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鬼幻種


鬼幻種きげんしゅ


それはこの世界に蔓延る悪鬼や様々な魔に属する者達をも圧倒する圧倒的な力を持ってこの世に生まれる。鬼の力を持ちながらも狂気に支配されることもなく、それでいて己の力をできる理性も存在する。

最初の鬼幻種が如何にしてこの世に生まれ落ちたのかは詳しくは分かっていない。ただ事実として鬼幻種は人間種や弧白種(こはくしゅ)怨霊種(おんれいしゅ)龍雷種(りゅうらいしゅ)巨外種(きょがいしゅ)司神種(しじんしゅ)といった様々な種族が覇権を争うこの世の中で最も恐れられていると言っても過言では無い種族。

鬼幻種と言っても数は他の種族と比べると余りにも少なく、その数は約1000万ほどだろう。そしてその鬼幻種を纏め上げ、鬼幻種国家レドニオ火国を管理する本家、緋月家(あかつきけ)。そして緋月家にはいくつかの分家が存在し、その分家を纏めるのが緋月家現当主たる緋月刹羅(あかつきせつら)


「チッ」


現当主たる刹羅だが、頭は回る方ではあるがけして頭が良い訳では無い。その為、常に兄である神羅(しんら)と書類作業を行っていた。本来なら刹羅の兄であり、長男でもある神羅が当主になるはずであったのだが、神羅は弟である刹羅と違い様々な所を飛び回っていたために刹羅が当主となった。と、言っても飛び回っていたのは国内ではあるが。


「どうした?」

「あ~肩いってぇ~」


そして共に作業を行っていたもう一人の鬼幻種である女性が刹羅と神羅の話に入ってくる。


「駄目だからね」

「「チッ」」


その女性の言葉と同時に二人は同じタイミングで舌打ちをする。


「でもさ。俺思うんだ。何事にも息抜きって必要じゃん?なぁ神羅」

「あぁ僕もそう思うね。何も僕達はこれから悪い事をしようとしてる訳じゃないし」

「あのねぇ、二人のストレス発散のせいで魔素濃度がどのくらい上がったか覚えてないの?」

「俺の記憶によると47」

「正解」

「でも問題なくない?俺等人間じゃないんだから」

「魔素を散らして魔素濃度を下げないと新しい魔の者が出現するんですけど?」


魔素濃度と言うのは魔の者が生み出されるのに必要な空気中にある魔素の濃さを言い、主にレドニオでは悪鬼種が出ることが多いためにランク付けとしては下鬼(げき)0~50中鬼(ちゅうき)40~70、上鬼(じょうき)60~100、超鬼(ちょうき)101~130、極鬼(ごくき)131~155、絶鬼(ぜっき)156~180、滅鬼(めっき)181~190、終鬼(しゅうき)191~199、神鬼(じんき)200となっている。



「新人を実戦に慣れさせるのに丁度いいだろ」

「じゃあ聞くけど魔素濃度47で出現する悪鬼にランクは?」

「中鬼だろ?」

「雑魚だな」

「俺もそう思う」

「ようやく爪が具現化した人達が中鬼を倒せるはずが無いでしょ」


種族により所々違いはあるが、この世界では何らかの物体を具現化させ、それを操り様々な事が出来るようになる。まず第一に道具。刀や大太刀等と言った武器や、肉体の一部となる翼や超級の火力を出せる自由自在に巨大化させることの出来る腕など、一番最初に具現化した物を爪と言う。これらは強化することは出来ず、強くなりたいと思うのであれば言うなれば能力や能力や魔素の操作精度をどれだけ高め、どれだけその能力のポテンシャルを引き出せるかによる。

そして第二に具現化する物、それは牙と呼ばれる。第二に具現化する物は第一段階である爪で具現化しなかった武器や肉体の一部が具現化する場合もあるが、肉体事態に変化を及ぼす事もある。一部巨大化などで無く単純な動作。腕を振るだけで暴風が起こり、少し飛び跳ねるつもりで飛び跳ねると10メートルは跳躍する事ができ、少し遠くの相手を見ようとしただけで100メートル以上離れた相手の動作全てを細かく見れるといった単純な肉体自体の強化。

そして最終段階である鬼幻種特有の第三の具現化、角。角と言ってもしっかりと角が出現するという訳では無く、どちらかと言えば炎のようにぼんやりと、それでいてそこにあるとハッキリと分かるような見た目をしている。

そしてその角が現れれば第一段階で具現化した爪が更に強化される。爪で具現化したのが風を操れる弓であればそれは矢を放った先では台風を起こすほどの能力となり、翼を使い空を舞う爪であれば翼を使って空を舞い、羽を飛ばすことによって数多の敵を打ち抜く強力な能力となる。

しかし、爪が具現化したばかりの者達ではろくに自身の爪の使い方も分からずに敵に切り裂かれるだけだ。


「だけどなぁ星羅(せいら)……」

「残念な事にもう既に不羅(ふら)から連絡が入ってるけどどうする?」


星羅と呼ばれた彼女は、刹羅の姉であり神羅の妹である緋月家の次女だ。


「はぁ……内容は?」


星羅はは溜息をつきながら不羅、緋月家の長女から送られてきた内容を二人に聞く。


「上鬼一体、中鬼四体、下鬼二十六体を紀赤林(きせきりん)にて発見。上鬼一体、中鬼二体の冰鬼を除いて全固体蒼鬼に属すると思われる」

「ついでに上鬼の冰鬼が超鬼のなり損ないだって」


星羅は超鬼のなり損ないがレドニオ近辺に紀赤林にて発見されたという言葉に些か驚きながらも二人を紀赤林に派遣するべきか思考する。紀赤林と言えば平均魔素濃度が7程であり、悪鬼は殆どおらずいたとしても下鬼が精々なため調査する必要はあるだろう。そして残りの書類の枚数はたかが10枚程度であり、更に神羅もいる。つまり問題は何も無い。


「制限時間は10分。10分立ったら帰ってきて。いい?」

「余裕だな」

「縛りは?」

「爪だけ」

「了解」


刹羅と神羅がお互いの手を叩くと、緋焔城(ひえんじょう)の執務室から二人の気配が完全に消えた。


「はぁ…早く終わらせよ……いや、だけどその前に……」


そして一人残った星羅は机の上に置いてあったワイヤレスイヤホンの様な通信機を手に取り耳につけ、通信を飛ばした。


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