に残ることを反対したのかわかった気がします。でも、私は会ってみたいです。羽衣狐さんに。どんな思いを持っているのか。私は決して持つことはない、たった一人をそこまで強い感じる感情を。」
「恵さん。」
瑛斗は恵の言葉に悲し気に名前を呼ぶ。
『仕方ない。この件には主のために私も参戦しよう。だが、守るのは主のみでそのほかのものは自分で何とかしろ。』
「最初からそのつもりだよ。」
「そうそう、君たちに助けてもらおうなんて思っていない。」
「あなた方だけでは力不足でしょうから、私が恵さんを守りますよ。」
『生意気だな。』
盤古の発言にレイドリック、秋元教師、瑛斗が言い、クモさんが苦笑気味に言う。
「さて、決まりましたね。言っておきますけど、別に羽衣狐さんを倒すことが目的ではなく、あえて行方不明になった人の救出ですから。」
恵の言葉に全員が頷く。
こうして、恵たちは気持ちを新たに行方不明者を探すことになる。
監視役たちとは連絡がつかず、彼らの体も見つかっていないので羽衣狐に連れ去られていると考えられる。それを受けて瑛斗は佐久良に現状を報告したうえで、監視役の件を詫びてから不要だと言い切り、その日からライに環の護衛兼浅間教授の監視をしてもらい、恵たちは羽衣狐が埋められている神社を探すことになる。




