死亡フラグは終わらない
「『俺を置いて先にいけ!』」
「け……け……『蹴散らすぞ!先陣は我がきる!全体、我に続けぇぇえ!!!』」
「え……えかぁ……。あ。『え?幽霊?いる訳ねぇだろそんなん。やめろよ。俺は先に行くぜ』」
「『ぜ……絶対に生きて帰る!帰って……結婚するんだ』」
「強いなお前……。まさか俺に『コレ』で勝てるやつがいるとは思わなかった……。流石一級フラグ建築士……佐々木優真だ」
「嬉しくはねぇなその称号……。てかこれ結構面白いな。ハマりそう」
「うん。君たち馬鹿なことするの辞めない?前私がいない時もやってたみたいだけど~……」
「ほんとよ……。この2人の最近アホ度……って言うのかしら。そう言うのが増してるような気がするわ……」
久々に全員が集まった文芸部の部室で。
いつも通りにあほらしい事をするメンツ達。
本日アホ達がやっているのは、
『死亡フラグしりとり』
である。
簡単に説明するならば、
繋げるのは単語ではなく、死亡フラグという特別ルールがあるのが、この死亡フラグしりとりだ。
古今東西過去未来。様々な小説で……いやそれに限らずアニメや漫画、ドラマや映画などで生み出されてきた様々な死亡フラグ達。
それを繋げていくというのが、死亡フラグしりとり。
意外と面白いが、2回目……3回目とやって行くうちにネタが少なくなり、どんどんとつまらなくなっていくのが弱点ではあるが、元がしりとりであるため、もちろん誰でも出来る。
……あくまで死亡フラグを沢山知っている人が勝つゲームではあるが。
念の為ではあるが、先程の優真&衛藤の死亡フラグを振り返ってみよう。
まず衛藤の『俺を置いて先にいけ!』。
これはまぁ定番である。
恐らく物語の中盤あたりで仲間になった奴が、大量の敵に主人公たちが苦戦する中で言った言葉だろう。
これだけでも十分死亡の可能性が高いのだが、主人公が
『わかった!絶対生きろよ!』
と念を押すのがこの死亡フラグを更に強めるポイントである。
それでは次に……『蹴散らすぞ!先陣は我がきる!全体、我に続けぇぇぇぇぇぇ!!』
だが、これも上記と似たようなフラグである。
多分主人公の武将が奇襲を仕掛けるために、先頭から少ない兵で突っ込む武将が、最後の出陣を決意し、名前を名乗りながら突進していくシーンで飛び出る一言だろう。
間違いなくカッコイイ。
涙無しには見られない感動シーンとなるだろう。
多分雑魚に刺されて死ぬ。最後に残したセリフがまた視聴者の目を潤わせるだろう。たぶん。
お次は……『え?幽霊?いる訳ねぇだろそんなん。やめろよ。俺は先に行くぜ』だが。
確実に死ぬ。口から血を流して血まみれで死ぬ。
主人公が見つけて絶叫するまでが定番。
そして最後は……言うまでもないだろう。
敵に見つかってすぐ死にそうだ。
他にも世の中の死亡フラグというのは様々だ。
『もう何も怖くない』やら『こいつは俺が守る』やら『まだ勝てる可能性がある!』やら。
死亡しなくても怪我とかで選手人生終わる奴なら『俺頑張るから!見ててくれ!』など、死亡フラグではなくても実質死亡フラグの奴もある。
と、ここまでひたすら死亡フラグについて語ってきたが……。
是非皆さんも死亡フラグしりとり。試してみては?
「いやぁ……。それにしてもよくそんなポンポン死亡フラグが出てくるね~。私は間違いなく最初で詰むよ……」
椅子にいつも通り、だらーんと座り、首を右左と金髪を揺らしながら、朝比奈はそう苦言を漏らした。
そこに一級フラグ建築士こと佐々木優真が
「まぁ……俺も苦しいとこはあるけどな。これは小説書いてるからこそ出来た技だよ」
「多分そういうの言えるのはプロ作家とかだけだと思うぞ。よく分からん作品を書いてるお前が言えることじゃない」
「うぉん……。なかなかキツいこと言うじゃないですか……」
ジト目でそう言った藤宮に、優真は思わずたじろぎながら、そう返した。
「運動部が高総体で頑張っている中で私たちはこんな事をしてるのよね……。なんか馬鹿らしくなって来たわ……」
「榊原さん……。貴方らしくない事言わないで下さいよ……」
「完全に優真くんが悪いでしょうに……」
「確かに……」
黒い髪を弄りながら、榊原も優真達のあほ行動に呆れているようで。
「まぁ……アホな行動は出来るだけ控えるとして……。優真と榊原」
「ん?」
「はい?」
突然呼ばれた2人は、困惑をあらわにする。
「明日の土曜日って予定あるか?」
「明日……?俺に何か予定があるとでも……?」
「すまん……。お前が予定あるわけなかったな……」
「それはそれでひどいな……」と苦笑いするのは優真。
「まぁ……私も別にないわね。原稿締切だって特にないし。昨日やっと書き上げたわ……。えぇ……部屋に編集が見張って抜け出せずに必死に書きあげたわ……。思い出すだけで辛いわほんとに……」
突然唸り声をあげる榊原。
ただそんなの眼中に無いと言うかのように衛藤はなおも続ける。
「んじゃさ。俺ら3人で映画行こうぜ」
「映画……?」と首を捻る優真と榊原。
「そう。映画」
「何見んの?」
「秘密だ。んじゃ。俺は先帰るなー」
そう言って足早に帰る衛藤の背中を、優真と榊原は呆然と見つめていた。
────────────────
「いやー……。2人とも予定がなくて良かった良かった」
家に帰り、1人しかいない家の中で、リビングのソファーに腰掛け、天井を仰ぎながら、俺はそう呟いた。
「これで……確かめれるよな……」
「榊原と優真……。両思いなのか果たして片思いなのか……」
薄々気付いてはいた事。
大体把握しているのは……榊原が優真を好きという事。
前感情に任せてではあるが……『優真が好きなんだろ』と言ってしまった時、榊原は少なくとも反応を見せた。
結局ドッキリではあったが……あの後の逃げるような言い草は……確実に榊原の本心だろう。
あと優真には甘いのに俺には厳しいし。
とはいえただ好きと言うよりな〜んか難アリな感じもするんだけども……。
まぁ……とはいえ好きは好きだろう。
んで分かんねぇのが……優真なんだよなぁ。
好きなのか好きじゃねぇのか分からない。
なんというか尊敬してる感じで接してる感じ。
なんなんだろうかあの感じ……。
中学の頃から友達だった割には敬語使ってるし……。
どういうあれなのか……。
何はともあれ……とりあえず
「榊原と付き合うのだけは……阻止しなきゃいけねぇよなぁ……」
それだけは……許してはならないんだ。
もうこれ以上……アイツが傷つくのを見たくねぇ。
『恋愛絡みで』、友達が……優真がまた傷つくのは……嫌だよな。
大事な友達。
だからこそ。
榊原だけは……絶対にダメだ。
優真が榊原をどう思っているのか……
確認する必要がある。




