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兄妹

 スクールカースト。

 ご存知だろうか。

「いや知ってるよそりゃ」

 スクールカーストと言うのは、学校内での順位……と言うかランク付けの事である。

「だから知ってるっての!急にどうした優真!」

「いやさ。スクールカーストの上位に……1度でいいからなってみたいなと思ってさ」

「いや遠い目でそんな事言われてもさ……。」

 そのスクールカースト。

 もちろん優真は最底辺。

 最弱オブ最弱である。

 そんな優真の数少ない夢の1つが、スクールカースト上位からの景色を見る……であった。

 正直大体の陰キャは考えた事があるのではないだろうか。

 ちなみに優真も何度も『想像』した事はある。

 尚授業中に。

「お前もそう思わん?中堅」

「中堅言うな。つーか上からの景色を見てどうするつもりよ?俺も中学の時そうだったけど……大した景色じゃねーぞ」

「それは中学の時の話だろ!今俺が言ってるのは高校の話!分かる?」

「なんでそんな煽り気味なんだ……。まぁ良いんじゃねぇの。夢見るくらいなら」

「夢言うな。俺は狙ってるんだ。上位になれる機会をね」

「なんでだよ……ちなみに上位になったら何したいの?」

 衛藤の何気ないセリフに「うーん……」とガチで悩み出す優真。

 それを見て苦笑いしながら「考えてねーのな」と衛藤が話しかけるが優真からの返事はなく、ひたすら頭を抱えて考えるばかりである。

「……なんで上位になりたいと思ったんだっけ」

「いや忘れんなよ……」

「いや待てよ……!おい衛藤。よく考えて見てよ」

「あー?」

 呆れて絵を書こうとスケッチブックを広げる衛藤に対し、突然こう聞く。


「なりたいのに理由なんて……いるのか?」


「うん。名台詞っぽく言おうとしても無駄だから。そういうのは朝比奈にしてやれ。あいつなんでも感動するからな」

「酷っ!?俺が何とか考えたのに!」

「知るか。あ。もう黙れな。今からスケッチするからよ」

「あ……はい」

 素直に聞き入れるが、そこで本当に衛藤に聞きたかったことを思い出し、すぐに話しかける。

「今思い出したんだけどリレー小説書かないの?画伯みたいな絵はいらないんだけど」

「黙れって言ったよな。……まぁリレー小説は書いてるよ。あの文の後だぞ。実際……書きたくねぇ。企画したやつはホントにぶん殴りたい」

「いや企画した人は悪くないよ!順番決めた人が悪いよ!」

「決めたのお前だろ」

「確かに……。ごめんなさい……。あ。もう大丈夫です。絵にお戻りください」

「あそ。んじゃあ今度こそ話しかけんなよ」

 衛藤がキレた時に繰り出すパンチはガチで痛いので、優真もスマホを出し、メモアプリを開いて文章を打ち込んでいく。

 前回書いた日常系の続きである。

 ちなみに衛藤が批判したあの転生系小説はエタった。



───────────────




「明奈ー。今日どうかしたの?凄いぐでーっとしてたけどさ」

 兄が部活をしながらしょうもない話をしている時。

 明奈も部活に勤しんでいた。

 しかしバドミントン部の活動中にも関わらず、なんとも冴えない曇ったような目で部活をしていた。

 いつもは1番声を上げて元気に部活をする明奈だが、そのらしくない動きから、今話しかけた清水来夢だけでなく、部活メンバー全員が心配している。

「おーい!明奈ー!あ・き・なー!」

「はひっ!な……なに?」

 来夢の声にやっと気付いた明奈。

 それに対しため息をつきながら来夢が告げる。

「もー……。困った事があるなら私に言えっていつも言ってんじゃん。頼りにされないなんて私寂しいなー!」

「ご……ごめん!でも心配しなくて大丈夫……」

「大丈夫じゃないでしょー」

 少し怒った顔で明奈の頬をにょーんと引っ張る来夢。

「ほら。表に出な。来夢ちゃんのお悩み相談やっちゃうよー」

「なんでそんなヤンキー見たいな……。まぁ……いいや。うん。話すよ。話す」

「うん!よろしい!お姉ちゃんに相談してみな!」





「恋愛絡み……すか」

「うん……。あ。でもよく考えたら来夢は何回も男の人と付き合いしてるし適切かもね!」

「まるで私がビッチかのような言い回しはやめてくれないかな……。いやほら。明奈とか好きな人いなそうじゃん?」

「いるよ……」

「何?クラスの子?坂本とかかなー?イケメンだもんねー!」

「うーん……違うかな」

「にしても意外だなー……。明奈モテモテだからねー。誰とでも付き合えそうだけど」

「私モテてないよ……。今まで告白されたことなんてないし」

「……ん?」

 明奈のモテてないよ発言に思わず首を傾げる来夢に対し、明奈も首を傾げる。

 話すふたりが同時に首を傾げるという不思議な状況の完成。……ではなく。

「まさか……気付いてないのかい?クラスの男子達の心を射止めていることを……」

「え?今なんて言ったの?卓球部の声がうるさくて……」

「いや!なんでもない!今のままの君でいて!」

「何その男の人見たいなセリフ……」

まるでハーレムラブコメの鈍感系主人公のような会話だが来夢は改めてこう問うた。

「んで……好きな人はクラスどこ?1から5で答えよ」

「えっと……3組」




───────────────




 3組……?

 三組のイケメンというと……

「へぇー。3組かぁ……」

「うん……」

 あ。赤くなっちゃって。

 3組と言うと……高橋かな?

 あいつ顔はイケメンだけど内側クズだからなー……。

 あいつに騙された女の子がこれまでどれほどいた事か……。これは危険だ。

 ちょっとこれは……実質お姉ちゃんの私がやつと付き合うのを止めてあげなければ!

「なるほど……だいたい想像ついたよ」

「え……ホント?」



─────────────




 あー……やっぱり来夢は凄いなぁ……。

 もう好きな人がバレちゃった。

「ホントホント。でもさ。あの人のどこが好きなの?」

 来夢……。もーう。恥ずかしいこと聞かないでよー。

「まぁ……全部かなぁ」

「惚気けてるねー……。うん。まぁ出来れば明奈の気持ちを尊重したいんだけどさ」

 したい……?

 つまり私の意見に素直に賛成出来ないって事……かな。

 もしかして来夢も……好きなのかな。

 でも……でもでも!

 2人で話してる所なんて見た事ないよ!

 いや……私が勘違いしてるだけかな。

 よし。聞いてみよう。

「来夢は……その人の事どう思う?」

「クズだと思う」

 クズ!?そこまで言う!?

 クズでは……ないと思うけど。

「まぁーでもイケメンではあるよね。そこは好きだわ。内面も……ちょっとはいいとこあるし」

 や……やっぱりだー!!

 絶対好きな奴だよ!私から顔背けたし!

 そんなぁ……来夢と喧嘩なんてしたくないよ……。



────────────────




 ヤバい!高橋の顔を思い出すだけで吐き気が……。この顔を明奈に見られるのはまずい……。せめて顔を逸らそう……。

 それにしても……全部とは。もう私にゃ止められないのかね……。

「まぁさ。私は素直に応援出来ないけど……頑張ってね。私も出来ることはするよ。でも……」

 多分、明奈は先に付き合うだろう。

 高橋と。

 私は今彼氏がいない。

 だからこそ。

「(先に彼氏作るのは)負けないからね」



───────────────



 ……ヤバい。

 おしまいだ。

 やっぱり来夢も好きだ。私の好きな人のことが。

 おしまいだ。でも……嫌でも応援してくれるらしいし……だったら。

「うん。分かった。(私の好きな人を取る対決には)負けない。私も……本気で行くよ」

「うよっし!かかってこい!」




 こうして始まるすれ違いの物語は、随分と面倒な事になっていく……。





────────────





「おい優真。お前と榊原って何組だ?今文芸部の部員をまとめる紙を書いているんだが」

 明奈が新たな物語を始めている時、優真は藤宮に話しかけられていた。

「あー。榊原さんは4組ですね」

「榊原は4組っと……んでお前は?」

「俺は……」




「3組です。ちなみに朝比奈は俺と同じクラスですね」



「あー。そうだったそうだった。ありがとな。えっと……ありがとナス?」

「ぶふぉ……!?先輩!マズイですよ!」

「急にどうした」

「いや……語録はダメですって……。んでどこからその情報を……?」

「ごろく……?何を言ってるのか分からないが朝比奈がそんな事を言っててな」

「あいつ……無駄な事を教えやがって」

 明暗分かれるこの兄弟。

 はてさてこの先どうなる事やら。


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