いつものにちじょー
「なぁ衛藤よ」
「どうしたいきなり……」
「昔話を最近のラノベ作品風にするとしたらどんな風になるかな」
「……いつもに増してアホだな」
くわっと目を見開き、勢いよくそう言う優真に、ツッコむのは衛藤。
すっかりと日も落ち、外は既に暗くなっている。
とはいえまだ6時で、そろそろ高総体のシーズンのため、未だに部活に勤しむ生徒たちの声が聞こえる。
「おらサード!おいセカンド!おらファースト!もっかいセカンド行くぞ!」
「ふっはっふっはっ!チョレイっ!」
「逆サイ!逆サイ!逆サイ空いてるぞ!」
……少し個性的な声も聞こえるが。
そうして運動部が最後の追い込みをしている中で。
文芸部は実にくだらない日常を過ごしていた。
高総体が近いとはいえこれといってやることは無く、いつも通りにグダグダと部活を過ごすだけ。
活動すると言うよりも過ごす。
それどころか朝比奈は今日
『あ。今日は「jsが行く!」の予約を早くみたいから帰るね~』
と、休んでいる。
榊原と藤宮こそ文章を打ち込んだり、書いたりしている(藤宮はリレー小説を書いている)が、優真と衛藤は……
「いや、だからさ。昔話を……」
「分かった。よく分かったから。ほら。一緒に病院行こうな」
「や……やめろ!俺を連れていくな!」
優しい笑みを浮かべて、優真の背中を押し、教室から出ようとする衛藤に、優真はそう言い放って離れた。
「しょうもない話しか出来ねぇのかお前は。……とはいえまぁ……面白そうではあるお前例えでなんか言ってみてくんね?」
「ふっ……任せろ。んじゃ……お題を」
不敵に(?)笑いながらお題を要求する優真に、衛藤は呆れながらも
「……んじゃ桃太郎で」
そう告げると、優真は「うーむ……」と一瞬考えた後……
「来ました」
「おう。んじゃどうぞ」
そして顔をバッと上げ……
「桃から生まれた俺は動物達を従えて鬼ヶ島で無双する」
「うっわ!すげぇありそう!なんかすげぇありそう!」
「そうだろ。最近の俺TUEEEE系のやつだな」
自信満々でそう言う優真である。
「んじゃ金太郎は?これも俺TUEEEE系で作ってみろ」
「なるほど……よし。来ました」
「ほう。どうぞ」
「森に暮らす俺。森奥の強者を相手に俺TUEEEEします」
「うわ!絶対ある!俺TUEEEEを題名に入れてる!」
「……意外と絶賛なのな。あ、個人的に推してるのは、かぐや姫の……」
「竹を切ったら中からロリが出てきたので娘だと思って育てようと思います。だな」
「萌えっ!まさかのかぐや姫に萌えっ!……つーかかぐや姫って名前可愛いな」
昔話に萌えを見出そうとする衛藤。
確かによく考えてみたらかぐや姫と言う名前は可愛い。
更に、竹から生まれた時はロリだ。
「朝比奈にも伝えてやらないと……」
ボソッと呟いた言葉に、「やめとけ……」と苦笑いで返す優真。
と。
「お前ら……しょうもない事をするな。とはいえ楽しそうだな……私も良いのを考えた」
「おっ!先輩のくせして乗り気だ!」
「くせしてとはなんだお前……」
驚く優真に冷静にツッコむ藤宮。
「よし。んじゃ藤宮さん。どうぞ」
ノリノリなのは衛藤も同じである。
「では……サルカニ合戦で行く」
「道化師猿への蟹無双。どうだ?」
「かっけぇぇぇぇ!あれだ!絶対異能力モノだ!禁〇目録とかそういうタイプのあれだ!」
「先輩……尊敬ものです。すげぇや!」
「ふっ……そうだろうそうだろう」
興奮する衛藤と優真に、鼻で笑いながら上から目線でそう言う藤宮。
「……つーかこれで小説書いてみても面白いよな。おい優真。かぐや姫のやつ書けよ」
「確かに良いかも。……でも二次創作になんのかこれ」
「一応著作権は切れているから、著作権関係のは大丈夫だな」
「何でそんなの真剣に悩み出してるの……」
「おっ!榊原さん!榊原さんもなんか思いついたんすか!?」
「そんな訳ないでしょう……。はぁ……」
ガチで悩み出す優真、衛藤、藤宮。
こんなあほらしい事で盛り上がれるやつら3人が……
というか普通に3人のアホが、そこにはいた。
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「あ。そういえばですけど先輩」
「ん。どうした」
文芸部メンバーが、帰りの準備をしていく中。
優真は、ふと思った事を、こう告げた。
「リレー小説ってどうなんですか?進捗……って言うんですかね」
何気なーくそう聞いた優真に……
何故か藤宮は笑っていた。
声を出して……ではなく、ニヤニヤと。
いつもあまり感情を出さず、クールな印象を持つ藤宮には、あまりにも似合わないその顔。
「……あのー。先輩……?」
「にひっ……にひひっ……ゆうえと……」
「笑い方キモイ!?んでゆうえと……?ゆうえととは……?」
若干引きながらも、優真は「出来てないん……ですね?」と一応聞く。
「あぁ。終わっていない。終わる気がしないなぁ……」
「この人キャラ崩壊してる……?」
困惑しながらそう言った優真に、その後ろで体を震わせる衛藤。
「や……やっぱあの人やべぇ……。やっぱとんでもない物を隠し持ってやがる……。ゆうえととか辞めてくれ……」
ブツブツと、誰にも聞こえない声でそう言う衛藤。
「ふひっ……ゆうえとてぇてぇなぁ……」
ニヤニヤしながら教室から出る藤宮。
「……なんなんだよこれ」
「私もよく分からないけれど……。ほら。そろそろ下校時間よ」
「ほんとだ。んじゃ帰りましょうか」
なんとも違和感を感じながらも、優真は部室を後にした。




