最終回
刹那。優真は崩れ落ちた。
「ゆ……優真くん!?」
その優真を支えたのは……榊原の両手。
榊原に支えられるようにして、優真は何とか自立する。
佐々木優真は……ボロボロだった。
体力もないし足が早い訳でもないのに。
20分間。走ったのだ。
ただ。榊原恵のために。
靴紐は、気付かないうちに解けていた。
ガッチリと来ていたはずの制服も、ブレザーは肩から落ちている。
ネクタイもかなり曲がって、格好はダサい。
優真自身も、汗だくで。
息を切らし、苦しそうに息継ぎを続けるだけ。
言葉を発することも出来ず、かはかはと発っそうとする言葉だけが、中に空回った。
物語の主人公だとしたら……あまりにも弱々しすぎる。
その姿を見て榊原は。
「なんで……私のために……そこまで出来るのかしら……」
涙を……流した。
榊原に膝枕される形だったため、優真の頬に、ぽたぽたと雫が落ちる。
そこで意識が覚醒したのか、ガバッと起き上がる優真。
「っは!?俺は何を!榊原さん……申し訳な……」
「馬鹿なのかしら!?」
「えぇ!?」
泣きながら。
榊原恵の言葉は、止まらなかった。
「なんで私のためにそこまで出来るの!?身を粉にして!私如きに!私みたいな人に!何でそこまで頑張れるの!?優真くんそんな事したことないでしょ!?」
その言葉の一つ一つを、優真は、「うん、うん」と受け止める。
「優真くんにいっつも救われてるのは私なのに……また救って……。もう……私何も出来てないのに……」
ポカポカと、優しく殴ってくる榊原。
その拳も、優真は受け止める。
既に足はフラフラではあるが。
「優真くんは……なんで……」
優真の胸元にうずくまるように。
今度は榊原が、崩れ落ちる。
それを優真が。
抱きしめるような形で、抱え込んだ。
「なんでって……当たり前じゃないですか」
いつも通り。
いっつもやって来た、日常みたいに。
文芸部で、過ごしてきた時みたいに。
自然に。
ごく……自然に。
「俺、榊原さんのこと好きですから」
そう、言った。
榊原は、動かない。
ヒックヒックとなく声と、若干震える程度で。
動かずに、榊原はこう返す。
「私が……言わなきないけないのに……」
と。
2人はただ、抱きしめ合う。
いつからか、榊原も優真の背に手を回し、ひたすら。
これまで……言えなかった分。
これまで……向き会えなかった分。
これまで……救ってくれた分。
これまで……支えてくれた分。
ひたすら……抱きしめ合う。
「……なんか、最終回みたいですね」
「雰囲気を……ぶち壊したわね」
榊原はそう言うと、パッと優真から離れた。
その顔は、まだ赤い。
涙で目元が赤いのは分かるが、頬も紅潮している。
「す……すいません」
「だから、謝ることないでしょうに」
はぁ……と呆れてため息を漏らす榊原。
「優真くん。さっき最終回見たって言ったわよね」
「え……?はい」
「まだよ」
尚も首を傾げ続ける優真に、榊原は笑顔で。
「まだ、始まったばかりでしょう?」
そんな事を、呟いた。
夜とはいえ、仙台駅は人が多い。
周りに……聞こえないようにしたのだろうか。
傍から見ればバカップル。
「そ……そうですね」
照れてそう言う優真に、榊原はまた笑い出す。
「なんというか……バカップル撲滅とか言うの辞めます」
「なんで?」
「こうやって榊原さんとバカしてるの、すげー幸せなので」
「っ!すぐそういうっ……!」
何とか戻りつつあった榊原の頬は、また真っ赤に染め上げられた。
何度も言う。傍から見ればバカップル。
「あ。榊原さん!ちょっと……俺からいいですか」
「……何かしら?」
ゴソゴソとバッグを漁り出した優真は、原稿用紙を取り出す。
不思議そうにその原稿用紙を眺めていた榊原に向かい合って。
優真はまるで結婚指輪を渡すみたいに、片膝を着いて。
「これ。新しい作品です。絶対完結させるので……読んでくれますか」
そう、差し出す。
それは、以前プロットを書いていた小説で、そして最近、優真が書き続けている作品だ。
それを……彼女に読んで欲しい。
絶対に、完結させる。
その完結までの流れを……見て欲しい。
そんなシンプルな気持ちが、前面に出た『告白』。
榊原は、何故かため息をついて、こう言った。
「そんな事……されなくても、読む気しかないわよ。だってあなたの小説だものね」
スっと、榊原はその原稿用紙を取る。
「でも……帰ってからでもいい?これ。家でじっくり読みたいの」
「あ……大丈夫です!」
優真がそう言うと、榊原は「ありがとう」と返し、自らのバッグに、その原稿用紙を入れた。
「……星見えますね」
「だから何かしら……」
「え。カップルってこういう事すればいいんじゃないんですか?」
「か……カップルって!」
「な……違うんですか!?付き合ってください!」
「な…………ぁぁぁ!もうよく分からんないわよ!はい!付き合いましょう!」
「付き合うんだな……今……ここで!」
「いや何故ここで進〇の巨人ネタを突っ込んで来るのよ……」
こうして。
夏でもなければ春でもない。
そんな曖昧な……梅雨の時期。
2人は、付き合った。
そして、彼らは……新たな物語を始める。
「あ。そういえばこの小説。なんて題名なのかしら?」
「あ。タイトル書くの忘れてました……」
「何してるのよ……。それでこれは?」
「それはですね……」
その小説の題名は。
『僕のラブコメを完結させたい』
祝!最終回!
どうも。この場ではお久しぶりのずんだです。
見ろよ優真。俺はお前を超えたぞ。
そうやって続けられた理由の1つに、キャラへの愛があるのではないか。
そう思います。
この作品を書くために、僕は生まれて初めてプロットを書きました。
1週間……2週間と悩みに悩み、やっとの事で書き上げたプロット。
その中でも、キャラクターには特に力を入れました。
愛着。自然に湧いちゃってたんですよね。
一番愛着が湧いているのは藤宮。
何故かです。特に理由はありません。
藤宮が泣いているシーンで僕もないてましたからね。中三男子の涙とか誰得……。
今回この小説を書くにあたり、仙台のお友達からの情報が非常に大きかったです。
特にラストシーンの優真の激走。
アレ。友達に実際に走ってもらいました。
テレビ通話で僕も見ながら。
いやぁ……仙台っていいですねぇ。
個人的にはずんだシェイクが1番気になっています。
名前がずんだなだけに飲んでみたいぜ!
コロナが終わったら、ぜひ行ってみようと。
今作。書いている最中に突然現れたキャラが何人か出てきました。
木浪などの編集者2人は完全にそうですし、神子もそうです。
ロリが出るとかあたし聞いてない!
これまで僕が書いてきた小説の中で最もPVが少なく、ブクマも評価も少ない。
そんな作品だったのに、書ききれたのは、他でもない。
そんな僕の作品を見てくれた……見てくれているあなたのおかげです。
こんな名前も長くなくてつまらなそうな作品に手を伸ばして、ここまで見てくださった方、非常にありがたく思っております。
実際、作者としてはそれが1番嬉しいことです。
せめて、これを今、読んでくださっている皆様に、
「この作品は面白かった!」
と思えるような作品にするために。
まだまだこの先、新たな作品を書いていくと思いますが、これからも何卒、よろしくお願いします。
最後に!仙台の友から貰った嬉しい一言!
「藤宮先輩に首締められたい!」
それではっ!




