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リレー小説が描きたい日もある

「リレー小説が書きたい」

「急に何言ってんだお前」

 文芸部部室にて。

 小説を1人で黙々と書いていた優真が突然ぽつりとそう呟いた。

 すかさずツッコむ衛藤に続けて藤宮もこう返す。

「まぁ確かに文芸部らしさはあるかもしれないがな。ただ私も朝比奈も小説など書いたことないぞ」

「俺も書いたことねーぞ。書いたことあるのなんて榊原だけだろうに」

「俺も書いたことあるのに……」

「書いてるなんて言わねぇだろあのクオリティは」

「文句言えないのがまた……。榊原さんはどう思います?」

 優真が榊原に声を書けるも返事は聞こえない。

「榊原さーん……って小説書いてるのか。どおりで返事ないわけだ」

 基本榊原が執筆している時、周りの音に対して反応を示すことはない。

 榊原いわく執筆中に他のものに意識を向けてしまうと、そこまで書けていた小説の流れをもう一度書くことが出来なくなるからとの事である。

「私はいいと思うけどね〜。楽しそうじゃん」

「そんな簡単に小説を考えるな朝比奈よ」

「だからお前そんな偉そうに言う権利ないだろエタり野郎」

「うっ……」

「そうだぞ。完結させてやっとそう言うのは言えるんだ」

「くっ……」

「そうだよ〜。私もそう思うよ〜」

「くそっ……絶対何も分かってないのに……でも何も言い返せない……」

「えぇ。そう言うのは私でも言ったことないわ」

「そうですよね……ってさりげなく榊原さん。お疲れ様です」

「ありがとう。ちなみに私はその話賛成よ。みんなで楽しく出来ればそれでいいでしょうに」

「まぁ……そうですけど」

「つーかやりたいって言ったのお前だしな。偉そうな事言ってんじゃねぇ」

「ぐうの音も出ない……」

 意気消沈の優真をよそに「それじゃあみんな賛成みたいだしやるとするか。ただ私の文はあまり期待するなよ」と藤宮。

 淡々と話を進めていく。

「よし!んじゃ決定だね〜!」

「久々の皆でやる文芸部らしい活動ね。楽しみだわ」

「まぁ楽しそうではあるよな。書くかー」

「それじゃあ頑張ろう!私も実は楽しみだ!せーのっ!」


「「「「がんばろー!!」」」」


「あのぉ……提案したの俺だし……俺を置いておいてそれは……ってもっと話し進めないで!ごめんって!」




────────────────





 その後1時間ほど話し合い(優真も入れて)、リレー小説の基礎が決定した。

 まずジャンルは恋愛系。

 これは優真、榊原、朝比奈、藤宮、衛藤全員が読んだことのある小説しかり好きなジャンルであったため、満場一致での決定となった。

 あらすじは「言い出しっぺが書け」と言うことで優真が書くことになる。

 次にリレーの順番だが、やはり最初は大事と榊原がトップバッター。

 次にラノベはかなり読んでるし上手く盛り上げてくれそうという理由で衛藤が。

 続いてイラストレーターとしてラブコメはかなり読んでる(ロリが出てきている物が多い)朝比奈が。

 次に文章力はあまり高くないと自称していた事もありここに藤宮。

 最後にしめるのは優真と言うことになった。



 ……この4番目藤宮が優真に『地獄のような苦しみ』を与える事になるのだがそれは少し未来の話……。



─────────────────



「あれ。お兄ちゃん何してるの?珍しく原稿用紙なんて広げちゃって」

 リビングに入ってきた明奈が意外そうな顔で目を見開いた。

 家に帰り早速小説のあらすじを書いていた優真は、久しぶりに原稿用紙を広げ、あらすじを書いていた。

「まぁ。ちょっと学校の用事で」

「ふーん。お兄ちゃんが文章というと……作文かな?」

「いや……小説のあらすじ」

「小説?」

 ちょこんと首を傾げる明奈。

 それもそのはず明奈は優真が小説を書いていることを知らない。

「あぁ……。知らないのか。俺小説書いてるんだ。つまんないけど」

「えぇ!?そうなの!?なんだ読ませてくれれば良かったのに」

「そうか。読みたきゃ読んでみてもいいけど……」

「ホント?じゃあ読もうかな。最近私も小説読んでるし」

「何……?そうなんだ。何を読んでるんだ?」

「うーん……斜陽とか、吾輩は猫であるとかかなぁ。あ。舞姫は面白かったよ」

「なんだそれ……。斜陽と吾猫は分かるけど舞姫ってなんだ……。舞元しか分からないぞ……」

「むしろ舞元ってのがわかんないよ……というか吾猫って略なんかカッコイイね」

「そうか?んじゃLINEに送っておくから暇な時にでも読んでくれ。俺は書いてるから」

「今暇だからここで読むねー」

「……そうか」

 妹との会話を終え、また無言であらすじを書く優真だった。




───────────────




「んで出来たあらすじがこれか。まぁ良いんじゃねぇの」

「そうね。これなら普通に面白く出来そう」

 1日明けて再び文芸部。

 昨日書きあげたあらすじを既に教室にいた衛藤と榊原に読んでもらったというのが今この瞬間だ。

 感想はなかなか好評である。

 そのあらすじがこちら。



 作品名 高嶺の花と付き合いたい。


 主人公──坂田雷斗は悩んでいる。

理由は同じクラスの大道美紅に恋をしているからだ。

 しかしその大道はいわゆる高嶺の花。

 その大道と付き合うため、親友と共に彼女の心を撃ち抜きます。

 甘々日常系ラブコメ。




「……これを1日かけて書いてきたんだよな?」

 何故か首を傾げながら顔を上げる藤宮。

「はい。良いでしょ」

「まぁ良いのだが……。あまりに短すぎないか……?」

「いやあらすじにそんなに文字数いらないですから。しかもリレー小説。自由に書けるように短くしたんですよ」

「そんなドヤ顔で見られてもな……」

 呆れた顔であらすじが書いた紙を朝比奈に回す藤宮。

 「ありがと〜」と紙を受け取り30秒ほどで読む。

「まぁ良いんじゃない別に〜。短いのはあるけどね……。あ。榊原ちゃん。絶対小学生出してね!絶対だよ?」

「圧が強いのだけれど……。まぁ朝比奈さんがそう言うならば出してあげましょう」

 顔を近づけ、押しつぶさんとする圧により、押し切られる榊原。

「榊原!騙されるな!そいつはただ『趣味で』ロリを書きたいだけだぞ!」

「別に趣味で書いたって良いじゃない」

「ほらね衛藤。言われてるぞ」

「なんでお前が自慢げなんだよ……」




「それじゃあ私が書くということで良いわよね?もう今日の夜に書き上げてしまうけど」

「そ……そんな早いんですか。あ。出来れば妹キャラ出して貰ってもいいですか?」

「なんだついにシスコンを隠すことを無くしたのか」

「ちげぇよ!えーと……妹も読みたいって言ってたので」

「あら。妹さんも読むのね。妹キャラはもちろんだけれど……それは私も張り切らなければ」

 大きめの胸をぐっと張る榊原。

「それじゃあ榊原。頼むぞ。私たちの小説はお前に任された。まぁお前に対して心配する事などないと思うが」

「任せてください」

 こうしてリレー小説がスタートする。

 トップバッター榊原。どんな小説を書き上げてくれるのか。



────実は一番楽しみなのは優真である。



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