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リレー小説の後は打ち上げが捗る

「打ち上げですか?」

「あぁ。どうだ?」

 部室にいるのは藤宮と優真。

 いつも初めに部室に来る2人。

 そんな中で、パソコンに文章を打ち込んでいた優真は、黒板に何かを書く音が聞こえ、目を向けると、 そこには『リレー小説終了おめでとう打ち上げしようぜ!』という藤宮っぽさは全く感じられない文字列が。

 それを見た優真は、少し首を傾げながら、藤宮にそう聞きいた。

「俺はやる事ないですけど。多分衛藤も大丈夫だと思いますが……心配なのは榊原さんと朝比奈ですね」

「まぁ……仕事があるかも知れないしな……。とはいえ聞いてみるだけ聞いてみよう」

「そうですね」

 背もたれのある椅子に背中を預け、だらーんとする優真に、藤宮は「あまりだるけるなよ」と声をかけ、藤宮は窓際に椅子を置き、その椅子に腰掛けた。

 そして椅子に座りながら、外をほうと見つめる。

「……どうしたんですか先輩。黄昏ちゃって?」

「雰囲気良かったのにそれをぶち壊す発言をするな」

 ため息をつきながら優真に向き直る。

「すいません」

「別に謝ることもないだろう」

優真の方を見ながら、微笑む藤宮を見て、優真はどこか気恥しそうに咄嗟に目をそらす。

「衛藤……遅いですね」

「そうだな」

 既に部活が始まってから30分ほど。

 いつもなら衛藤が来ている頃なのだが。

「……なんだ。私と2人きりだとそんなに気まずいか?」

「いえ……そういう事では……」

 軽く微笑しながらそう言う藤宮。

「まぁ私と2人だと面白くはないか」

 優真が逸らした目を再び藤宮に合わせようとすると、藤宮はまた窓の外を眺めていた。

 開いたドアから流れ込む風が、カーテンと藤宮の髪を揺らす。

 ロングヘア故に、綺麗に髪がたなびき、窓の外を眺める藤宮は、とても綺麗である。

「優真」

「はい?」

「お前……この部活は楽しいか?」

 藤宮の表情はまだ微笑んでいる。

 優真は吊られるように窓の外を眺め、

「当たり前ですよ。じゃなきゃここいないですから」

「ふふっ……そうか」

 クスクスと口に手を当て笑う藤宮。

「なら良かった」

 藤宮は窓側を離れ、部室にある棚を開いた。

 中から取り出したのは分厚い書類。

「な……なんですかそれ」

「あぁ。これか」

 どっしりとある紙を持ち上げる。

「これは生徒会の資料だ。読まなきゃいけなくてな」

「そ……そうですか。頑張ってください」

 机にその紙を置いて、資料を黙々と読み始める藤宮に、優真はふと思う。


 ……この部活の女性陣やる事ありすぎだろ。






───────────────





「空いてますよ〜その日。優真は行くの?」

「勿論。つか朝比奈仕事は?」

「ん〜?なんかあんまり最近来なくてさ。なんか……嵐の前の静けさって感じ」

 だらっと机によっかかるのは朝比奈。

 藤宮が資料を読み始めてから10分後くらいにやって来た朝比奈は、リレー小説の打ち上げの件の説明を藤宮から聞き、そんな事を言った。

「そういえば衛藤は?あいついつも早いじゃん。こんな遅いことなかなかない気がするんだけど……」

「あいつは死んだ」

「ええっ!?」

 おそらく素で驚いている朝比奈に、優真は「嘘だよ」と苦笑いしながら言う。

 それを聞いてぷくーっと頬を膨らませながら

「嘘はダメだよ〜!」

 怒ったようにそう言った。

「この程度の嘘に騙されるお前が悪い」

「嘘はダメよ優真くん」

「まぁダメだよなーって榊原さん。お久しぶりです」

「3日ぶりでしょうに。まぁ……久しぶりではあるかもしれないけれど」

 そっと荷物を置き、椅子に座る榊原。

 そして、榊原も黒板の文字に気付いた。

「リレー小説……打ち上げ……。なるほど」

「榊原さんは予定空いてますか?」

「えぇ。多分今月は予定ないわ」

「そりゃ今月はあと1週間ですからね……」

「いや作家にとっては1週間だらけれるだけでも幸せなのよ。原稿に追われないって素晴らしいわ」

 なんというかクールな美人キャラと言うイメージがクールで美人だけど原稿に追われる女みたいなキャラになって来ている気がするが……。

 とはいえ榊原の予定もOKという事で。

「よし。これで全員OKだな」

「おい優真。俺を忘れんじゃねぇぞ」

 がしっと。

 優真の頭を鷲掴みにする衛藤。

「お。衛藤。遅かったじゃねーか」

「さっきまで俺を忘れてたよな?」

「ははは。そんなわけ」

「棒読みなの辞めないか?」

 衛藤は笑っているが笑っていない笑顔(意味不明)で優真に圧力をかけながらそう言った。

「だけどお前どうせ予定ないだろ?だったら変わらんのでは……」

「いや、俺は予定あるぞ」

「は?」

「え?」

「そうなの?」

「そうなのか?」

 部員全員が素っ頓狂な声を出す。

「いやお前らそれだいぶ失礼だからな。まぁ……家族のあれだ」

「じいちゃんでも亡くなったか?」

「いや生きてる。つーか今ジム行ってる」

「すごい元気なおじいちゃんなんだね〜……」と朝比奈が言うが、

「つーか今もだいぶやべーの。今日もう帰るな」

 そう言って教室のドアを開き、出ていく衛藤。

「なんか……あいつにも色々あんだなー」

 優真はそんな言葉を、口から零した。





─────────────




「衛藤はいないけどこのメンバーも久々だな」

「確かに〜。榊原ちゃんと私なかなか来ないもんね」

「そうね。最近は忙しくて。優真くんと藤宮先輩には申し訳ないわ」

 当たり前のように衛藤がハブられていることに、ツッコむ人はいない。

「いやいや。こいつらの話を聞いてるだけでも楽しいっちゃ楽しいぞ。もちろんお前らが来ればもっと面白いが」

 部長らしいひとこと。

 まだ日は落ちきっていないが、学校の窓から見える町は夕日に照らされていた。

 高総体も終わり、部室から見えるテニス場に、部員は見当たらない。

 今年この学校の部活で県まで行ったのは野球部と陸上部だけのようで。

 部室の窓から見える方向とは逆方向にある校庭で部活をしているため、運動部に勤しむ生徒を見ることは出来ない。

 とはいえ優真は運動部が好きという訳では無い。

「なんか……寂しくなったね〜」

 頬ずえをつきながら、そう言う朝比奈。

「まぁ来年になればまた見えるだろう。私はもう見えないがな」

 苦笑混じりに……だがどこか寂しそうに藤宮はそう言った。

「藤宮先輩。私たちの部活はまだありますから」

「ふふ……分かっている。榊原は良い子だな」

「子供扱いされたのなんていつぶりかしら……。って頭撫でるのやめてちょうだい」

「なんだ可愛くない後輩だな……」

 榊原が藤宮の手を軽く振り払うと、藤宮は少し不愉快そうな顔でそう言った。


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