そしてリレー小説は終盤へと向かう
「……出来たぞ」
部室に響いたのは藤宮の声だった。
リレー小説が藤宮の番に周り約1週間。
その間の藤宮というのは、あまりにもいつもと違っていた。
いつもの藤宮は、1番初めに部室に来るものの、基本何もすることはなく、部員の活動を見ながら、立って歩いて。
たま〜に小説を書く程度で、ぶっちゃけ『部活してる』感と言うのはあまり感じられなかった。
無かったのだが……、この1週間。
藤宮はいつもパソコンと向かい合っていた。
優真が部室に入れば、初めに聞こえるのはカタカタというキーボードを叩く音。
他の部員が来て、バカ騒ぎしたとしても、その音は一切途切れる事はなかった。
それが1週間続いたのだ。
部活動時間は基本2時間。
1週間だけでも、単純計算で10時間(土日は部活がないため)である。
それだけの時間を費やしてきた小説が……ついに出来上がった。
部室にいたのは優真のみで、あまり大きな反応は生まれなかったが。
「ついに……出来たんですね」
「あぁ。10万文字をついに書き上げたぞ」
「うーん……。軽く字数オーバー。つーか単行本1冊分ですねそれ」
「榊原のと合わせれば出版出来るな」
「榊原さんのは単体で出版出来るレベルですけどね……。どれどれ。見せてくださいよ」
と、
藤宮は頬をぽっと赤く染め……
「そ……そうか。読みたいよな」
「何赤くなってんのこの人……怖い……」
「で……出来れば衛藤と一緒に読んで欲しかったが……。今読みたきゃ読むがいい」
「何故衛藤……。まぁ読みます。さぁてどんなもんか」
そうして優真は約10万文字のリレー小説を読み切っ……
「BL小説じゃねぇ~かぁぁぁぁぁ!!!」
れなかった。
読み始めてから約20分の時を経て、ギブアップである。
そのジャンルというのが、BL……すなわちボーイズラブ。
男子たちに取っては禁断のワードである。
「ちょっと……ちょっと待って……。先輩もしかして腐ってるんですか……?」
「あぁ。いい具合にな」
「いやこれドロッドロに腐ってますよ!内容がディープすぎる!」
「そうかぁ……?結構弱めにしたんだが……」
「いやいやいやいや!おかしいおかしい!つかこれを俺に読ませるのもヤバいって!」
「コイツは何をそんなに怒っているのだろう……」と『本気で』不思議そうに思っている藤宮は、BLを読ませた事に怒っている優真に対し、首を傾げながらこう問うた。
「なんだ。どこがダメなのだ」
「全部だよ!まずストーリーがやべぇよ!」
その展開というのを、軽く説明しよう。
まず前回。朝比奈が書いたリレー小説は、優真(物語の中の)がロリハーレムを作り、「やっぱり小学生は最高だぜ!」と、学校で高々と言い放ち、それを聞いた先生方が通報。
「小学生はもうこりごりだよー!」。小学校にそう言い残して、優真は警察から逃げるために山奥に逃げ込んだ。
そしてその山奥に人影が。
それは山に住む衛藤(物語の中の)だった。
衛藤は自らをロリコンだと自称し、「貴様もそうだろう?」。そう優真に聞いた。
それに優真は「あぁ。そうだ」と同意。
そして2人でロリハーレムを再築しよう。
そう誓ったところで朝比奈のは終了した。
……そもそも朝比奈の書いたリレー小説がイカれているのは置いておこう……。
そして藤宮が書いたのはその2人の4日後から、話はスタートした。
まず物語序盤に衝撃設定が飛び出す。
『なんと衛藤。ロリコンではなくガチホモだったのだ』。
何度も言うが物語の中の衛藤が。ガチホモだった。
そして少しずつ過ぎる日々の中で優真(以下略)は衛藤とえっちな事がしたいと思うようになり……。
こっからはR18レベルの文章が永遠と続く。
ちなみに優真はR18ゾーンに入り、1ページ目でギブアップだった。
と、こんな感じである。
「全部アウトですよ。オールアウト。何もかもアウト」
「お。3回アウトだったからスリーアウトチェンジだ。お前の攻撃だぞ」
「確かにリレーは俺に回りますけどね……。ちなみにこれ最後はどんな風に終わるんです?」
「それは自分で確かめろ」
「無理だわ!あんた鬼か!?」
もうあの原稿は読まんと心に刻み込んだ優真。
必死に最後を聞き出そうと、奮闘する。
その姿を見て、藤宮も流石に何か思うところがあったのか、
「はぁ……教えてやる」
「ありがとうございます……」
何とか聞き出すことに成功し、肩を落とす優真である。
「これは最後な……バッドエンドなんだ」
「え……?」
どうせ優真()がガチホモになってENDだと思っていた優真は、実にすっぽ抜けた声を出した。
「最終的に優真はとある女に寝盗られてしまうんだ」
「え……えぇ!?」
まさかの衝撃展開に優真は思わず声を荒らげる。
「さ……さっきまでのガチホモストーリーはいったい何処へ……?」
「まぁ聞け。それでな。衛藤は優真が寝盗られてしまったショックで、自殺しようと考えるんだ」
「な……辞めろ衛藤っ!確かに禁断の恋だったかもしれないが……」
「ただ、優真もそれを止めることは出来なかった」
「な……なんでだ……!?」
「寝盗られ、自分がノンケである事を思い出してしまったんだ」
やけにしんみりと話す藤宮。
その目にはどこが光るものが……。
そんな藤宮に、優真も涙を流す。
「そんな……。ずっと一緒にいてくれたのは衛藤なのに……」
「あぁ……。それで衛藤は自殺したんだ……。そこで目が覚める」
「なんか……BLも奥が深いんですね。ちゃんと調べてから……って目が覚める?」
明らかに今の話に合わない単語の登場に、優真はすかさずツッコんだ。
してやったりと言わんばかりの顔の藤宮は、少しニヤリと笑い、
「これはな。初めの小説の主人公……坂本の悪い夢だったんだ」
「な……なんだってー!?」
恐らくこれを読んでる皆さん、坂本の事を覚えていないでしょう。
ぜひ過去の話を振り返ってみてくださいね。
予想外の人物の登場に、驚きを隠せない優真。
「……ってつまり俺は」
「あぁ。喜べ優真」
「榊原さんのあの小説の……続きを書かなきゃいけないって事か……?」
1周回るとはまさにこの事。
榊原が投げ込んだストレートは謎の魔術師によりぐにゃんぐにゃんと曲げられ、恐ろしい変化球に……と思えば、バッター優真の前でまたもストレートへと変化した。
大〇翔平レベルのとんでもないストレートが、優真襲う。
果たして優真はこれをホームランに出来るのか……。
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「ほげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
「衛藤が吐いた!この人でなし!」
後に合流したメンバーも、藤宮が書いた小説を読んでいた。
優真の次に来た衛藤は、それを読んで、まさかのリバース。
とはいえよくこらえた。
物語の後半部分まで読み進めたのだが、段々と濃くなっていくその濃密ストーリーに、衛藤の脳は限界に達したのだった。
「なぁ優真……。俺ここまでみてぇだよ……」
「衛藤。ガチホモ飛ばしていいから最後だけは読んどきな」
「何故……」
疑心暗鬼になりながらも最後まで読み進める衛藤。
そして……
「おおう……こう来たか」
「そう来たよ」
展開を読み取り、素直に関心を示す衛藤は、首を縦にうんうんと振りながら、最後の文を何度も読み返している。
「上手いなぁ……これ。よく繋げたもんだ」
「そうだよなぁ……。俺もそう思う」
ひたすら同意を示す優真。
そしてその2人を見つめる藤宮。
……藤宮が何かを想像していたような目をしているが、それを知るものは誰もいない。
ちなみに朝比奈は部室に来たため、そのまま読ませた。
「うぉん……。まぁBLは置いといて良かったんじゃない?優真がんばえー」
なんとも適当だが、朝比奈らしいコメントである。
榊原に関しては、忙しいそうなので優真がメールで文章を送り、電話で感想を聞く事になった。その感想がこちら。
「……ノーコメントね。それより私原稿がやばいから……あ。コンビニで何か買ってきてくれないかしら?(小声)あっ!携帯取らないで!やめっ!」
ブチッ。ツーツー。
……なんだか榊原がピンチな気がするが……、まぁ大丈夫だろうと。
そっとスマホを置いた優真だった。




